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事例4 人殺しの人殺し【事件篇②】

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「もし仮に、これまで関わってきた事件の犯人がターゲットにされているのであれば、順序はおかしくなるが次は悪食か?」

 殺人蜂とレジスタンスリーダーが殺害されてしまった今となっては、残るは悪食だけ。あくまでも、これらの事件が繋がった事件であり、同一犯の仕業であるならの話であるが、狙われるとしたら悪食しかいないだろう。

「可能性としてはゼロじゃねぇなぁ。でも、俺はもうひとつの可能性を考えてんだよ。狙われる可能性があるのは一人だけじゃねぇ。もう一人いるはずだ」

 まるで言い放つかのように言うと、坂田は突然ベッドに寝転がった。まだ話の途中だというのに、何を考えているのだろうか――そんな倉科の思考を見透かしたかのごとく、坂田は続ける。

「今日はここまでだな。果報は寝て待てって言うし、焦ったところで状況は変わらねぇよ」

 自分勝手に話を終わらせようとする坂田。その辺りの主導権は、せめてこちらで握りたいものである。倉科は改めて引き金に指をかけると、銃口を坂田に向け直した。

「まだ話は終わっていないし、大事な部分は全部はぐらかされてるような気がするんだが――」

 ややトーンを落とした口調で坂田に接してみるが、むしろそれを馬鹿にするかのごとく坂田は笑いを噛み殺す。

「まだ断定できるレベルじゃねぇし、口頭で話を聞いただけなのに、ここまで推測できりゃ充分だろうが。またしばらくしたら来るんだな。きっと時間が解決してくれるからよ」

 そう言うと、寝転がったまま手の甲を独房の外に向かって何度か仰ぐ坂田。恐らくだが「帰れ」と促しているのだろう。もちろん、それに従うつもりはなく、拳銃を構えたまま坂田のことを睨みつけてやった。どれくらいそうしていたかは分からないが、どうやら我慢比べは倉科のほうが勝ったらしい。坂田は大きく溜め息を漏らすと、しかし起き上がりはせずに口を開いた。

「相変わらず面倒臭ぇ奴だなぁ――。分かったよ。俺の負けだ。今回の事件の犯人に狙われる可能性があるのは悪食だけじゃねぇ――恐らく、俺もその対象になり得る」

 これは盲点であった。0.5係と由縁のある猟奇殺人鬼は、殺人蜂、悪食、レジスタンスリーダーだけではない、坂田もまた0.5係と深い関わりのある猟奇殺人鬼ではないか。

「話を聞く限りじゃ、あの女――山本縁には姉がいるみてぇだなぁ。だったら、その姉のことを調べてみろよ。きっと面白いことが分かると思うからよ」

 まさか、縁の姉こそが犯人だと言うのだろうか。いや、しかし縁の証言が正しければ、レジスタンスリーダーが殺害された現場には――彼女の姉がいたはずだ。縁が落ち着いたら、改めて話を聞く必要があるだろうが、あながちその考え方は間違っていないのかもしれない。
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