60 / 140
終章
3
しおりを挟む
2階の子供達の部屋へ向かうスタッフ。
先に長男の光河から話を聞くことにした。
坊主頭で少しつり上がった目つき。
薄紫色のジャージを着てインタビューに答える。
――お義母さんの第一印象は?
「まぁ、見た目は良さそうだったな。最初は多少上手くやってたと思う。みんなで遊園地行ったり、バーベキューしたりやってた。でも、だんだんうざくなってきた。見えないとこであおねえいじめるし、俺たちのお金を"お母さん銀行"として通帳とって管理しだしたんだ。そしたら……」
いじめられているのは長女の葵依のことだろう。
お金管理しだしてから何が起きたんだ?
スタッフ達は今までのインタビューの内容を思い出して、なんとなく見当がついた。
「もしかして、お金取られた、ですか?」
光河はうんと静かに頷いた。
「日に日に少額なくなっていくんだ。あおねえもおんなじでさ。あいつにきいてもしらばっくれたり、ごまかしたりして逃げてばっか」
子供達のお金がぶんどられていることが全国ネットで広まれば、これは炎上すると同時に話題になりそうだ。
昔っから"お母さん銀行"として子供達のお年玉やお祝いのお金を親が預かって、いざ使おうかというときに、勝手に親の贅沢品で使われていたというのはある。
子供に同意を得た状態で進学費用の一部で使うのならともかく。
「見てください」と光河は、銀行のアプリの通知をスクショしたのをスタッフ達に見せる。
数百円から万単位でちょくちょく通知が来ている。しかも平日の午前11時とか午後の13時とか、日中がほとんどだ。
光河は「基本この時間帯俺は家で寝ている。あおんねえは学校行ってるし。お父さんやおじいちゃんおばあちゃんは仕事行ってるから、あの母親もどきが犯人だ」と話した。
子供にとってお小遣いやお年玉は大金だ。
――これいわゆる横領とかいうやつじゃ……。
スタッフ達は「おいおいマジかよ」とか「元気だして」となだめる。
――なんでお義母さんだと思うんですか?
「あいつ、前の夫に捨てられたんだぜ。専業主婦なのに、家のことなーんもせずに、夫のクレジットカードや子供のお金使って遊んでたんだぜ? しかも夫が倒れたというのに、他所の男と遊んでた上に騙してたってさ。おじいちゃんから聞いた」
「マジあいつ生理的に無理! 話し方も仕草もきっしょいんだよ。だって、40越えてさ、自分のこと名前で呼ぶやつなんている? いつまでもお姫様だとマジ思ってるお花畑女だ」
思い出したのか自分の体をかばうように身震いする光河。
うわぁそれは辛いですねとスタッフ達の顔色がさらに悪くなる。
「あおねえと俺の態度全然違うんだよ。俺にはスキンシップと称して、ベタベタ触ってくるし、恋人扱いしてくるし……逆だったらヤバいじゃん! あおねえには、まじ辛く当たってくるんだよ。服装を地味にしろだ、化粧するなとか、彼氏つくるなとかめっちゃ制限してくるんだ。なんというか、相手の弱点を引き合いにして、ネチネチ責めてくる感じ。同性どころか、男の俺とお父さんでも無理って言ってるし。そりゃ家族に捨てられるのは当然じゃね?」
――それはお義母さんが若くてもですか?
「うん、俺は無理。男の前で態度変えるやつにろくな人いないから」
光河は鼻先で笑いながら「あいつまじ人を不愉快にさせる選手権、はい、ゆーしょー!」と続けた。
「なぁ、あいつ、インタビューで迷言言ってた? 教えてよ!」
目を輝かせて質問する光河にスタッフ達は困惑する。
「それはお答えかねます」
光河はちぇっと口先をとがらせて
「どうせ変なこと言ってるんでしょ? ネットのフリー素材にして拡散させるのがいいなぁ。どうせ自己顕示欲激しいんだから、ちょうどいいだろ。あいつがいかに頭おかしいか拡散してくれ。俺はとっととあいつが消えてくれることを願ってるから」
と悪い顔をした。
終始あいつ呼ばわりし、悪口を嬉々と話す光河を見て、スタッフ達は、苦い顔して、隣の葵依の部屋へ向かった。
先に長男の光河から話を聞くことにした。
坊主頭で少しつり上がった目つき。
薄紫色のジャージを着てインタビューに答える。
――お義母さんの第一印象は?
「まぁ、見た目は良さそうだったな。最初は多少上手くやってたと思う。みんなで遊園地行ったり、バーベキューしたりやってた。でも、だんだんうざくなってきた。見えないとこであおねえいじめるし、俺たちのお金を"お母さん銀行"として通帳とって管理しだしたんだ。そしたら……」
いじめられているのは長女の葵依のことだろう。
お金管理しだしてから何が起きたんだ?
スタッフ達は今までのインタビューの内容を思い出して、なんとなく見当がついた。
「もしかして、お金取られた、ですか?」
光河はうんと静かに頷いた。
「日に日に少額なくなっていくんだ。あおねえもおんなじでさ。あいつにきいてもしらばっくれたり、ごまかしたりして逃げてばっか」
子供達のお金がぶんどられていることが全国ネットで広まれば、これは炎上すると同時に話題になりそうだ。
昔っから"お母さん銀行"として子供達のお年玉やお祝いのお金を親が預かって、いざ使おうかというときに、勝手に親の贅沢品で使われていたというのはある。
子供に同意を得た状態で進学費用の一部で使うのならともかく。
「見てください」と光河は、銀行のアプリの通知をスクショしたのをスタッフ達に見せる。
数百円から万単位でちょくちょく通知が来ている。しかも平日の午前11時とか午後の13時とか、日中がほとんどだ。
光河は「基本この時間帯俺は家で寝ている。あおんねえは学校行ってるし。お父さんやおじいちゃんおばあちゃんは仕事行ってるから、あの母親もどきが犯人だ」と話した。
子供にとってお小遣いやお年玉は大金だ。
――これいわゆる横領とかいうやつじゃ……。
スタッフ達は「おいおいマジかよ」とか「元気だして」となだめる。
――なんでお義母さんだと思うんですか?
「あいつ、前の夫に捨てられたんだぜ。専業主婦なのに、家のことなーんもせずに、夫のクレジットカードや子供のお金使って遊んでたんだぜ? しかも夫が倒れたというのに、他所の男と遊んでた上に騙してたってさ。おじいちゃんから聞いた」
「マジあいつ生理的に無理! 話し方も仕草もきっしょいんだよ。だって、40越えてさ、自分のこと名前で呼ぶやつなんている? いつまでもお姫様だとマジ思ってるお花畑女だ」
思い出したのか自分の体をかばうように身震いする光河。
うわぁそれは辛いですねとスタッフ達の顔色がさらに悪くなる。
「あおねえと俺の態度全然違うんだよ。俺にはスキンシップと称して、ベタベタ触ってくるし、恋人扱いしてくるし……逆だったらヤバいじゃん! あおねえには、まじ辛く当たってくるんだよ。服装を地味にしろだ、化粧するなとか、彼氏つくるなとかめっちゃ制限してくるんだ。なんというか、相手の弱点を引き合いにして、ネチネチ責めてくる感じ。同性どころか、男の俺とお父さんでも無理って言ってるし。そりゃ家族に捨てられるのは当然じゃね?」
――それはお義母さんが若くてもですか?
「うん、俺は無理。男の前で態度変えるやつにろくな人いないから」
光河は鼻先で笑いながら「あいつまじ人を不愉快にさせる選手権、はい、ゆーしょー!」と続けた。
「なぁ、あいつ、インタビューで迷言言ってた? 教えてよ!」
目を輝かせて質問する光河にスタッフ達は困惑する。
「それはお答えかねます」
光河はちぇっと口先をとがらせて
「どうせ変なこと言ってるんでしょ? ネットのフリー素材にして拡散させるのがいいなぁ。どうせ自己顕示欲激しいんだから、ちょうどいいだろ。あいつがいかに頭おかしいか拡散してくれ。俺はとっととあいつが消えてくれることを願ってるから」
と悪い顔をした。
終始あいつ呼ばわりし、悪口を嬉々と話す光河を見て、スタッフ達は、苦い顔して、隣の葵依の部屋へ向かった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!
犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。
そして夢をみた。
日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。
その顔を見て目が覚めた。
なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。
数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。
幼少期、最初はツラい状況が続きます。
作者都合のゆるふわご都合設定です。
日曜日以外、1日1話更新目指してます。
エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。
お楽しみ頂けたら幸いです。
***************
2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます!
100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!!
2024年9月9日 お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます!
200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!!
2025年1月6日 お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております!
ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします!
2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております!
こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!!
2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?!
なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!!
こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。
どうしよう、欲が出て来た?
…ショートショートとか書いてみようかな?
2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?!
欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい…
2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?!
どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる