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第184話 王領編14
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町を離れ、しばらくすると前方に森が見えてきました。
「何だか森を見るのも久しぶりだね」
「そうですね。王領に入ってからは森をあまり見かけませんでしたね」
シエラお姉ちゃんも窓から外を見てそう言っています。
「シャルル、今日向かう予定のナンバスは森で囲われた綺麗な都市ですよ」
「へぇ~、ナンバスっていう都市名なんだね」
「ルーシャ様、ナンバスに着きましたら都市長に挨拶をしておきたいのですが…」
『そうですね。宿にチェックインしたら行ってみましょう~』
「ルーシャ様、嬉しそうにされているのは今日はご自分の番だからですね」
『シエラ、鋭いですね』
「えっ、ルーシャ様は2日前にもシャルル様と一緒だったんじゃ…」
『メルモア、あれには大切な理由があったのですよ…』
「私にももう一度順番が回ってくると良いのですが…」
「……」
シャルルと一緒の部屋で眠れるっていったいどんな感じなのでしょうか…。
いくつか小さな森を抜けると今日の目的地であるナンバスが見えてきました。
エルスタイン領の都市の一つであるスローキのように森と一体化しているというわけではなく、森に囲まれているだけのようです。
また、バルゼ領都のように都市の四隅に高い塔が建っているという事もありませんでした。
「素敵な都市だね」
街に近づくにつれ、人がたくさんいるのが分かります。
都市の中に入ると、道は石が敷き詰められていて建物はすべて木造でした。
エリシアが言うには王都と同じように道が直角に交差していて整えられた都市になっているそうです。
「都市長の執務館はこの広場の奥に見える所なんですよ」
魔動力車が都市の中央にある大きな広場の横切るように進んでいきます。
「すごく大きくて綺麗な広場だね。エルスタイン領都の広場と同じくらいあるんじゃない?」
王都の外門と内門を繋ぐ道のように、この広場の中央にも水路が設けてあり、所々に大きな木々が立っています。
ただ、ナンバスはその水路の左右が芝生になっていて領民の憩い場になっているようです。
僕たちはその風景を横目にまず宿に向かいます。
今日の宿は広場を横切ったところにありました。
宿に着くとシエラお姉ちゃんがチェックインに行ってくれます。
エルスタイン領都までの帰りは基本的に二人部屋と大部屋という事になっているみたいです。
『さて、部屋に荷物を置いたら都市長のところへ挨拶に行きましょうか』
「「「「はい」」」」
「そうですね」
都市長の執務館に着くと、お母さんやエリシアの突然の訪問に驚いていました。
「よ、ようこそおいでくださいました。ルーシャ様。そしてエリシア様」
『チェスカさん、お久しぶりです。突然の訪問で申し訳ありません』
「チェスカさん、私がルーシャ様にお願いして連れてきていただいたのです」
「そうでしたか…」
「皆様、はじめまして私はこのナンバスの都市長を任せていただいていますチェスカと申します」
「とりあえず、どうぞお入りください」
チェスカお姉さんの案内で応接室に通されます。
チェスカお姉さんはヌエットお姉ちゃんと同じような背格好で、空の色に近い青色の髪が肩に触らないところで切りそろえてられています。
肌はキルシッカお姉ちゃんと同じ薄褐色で、左眼が朱色に見えるので火属性のカラードのようです。
お母さんとエリシアと僕はチェスカお姉さんと向き合って座っていて、お姉ちゃん達も近くの椅子に座っています。
「早速ですがルーシャ様、昔にお会いした時よりも若く見えるのですが…」
『そうですか、ありがとうございます』
「……」
あれ? さらっと流されましたね…。
「チェスカお姉さん、お母さんを知っているの?」
「はい、以前にお会いしたことがあるのよ」
「あなたがルーシャ様のご子息ですね」
「初めまして、シャルル・エルスタインです。よろしくお願いします」
「ルーシャ様のお子様が男の子とは聞いていましたが、こんなにかわいくて、格好良くて、たくましい男の子だったなんて…。こんな男の子なら私も欲しいです」
『チェスカさんは“誕生の儀”をしていないのですか?』
「それは…機会があればと思っていましたが、私は男性から好かれない要因が揃っていますから…」と、急に元気がなくなりました。
「要因って、もしかして肌の色のこと?」
「それもありますが、私は火属性ですから気が強いと思われてしまっていて…、それにカラードですから朱色の眼が男性からしたら怖いそうなのです」
僕はそう聞いてメルモアお姉ちゃんの方を見ると、メルモアお姉ちゃんも僕を神妙な面持ちで見ていました。
「そうなんだ…。チェスカお姉さんの性格は知らないけれど、それは良い所でもあるのにね」
ナモアイのエリシモアお姉さんもそうでしたが、火属性の方はパートナーを見つけるのが比較的難しいようです。
「そ、そうかしら。それに、私はルーシャ様と同じ年齢ですから、今さらこんな年上の女性に精子をくれる男性がいるわけが…(チラッ…)」
チェスカお姉さんの言葉に場がシーンとします。
「チェスカお姉さん、僕を見ても僕はまだ“男”になっていないから…」
『チェスカさ…ん…』
「そ、それで…、エリシア様はどうしてナンバスに?」
「これから私はルーシャ様のところで滞在させていただくのです」
「えっ、グレイス様が了承されたのですか!?」
「はい、むしろ応援してもらっていますよ」
「それはすごいですね。今までならそんなこと考えられませんよ」
「私も一人の女性として人生を考えようと思っているのです」
「そ…そうでした。“女”になられたのでしたね。おめでとうございます」
「では、せっかくですから皆さん、ぜひこちらで夕食を召し上がって行ってください」
僕たちはチェスカお姉さんのお言葉に甘え、迎賓館で夕食をいただくことにしました。
「今日は名物の“ちーす煮込み”をご用意しました」
二人で一つの大きめの容器が用意され、中には“ちーす”が温められている状態で出されてきました。
「すごい“ちーす”の量だね」
それから、各自の前に一人分の食材が用意されます。
「これはどうやって食べるの?」
「食材を細長い棒で突き刺して、“ちーす”の中に浸けて、からめてから食べるのですよ」と、隣に座っていたチェスカお姉さんが食べ方を見せてくれました。
僕はお母さんとチェスカお姉さんに挟まれて座っていて、お母さんと一緒に“ちーす”の容器を使うことになっています。
「シャルル様、熱いから気をつけてくださいね」
僕は“ちーす”の中に食材をトプッと浸け、クルッと食材を回してたっぷり“ちーす”をからめてから食べてみます。
フゥー、フゥー。
「はふぅ…ほふぅ…、あふぃ…」
「お、美味しいねぇ。“ちーす”が“ぴっさ”の時よりサラッとしている食感だね」
「シャルル様は違いが分かるのですか…」
「ちょっと違うと思っただけだよ」
「この“ちーす煮込み”には“しろふとう”を搾った物を発酵させた飲み物で“ちーす”を緩くしているのですよ」
「“しろふとう”?」
「シャルル、王都で飲んだ“ふとう”の白い物よ…」と、チェスカお姉さんの向こう側に座っているエリシアが教えてくれます。
「どうしてチェスカさんがシャルルの横に座っているのかしら…」と、つぶやきながら少し機嫌が悪そうです。
「“ふとう”にも種類があったんだね…」
チェスカお姉さんのところで夕食をごちそうになった後、僕たちはそのまま宿に戻ることにしました。
お母さんと部屋に戻ると早速お風呂の準備を始めていたので、僕も歯を磨いていつでもお風呂に入れるようにしておきます。
『シャルル、準備が出来たわよ~』
「は~い」
僕とお母さんは服を脱いで浴場に入り、かかり湯をしてから湯船に浸かります。
「あれ? お母さんの胸の感触が変わった感じがするね」
いつものようにお母さんの胸にもたれながら思ったことを言ってみます。
『えっ、どんなふうに?』
「柔らかいんだけど、とっても弾力があるような…」
『フフ…、この間シャルルが洗ってくれたおかげね』と、言う声も弾んでいます。
「お母さんが喜んでくれているなら僕も嬉しいよ」
『それにしてもこの間、グレイス様と一緒に洗ってもらった時は驚いたわ。グレイス様もあんなに変わるだなんて…』
「僕としてはお母さん達の疲れや弱っているところを丁寧に揉みほぐしただけだったんだけど…」
『まさかシャルル…、そんなことも分かるようになったのですか?』
「まぁ、なんとなくね」
まだ分からないことも多いので僕は細かくは言いませんでした。
その後、いつものように身体を洗ってもらい、僕がお母さんを洗う時にもう一度身体を調べてみても、疲れや弱っているところは見えませんでした。
二日ぐらいでは変わらないか…。
しばらく効果は続くのかな?
やっぱり分からないことが多いです。
「何だか森を見るのも久しぶりだね」
「そうですね。王領に入ってからは森をあまり見かけませんでしたね」
シエラお姉ちゃんも窓から外を見てそう言っています。
「シャルル、今日向かう予定のナンバスは森で囲われた綺麗な都市ですよ」
「へぇ~、ナンバスっていう都市名なんだね」
「ルーシャ様、ナンバスに着きましたら都市長に挨拶をしておきたいのですが…」
『そうですね。宿にチェックインしたら行ってみましょう~』
「ルーシャ様、嬉しそうにされているのは今日はご自分の番だからですね」
『シエラ、鋭いですね』
「えっ、ルーシャ様は2日前にもシャルル様と一緒だったんじゃ…」
『メルモア、あれには大切な理由があったのですよ…』
「私にももう一度順番が回ってくると良いのですが…」
「……」
シャルルと一緒の部屋で眠れるっていったいどんな感じなのでしょうか…。
いくつか小さな森を抜けると今日の目的地であるナンバスが見えてきました。
エルスタイン領の都市の一つであるスローキのように森と一体化しているというわけではなく、森に囲まれているだけのようです。
また、バルゼ領都のように都市の四隅に高い塔が建っているという事もありませんでした。
「素敵な都市だね」
街に近づくにつれ、人がたくさんいるのが分かります。
都市の中に入ると、道は石が敷き詰められていて建物はすべて木造でした。
エリシアが言うには王都と同じように道が直角に交差していて整えられた都市になっているそうです。
「都市長の執務館はこの広場の奥に見える所なんですよ」
魔動力車が都市の中央にある大きな広場の横切るように進んでいきます。
「すごく大きくて綺麗な広場だね。エルスタイン領都の広場と同じくらいあるんじゃない?」
王都の外門と内門を繋ぐ道のように、この広場の中央にも水路が設けてあり、所々に大きな木々が立っています。
ただ、ナンバスはその水路の左右が芝生になっていて領民の憩い場になっているようです。
僕たちはその風景を横目にまず宿に向かいます。
今日の宿は広場を横切ったところにありました。
宿に着くとシエラお姉ちゃんがチェックインに行ってくれます。
エルスタイン領都までの帰りは基本的に二人部屋と大部屋という事になっているみたいです。
『さて、部屋に荷物を置いたら都市長のところへ挨拶に行きましょうか』
「「「「はい」」」」
「そうですね」
都市長の執務館に着くと、お母さんやエリシアの突然の訪問に驚いていました。
「よ、ようこそおいでくださいました。ルーシャ様。そしてエリシア様」
『チェスカさん、お久しぶりです。突然の訪問で申し訳ありません』
「チェスカさん、私がルーシャ様にお願いして連れてきていただいたのです」
「そうでしたか…」
「皆様、はじめまして私はこのナンバスの都市長を任せていただいていますチェスカと申します」
「とりあえず、どうぞお入りください」
チェスカお姉さんの案内で応接室に通されます。
チェスカお姉さんはヌエットお姉ちゃんと同じような背格好で、空の色に近い青色の髪が肩に触らないところで切りそろえてられています。
肌はキルシッカお姉ちゃんと同じ薄褐色で、左眼が朱色に見えるので火属性のカラードのようです。
お母さんとエリシアと僕はチェスカお姉さんと向き合って座っていて、お姉ちゃん達も近くの椅子に座っています。
「早速ですがルーシャ様、昔にお会いした時よりも若く見えるのですが…」
『そうですか、ありがとうございます』
「……」
あれ? さらっと流されましたね…。
「チェスカお姉さん、お母さんを知っているの?」
「はい、以前にお会いしたことがあるのよ」
「あなたがルーシャ様のご子息ですね」
「初めまして、シャルル・エルスタインです。よろしくお願いします」
「ルーシャ様のお子様が男の子とは聞いていましたが、こんなにかわいくて、格好良くて、たくましい男の子だったなんて…。こんな男の子なら私も欲しいです」
『チェスカさんは“誕生の儀”をしていないのですか?』
「それは…機会があればと思っていましたが、私は男性から好かれない要因が揃っていますから…」と、急に元気がなくなりました。
「要因って、もしかして肌の色のこと?」
「それもありますが、私は火属性ですから気が強いと思われてしまっていて…、それにカラードですから朱色の眼が男性からしたら怖いそうなのです」
僕はそう聞いてメルモアお姉ちゃんの方を見ると、メルモアお姉ちゃんも僕を神妙な面持ちで見ていました。
「そうなんだ…。チェスカお姉さんの性格は知らないけれど、それは良い所でもあるのにね」
ナモアイのエリシモアお姉さんもそうでしたが、火属性の方はパートナーを見つけるのが比較的難しいようです。
「そ、そうかしら。それに、私はルーシャ様と同じ年齢ですから、今さらこんな年上の女性に精子をくれる男性がいるわけが…(チラッ…)」
チェスカお姉さんの言葉に場がシーンとします。
「チェスカお姉さん、僕を見ても僕はまだ“男”になっていないから…」
『チェスカさ…ん…』
「そ、それで…、エリシア様はどうしてナンバスに?」
「これから私はルーシャ様のところで滞在させていただくのです」
「えっ、グレイス様が了承されたのですか!?」
「はい、むしろ応援してもらっていますよ」
「それはすごいですね。今までならそんなこと考えられませんよ」
「私も一人の女性として人生を考えようと思っているのです」
「そ…そうでした。“女”になられたのでしたね。おめでとうございます」
「では、せっかくですから皆さん、ぜひこちらで夕食を召し上がって行ってください」
僕たちはチェスカお姉さんのお言葉に甘え、迎賓館で夕食をいただくことにしました。
「今日は名物の“ちーす煮込み”をご用意しました」
二人で一つの大きめの容器が用意され、中には“ちーす”が温められている状態で出されてきました。
「すごい“ちーす”の量だね」
それから、各自の前に一人分の食材が用意されます。
「これはどうやって食べるの?」
「食材を細長い棒で突き刺して、“ちーす”の中に浸けて、からめてから食べるのですよ」と、隣に座っていたチェスカお姉さんが食べ方を見せてくれました。
僕はお母さんとチェスカお姉さんに挟まれて座っていて、お母さんと一緒に“ちーす”の容器を使うことになっています。
「シャルル様、熱いから気をつけてくださいね」
僕は“ちーす”の中に食材をトプッと浸け、クルッと食材を回してたっぷり“ちーす”をからめてから食べてみます。
フゥー、フゥー。
「はふぅ…ほふぅ…、あふぃ…」
「お、美味しいねぇ。“ちーす”が“ぴっさ”の時よりサラッとしている食感だね」
「シャルル様は違いが分かるのですか…」
「ちょっと違うと思っただけだよ」
「この“ちーす煮込み”には“しろふとう”を搾った物を発酵させた飲み物で“ちーす”を緩くしているのですよ」
「“しろふとう”?」
「シャルル、王都で飲んだ“ふとう”の白い物よ…」と、チェスカお姉さんの向こう側に座っているエリシアが教えてくれます。
「どうしてチェスカさんがシャルルの横に座っているのかしら…」と、つぶやきながら少し機嫌が悪そうです。
「“ふとう”にも種類があったんだね…」
チェスカお姉さんのところで夕食をごちそうになった後、僕たちはそのまま宿に戻ることにしました。
お母さんと部屋に戻ると早速お風呂の準備を始めていたので、僕も歯を磨いていつでもお風呂に入れるようにしておきます。
『シャルル、準備が出来たわよ~』
「は~い」
僕とお母さんは服を脱いで浴場に入り、かかり湯をしてから湯船に浸かります。
「あれ? お母さんの胸の感触が変わった感じがするね」
いつものようにお母さんの胸にもたれながら思ったことを言ってみます。
『えっ、どんなふうに?』
「柔らかいんだけど、とっても弾力があるような…」
『フフ…、この間シャルルが洗ってくれたおかげね』と、言う声も弾んでいます。
「お母さんが喜んでくれているなら僕も嬉しいよ」
『それにしてもこの間、グレイス様と一緒に洗ってもらった時は驚いたわ。グレイス様もあんなに変わるだなんて…』
「僕としてはお母さん達の疲れや弱っているところを丁寧に揉みほぐしただけだったんだけど…」
『まさかシャルル…、そんなことも分かるようになったのですか?』
「まぁ、なんとなくね」
まだ分からないことも多いので僕は細かくは言いませんでした。
その後、いつものように身体を洗ってもらい、僕がお母さんを洗う時にもう一度身体を調べてみても、疲れや弱っているところは見えませんでした。
二日ぐらいでは変わらないか…。
しばらく効果は続くのかな?
やっぱり分からないことが多いです。
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