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皇女アルミラの楽しい世界征服
女の戦い その1
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「恐れながら殿下、王国に女子無しとのお言葉、取り消していただきたいですわ」
アルフリーヌが強い口調で切り出した。
それに対しアルミラは、
「帝位継承権を持つ我を睨み付けるとは、公爵とは言え息女風情が…なんとも不遜な娘よな」
自身を睨み付けるアルフリーヌに対し、アルミラは彼女を歯牙にもかけぬと言う風で軽く一瞥する。
「さっきも言うたがな、そこの男はその辺にいる一山いくらの凡庸な男ではない。
一国を相手どって一人で戦える、一騎当千、いや万夫不当の強者よ。」
「それは、よくわかっておりますわ」
アルフリーヌはそう答えると、俺の方に少し視線をやり、頬を赤らめる。
「ふん、これほどの男を目の前にして、己のモノにしようとせぬ者は女子ではない。
よって王国には女子がおらんと言う我の言は間違いではないであろう?」
アルミラはなんとも男前な発言でアルフリーヌを鼻で笑う。
「それは、ハヤト様が我々貴族の息女と契る事をお望みにならなかったからでー。」
「なんじゃ、それでは其方はその男に想いを袖にされたという事か?」
「い、いえ、それは…。」
「なんじゃ?どうした?」
「お、想いをつ、告げるとかは…しておりませんわ…」
「なんと!己の意思も告げておらんとはっ!なんとおぼこい事かっ!」
はははは、玉座の間にアルミラの笑い声が響き、居並ぶ貴族達の間にも嘲笑が漏れる。
「…っ」
アルフリーヌは衆人に嘲られた恥ずかしさ、それとも悔しさからか、顔を真っ赤にして唇を噛みしめている。
俺がこの世界の人族に手を出さなかった事で、アルフリーヌがこれほど罵倒され嘲笑されるとは…。
『俺は今まで何をしてきたんだ…。王国のためと思って人族には手を出さなかったけど、それがこんな事になるなんて…』
自分が告白する事も、ましてや告白される事もなかったから、フられた人間がどんな気持ちになるかなんて、考えたこともなかった…。日本での恋愛経験値の低さがコッチの世界で俺の足を引っ張る…。
一しきり笑うと、アルミラは目じりに溜まった涙を拭い、
「つまり、その男が望まぬからと身を引いた、そう言うワケじゃな?」
「そう、なりますわ…」
唇を噛みしめ、アルフリーヌは声を振り絞る。
「では其方の想いとやらは、その程度のモノだったのであろうよ」
「そ、それは陛下と言えどあまりな言い様ですわっ!」
勝ち誇ったように笑うアルミラに、顔を上げたアルフリーヌが声を荒げるが、
「本に好いておったなら、相手の意など顧みる物ではなかろうて」
「そんな利己的な…っ」
アルミラのあまりの暴論に、アルフリーヌは絶句する。
「それとな、貴族じゃ平民じゃと血の貴賤を声高に叫んだ所で結局の所、臣民無くして国は成り立たぬ。
その国の礎たる臣民を支配し、我や其方が臣民の上に立つ言う事は、臣民に対して責を負うと言う事じゃ。」
「それはそうです、ワタクシも今はそう思います」
『今は』、それをアルフリーヌは少し強調した。
俺とのダンジョン攻略で公爵令嬢である事を鼻にかける事、人を身分で判断する事の愚かしさに気付いてくれたのだろう。俺は彼女の精神的な成長を感じ、嬉しく、そしてそんな彼女の師匠である事を誇らしく感じる。
「であれば、我ら貴き者は国のため、臣民のための伴侶を選ぶべきよ。
そのためなら自分の意思、それどころか相手の意思など関係ない、ただ利己的に相手を己の手中に絡めとるだけよ」
アルミラはふふ、と口元を緩めると、俺に向けて人差し指をクルクルと回す。
その仕草は子供がトンボを捕まえる時、もしくはクモが獲物に糸を巻き付けるようで、艶めかしくも残酷な雰囲気を醸し出す。
「それではハヤト様のお気持ちはーっ」
「それが甘いと言うのよ。相手の気持ちなどと言う、その様な詮無き些事を気にしてどうする?
我ら貴き者は自国のために必要であればそこには誰の意思も不要、
ただ必要なモノをなりふり構わず手に入れる、それだけの事であろう?」
「そんなっ!そこに相手を想う気持ちっ、愛情は必要ではないのですかっ?!」
「ははははっ青臭い青臭いっ!想いだの愛情だのと子供のような戯言をっ!」
「なっ?!こ、子供なのはお互い様ですわっ!」
アルフリーヌは必死に反論するが、アルミラの余裕の表情を全く崩せない。
「何度も言うがな、我ら貴族は国のためにその身を捧げるのよ。
それが国を動かし、臣民の上に立つ為政者の役割、それなくして臣民の上に立つ資格はない。
そしてこれも言うたが、愛や恋などは元より利己的なモノよ。
相手の意思など無視してでも己のモノにせねばアレ程の男よ、いづれ誰ぞのモノになるであろう。
その時、其方に待ち受けるは後悔だけぞ?」
「ぐ…っ」
遂にアルフリーヌは完全に言葉に窮して黙ってしまった。
正論だ。
確かに利己的ではあるが、アルミラの説く恋愛観は恐ろしいほどに正論だ。
俺がもし元の世界で、飛鳥が受験勉強やナニかで忙しそうだからと告白せずにいる間に、誰か別の男の告白を彼女が受け入れたら…悔やんでも悔やみきれないだろう。
時に相手の事を慮らない、エゴが大切な時もあるのだろう、勿論押し付けは間違いだが。
『この勝負、アルフリーヌの負けか…』
俺がそう思ったその時、
「…恐れながら殿下。
殿下はその様な、相手の意思など無視してでも手に入れたいと想われた殿方がおられるのですか?」
「ん?どういう意味か?」
アルミラの眉がピクリと動く。
つづく
更新が滞りすいません。
ドラクエが悪いんです、ドラクエが…。
アルフリーヌが強い口調で切り出した。
それに対しアルミラは、
「帝位継承権を持つ我を睨み付けるとは、公爵とは言え息女風情が…なんとも不遜な娘よな」
自身を睨み付けるアルフリーヌに対し、アルミラは彼女を歯牙にもかけぬと言う風で軽く一瞥する。
「さっきも言うたがな、そこの男はその辺にいる一山いくらの凡庸な男ではない。
一国を相手どって一人で戦える、一騎当千、いや万夫不当の強者よ。」
「それは、よくわかっておりますわ」
アルフリーヌはそう答えると、俺の方に少し視線をやり、頬を赤らめる。
「ふん、これほどの男を目の前にして、己のモノにしようとせぬ者は女子ではない。
よって王国には女子がおらんと言う我の言は間違いではないであろう?」
アルミラはなんとも男前な発言でアルフリーヌを鼻で笑う。
「それは、ハヤト様が我々貴族の息女と契る事をお望みにならなかったからでー。」
「なんじゃ、それでは其方はその男に想いを袖にされたという事か?」
「い、いえ、それは…。」
「なんじゃ?どうした?」
「お、想いをつ、告げるとかは…しておりませんわ…」
「なんと!己の意思も告げておらんとはっ!なんとおぼこい事かっ!」
はははは、玉座の間にアルミラの笑い声が響き、居並ぶ貴族達の間にも嘲笑が漏れる。
「…っ」
アルフリーヌは衆人に嘲られた恥ずかしさ、それとも悔しさからか、顔を真っ赤にして唇を噛みしめている。
俺がこの世界の人族に手を出さなかった事で、アルフリーヌがこれほど罵倒され嘲笑されるとは…。
『俺は今まで何をしてきたんだ…。王国のためと思って人族には手を出さなかったけど、それがこんな事になるなんて…』
自分が告白する事も、ましてや告白される事もなかったから、フられた人間がどんな気持ちになるかなんて、考えたこともなかった…。日本での恋愛経験値の低さがコッチの世界で俺の足を引っ張る…。
一しきり笑うと、アルミラは目じりに溜まった涙を拭い、
「つまり、その男が望まぬからと身を引いた、そう言うワケじゃな?」
「そう、なりますわ…」
唇を噛みしめ、アルフリーヌは声を振り絞る。
「では其方の想いとやらは、その程度のモノだったのであろうよ」
「そ、それは陛下と言えどあまりな言い様ですわっ!」
勝ち誇ったように笑うアルミラに、顔を上げたアルフリーヌが声を荒げるが、
「本に好いておったなら、相手の意など顧みる物ではなかろうて」
「そんな利己的な…っ」
アルミラのあまりの暴論に、アルフリーヌは絶句する。
「それとな、貴族じゃ平民じゃと血の貴賤を声高に叫んだ所で結局の所、臣民無くして国は成り立たぬ。
その国の礎たる臣民を支配し、我や其方が臣民の上に立つ言う事は、臣民に対して責を負うと言う事じゃ。」
「それはそうです、ワタクシも今はそう思います」
『今は』、それをアルフリーヌは少し強調した。
俺とのダンジョン攻略で公爵令嬢である事を鼻にかける事、人を身分で判断する事の愚かしさに気付いてくれたのだろう。俺は彼女の精神的な成長を感じ、嬉しく、そしてそんな彼女の師匠である事を誇らしく感じる。
「であれば、我ら貴き者は国のため、臣民のための伴侶を選ぶべきよ。
そのためなら自分の意思、それどころか相手の意思など関係ない、ただ利己的に相手を己の手中に絡めとるだけよ」
アルミラはふふ、と口元を緩めると、俺に向けて人差し指をクルクルと回す。
その仕草は子供がトンボを捕まえる時、もしくはクモが獲物に糸を巻き付けるようで、艶めかしくも残酷な雰囲気を醸し出す。
「それではハヤト様のお気持ちはーっ」
「それが甘いと言うのよ。相手の気持ちなどと言う、その様な詮無き些事を気にしてどうする?
我ら貴き者は自国のために必要であればそこには誰の意思も不要、
ただ必要なモノをなりふり構わず手に入れる、それだけの事であろう?」
「そんなっ!そこに相手を想う気持ちっ、愛情は必要ではないのですかっ?!」
「ははははっ青臭い青臭いっ!想いだの愛情だのと子供のような戯言をっ!」
「なっ?!こ、子供なのはお互い様ですわっ!」
アルフリーヌは必死に反論するが、アルミラの余裕の表情を全く崩せない。
「何度も言うがな、我ら貴族は国のためにその身を捧げるのよ。
それが国を動かし、臣民の上に立つ為政者の役割、それなくして臣民の上に立つ資格はない。
そしてこれも言うたが、愛や恋などは元より利己的なモノよ。
相手の意思など無視してでも己のモノにせねばアレ程の男よ、いづれ誰ぞのモノになるであろう。
その時、其方に待ち受けるは後悔だけぞ?」
「ぐ…っ」
遂にアルフリーヌは完全に言葉に窮して黙ってしまった。
正論だ。
確かに利己的ではあるが、アルミラの説く恋愛観は恐ろしいほどに正論だ。
俺がもし元の世界で、飛鳥が受験勉強やナニかで忙しそうだからと告白せずにいる間に、誰か別の男の告白を彼女が受け入れたら…悔やんでも悔やみきれないだろう。
時に相手の事を慮らない、エゴが大切な時もあるのだろう、勿論押し付けは間違いだが。
『この勝負、アルフリーヌの負けか…』
俺がそう思ったその時、
「…恐れながら殿下。
殿下はその様な、相手の意思など無視してでも手に入れたいと想われた殿方がおられるのですか?」
「ん?どういう意味か?」
アルミラの眉がピクリと動く。
つづく
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