貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

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第一章

名付け

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「はぁ……」

 そのまま寝てしまったらしく、目を覚ましたら日が傾いていた。ウォルフはというと、リルに枕にされながら寝ていた。

「もふもふさせてくれてありがとう」

 すっかり懐いたウォルフを可愛く思う。できるならこのまま飼いたいところだ。しかし、リルも居候の身である。

「許してくれるかなぁ」
「グゥ」
「わ、起きた」

 ウォルフが起き上がる。四つん這いでもかなりの高さがある。後ろ足だけで立ったら相当な迫力だろう。

「ウォルフ、うちの子になる?」
「ワンッ」

 意味が分かっているのかいないのか、ウォルフが元気に鳴いた。

「あはは」

 大きな舌でぺろりと舐められる。いちおう手加減はしてくれているらしい。伏せをしたので、有難く背中に乗せてもらい家を目指した。

 数分で家が見え、外にいたサイが目を丸くさせて一人と一匹を見ていた。

「ただいま」
「なんだい、それは」
「ウォルフです」
「そういうことじゃない」

 元々味方ではない魔物を連れ帰ったため、やはり良い顔はされなかった。リルはできる限りの子どもらしい声でおねだりをした。

「友だちになったんです。一緒に住んでもいいですか?」
「ウォルフと友だちに?」
「はい。お願いします。世話は全部私がします」

 ウォルフを抱きしめながら懇願する。サイがその様子を見て、一つ頷いた。

「よし、全部リルがするんだよ。ただし、大きすぎるから住むのは庭で。分かったね」
「有難う御座います!」

 睡眠だけが楽しみの毎日に新たな楽しみが増えた。

「これからよろしく」





「うーん……」

 リルはウォルフを前に悩んでいた。

「ウォルフは狼型魔物の総称だから、名前がいるよね」

 子どもの頃実家に犬がいたが、付けたのは親だったし名前は太郎だった。

「この世界は横文字みたいだから、漢字じゃない方がいい。色は黒、光に当たるとこげ茶っぽいか」

 頭を撫でる手にすり寄ってくる。すっかり飼い犬だ。リルとしてはいい友人になりたいのだが、ウォルフはどう思っているだろうか。

「よし、チョコにしよう」
「チョコとは?」

 いつの間にかいたサイが疑問を投げかける。

「お菓子の名前です」
「リルがいた国にはあったのかい」
「はい」

 気に入ったのか、チョコが高く細い声を上げた。

 何やらむずむずした気持ちが心をくすぐる。これが母性というものか。

「しかし、リルは珍しい菓子を知っていたり、どことなく気品があるね。まるで貴族だ」
「いやいや、私なんてそんな。その辺で生まれた一般市民です」
「そうかね」

 焦ることを言われて必死に取り繕う。貴族だとバレたら、すぐにでも家を探し出されて戻されるだろう。あのような窮屈な場所に帰るのは絶対避けたい。しかも、今日から魔物と友人になった。さらに家に帰れなくなった。

 チョコはリルに出来た初めての友人だ。今世自体、リルにとって余生みたいなものなので、友人を作る気もなかった。サイがリルとチョコを見て言う。

「これで少しは外に出る気になったかい。いつも寝てばかりだからねぇ」
「いや、それとこれとは別で」

 リルの信念は変わらなかった。
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