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〈悪役王子〉と〈ヒロイン〉花街編
【12】二日目――初めてのお客様 −4− ★
しおりを挟む「ふぃ、フィルさま……? い、いつ? いつ、指をっ?」
「きみがふにゃふにゃしている間に」
「ふにゃふにゃ……」
アリシアが花芽への愛撫に感じてふやけていた隙に、ということらしい。
「痛くない? 大丈夫?」
「それは、大丈夫……です」
(今まで、頑なに、触れてくださらなかったのに。こんなにも容易く、私にも気づかれないうちに……触れてしまえたの? 貴方様は)
これまで下半身から目を逸らし続けていたアリシアは、そこを見ることへの抵抗感を未だに抱えながらも、どうなっているのかを知りたい気持ちを抑えきれず、ちらりと見やった。
くちゅくちゅと卑猥な水音を響かせながら、アリシアの秘処はフィリップの指を締め付けている。まる見えだったわけではないけれど、紛れもなく、彼の指が入っていた。
「まだ、具合を見ているだけなんだけど……どうかな」
「ど、どうかな、とは」
「もう慣れた? 弱そうなところも、なでなでして大丈夫?」
「……どうぞ」
「ん。ありがとう。初めてだから、こっちも触りながら、してあげるね」
「――ぁんっ!」
フィリップは片方の手の指を中に入れつつ、もう片方の手の指ではまた花芽をいじりはじめた。中の指は芽の裏側を探るように、蜜窟の上の方を撫でている。
「もしも潮吹きしたくなったら、いつでもしていいんだよ。濡らされる心積もりはしてるから、安心して。いっぱい気持ちよくなろうね」
「やぁんっ、にゃあ、あぁ……!」
じんじんと疼いていた花芽は、捏ねられ続けるとさらに感度を増していくようで。アリシアはその感覚の強さに驚いて、でも喘ぎ声以外に何かを言うこともうまくできず、ただただ気持ちよくなっていくことしかできなかった。
「はぁ、ああぁ、にゃあ、にゃ、あぁ」
なぜだろう、かつて愛でられた時の記憶が脳裏をよぎり、その時の快楽を思い出しては今の快楽を成長させていってしまう。
(耳を、されただけで。はしたなく、漏らしてしまったことも、あったのに……。こんなにも、ぐちゅぐちゅ、されたらぁ)
「ふぁ、ふぃ……らぁっ、ああぁぁ、ふゃぁ」
フィル様と呼ぶことさえできず、アリシアはふにゃふにゃにされていく。解放感を求めるように下腹部から先がずくずくとして、はやく楽になってしまえと心の中の悪魔が囁く。
(うぅ、出したい……。お漏らししたい、潮吹きたい、でも……っ)
「まだ恥ずかしい? ふふふ、可愛いね。でも、このまま我慢してると苦しいよ? ん?」
「にゃあ、ふぃりゅ、ふぃ、ふぁああん……っ」
「じゃあ、ちょっと止めるから。頷くか、やだやだするか、それで答えてみてくれる?」
「ひゃあん……!」
アリシアをぐちゃぐちゃにしていた手が止まり、どこまで行くのかと怖くなっていていた快感の上昇もそこで止まる。ゆるやかに、ゆるやかに、高まっていたものが下がっていく。
アリシアはフィリップをそっと見上げた。彼女の碧色の瞳は涙で潤み、その水面はふるふると揺らいでいる。
今、フィリップが何を言っていたのかは、ほとんど頭に入ってきていない。幼き頃に毒殺されかけた後のように、もう気持ちいいことしかわからない。
「そうだな……。きみは、優しいのがいい?」
「ん、うんっ」
アリシアは精いっぱいにうんうんと頷く。優しいのは好きだ。
「イくのは嫌?」
ちょっと迷った後、「んーん」と首を横に振る。それ自体は嫌ではない。
「潮吹きするのは? 気持ちいい? したい?」
さっきよりも長い間を置いてから、今度は無言でこくりと頷いた。
恥ずかしくてたまらないけれど、アリシアにとってそれは〝気持ちいいこと〟だ。我を忘れられるなら、したい。何度も。
「でも、やっぱり恥ずかしいのか」
「ん」
「わかった。じゃあ、ゆっくりと、自然に果てられるようにしよう。優しくする」
「んぅ……」
フィリップはアリシアの額にキスをして、再び花芽と蜜壺を責めはじめた。くちゅ、くちゅ、と。ゆったりしたリズムで水音が鳴り、アリシアの快感をじわじわとまた高めていく。
「好きだよ。愛してる」
「ふにゃ……やっ、わぁ……にゃ、っも」
「きみも好きだって? うん、ありがとう」
「ふ、ふあっ、あぁ」
「こんなにとろとろになっている可愛い姿、やっぱり他の男になんて見せられないよな……。容貌が変わっても僕は僕だから、明日からも仲良くいちゃいちゃしようね」
「にゃあ……っ」
「お嫁さんにするまでは、ずっと、こうやって可愛がってあげる――」
彼に愛でられはじめて、どれほどの時間が経ったのだろう。丁寧に責められた秘処はシーツの上に蜜をあふれかえらせていて、今にも頂に達してしまいそうだった。
「ふぅん、ふにゃ、にゃあん」
「そろそろイきたい? イっちゃおうか」
「んにゃ、あぁ」
「いいよ」
くい、くい、と蜜を掻き出すように。やわらかな内壁を押すように。フィリップはアリシアの弱いところを的確に責めていく。
ほわほわとした頭の片隅で、あ、これまでは手加減されていたのだ、とアリシアは気づいた。じっくりと感じられるよう、彼は触れる場所や強さを考えながら愛してくれていた。
ただひたすらに絶頂させようとしていたのではなく、彼女の望む形で気持ちよくなれるようにしてくれていた。
(ああ、好き……っ! フィリップ様、大好き――!)
「やぁんっ、あっ、あ、あぁ、ふあぁぁぁ――っ!」
愛おしい気持ちと一緒に、溜められていた快感が爆発する。ぷしゅっ、ぷしゃあぁっ、と潮も吹き出して、彼の手を濡らしてしまった。
「やぁ、ぁ、あぁ……」
「ああ、可愛くイけたね……っ。とろとろで、ふにゃふにゃで、最高に可愛い……! 愛してる」
恍惚とした顔でそう言って、フィリップはアリシアを抱きしめた。首筋にいくつかのキスを落とした後、「今度は一緒に」と彼女の体勢を変えさせ、背後に回ってまた抱きしめる。
「にゃ……?」
「さっきよりは強くないから、大丈夫だよ。ゆっくり、楽しく、気持ちよくなろう」
アリシアの太腿の間には、気づけば――今度は指ではないけれど、気づかぬうちに、また――彼の一部が触れていた。
熱く硬くなったそれの存在を意識した途端、アリシアの蜜壺はきゅうっと締まる。
「ふふ、ひくひくしてて、可愛い……。よく伝わってくるよ。挿入はしないけど、動かせてね。結婚初夜の練習だとでも思って」
「――あぁんっ!」
フィリップの腰が動きはじめ、アリシアの蜜口と内腿にそれが擦れる。今宵だけでもう何百回も聞いたのではないかしらと思う水音が、ぐちゅり、ずちゅ、とふたりの間で生み出される。
(これ……っ、これ、惚れ薬の時にも――! でも、生で、下着を脱いでするのは、初めて……っ)
最後まではしない――とは、こういうことか。と。アリシアはようやく納得した。
子づくりらしく膣内に吐精する行為はしないまま、彼は、こうしてアリシアを愛するつもりなのだ。
(こんなふうに、されるのが、明日も……!)
一見、それは幸せなことのように感じられた。
今宵のアリシアは、そこに幸福を期待した。
「もう、出すよ」
「はぅん!」
ドンッと腰を大きく打ちつけ、手際よく体勢を整え、フィリップはアリシアのお腹の上へ吐精した。どぴゅ、どぴゅっと散る白濁。
しばらく呼吸を落ち着けるようにじっとした後、彼は己の精液を指で掬った。アリシアの下腹部、キスマークの上にそれを塗りつけるかのように触れたかと思えば、今度は淫芽に触れてくる。
「りゃあっ!」
「アリシアは、好きだろう。こういうの」
その行為と耳元への囁きは、どうしたって首を横には振れないほどに図星で。頷くより先に答えるように、じゅわっと漏れた潮が彼の竿を濡らした。
「きみを独り占めしたい僕だから。きみとは隣で歩みたいから。僕の精子も、きみにしかあげない……」
ぬちゃぬちゃと音を立てて、フィリップは彼女の淫芽に精液を塗り込んで。ぷっくりとした芽を指でしごきながら、またアリシアに腰を打ちつけはじめた。
(あぁ、フィリップ様……!)
彼女は彼を中に受け容れることは一度もないまま、ただ下腹部や太腿や花芽を白濁で何度もどろどろにされて。何度も潮を吹いたり果てたりした。
そうして――空が白みはじめる頃まで、お忍びでやってきた王太子様に愛され、娼妓イリスの水揚げの夜は終わった。
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