貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

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第二章

進軍

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 リルの心配は杞憂に終わり、満足そうなアミルがチョコから降りた。

「有難う御座います、チョコさん」
「ギャオ~」

 チョコも役に立つことができて嬉しそうだ。

 ピコンピコン!

 その時、家の中から大きなアラートが鳴った。リルが慌てて中に入る。

 魔力感知の魔法陣が赤く光っている。強い魔力を感知した。場所を調べると、王都からはまだ離れていたが、三日前よりだいぶ近づいている。

 二人で魔法陣を見つめていると、今度は魔法弾が家に届いた。

『五番隊が戻ってきた。やはり、隣国が王都を目指している』
「こちらも強い魔力を感知しました。ルッツ様、王宮軍は進軍しますか」
『ああ、今日のうちに』

「御武運を」
『ありがとう』

 通話はやけにあっさりしていた。ルッツの声も落ち着いていた。アミルの顔色が悪くなった。

「私は王宮軍のことをよく知りません。キースのことも。アミル様の目から見て、今回の進軍はどうでしょうか?」

 アミルが静かに目を閉じて言った。

「……非常に厳しいと思います」
「やはり、魔法士が少ないからですか?」

「それもありますが、我が国は本当に平和なのです。ですから、一般兵士たちは非常時の戦いを知らない。今回、どこまでキースと戦えるのか、私たちにも分からないというのが本音です」

 状況は予想よりやや悪い。しかし、リルの範囲内だ。

「アミル様。キース軍がいるここは王都からどのくらい離れていますか?」

「西の方向、馬で一日ですね。野営して、朝着くように向かうのだと思います」
「分かりました」

 リルが出発の準備に取りかかる。アミルが一人になるのは心配だが、山自体にも結界を張っているので攻撃を受けることはない。デメリットとしては、戦いが終わり結界を外すまでは王都の人間も入れないところか。この点は魔法弾で会話をした時に報告済だ。

「あの、リルさんがいらっしゃらない間、お家にいてもよろしいですか?」

 遠慮がちに訪ねてくるアミルにリルは快く了承した。

「もちろんです。自由に使ってください。料理も作っておきますね、二日くらいは持ちますから」
「有難う御座います」

 つまり、リルは二日以内に戻ってくるつもりである。長期間の戦いは体力を消耗するため余計なアクシデントを生みやすくなる。

 慣れた調理を手早く終え、箱や冷蔵庫に入れておく。ご飯を炊くのは難しいので、冷えても食べやすいよう、おにぎりを沢山作った。おにぎり作りはアミルも手伝った。かなりいびつだったが、とても美味しそうだったので旅のお供に二つもらった。

「おにぎり有難う御座います」
「不格好でお恥ずかしい限りです」
「いえ、とても美味しそうです」

 飽きてきたチョコがリルの周りを回り出す。リルがチョコのもふもふに抱き着いて言う。

「行こう」
「ギャオッ」

 庭でリルたちが飛び立つと、アミルが眉を下げて見上げた。

「いってきます。大丈夫ですから」
「いってらっしゃい。待っています」

 リルは笑顔でアミルに手を振った。チョコとともに勢いよく飛んでいく。あっという間にアミルが見えなくなった。
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