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第一章
畑
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翌日、午前中は内装の続きをし、たっぷり昼寝をして夕方から穴の研究を進めた。穴の一部を凝縮させると、向こう側がほんの少し透けて見えるようになった。その分さらに穴が小さくなってしまったが、見えると見えないでは雲泥の差だ。
「草原か。いいね、移動できるともっといいな」
空き缶が落ちていたので枝で手繰り寄せてみる。穴を通そうとしたところで缶が爆発した。リルの体が固まった。
「びッッくりした……」
爆発の衝撃で枝も粉々になってしまった。予想外の出来事に困惑しながら、穴を覗いてみる。向こうの景色が変わっていなくて安心した。
「取り寄せられるものとそうじゃないものがあるってことかも」
予測を確実にするため、もう一度空き缶を探した。
「なかなかないなぁ」
どこかの観光地であればもっとゴミがありそうなものだが、どうやらあまり人が来ない場所らしい。
しばらく探して、空き缶ではないもののお菓子の袋を見つけた。枝で手繰り寄せ、穴を通過しようとする瞬間、またしても爆発した。
「なるほど」
もしかしたら材質の問題かもしれないと思っていたが、アルミでなくとも反応したのでそうれではないらしい。
リルは時間の許す限り、ゴミから草木まで見つけたものを次々に引き寄せていった。
「手元に来たのは、草、枝、花か。ゴミは全滅」
結果、穴を通ったのは自然物のみだった。人工的に作られたものは、材質は関係無く全て爆発した。
「ゴミっていうか、人工物が駄目なんだ。じゃあ、おもちゃも駄目だ。まあいっか、のんびりここで寝て生活できればいいから」
リルの目的はあくまでスローライフ。娯楽はあればいいが、無いなら無い世界で過ごせばいい。
陽が落ちたので、穴を部屋の中に移動させて続きを行った。今度は穴と繋がっている向こう側を移動できるかだ。
いくら便利な穴があっても、使えるものが無ければ単なる暇つぶし程度にしかならない。できる限りの畑を思い浮かべ、それを魔力に乗せて穴へ流し込む。すると穴がゆっくり動き出した。
「よし、いいね」
そのまま眺めていると、穴が空を飛び出した。穴は下を向いてくれないためどこを飛行しているのか分からないが、空を眺めているだけでも現世と繋がっているのを実感できて楽しい。
やがて穴が落ちていき、住宅街が見え、どこかの塀が見えたかと思うと景色が止まった。
誰かの家の庭だろうか。それにしては広い。そして見覚えがある。リルは驚愕した。
「うちの畑だ」
懐かしいのは当たり前だ。ここはリルの前世の実家だった。一人暮らしをしてから年に二回しか帰っていなかったが、この畑は確かに実家の畑であった。
移動するために畑を思い浮かべていたが、見慣れたものに穴が惹かれたらしい。
「すごい。お父さんいるかな」
前世の母は病気で亡くなったが、定年退職をしたばかりの父が一人で住んでいるはずだ。畑は自分の食べる分と近所に振舞う程度の小さなもので、暇な生活に潤いを与えてくれると言っていた。
「そもそも、私が死んでから何年経ってるんだろう」
もし、時の経過が同じであれば、十五年程経過していることになる。そうなると、リルの父親は七十代後半。万が一のことを考えてしまう。
リルは穴を移動させて実家の窓が映るところまで確認したが、それ以上進めず、結局元の位置に収まった。
「うちの畑ならちょっと苗をもらっても平気だね」
こちらに取り寄せられるということは、その分現世にあるものが消えるということだ。異世界の間で犯罪が成立するのか分かりかねるが、できることなら迷惑をかけずにいきたい。
ブロッコリーの苗を見つけたので、それを一株もらう。
──あ、にんじんもある。少し頂きます。ありがとう、お父さん。
「取り寄せ用の枝何本か用意しておこう」
物を掴みやすいよう、枝の先を二股に割って数本置いておく。育てたことのない野菜が手に入ったので、とりあえずの目標を達成したリルは今日の魔法の研究をおしまいにした。そこでふと気が付く。
「そうだ。生物も通れないから、穴は必要な時以外は閉じていないと。間違って動物が触ったら大変だ」
想像しただけで背筋が凍ってしまった。しかも、先ほどまでとは違い、今は住宅が近くにある場所だ。いつ犬や猫が近くを散歩している可能性は十分にある。
慌てて穴を閉じ、家に入る。チョコが不思議そうに見上げた。
「ごめんごめん。夜ご飯にしよう」
川で獲れた焼き魚と野菜をたっぷり入れたスープを食卓に運ぶ。チョコに魔力を上げながら、やっぱり米を恋しく思う。
「お父さん、お米は作ってなかったよね」
実家の畑を思い浮かべるが、田んぼは無かったので稲は育てていなかった。趣味の農業だから当たり前と言えば当たり前だろう。
「いつかお米が手に入るといいな」
サイの家にあったパンもすぐ底を突く。しばらくは我慢の生活強いられそうだ。
食器を片付け、風呂に水魔法で湯を張ってゆっくり浸かった後チョコとベッドに向かった。
「明日は業者の人が来る。さっさと寝よう」
今日は人と接していないのに疲れてしまった。こういう日こそ沢山寝るに限る。リルはチョコに抱き着き、そこに毛布をかけて眠りについた。抱き着かれたチョコは目をきょろきょろさせながらも、主人の腕の中に大人しく収まってしっぽを軽く揺らした。
「草原か。いいね、移動できるともっといいな」
空き缶が落ちていたので枝で手繰り寄せてみる。穴を通そうとしたところで缶が爆発した。リルの体が固まった。
「びッッくりした……」
爆発の衝撃で枝も粉々になってしまった。予想外の出来事に困惑しながら、穴を覗いてみる。向こうの景色が変わっていなくて安心した。
「取り寄せられるものとそうじゃないものがあるってことかも」
予測を確実にするため、もう一度空き缶を探した。
「なかなかないなぁ」
どこかの観光地であればもっとゴミがありそうなものだが、どうやらあまり人が来ない場所らしい。
しばらく探して、空き缶ではないもののお菓子の袋を見つけた。枝で手繰り寄せ、穴を通過しようとする瞬間、またしても爆発した。
「なるほど」
もしかしたら材質の問題かもしれないと思っていたが、アルミでなくとも反応したのでそうれではないらしい。
リルは時間の許す限り、ゴミから草木まで見つけたものを次々に引き寄せていった。
「手元に来たのは、草、枝、花か。ゴミは全滅」
結果、穴を通ったのは自然物のみだった。人工的に作られたものは、材質は関係無く全て爆発した。
「ゴミっていうか、人工物が駄目なんだ。じゃあ、おもちゃも駄目だ。まあいっか、のんびりここで寝て生活できればいいから」
リルの目的はあくまでスローライフ。娯楽はあればいいが、無いなら無い世界で過ごせばいい。
陽が落ちたので、穴を部屋の中に移動させて続きを行った。今度は穴と繋がっている向こう側を移動できるかだ。
いくら便利な穴があっても、使えるものが無ければ単なる暇つぶし程度にしかならない。できる限りの畑を思い浮かべ、それを魔力に乗せて穴へ流し込む。すると穴がゆっくり動き出した。
「よし、いいね」
そのまま眺めていると、穴が空を飛び出した。穴は下を向いてくれないためどこを飛行しているのか分からないが、空を眺めているだけでも現世と繋がっているのを実感できて楽しい。
やがて穴が落ちていき、住宅街が見え、どこかの塀が見えたかと思うと景色が止まった。
誰かの家の庭だろうか。それにしては広い。そして見覚えがある。リルは驚愕した。
「うちの畑だ」
懐かしいのは当たり前だ。ここはリルの前世の実家だった。一人暮らしをしてから年に二回しか帰っていなかったが、この畑は確かに実家の畑であった。
移動するために畑を思い浮かべていたが、見慣れたものに穴が惹かれたらしい。
「すごい。お父さんいるかな」
前世の母は病気で亡くなったが、定年退職をしたばかりの父が一人で住んでいるはずだ。畑は自分の食べる分と近所に振舞う程度の小さなもので、暇な生活に潤いを与えてくれると言っていた。
「そもそも、私が死んでから何年経ってるんだろう」
もし、時の経過が同じであれば、十五年程経過していることになる。そうなると、リルの父親は七十代後半。万が一のことを考えてしまう。
リルは穴を移動させて実家の窓が映るところまで確認したが、それ以上進めず、結局元の位置に収まった。
「うちの畑ならちょっと苗をもらっても平気だね」
こちらに取り寄せられるということは、その分現世にあるものが消えるということだ。異世界の間で犯罪が成立するのか分かりかねるが、できることなら迷惑をかけずにいきたい。
ブロッコリーの苗を見つけたので、それを一株もらう。
──あ、にんじんもある。少し頂きます。ありがとう、お父さん。
「取り寄せ用の枝何本か用意しておこう」
物を掴みやすいよう、枝の先を二股に割って数本置いておく。育てたことのない野菜が手に入ったので、とりあえずの目標を達成したリルは今日の魔法の研究をおしまいにした。そこでふと気が付く。
「そうだ。生物も通れないから、穴は必要な時以外は閉じていないと。間違って動物が触ったら大変だ」
想像しただけで背筋が凍ってしまった。しかも、先ほどまでとは違い、今は住宅が近くにある場所だ。いつ犬や猫が近くを散歩している可能性は十分にある。
慌てて穴を閉じ、家に入る。チョコが不思議そうに見上げた。
「ごめんごめん。夜ご飯にしよう」
川で獲れた焼き魚と野菜をたっぷり入れたスープを食卓に運ぶ。チョコに魔力を上げながら、やっぱり米を恋しく思う。
「お父さん、お米は作ってなかったよね」
実家の畑を思い浮かべるが、田んぼは無かったので稲は育てていなかった。趣味の農業だから当たり前と言えば当たり前だろう。
「いつかお米が手に入るといいな」
サイの家にあったパンもすぐ底を突く。しばらくは我慢の生活強いられそうだ。
食器を片付け、風呂に水魔法で湯を張ってゆっくり浸かった後チョコとベッドに向かった。
「明日は業者の人が来る。さっさと寝よう」
今日は人と接していないのに疲れてしまった。こういう日こそ沢山寝るに限る。リルはチョコに抱き着き、そこに毛布をかけて眠りについた。抱き着かれたチョコは目をきょろきょろさせながらも、主人の腕の中に大人しく収まってしっぽを軽く揺らした。
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