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海が綺麗ですね。
76 蛇島 神楽Side
しおりを挟む「それじゃ、僕は失礼するよ。」
「はい、色々とありがとうございました。」
「いいよ別に………僕も、もう一度神楽と話してみるよ。」
「…はい。」
ガラガラッ
海人は風紀委員室から出て行き、そのまま自分がいる方向とは逆へ歩いて行った。
(ああ…まただ……また、巻き込んでしまったんだ…)
また、間違えたんだ。
俺は委員長と幼馴染である海人が話しているのを偶然聞き、俺の話をしていたので隠れて聞いていた。
もしかしたら、聞かない方が良かったのかもしれない……
俺はフラフラと裏庭まで歩いた。
(なんで…どうしてなんだ……俺の事なんか、放っておいたら良いのに。)
海人だって、そのために突き放したのに
もう巻き込みたくないのに
もう誰にも傷付いてほしくないのに
もう居なくなってほしくないのに
もう……消えてしまいたいのに……
(委員長にはあまり関わらないようにした方がいいか……衛にも伝えておこう。)
俺はこれからすべき事を頭の中で整理していた
その時……
「蛇島?」
「!」
振り返ると、そのには関わらないようにと思っていた奴がいた。
「………何しに来た。」
「いや、特に何か用がある訳ではないんだが、丁度いい、話があるんだ。」
「断る」
恐らくあの話をするのだろう、そんなのは聞きたくない。
「まぁそう言うな、少し話そう」
「っ、おいっ」
無理矢理俺の隣に座るとこちらをジッと見てきた。
「………なんだ。」
「いや、特に何もないが。」
「なら見るな、鬱陶しいし面白くもないだろう。」
「面白いぞ?蛇島はいくら見ていても飽きない。」
「っ……黙れ、サッサとどっかいけ。」
笑顔でそんな事を言うコイツは、どんな思考回路をしてるのだろう
(そもそも、俺を好きだとか……何を見て言ってんだ……。)
こんなにも……穢れているのに
「蛇島?大丈夫か?」
「あ?、ああ…別に心配ない。」
「そうか、なら良かった。」
相変わらず笑顔のままこちらを見ている。
「用がないなら俺はもう行く。」
そのまま裏庭から出ていこうとした、けど……
「待ってくれ。」
「………なんだよ。」
俺の腕を強い力で掴んだ。
「聞いていただろう、先輩との話を。」
「………気付いてたのか。」
「当たり前だ、お前なら分かる。」
こいつは何故恥ずかしげもなくそんな事が言えるのか……
「……分かってんなら、話は速い、俺が話す事はない、離せ。」
「待ってくれ、本当にそうなのか?
本当にそうなら、きちんと目を合わせろ。」
「っ!やめろ!」
俺の腕を引っ張ると目を合わせてきた。
「もう一度言う、お前は何故か頑なに家について話さない?何を怖がる?何に怯えているんだ。」
「……………。」
「俺はお前を救いたい、助けたいんだ……だから、どうか話してはくれないか?」
切実に、誠にそう思っている声だ。
けれど
「離せ………。」
「………そうか。」
素直に手を離すと、そいつは何も言わず校舎に向かおうとした。
「………無理なんだよ。」
「えっ…。」
いつの間にか、その一言が漏れていた
「俺は、何も話さないし話せない、話したら最後……もう、誰も巻き込みたくはない。」
「蛇島?何を……。」
俺は委員長の、那ノ原の言葉を待たず走って校舎へ入った。
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