守るために婚約者を手放した王太子は、彼女がもう戻らないことを後から知る



王太子である彼と、公爵令嬢である彼女は、誰もが認める婚約者同士。
人前では距離を保ちながらも、二人は確かに想い合っていた。

――あの日、“聖女”が現れるまでは。

国と民に求められる存在である聖女。
彼女を拒めば、王太子としての立場は揺らぐ。
そして何より、大切な婚約者を巻き込んでしまう。

だから彼は選んだ。
彼女を守るために、距離を取ることを。

冷たく振る舞い、関係を曖昧にし、あえて突き放す。
それが最善だと信じていた。

だが彼女は、すべてを理解していた。

だからこそ何も言わず、
ただ静かに――婚約解消を申し出た。

「それが殿下のご判断であれば、従います」

彼女は最後まで優しく微笑んでいた。

そして、すべてが終わった後で彼は気づく。
守られていたのは、自分の方だったのだと。

もう遅い。
彼女は今も穏やかに微笑んでいる。

――その微笑みが、自分に向けられることは、二度とない。





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