【R18】オトメゲームの〈バグ〉令嬢は〈攻略対象外〉貴公子に花街で溺愛される

幽八花あかね・朧星ここね

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〈悪役王子〉と〈ヒロイン〉花街編

【11】二日目――初めてのお客様 −3− ★

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「アリシア」

 耳元で聞こえた最愛の声に、アリシアは羞恥に震えた声で「はい」と応えた。

「……可愛いよ」
「~っ!」

 溶けそうなほどに頬が熱くなり、心臓がドッ、ドッと鳴る。彼の手で冷ましてもらわないと……なんて破綻した言い訳を胸にアリシアは、フィリップの手首を掴み、押し当てた。

「わ、私の心臓の音……わかります、か」
「うん。わかる。しっかりと伝わってくる」

 やけに感慨深そうに言って、なぜかフィリップは目を瞑った。「ちゃんと生きてる。大丈夫」と、自らに言い聞かせるように呟いている。

「フィル様……?」

 あられもない姿を見られないでいい時間を喜ぶ気持ちと、せっかくすべてを晒しているのに見てくれないの? と見られたがる気持ちが、アリシアの中で綯い交ぜになる。
 アリシアは、彼の顔をじっと見つめた。その目元には薄っすらと隈がある。また眠れていないのかもしれない。卒業パーティーの日より痩せたような気もする。

(愚かにも、私が、嵌められてしまったがために――この状況も、呪いのシナリオのせいなのかもしれないけれど――またも彼を傷つけてしまった。未来の王という立場にいらっしゃる、重圧を背負われたお心を。王を支える妃になるべくして生きてきた私が、また追い詰めたのね)

「お洒落をした姿も可愛いけれど。何も纏っていなくても、何にも飾られていなくても、綺麗だ」
 彼は目を開け、アリシアの髪を一束、掬い上げた。
「この薄紅の髪も、雪の肌も」

 髪に何度かキスを落としつつ、彼の唇は、流れるように彼女の胸へと進んでいく。

「ぅんん……っ」

 やわらかな膨らみを唇でなぞったかと思えば、肌をちゅっと吸い上げて。口づけの痕を胸に咲かせると、彼は満足げに微笑んだ。

「きみは、僕のものだ。今宵も、この先の夜も。……それで? あいつにはどこを触られて、あんな可愛らしい声を出してしまったの? うん?」
「てっ、手首、です! 右の!」
「手……? 胸ではなく?」
 きょとんと子どもみたいに首を傾げる。
「そう! 手です」
 アリシアは、いっそ恥ずかしさを発散するようにと大声で言った。
「なるほど。そうか」

 アリシアの右手をとって、フィリップは、その手首を爪の先ですっとなぞる。触れるか触れないかの、あの絶妙な加減で。

「……っ」

 なんとか声は抑えたけれど、身体は素直にぴくんと跳ねてしまって。さらに恥ずかしくなった。

「こんなところで気持ちよくなっちゃうの?」
「そ、その触れ方が、だめなのです……。っ、ひゃあん!」

 つつつ、とまた手首の内側をなぞられ、甘い声を上げてしまう。フィリップは面白がるように何度もそこに触れた。
 青楼の香や媚薬酒のせいで、いつもより肌が敏感になっているのだろう。アリシアは何度も声を上げたり跳ねたりした。

「あいつに見つけられてしまったと思うと癪だが、きみを愛でる方法を新たに得たと思えば、悪くない。解呪の口づけは、どこだったっけ?」
「ひゃっ、あ、それは、左の薬指、です。……ひあっ」
「……きみの弱いところは、シシリーにまでバレてしまっているのだろうか」

 ほんの一瞬、フィリップは思い詰めたような顔をして、やっと手首への責めをやめてくれた。それからアリシアの左手薬指の先を唇で食み、舌で舐めたり、甘噛みしたりと愛でていく。彼女の指を咥えたまま、「これで上書き」と彼は笑った。

「ふぃる、フィルさま……」
「もっと、もっと見せてね、イリス」

 フィリップはアリシアの左手薬指を解放すると、自らのナイトローブの帯をするりと解き、はらりと脱いだ。下穿きは穿いたまま、アリシアをぎゅっと抱きしめる。彼の逞しい胸板に、彼女の双丘が擦れた。

「ふぁ……」
「ん、可愛い。いっぱい可愛い」

 まるで花の模様を探していた昨日のユースタスのように、フィリップはアリシアの上半身をじっくりと見て、撫ではじめた。左腕、右腕、背中、お腹……と。ときたま弱い部分をくすぐって喘がせ、彼女の無事を確かめていく。
 さらには「パパになるのは僕だけだよ」と、ふざけているのか真面目に言っているのかわからないことも言い、アリシアの下腹部を吸って鬱血痕キスマークをつけた。

「そんなとこ……」
「恥ずかしい? 嫌?」
「……嫌じゃない、です」
「じゃあ、この痣も可愛がってあげてね。ふふ、子宮の上につけると、淫紋みたいで可愛い――あっ、そうだ」

 フィリップは何かを思い出したように顔を上げ、にっこりと笑った。

「きみに、かけないといけない魔法があったんだった」
「まさか、本当の淫紋を、お付けになるの?」
「いや、それはしない。大丈夫。ちょっと耳を貸してね」
「? はい」

 と彼女は垂れていた髪をかけ、耳を露出させる。彼は右耳のそばで「愛してる。アリシア」と囁くと、いきなり彼女の耳朶を咥えた。

「はぁんっ、ん!?」
「明日からも、僕の〝声〟が聞こえるように。きみの耳に魔法をかける。他の男の姿をしていても、互いの〝耳〟で僕だとわかるように。だから、きみも」

 フィリップはアリシアの耳輪を舐め、慣れた様子で魔法紋を肌に刻み込みながら、彼女の左手に触れた。彼の右耳に触れるようにと促し、「僕の形を、色を覚えて」と囁く。

「はい。……殿下」

 アリシアは小さく小さく呟き、自らの耳を撫でる快楽を追いかけるように、彼の耳に触れていった。アリシアのとは違う、他の誰とも違う、フィリップの耳を。全力で覚え込もうとする。
 右耳への魔法紋の定着と透明化が終わると、彼は左耳にも同じことを始めて。アリシアも、彼の左耳を覚えようと触れ、触れて、触れ続けて。

「僕の名前も、呼んでくれ。アリシア。……頼む」
「――フィリップ様」

 両の耳に魔法をかけ終えたフィリップの名前を呼ぶ頃には、アリシアの身体はすっかりできあがっていた。
 肌は心地よく火照り、とろりとこぼれた蜜は内腿とシーツを濡らし、秘処は彼を求めてきゅんきゅんと動いている。

「では、続きの検査をしようか。きみの秘めやかなところも、見せて」
「はい……」

 フィリップはアリシアを押し倒し、脚を開く。アリシアは下の方を見る勇気がなく、顔を横に向けて目を逸らした。彼女の視界の中では、薄紅の髪が白のシーツに乱れて広がっている。

「ここは、誰かに触られた? シシリーや姐さん娼妓には?」
「誰にも、まだ、触れられておりません。支度も、自らの手と植物で触れ、しております」
「……そう」

 彼の指先が、ふと、敏感な花芽をちょんっとつつく。

「やぁんっ、にゃ!」

 アリシアの腰はビクッと跳ね、じわりとまた蜜が滲み出た。フィリップはそこに触れ続け、アリシアの身体を震わせる。

「やっ、やあぁん、あっ」
「大丈夫? 変になってない? 健やかに感じられている?」
「か、感じられ、れております……んゃっ」
「じゃあ、そのまま気持ちよくなってて」
「にゃあっ、あっ、あぁ」

 くりくりと花芽を捏ねられ、蜜をこぼして、アリシアのそこはじわじわと熱を帯びる。高まっていく。

(今までっ、フィリップ様は、布越しにしか、されていなかったから……こんな、直接……触っちゃ、恥ずかしくて、強すぎて――)

 目の前がチカチカと明滅して、あ、この感覚だ。とアリシアはぼんやり思う。うわ言のように彼の〝今宵の名〟を呼び、身をよじり、シーツを掴んだ。

「ふぃるさまっ、フィル様、フィル、しゃま……。ぁあ、フィル、さま」
「うん。いいよ。いつでもイって」
「ふゃあ、あんっ、あ。ふぃ、フィルさま、あぁ……」

 くちくちと粘ついた音を立て、彼はアリシアの淫芽を可愛がり続ける。ぬちゃ、くちゅり、と。ときどき大きな水音がした。

(もうっ、だめぇ)

「やぁあっ! あっ、あぁ、ああ――……っ!」

 身体が大きく痙攣し、果ててしまう。フィリップは「上手にイけたね。偉い偉い」と褒めるように言って、アリシアの蜜窟の中をくるりと撫でた。

(えっ? あら? 中……?)

 勘違いかしらとも思ったが、どうやらそうではない。快楽の芽に触れていたはずの彼の指は、いつの間にかアリシアの膣内へと侵入している。
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