30 / 89
第二章
秘密の石
しおりを挟む
「有難う御座います。この御恩は一生忘れません」
「そんなにかしこまらないでください。それに、私がどれくらい役に立つか分かりませんし」
「分かります!」
アミルが顔を上げた。瞳には強い意志が感じられた。
「実は、私も少しだけですが魔法の心得がありまして。魔力検知ならできるのです。貴方の魔力は、今まで出会ったどの魔法士よりも素晴らしい」
「それは、有難う御座います」
「あと、そちらにも素晴らしいものが」
指差された先に目を向ける。そこにはいつだったか拾った石があった。
「ああ、あれは山の頂上で見つけたものです。確かに、魔力を感じますね」
「あれをご存知ではないのですか?」
「たまたま見つけただけなので。そんなにすごいものなんですか?」
石を手に取り、アミルに差し出す。アミルが両手を振って断った。
「私にはとても持てません。この石は周りの魔力を吸い取り蓄積できる石です。魔力の少ない私が触ったら、たちまち全魔力を吸い取られてしまいます」
「へえ、そんなすごい能力が」
だから人気のない山で封印されていたのだ。あそこに放置しておかなくて本当によかった。悪用されたらたまったものではない。
「ということは、この蓄積された魔法石を一気に放出させれば特大魔法弾が撃てるということですね」
「はい。ただ、石を使用するのにも魔力と魔法陣が必要です」
「なるほど。じゃあ、これはとりあえず奥の手ということで、私が管理しておきます。また王都に平穏が戻ったら王宮に差し上げます」
「何から何までお世話になります」
お辞儀の角度が九十度を超えてしまった。これ以上恐縮されたらこちらが悪いことをしている気分になる。
石は元の場所に置いておく。これが使う日が来なければいい。
──のんびりスローライフはちょっとだけおあずけか。
この山は気に入っている。王都の人たちも皆良い人ばかりだった。王族はぐいぐい来るけれども、悪い人たちではない。リルは未来のスローライフを守るため、覚悟を決めた。
「さて、とりあえず常に魔力感知できるようにしておきましょう」
部屋の隅に魔法陣を描く。リルがそこに魔力を込めた。
「これで、大きな魔力を感知したら知らせてくれます。魔法士が移動するくらいでは分かりませんが、何か魔力を使えばすぐ分かります」
「これは良いですね」
大きな魔力が王都に向かっていると仮定する。今どの位置にいるのか分かれば、いつ頃軍と衝突するのかが良そうできていい。
「この程度なら王宮魔法士もやっていると思います。あ、私が手助けするのはルッツ様に内緒にしておいてください」
「分かりました」
テントに戻るというアミルを庭まで見送る。念のため、テントの周りに結界を張ってみた。
「これでアミル様以外は入れません」
「リルさんもですか?」
「はい」
「まあ、お優しいこと。私はリルさんのことルッツ兄様より信頼していますよ」
ルッツと違って女性なので念には念を入れておいた方がいい。この山は散策した限り安全だが、最悪の状況を予想して対策を立てるべきだ。
「これで大丈夫です。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
アミルがテントに入ると、山に静寂が訪れた。見上げれば綺麗な星々が光り輝いていて、夜まで続けられる暑苦しい鍛錬の声も無い。
まるで、元の日常に戻ったようだ。
「いや、全然元の、じゃないな」
王都が平和でなければ、リルの望む日常ではない。
魔法陣を見遣る。何も反応が無いので、魔法を使っていないのだろう。
「ただの遠征っていうオチならいいけど、オトラ国に入国申請していないからそれはないか」
寝るため風呂に入ると、外からかすかに歌声が聞こえてきた。リルは目を瞑り、一人きりの観客になった。
「そんなにかしこまらないでください。それに、私がどれくらい役に立つか分かりませんし」
「分かります!」
アミルが顔を上げた。瞳には強い意志が感じられた。
「実は、私も少しだけですが魔法の心得がありまして。魔力検知ならできるのです。貴方の魔力は、今まで出会ったどの魔法士よりも素晴らしい」
「それは、有難う御座います」
「あと、そちらにも素晴らしいものが」
指差された先に目を向ける。そこにはいつだったか拾った石があった。
「ああ、あれは山の頂上で見つけたものです。確かに、魔力を感じますね」
「あれをご存知ではないのですか?」
「たまたま見つけただけなので。そんなにすごいものなんですか?」
石を手に取り、アミルに差し出す。アミルが両手を振って断った。
「私にはとても持てません。この石は周りの魔力を吸い取り蓄積できる石です。魔力の少ない私が触ったら、たちまち全魔力を吸い取られてしまいます」
「へえ、そんなすごい能力が」
だから人気のない山で封印されていたのだ。あそこに放置しておかなくて本当によかった。悪用されたらたまったものではない。
「ということは、この蓄積された魔法石を一気に放出させれば特大魔法弾が撃てるということですね」
「はい。ただ、石を使用するのにも魔力と魔法陣が必要です」
「なるほど。じゃあ、これはとりあえず奥の手ということで、私が管理しておきます。また王都に平穏が戻ったら王宮に差し上げます」
「何から何までお世話になります」
お辞儀の角度が九十度を超えてしまった。これ以上恐縮されたらこちらが悪いことをしている気分になる。
石は元の場所に置いておく。これが使う日が来なければいい。
──のんびりスローライフはちょっとだけおあずけか。
この山は気に入っている。王都の人たちも皆良い人ばかりだった。王族はぐいぐい来るけれども、悪い人たちではない。リルは未来のスローライフを守るため、覚悟を決めた。
「さて、とりあえず常に魔力感知できるようにしておきましょう」
部屋の隅に魔法陣を描く。リルがそこに魔力を込めた。
「これで、大きな魔力を感知したら知らせてくれます。魔法士が移動するくらいでは分かりませんが、何か魔力を使えばすぐ分かります」
「これは良いですね」
大きな魔力が王都に向かっていると仮定する。今どの位置にいるのか分かれば、いつ頃軍と衝突するのかが良そうできていい。
「この程度なら王宮魔法士もやっていると思います。あ、私が手助けするのはルッツ様に内緒にしておいてください」
「分かりました」
テントに戻るというアミルを庭まで見送る。念のため、テントの周りに結界を張ってみた。
「これでアミル様以外は入れません」
「リルさんもですか?」
「はい」
「まあ、お優しいこと。私はリルさんのことルッツ兄様より信頼していますよ」
ルッツと違って女性なので念には念を入れておいた方がいい。この山は散策した限り安全だが、最悪の状況を予想して対策を立てるべきだ。
「これで大丈夫です。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
アミルがテントに入ると、山に静寂が訪れた。見上げれば綺麗な星々が光り輝いていて、夜まで続けられる暑苦しい鍛錬の声も無い。
まるで、元の日常に戻ったようだ。
「いや、全然元の、じゃないな」
王都が平和でなければ、リルの望む日常ではない。
魔法陣を見遣る。何も反応が無いので、魔法を使っていないのだろう。
「ただの遠征っていうオチならいいけど、オトラ国に入国申請していないからそれはないか」
寝るため風呂に入ると、外からかすかに歌声が聞こえてきた。リルは目を瞑り、一人きりの観客になった。
567
あなたにおすすめの小説
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
弁えすぎた令嬢
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。
彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。
彼女は思った。
(今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。
今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました
成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。
天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。
学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる