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3章

75話:迷宮攻略その二

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 さらに進んでいき、五百層の扉を開けて中に入る。

 「さて次は何がでるかな~」

 三人は闘技場の真ん中に俺と立花と九兵衛さんは外側にいくとキマイラのような魔物が現れた。

 キングキマイラ
レベル210
種族:獣族(王位種)
攻撃:55000
防御:52000
魔法攻撃:52000
魔法防御:50000
素早さ:50000
魔力:50000
固有スキル:アースブレス

 「さて行きますかね~ザルは避けつつでかい攻撃に備えてくれ」
 「オーケーみのるん」
 「私は足止めをします」
 「まずは飛ばさないよう下に落としてやるか~」

 実は大きく飛びキマイラを下に落とそうと襲い掛かる。

 「オラァァァ!」

 キマイラは避けようと臨機応変に飛んで実の攻撃を避ける。

 「逃がすかよ!賤ケ岳七本槍」

 槍をうまくコントロールし避けられないように誘導しキマイラの上に乗りこんだ。

 「このまま落としてやるよ」

 実はキマイラの上で異能を発動し、噛みついてキマイラにダメージを与え下に落とす。

 「九十九ちゃん!」
 「任せて、封魔の陣」

 九十九の陰陽術でキマイラを拘束する。

 「拘束は二十秒ぐらいです!」
 「充分だ、ザルいけるか?」
 「いけるよ、大破槍!」

 ザルカヴァの攻撃はキマイラの頭部に直撃、その後に実が続く。

 「鋼斬剣!」

 実の攻撃は頭部にさらに攻撃を与える。

 「後は足を狙え!」

 残りの拘束時間で足を狙い、拘束が外れた。

 「よし、動きも鈍くなってきてるし後もう少しだ」
 「後は魔法で仕留めます……」

 九十九は魔法を唱えた。九十九は魔法にも精通しておりオールマイティにこなす事が出来る。

 「ギガフレア!」

 第八位階魔法で大爆発を起こす魔法だ。キマイラは持ち堪えたが、攻撃をする隙など与えない。

 「これで終わりだ!」

 実が最後に切りつけ勝負は決した。

 「いや~余裕だね~」
 「だろうな。実際格下相手には拘束してから、攻撃を当てれば大抵ノーダメで勝てるからな」
 「あのキマイラは五万ぐらいのステータスに対して、ザルカヴァは平均二万超えぐらいだけど実は十万、九十九は十五万超え……力の差は歴然ね」

 この調子ならザルに守りをかけさえすれば、八百層ぐらいまでは三人に任せられるな。さてこの後どうするかだな。

 「三人共お疲れ~今日はここで一晩泊まろう」

 ボスの階層は、倒した後そこから離れない限りはボスの復活はしないので、休むには一番安全だ。

 「さて飯にしよう」

 俊樹さんが用意してくれた飯だが今日はかつ丼だ。

 「ふふっ、昨日のビーフシチューも見事だったけど今日のかつ丼も期待ね」

 立花も飯の時は毎回テンションを上がるがそれぐらいおいしいのだ。ザルカヴァは初めて味わう感動を毎日しているし、俊樹さんには敵わんな。

 「周平さん今日もおいしそうだね」

 ザルカヴァも大喜びだ。

 「ハハッ、おいしそうじゃなくておいしいはずさ」
 「この食べ物は知りませんが地球の食事ですね」

 九十九もこないだ食べた物が懐かしくて涙を流していたからな。もっともかつ丼は九十九や実がこの世界に来た後に食べられるようになったから、この二人は地球では食べてないだろう。たしか独国で修業した料理人が、東京の料理会で発表したのが始まりだったと言われているな。

 「そういえば周平は異能でこれらの味を完全再現できるのかしら?」
 「そうだな……ちゃんと見れば再現できなくはないが、完全再現は一回見ただけじゃ難しいかもな」

 仮に俊樹さんの料理を横目で見ていたとしても、わずかな火加減や細かな時間調整が必要とされる複雑な料理を完全再現するには、ちゃんと修業しないときついな。完全記憶パーフェクトメモリーは一度見たことや覚えたことは忘れないし、相手の技もコピーでき、複雑でないものは大抵一回見れば完全再現できるが、なんでも一回で完コピできるわけではない。中には完全なコピーが難しいことも存在する。

 例えばトルコ行進曲という曲を作曲者本人が弾くのを見たとして、俺が異能の力で完コピし、その後それを引いてどっちがうまいかといえばそれは前者だろう。ピアノはもって生まれた手の大きさだったり細かな力加減、指の動きの滑らかさで変化するので、俺が天才のピアノを見た後、それを一回で完全再現など不可能に近いし、むしろ1回見ただけではその人のように弾いたとしてもそれは完全再現にはほど遠いレベルになるというわけだ。

 「万能に見えてなんでもできるわけじゃないのね」
 「それはそうだろ、俺達は神ではないからな」
 「周平や立花ちゃんは異能もかなり与えられているから俺よりかなり万能じゃん~」

 九兵衛さんはそんなことを言うがこの人はそんなに異能を受け取らなかっただけだ。

 「俺は流浪人だし二十柱の要職に就く気はないからいいんだよ~別にS以下の異能なんざもらっても戦闘能力は変わらんし、便利な異能を行使して事務仕事をこなすのはランスロットや図書館ザ・マスターとかでいいし、今後は二人に任せればいいし」
 「俺や立花はそんなために異能を受け取った訳ではないけどな。そもそもそういうのはあの二人に任せておけば俺達の出る幕はないさ」
 
 異能自体はこの世界に散らばっているが、Sランクの異能やAAランクの一部はすべて王ルシファーの管理下にあるので、Sランクの異能が出回ることはない。一〇八あるSランクの異能は二十柱で独占しているのだ。

 「久しぶりに腕慣らしがしたいね~」
 「ははっ、ロードリオンとやってくれ俺達はまだ不完全だ」
 「リオンとは拳と拳でぶつかり合えないからね~ジェラードやランスロット、戦神あたりがいればね~早く完全体になってくれよ」
 「ははっ、努力するよ」

 単純な物理攻撃でいえば二十柱でもトップクラスである九兵衛さんと殴り合いなんかしたくはないがな。


 「早く十三人揃って無双が見たい!魔大陸南部のでの大規模戦闘は忘れられないよ」

 十三人で十万人の大軍を相手に殲滅し、俺達の実力を周りに知らしめた殲滅戦……俺達をアピールするために派手にやったあの戦だ。

 「懐かしいですね実君~椿ちゃんが血のシャワーを量産してましたね……」

 九十九が嫌なことを思い出したのか顔が引きつっている。

 「あら懐かしいわね、周平が大量虐殺して力を誇示していたわね」
 「立花それは言わんでくれ」

 あれの記憶はまだ他人事なんだ。

 「あら、あの時の周平も素敵だったわ、あの姿みてより心奪われたわ」

 立花は俺の横に来て腕を組み顔を近づける。

 「フフッ、赤いわ」
 「それを言わんでくれ、恥ずかしい……」
 「恥ずかしがらなくてもいいわ、昔は毎日こうだったでしょ」
 「そうなんだけどさ……」

 まったくこれにはまだ慣れないな。二人きりの時はなんとか大丈夫なんだが、みんなが見ているとどうも照れてしまう。続いて立花は耳元で囁く。

 「早くしましょうね……」

 俺は顔をさらに赤くするとみんなに笑われてしまった。

 立花さん耳元でそれは反則っす。

 「私もこの会話混ざりたかったです総長……」

 ザルカヴァは寂しそうな表情で九兵衛さんに言い九兵衛さんはそんなザルカヴァの頭を撫でる。

 「ハハッ、ザルも背中を預ける仲間を作って冒険をしてみるといいかもね~」
 「そうですね……私もいつか……」

 ザルはまたも寂しそうな顔をする。いずれは故郷にもう一度という思いや、奴隷として扱われている同族のことを考えると悲しくなってくるのだろう。

 それもなんとかするからもう少し待っていてほしい……そしてお前も過去を払拭するんだ。

 辛い時や苦しい時、壁にぶつかってもがいている時こそ頭を働かせなくてはいけない……仮にそれが乗り越えられなかったとしても、それに対し努力をすればそれは必ず糧になる。だがそういう時大半は努力を辞め、感情のままに堕落していく。

 考えることを辞めればそれはただの愚者だ……辛いことから目を背き逃げ続け克服することを完全に忘れた時、人は何かを失いそれを取り戻すことはなかなかに難しくなるのだから。
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