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番外編
粗相 side ソーニャ
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ソーニャ=クロテットは、ターニャ=クロテットの双子の弟だ。
「ソーニャ、しっかりしなさいね。いい?」
「ええええ……な、なんで僕なの?もっと違う人が居たんじゃないの?そもそも僕別に男の人が好きな訳じゃ……」
姉、ターニャの綺麗な細い手で背中をパシパシと叩かれつつ、納得できない表情をした。
ターニャはダメ男を捕まえる天才で、何人ものダメ男と付き合っているところを見てきた。
見てきた、と言うのも、ターニャと付き合っているのにソーニャにも手を出そうとするクズ男が居たから知っている。
ターニャは身内から見ても美人だ。綺麗で妖艶である。双子のソーニャももちろんそうなるわけで、不本意ながら男にも女にも告白されたことがある。
恋多きターニャの姿を見て育ったせいか、ソーニャは恋愛に恐怖を覚えてしまっていた。
何せあんなにダメ男ばかりつかまえてくるのだ。このターニャの美貌で。
ソーニャもダメ女を捕まえるのでは、と恐怖で今一歩足が進まなくなってしまい、この歳まで来てしまった。
「おー!来たな!久しぶりだなソーニャ!」
「え、エメさん…いつも姉がお世話になってます」
いつものカフェにくると、いつものメンバーが揃っていた。
朗らかに挨拶をするエメ=デュリュイはダメ男を捕まえる天才だった。しかし、少し前にそこから遂に脱却したとターニャから聞いた。
ソーニャは信じられなかった。男同士に偏見は無くとも、ダメ男ばかりを捕まえるエメに最早普通の恋愛は難しいのでは、と思っていたからだ。
しかしエメから太陽が輝かんばかりの笑顔とツルツルな肌で恋人が出来たと報告を受け、ようやく真実なのだと理解した。
「二、三年前と何にも変わってなぁい!ターニャそっくりの美人さんだぁ」
「ジニー、私の事褒めてくれるのは嬉しいけど何にもは可哀想よ。これでも身長が1センチ伸びたらしいから」
ジニーは左右に作った三つ編みの似合う可愛らしい女の子だ。少しあざとさのある話し方も、ジニーがすれば可愛さだけしかない。
ジニーも言わずもがなダメ男を捕まえる天才だ。
「酷いよターニャっ、わっ」
まだ座らない内にターニャの方を見て歩いたせいか、他の客席の椅子に足が引っかかる。
次の瞬間にはもう床と仲良しこよしである。
「いたた……」
「大丈夫かよ、変わんねーな。ソーニャのそれ」
それ、というのはこのコケっぷりの事である。ソーニャは自力でムクリと起きる。
鼻を打ったのか少しジンジンしている。
「ホントホントぉ。ターニャそっくりの美人さんなのにドジな所!」
「はぁ……しっかりしなさいよ」
ジニーは面白そうにキャッキャとしているがターニャは頭を抱えていた。
ソーニャは生来ドジで間抜けな所があった。ターニャはこんなにしっかりしているのに……と親から何度もため息をつかれて育ったので、ソーニャももう否定することは出来なかった。
多分母親の腹の中でソーニャがターニャにしっかりしている所を全て渡してしまったに違いない。
何も無い所で転ぶのはもちろん、何かあっても転ぶ。
忘れ物は良くするし、傘はいつも置き忘れて帰ってくる。
人と良くぶつかって、怖い人にぶつかった時は死ぬかと思った。
迷子にも良くなる。探し出してくれたターニャが居なかったらソーニャは生きてなかっただろうなと今でも思う。
とにかく、ドジで間抜け過ぎて親からももうお嫁さんを貰うことを諦めかけられている。あとは姉さん女房くらいか…なんて言われるくらいでソーニャは落ち込んだ。
しかし、そんなソーニャに紹介したい人がいるとエメから急に連絡があったのだ。
最初は女性かと思った。
しかし聞けば男性と言うでは無いか。しかも紹介とは友人という意味ではなく、そういう意味で。
断ろうと思ったのだが、どうもソーニャとターニャの親がノリ気なのだ。
「男でも何でもアンタの引き取り手があるならもうこの際構わない。向こうの気が変わらない内に早く行け!」と言われた時には本当にソーニャはこの人達の子供なのかと悲しみを背負った。
「うう……え、エメさん。ホントに僕で良いんですか?相手の人嫌がりません?男だし、こんなだし……」
ソーニャは男が好きではないしノリ気でもないが、それよりも数少ない友人が謗られる方が不安だった。
ソーニャはドジ過ぎて友人も少なかった。みんな呆れて離れて行ってしまう。残るのはだいたいターニャ狙いばかり。ソーニャを架け橋にしようとする輩ばかりで流石のソーニャもその友人は切った。
そんな訳でエメやジニーはとても貴重な友人なのだ。
ソーニャが相手に気に入られなかったら、エメが責められてしまうのではないかと本気で危惧している。
なのにエメは胸を叩いて誇らしげにしていた。
「だいじょーぶだっての!なんてったってあのディランからの紹介だ!お前の話をディランにしたら面白がってさ、是非会わせてくれって頼まれたんだ!」
ディランという人物に聞き覚えはあった。
今目の前にいる友人、エメ=デュリュイに現恋人を紹介した人物だ。ダメ男脱却の一因でありつつも、性格は褒められたものでは無いとも聞いている。
「僕会ったこともないのに……本当に会うだけですか?」
「いいじゃん!会うだけタダだよぉ?あーん、ずるーい!絶対イイ男だよぉ」
「僕じゃなくて、ジニーさんの方が良いんじゃ……」
ジニーは心底羨ましそうにソーニャを見て来たのでエメにジニーを推す。しかしエメは首を振った。
「ジニーやターニャのように恋多き女じゃ難しいみたいだ。それに、ソーニャのその性格は天性の才能だってディランは褒めまくってたぞ」
このドジで間抜けな所を才能と言われるのは不本意すぎる。
「うう…エメさんの顔に泥を塗ったらごめんなさい……」
「大丈夫よ。その前にソーニャの顔に泥がつくから。物理的に」
ターニャにその辺ですっ転ぶことを予想され、ソーニャは酷く肩を落とすのだった。
「ソーニャ、しっかりしなさいね。いい?」
「ええええ……な、なんで僕なの?もっと違う人が居たんじゃないの?そもそも僕別に男の人が好きな訳じゃ……」
姉、ターニャの綺麗な細い手で背中をパシパシと叩かれつつ、納得できない表情をした。
ターニャはダメ男を捕まえる天才で、何人ものダメ男と付き合っているところを見てきた。
見てきた、と言うのも、ターニャと付き合っているのにソーニャにも手を出そうとするクズ男が居たから知っている。
ターニャは身内から見ても美人だ。綺麗で妖艶である。双子のソーニャももちろんそうなるわけで、不本意ながら男にも女にも告白されたことがある。
恋多きターニャの姿を見て育ったせいか、ソーニャは恋愛に恐怖を覚えてしまっていた。
何せあんなにダメ男ばかりつかまえてくるのだ。このターニャの美貌で。
ソーニャもダメ女を捕まえるのでは、と恐怖で今一歩足が進まなくなってしまい、この歳まで来てしまった。
「おー!来たな!久しぶりだなソーニャ!」
「え、エメさん…いつも姉がお世話になってます」
いつものカフェにくると、いつものメンバーが揃っていた。
朗らかに挨拶をするエメ=デュリュイはダメ男を捕まえる天才だった。しかし、少し前にそこから遂に脱却したとターニャから聞いた。
ソーニャは信じられなかった。男同士に偏見は無くとも、ダメ男ばかりを捕まえるエメに最早普通の恋愛は難しいのでは、と思っていたからだ。
しかしエメから太陽が輝かんばかりの笑顔とツルツルな肌で恋人が出来たと報告を受け、ようやく真実なのだと理解した。
「二、三年前と何にも変わってなぁい!ターニャそっくりの美人さんだぁ」
「ジニー、私の事褒めてくれるのは嬉しいけど何にもは可哀想よ。これでも身長が1センチ伸びたらしいから」
ジニーは左右に作った三つ編みの似合う可愛らしい女の子だ。少しあざとさのある話し方も、ジニーがすれば可愛さだけしかない。
ジニーも言わずもがなダメ男を捕まえる天才だ。
「酷いよターニャっ、わっ」
まだ座らない内にターニャの方を見て歩いたせいか、他の客席の椅子に足が引っかかる。
次の瞬間にはもう床と仲良しこよしである。
「いたた……」
「大丈夫かよ、変わんねーな。ソーニャのそれ」
それ、というのはこのコケっぷりの事である。ソーニャは自力でムクリと起きる。
鼻を打ったのか少しジンジンしている。
「ホントホントぉ。ターニャそっくりの美人さんなのにドジな所!」
「はぁ……しっかりしなさいよ」
ジニーは面白そうにキャッキャとしているがターニャは頭を抱えていた。
ソーニャは生来ドジで間抜けな所があった。ターニャはこんなにしっかりしているのに……と親から何度もため息をつかれて育ったので、ソーニャももう否定することは出来なかった。
多分母親の腹の中でソーニャがターニャにしっかりしている所を全て渡してしまったに違いない。
何も無い所で転ぶのはもちろん、何かあっても転ぶ。
忘れ物は良くするし、傘はいつも置き忘れて帰ってくる。
人と良くぶつかって、怖い人にぶつかった時は死ぬかと思った。
迷子にも良くなる。探し出してくれたターニャが居なかったらソーニャは生きてなかっただろうなと今でも思う。
とにかく、ドジで間抜け過ぎて親からももうお嫁さんを貰うことを諦めかけられている。あとは姉さん女房くらいか…なんて言われるくらいでソーニャは落ち込んだ。
しかし、そんなソーニャに紹介したい人がいるとエメから急に連絡があったのだ。
最初は女性かと思った。
しかし聞けば男性と言うでは無いか。しかも紹介とは友人という意味ではなく、そういう意味で。
断ろうと思ったのだが、どうもソーニャとターニャの親がノリ気なのだ。
「男でも何でもアンタの引き取り手があるならもうこの際構わない。向こうの気が変わらない内に早く行け!」と言われた時には本当にソーニャはこの人達の子供なのかと悲しみを背負った。
「うう……え、エメさん。ホントに僕で良いんですか?相手の人嫌がりません?男だし、こんなだし……」
ソーニャは男が好きではないしノリ気でもないが、それよりも数少ない友人が謗られる方が不安だった。
ソーニャはドジ過ぎて友人も少なかった。みんな呆れて離れて行ってしまう。残るのはだいたいターニャ狙いばかり。ソーニャを架け橋にしようとする輩ばかりで流石のソーニャもその友人は切った。
そんな訳でエメやジニーはとても貴重な友人なのだ。
ソーニャが相手に気に入られなかったら、エメが責められてしまうのではないかと本気で危惧している。
なのにエメは胸を叩いて誇らしげにしていた。
「だいじょーぶだっての!なんてったってあのディランからの紹介だ!お前の話をディランにしたら面白がってさ、是非会わせてくれって頼まれたんだ!」
ディランという人物に聞き覚えはあった。
今目の前にいる友人、エメ=デュリュイに現恋人を紹介した人物だ。ダメ男脱却の一因でありつつも、性格は褒められたものでは無いとも聞いている。
「僕会ったこともないのに……本当に会うだけですか?」
「いいじゃん!会うだけタダだよぉ?あーん、ずるーい!絶対イイ男だよぉ」
「僕じゃなくて、ジニーさんの方が良いんじゃ……」
ジニーは心底羨ましそうにソーニャを見て来たのでエメにジニーを推す。しかしエメは首を振った。
「ジニーやターニャのように恋多き女じゃ難しいみたいだ。それに、ソーニャのその性格は天性の才能だってディランは褒めまくってたぞ」
このドジで間抜けな所を才能と言われるのは不本意すぎる。
「うう…エメさんの顔に泥を塗ったらごめんなさい……」
「大丈夫よ。その前にソーニャの顔に泥がつくから。物理的に」
ターニャにその辺ですっ転ぶことを予想され、ソーニャは酷く肩を落とすのだった。
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