イケメンエリート軍団の籠の中

便葉

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イケメンぎんなんはストーカー??

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 舞衣は久しぶりに最高にいい目覚めだった。
 いや、実際はまだ目覚めていない。
 目覚める前の、頭は何となく目覚めているけれど体はまだ目覚めていない、そんなまったりとした感覚の中にいる。
 そして、なんだかいい匂いがする。
 布団の感じもまるでホテルの柔らかい上掛けのような………

 ガバッ…

 舞衣は恐怖に似たドキドキ感で、完全に目を覚ました。
 あ~~ ここは凪さんの家だ。

 な、凪さん……

 凪は舞衣の隣ですやすやと眠っている。舞衣は上掛けの下の自分の衣服を確認した。

 だ、大丈夫、うさ子のままだ…

 舞衣はそっと凪を起こさないようにベッドから外へ出た。


「うさ子、起きた?…」


「あ、ごめんなさい。起こしました?
 そ、それより、また酔ってそのまま寝たみたいで、本当にごめんなさい」


 凪もベッドから起き上がった。


「ここ、お前の部屋だから。俺は自分の部屋に行くわ。
 多分、何でも揃ってるから、好きに使っていいよ」


 凪はまだ眠そうな顔をしてドアの方へ歩き出す。


「凪さん、私……
 めちゃくちゃ早くに会社に行くので、凪さんはゆっくりして来てくださいね」


 凪は右手を上げて部屋から出て行った。舞衣は高鳴る心臓を抑えながら、もう一度ベッドに腰かける。

 昨日といい今日といい、お酒にこんなに飲まれるなんて…
 緊張と疲れがきっとピークに達してるのかも…

 すると、何もしていないのにカーテンが開き出した。

 ああ、なんて素敵なの……

 ゲストルームの大きな窓から、ピンと張りつめた真っ青な空とはるか遠くに富士山が見える。まるで最高級のホテルのスィートルームに泊まっているようだ。
 ベッドルームの先には、豪華な浴槽のついたバスルームとレストルームが続いて完備されている。そして、舞衣の荷物はちゃんとこの部屋に運ばれていた。
 舞衣は凪の優しさに感謝しながら、会社に行くための身支度を整える。

 舞衣が部屋を出てリビングに行くと、そこにはミネラルウォーターのボトルを手に持った凪が座っていた。


「ねえ、スマホ貸して」


「スマホですか?」


「そう、あ、開いてからちょうだい」


 舞衣がスマホを凪に渡すと、凪は慣れた手つきで何か舞衣には分からない操作をしている。


「よし、これでOK。
 一つ新しいアカを作っといたから。
 メッセージ専用の簡単なアプリだけど、俺とうさ子しか開けないようにしてある。

 ネームはうさ子と、俺はぎんなん。

 じゃ、俺はもうひと眠りするからさ、いってらっしゃい」


 舞衣がポカンとしている間に、凪はあっという間にいなくなった。

 うさ子とぎんなん……
 銀杏??

 舞衣は凪のぎんなんという発想に笑いが込み上げる。

 ぎんなんって何……?

 舞衣は会社に着くまで、可笑しくてずっと笑った。


 舞衣はいつものように明るく元気に出社してやって来る皆を迎え入れた。
 いわゆる一流の人達は、きっと昨日の出来事は忘れているか忘れたふりをしてくれるに違いない。それに、昨夜の凪の言葉は、確実に舞衣を勇気づけていた。

 自分に自信を持って頑張ろう……


「マイマイ、おはよう」


 映司がいつもの軽いノリで舞衣の元へ来た。


「元気そうでよかった…
 マイマイがここを辞めるって言い出したらどうしようって、みんなで話してたんだ」


 舞衣は涙が出そうなくらいに嬉しかった。


「ありがとうございます。もう、大丈夫です。

 まだまだ慣れなくて迷惑をかけると思いますが、一生懸命頑張ります」


 舞衣がそう言うと、映司は感動したように舞衣の頬を触った。


「マイマイ、俺達は、いや俺は、マイマイの笑顔に本当に癒されてるんだ。
 だから、俺の前から消えないでほしい…」


 映司のその指は、また舞衣の頬をぷにゅぷにゅし始める。映司のその行為自体、舞衣自身は全然嫌ではない。だけど…と舞衣の中で嫌な予感がした。
 舞衣が作り笑顔で対応していると、入口から凪が入ってくるのが見えた。

 ヤ、ヤバい……

 舞衣は何かを思い出したふりをして立ち上がり、映司に笑顔を向けたまま、慌ててメイクルームへ駆け込んだ。

 凪さんの顔……
 めっちゃ怖いんですけど~~

 舞衣は用事を済ませたふりをしてまた自分の席へ戻ると、まだそこに映司は立っていた。舞衣を見つけると、右手の人差し指で舞衣を手招きする。


「あのさ、マイマイさ、今夜は空いてる?」


 舞衣は何も用事はないけれど、でも明らかに困った顔をした。


「上のフロアの他の会社の女の子と食事をすることになってるんだけど、マイマイも一緒に行かない?」


「え? 私が?」


 映司こそ本当に困った顔をしていた。


「色々な大人の事情があってさ、俺は気が乘らないんだけど無理やりセッティングされたんだ。その子に昨日のマイマイの話をしたら、マイマイとお友達になりたいって。

 どう、行かない?」


 舞衣は頭を抱えて小さくため息をついた。


「映司さんとその人と三人だったら、ちょっと嫌です…」


 映司は最高に整った顔を歪めて目を閉じる。


「そうだよな……
 OK。ごめんね、時間を取らせて」


 舞衣は本当に困った顔をしている映司を見て、お人好しな気持ちが前に出てしまう。


「どうしても困っているのなら、また言ってください。もう一度、考えますから…」


 映司はイケメン特有の白い歯を見せた可愛らしい笑顔で、舞衣の頭に優しく手を置いた。


「マイマイ、ありがとう。マイマイって本当にいい子だね…」




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