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まぐれ当たり狙い。三回で足りるのか?

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ロアンヌはレグールと、味もそっけもない洞窟で 風が収まるのを待っていた。しかし、ずっと黙ったままのレグールを心配して 悩みを聞こうと声を掛ける。

「あの……」
「何だい?」
振り向いたレグールの顔は何時もの様に優しい表情をしていたので、内心ほっとした。
(私の気のせいだったのかな?)
「結婚式の日取りのことです。ありがとうございました」
「ああ。問題ないよ。女性にとっては大事な問題だろう。それに、早くお嫁に来て欲しいのは私も一緒だ」
「えっ? あっ、はい」
私の小さな見栄に呆れているかもと思っていた。だけど、同じ気持ちだと言われてなんと返していいか分からなくて、間の抜けた答えになってしまった。

「今日のドレスも似合ってるよ」
「本当ですか!」
(やった!)
期待に応えられた。そう思ったのも束の間、レグールが私の帽子の紐を解くと被せ直してくれた。
(えっ?……あっ!)
会ったときからずっと変になっていたのだわ。
よく考えれば、こんな風の強い日に帽子をかぶる人なんていない。セットで仕立てたから、そうする物だと思い込んでしまったんだ。
帽子を被らずに髪を結っただけだったら、手櫛でささっと直せた。
(何事も時と場所を考えないと駄目なのに……)
いつになったら、完璧な姿で会う事が出来るんだろう。ため息が出る。
「気に入らないのかい?」
「……そう言う訳ではありません」
「嫌なら、帽子屋に注文するといいよ」
帽子が気に入らなくて拗ねていると勘違いしたみたいだ。私はそんな子供じゃないのに……。

「仕立て屋でも作ってくれるけど、イマイチだって言ってたからね。やっぱり、餅屋は餅屋だからね」
それは誰が言ったの?と、聞きたいが、聞けば嫌な答えが返ってくることは分かり切っている。
レグールがモテるのは、最初に見たときから承知している。それでも、他の女性の話をされるのは気分が悪い。
だから、つい嫌味も言いたくなる。
「レグール様は沢山のドレスをご覧になって来たんですものね」
「まぁ、ロアンヌより長く生きてるからね。パーティーにも何回も出席したし、ここ二十年でドレスも随分華やかになったよ」
それなのに、まったく通じてない。
パーティーでは美しく着飾った大人の女性たちがレグールを取り囲んでいる姿が、ありありと目に浮かぶ。私の知らないレグールを他女達が知っている。そう考えると胸がモヤモヤする。過去に嫉妬するなど馬鹿な事だ。
だけど……。

「さぞ、楽しかったでしょうね!」
「おや?焼き餅かい」
レグールが面白そうに聞いて来るが、全然面白くない。ムッとして睨むと困った顔で私を抱き寄せる。
誤魔化そうとしてる。
何時も、何時も、その手が通用すると思わないでと、唇を尖らせる。
「機嫌を直して、今はロアンヌに夢中だよ」
「それは、いつまで続くのでしょうか?」
機嫌を取ろうとしてきたので意地悪する。すると、レグールがウインクを返す。
「それは君次第でしょ」
「?」
どうして、私次第なの?もっとお洒落に気を遣って綺麗になれって事なの?

「ロアンヌが私を好きなら、ずっと私もロアンヌに夢中だよ」
「………」
口ではそう言うが、私に夢中だとは思えないし、そんな魅力が私にあるとは思えない。
もしあるなら、教えて欲しくい。
それとも、適当な言葉で乗り切ろうとしているの? 今までのスキルを総動員しても、こと男女の機微となると正解が分からない。眉間に皺を寄せながら、本気で言っているのかどうか怪しむ。嘘を言っているようには聞こえないけど……。
レグール様の謎かけみたいな答えに悩む。ヒントが欲しく視線を向けると優越感にひたった顔をしている。私を振り回して困らせて楽しんでいるだ。
だったら、直接聞くまで。
「どのようにしたら、レグール様を夢中に、させ続けられるのでしょうか?」
「それは君が考えること」
やっぱり、教えてくださらないか……。

でも、やり遂げたい。
そう決心すると自分の想いをのせてレグールを直視する。女なら誰だって40歳になっても50歳になっても、一生綺麗だって言われ続けたいものだ。
「それでしたら、レグール様が好きでいてもらう為に努力をいたします」
知っている。自分がまだ未熟だと言う事は。だからこそ、やりがいがある。私の子供っぽい宣言にクスリとレグール様が笑う。
今に見てなさい。
「じゃあ、これから頑張るロアンヌに、一つ私の好きな事を教えてあげよう」
「何でしょう?」
レグールが黙って私をヒョイと抱き上げると手近にあって岩に腰かけて、太ももに座らせられた。

ロアンヌはきょとんとしている。
(これって……膝抱っこ?)
小さい時、良くお父様が、こうしてあやしてくれた。
「子供みたいです。もうそんな年ではありません」
私は婚約者だ。歳の差を気にしてると言っておきながら、自分から子ども扱いするたんて矛盾している。
しかし、レグールが 謎めいた微笑みを浮かべて首を傾げる。何で?意味が分からず自分も首を傾げる。

「でも、こうすると目線が合うんだよ。私とロアンヌでは身長差があるからね。こうすると一番顔が良く見える」
「っ」
そう言われて初めて、否が応でも見つめ合う格好になる事に気づいて恥ずかしくなる。心臓のドキドキが止まらない。膝の上では、逃げ場がなくて目のやり場に困る。
「これでも、子供っぽい?」
「いっ、いいえ……」
そんな事はないと掠れた声で首を振って否定する。

視線が合わないように、あらぬ方を見る。それでも、 気になってチラリと
盗み見すると目が合う。 恥ずかしくて頬を染めて顔を背ける。でも、 やっぱり気になって横目で見ると、レグール様がじっと私を見つめている。 そんな事を何度も繰り返している。見つめられるのは、恥ずかしい。でも、見つめるのは楽しい。
膝から降りてしまえば、この恥ずかしさも終了してしまう。

だから、降りたくない。すると、レグールが顔を近付けて来る。口づけされるのかと身構えていると首筋に顔を埋めた。匂いを嗅ぐかのようにレグールの鼻先が首筋をなぞる。
ゴクリと唾を飲む。何をしたいのか分からない。でも、体が熱くなる。そのままジッとしていると、今度は唇が首筋をなぞる。ドキドキして、どんどん顔が赤くなる。
風邪を引いた時みたいに熱にうなされて視界がぼんやりして息が苦しい。

空気を求めてあえぐと、レグール様の唇が外れる。私は逃げるように体を捻って火照った頬を手で扇ぐ。
もう一度するには時間が必要だ。

** 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる**

ディーンは、アルフォード邸の門を物陰から見ながら、何故自分がここに居るんだと自問自答する。
レグール様が挨拶に来ると言う情報を耳にしたクリスが、その前に『数うちゃ当たる』作戦を実行しないと手遅れになると大騒ぎして、急きょ決行することになったが……。


そもそもこの計画の元になったのは、「女子はどんな時に、男らしい」と、キュンとするのか、そのシュチュエーションを書き出したものだ。
結果、守られたときと判明した。
それをクリスのレベルに合わせて色々考えたんだが……不安だ。
本当に成功するのか? 

だが、二人の関係が公になる前がチャンスだと言うクリスの意見も一理ある。そうなってからでは、クリスが逆転するのが難しくなる。
今更とは思うが、クリスの気持ちも考えると無下に出来ない。
クリスの考えた『数うちゃ当たる』作戦は、全部で3つある。
(3つもあるんだ。このうち一つでも成功すれば大逆転になる)

計画その1(難易度☆☆☆)
クリスがプレゼントを選ぶのを手伝って欲しいとロアンヌを街へ誘う。
徒歩で街へ行く途中、乱暴な運転の馬車が通りすぎる。
そこをクリスが身を挺してロアンヌを庇う。

[シナリオ] 作・クリス

馬車が通りすぎた後。

クリス   ・「大丈夫かいロアンヌ。 怪我は無かったかい?」
(ロアンヌに向かって優しく微笑む)

ロアンヌ・「ありがとうクリス。とっても男らしかったわ」
(手を体の前で組んで、うっとりとクリスをみあげる)

クリス   ・「やっと気付いたのかい」
(ロアンヌを引き寄せて熱い抱擁)
                 

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