36 / 89
第二章
活躍
しおりを挟む
炎と風を混ぜ合わせ、キース軍の結界に打ち付けた。ヒビが入り、大きな音を立てて割れる。
「結界が解けた! 今のうちに攻め入るぞ!」
ルッツの掛け声とともに、ついに弱腰だったオトラ軍が進軍する。キース軍も負けてはいない。キース軍の魔法士が空に魔力を集める。さすがはオトラ軍より数で上回っているだけあり、見たことのない量だ。
「あれを撃つつもりか」
キース軍はここでオトラ軍に大打撃を与えたいらしい。たとえ、ルッツが停戦や話し合いを持ちかけたとしてもこれは変わらないだろう。
──私一人で受けきれるか……? いや、受け止められても、吸収できないからそれを撃ち返すしか……撃ち返すのは難しそうだ。
そうなると、あれと同等のものを撃って空中で相殺するしかない。ただ、いくら魔法士の才能があると言われても、魔法士数十人の全力に勝てるかと言われたら分からない。
「あ」
念のためポケットに入れておいた石の存在を思い出した。これは今まで吸収してきた魔力を溜め込んでいる。この戦いにもってこいのアイテムだ。
「一番隊、二番隊、行きます!」
魔力を溜めている間にオトラ軍が分裂して両側から攻め始めた。良いタイミングで食い止めてくれている。リルは宙に魔法陣を描いた。
「ようし、石ちゃん。ついに出番だ。一緒に頑張ろう」
魔法陣の上に石を置き、そこに解除の魔法を当てると、石がパリンと乾いた音を立てた。しかし、石自体は割れていない。
瞬間、石から膨大な魔力が溢れ出す。魔力感知のできない人間でも分かりそうな、膨大で濃い魔力だ。初めての感覚にリルは高揚した。
「いいぞいいぞ! 私の魔力と混ぜて、渾身の一撃だ」
「ギャオ~~~!」
「ありがとう、チョコ!」
チョコも魔法陣に向かって自身の魔力を注ぐ。さすがは毎日リルと修行をしていただけあって、並のウォルフでは出せない量の魔力だ。
「なんだあの魔力は……」
「とてつもない量だ、皆、防御態勢へ!」
ルッツたちが軍を固まらせ、魔法士たちが結界を張る。臨機応変な対応にリルは安堵した。
「これなら思い切り行ってもいいな」
ゴォォォ!!
ついに、キース軍から特大魔大砲が放たれた。
ほぼ同時にリルも放つ。
二つの大きな光が空中でぶつかる。オトラ軍もキース軍も魔大砲から発せられる空気のうねりに翻弄され、地面にしがみつくのがやっとだ。
「全魔力を注げ!」
キース軍が大砲に援軍を送る。しかし、それはリルも同じだ。残しておいた魔力を石にどんどん注いでいく。チョコも尻尾をぶんぶん振って応援する。
「我々もあの魔法士に注ぐのだ!」
オトラ軍の魔法士がリルに魔力を送る。リルは笑顔で手を振った。
「もういっちょう行きますか!」
リルの全身が光り出す。今まで全力を出したことがないので、いったいどれだけの威力が出るのか自分でもさっぱり分からない。リルが追加の魔大砲を撃った。
リルの大砲が一つとなり、キース軍の魔大砲をぐんぐん押していく。戦況がひっくり返ったことを理解したキース軍の大将が慌てて退陣指示を出した。
「キース軍引き上げ!!」
その合図を皮切りに、軍が一斉にその場から逃げ出した。キース軍の魔法士を失った魔大砲はみるみるうちに力を無くし、リルの大砲に飲まれた。
しかし、相手がいなくなったところで、こちらの魔大砲が無くなるわけではない。魔大砲はキース軍がいた場所に落ち、地面にこれでもかという大穴を開けた。オトラ軍も距離が離れているといっても、その大音量は耳が千切れるかという程だった。
「うわぁ、ちょっとやり過ぎちゃったかも」
ひとまずの危機は去った。それならもうここにいる理由はない。リルはルッツたちオトラ軍には目もくれず、一目散に逃げていった。
「ルッツ様! 謎の魔法士が!」
「うむ。国を挙げて礼を尽くしたかったのに残念だ」
ルッツはリルがいなくなった空をずっと眺めていた。
「結界が解けた! 今のうちに攻め入るぞ!」
ルッツの掛け声とともに、ついに弱腰だったオトラ軍が進軍する。キース軍も負けてはいない。キース軍の魔法士が空に魔力を集める。さすがはオトラ軍より数で上回っているだけあり、見たことのない量だ。
「あれを撃つつもりか」
キース軍はここでオトラ軍に大打撃を与えたいらしい。たとえ、ルッツが停戦や話し合いを持ちかけたとしてもこれは変わらないだろう。
──私一人で受けきれるか……? いや、受け止められても、吸収できないからそれを撃ち返すしか……撃ち返すのは難しそうだ。
そうなると、あれと同等のものを撃って空中で相殺するしかない。ただ、いくら魔法士の才能があると言われても、魔法士数十人の全力に勝てるかと言われたら分からない。
「あ」
念のためポケットに入れておいた石の存在を思い出した。これは今まで吸収してきた魔力を溜め込んでいる。この戦いにもってこいのアイテムだ。
「一番隊、二番隊、行きます!」
魔力を溜めている間にオトラ軍が分裂して両側から攻め始めた。良いタイミングで食い止めてくれている。リルは宙に魔法陣を描いた。
「ようし、石ちゃん。ついに出番だ。一緒に頑張ろう」
魔法陣の上に石を置き、そこに解除の魔法を当てると、石がパリンと乾いた音を立てた。しかし、石自体は割れていない。
瞬間、石から膨大な魔力が溢れ出す。魔力感知のできない人間でも分かりそうな、膨大で濃い魔力だ。初めての感覚にリルは高揚した。
「いいぞいいぞ! 私の魔力と混ぜて、渾身の一撃だ」
「ギャオ~~~!」
「ありがとう、チョコ!」
チョコも魔法陣に向かって自身の魔力を注ぐ。さすがは毎日リルと修行をしていただけあって、並のウォルフでは出せない量の魔力だ。
「なんだあの魔力は……」
「とてつもない量だ、皆、防御態勢へ!」
ルッツたちが軍を固まらせ、魔法士たちが結界を張る。臨機応変な対応にリルは安堵した。
「これなら思い切り行ってもいいな」
ゴォォォ!!
ついに、キース軍から特大魔大砲が放たれた。
ほぼ同時にリルも放つ。
二つの大きな光が空中でぶつかる。オトラ軍もキース軍も魔大砲から発せられる空気のうねりに翻弄され、地面にしがみつくのがやっとだ。
「全魔力を注げ!」
キース軍が大砲に援軍を送る。しかし、それはリルも同じだ。残しておいた魔力を石にどんどん注いでいく。チョコも尻尾をぶんぶん振って応援する。
「我々もあの魔法士に注ぐのだ!」
オトラ軍の魔法士がリルに魔力を送る。リルは笑顔で手を振った。
「もういっちょう行きますか!」
リルの全身が光り出す。今まで全力を出したことがないので、いったいどれだけの威力が出るのか自分でもさっぱり分からない。リルが追加の魔大砲を撃った。
リルの大砲が一つとなり、キース軍の魔大砲をぐんぐん押していく。戦況がひっくり返ったことを理解したキース軍の大将が慌てて退陣指示を出した。
「キース軍引き上げ!!」
その合図を皮切りに、軍が一斉にその場から逃げ出した。キース軍の魔法士を失った魔大砲はみるみるうちに力を無くし、リルの大砲に飲まれた。
しかし、相手がいなくなったところで、こちらの魔大砲が無くなるわけではない。魔大砲はキース軍がいた場所に落ち、地面にこれでもかという大穴を開けた。オトラ軍も距離が離れているといっても、その大音量は耳が千切れるかという程だった。
「うわぁ、ちょっとやり過ぎちゃったかも」
ひとまずの危機は去った。それならもうここにいる理由はない。リルはルッツたちオトラ軍には目もくれず、一目散に逃げていった。
「ルッツ様! 謎の魔法士が!」
「うむ。国を挙げて礼を尽くしたかったのに残念だ」
ルッツはリルがいなくなった空をずっと眺めていた。
591
あなたにおすすめの小説
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
弁えすぎた令嬢
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。
彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。
彼女は思った。
(今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。
今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました
成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。
天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。
学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる