貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

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第二章

活躍

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 炎と風を混ぜ合わせ、キース軍の結界に打ち付けた。ヒビが入り、大きな音を立てて割れる。

「結界が解けた! 今のうちに攻め入るぞ!」

 ルッツの掛け声とともに、ついに弱腰だったオトラ軍が進軍する。キース軍も負けてはいない。キース軍の魔法士が空に魔力を集める。さすがはオトラ軍より数で上回っているだけあり、見たことのない量だ。

「あれを撃つつもりか」

 キース軍はここでオトラ軍に大打撃を与えたいらしい。たとえ、ルッツが停戦や話し合いを持ちかけたとしてもこれは変わらないだろう。

──私一人で受けきれるか……? いや、受け止められても、吸収できないからそれを撃ち返すしか……撃ち返すのは難しそうだ。

 そうなると、あれと同等のものを撃って空中で相殺するしかない。ただ、いくら魔法士の才能があると言われても、魔法士数十人の全力に勝てるかと言われたら分からない。

「あ」

 念のためポケットに入れておいた石の存在を思い出した。これは今まで吸収してきた魔力を溜め込んでいる。この戦いにもってこいのアイテムだ。

「一番隊、二番隊、行きます!」

 魔力を溜めている間にオトラ軍が分裂して両側から攻め始めた。良いタイミングで食い止めてくれている。リルは宙に魔法陣を描いた。

「ようし、石ちゃん。ついに出番だ。一緒に頑張ろう」

 魔法陣の上に石を置き、そこに解除の魔法を当てると、石がパリンと乾いた音を立てた。しかし、石自体は割れていない。

 瞬間、石から膨大な魔力が溢れ出す。魔力感知のできない人間でも分かりそうな、膨大で濃い魔力だ。初めての感覚にリルは高揚した。

「いいぞいいぞ! 私の魔力と混ぜて、渾身の一撃だ」
「ギャオ~~~!」
「ありがとう、チョコ!」

 チョコも魔法陣に向かって自身の魔力を注ぐ。さすがは毎日リルと修行をしていただけあって、並のウォルフでは出せない量の魔力だ。

「なんだあの魔力は……」
「とてつもない量だ、皆、防御態勢へ!」

 ルッツたちが軍を固まらせ、魔法士たちが結界を張る。臨機応変な対応にリルは安堵した。

「これなら思い切り行ってもいいな」

 ゴォォォ!!

 ついに、キース軍から特大魔大砲が放たれた。

 ほぼ同時にリルも放つ。

 二つの大きな光が空中でぶつかる。オトラ軍もキース軍も魔大砲から発せられる空気のうねりに翻弄され、地面にしがみつくのがやっとだ。

「全魔力を注げ!」

 キース軍が大砲に援軍を送る。しかし、それはリルも同じだ。残しておいた魔力を石にどんどん注いでいく。チョコも尻尾をぶんぶん振って応援する。

「我々もあの魔法士に注ぐのだ!」

 オトラ軍の魔法士がリルに魔力を送る。リルは笑顔で手を振った。

「もういっちょう行きますか!」

 リルの全身が光り出す。今まで全力を出したことがないので、いったいどれだけの威力が出るのか自分でもさっぱり分からない。リルが追加の魔大砲を撃った。

 リルの大砲が一つとなり、キース軍の魔大砲をぐんぐん押していく。戦況がひっくり返ったことを理解したキース軍の大将が慌てて退陣指示を出した。

「キース軍引き上げ!!」

 その合図を皮切りに、軍が一斉にその場から逃げ出した。キース軍の魔法士を失った魔大砲はみるみるうちに力を無くし、リルの大砲に飲まれた。

 しかし、相手がいなくなったところで、こちらの魔大砲が無くなるわけではない。魔大砲はキース軍がいた場所に落ち、地面にこれでもかという大穴を開けた。オトラ軍も距離が離れているといっても、その大音量は耳が千切れるかという程だった。

「うわぁ、ちょっとやり過ぎちゃったかも」

 ひとまずの危機は去った。それならもうここにいる理由はない。リルはルッツたちオトラ軍には目もくれず、一目散に逃げていった。

「ルッツ様! 謎の魔法士が!」
「うむ。国を挙げて礼を尽くしたかったのに残念だ」

 ルッツはリルがいなくなった空をずっと眺めていた。
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