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第3章学園入学
そんな訳で入学しました。
しおりを挟むめでたく、学園入学してから1か月が過ぎようとしている今日この頃。私は学園の窓から見える景色に、この2年と少しの間の濃い時間を思い出していた。え?早くない?と思うあなた!
思い出して欲しい。色々あった。ほんとーに色々あった!
自分が変えてしまったルイスの生活事情により、ほっといたら世界が経済危機になりかねない状況の対策したり(これは自分のミス回収だけど。)実家の運営正常化したり、財政立て直しやら国からのペナルティーやらで何かと入用になったお金を、株で稼ぎまくったり、人員整理したり、ついでに公爵家の頭を挿げ替えたり、本来予定に無かった悪役令息と婚約者になったり、男好きな皇太子と茶飲み友達になったり。
こうしてあげつらねてみたら分かると思うが、色々あり過ぎて内容が濃い。前世を考えると一生分働いた気さえしてる。実際、私は前世より良く働いた。
もう働きたくはないが、今までの努力の結晶を無駄にしない為にも、この学園生活が本番なのだから、ここらで1度気合い入れ直さなくてはならない。
そう、今までのは準備に過ぎない。今ではこの3年の学園生活の為の下準備だ。
あんなにやる気ない行員だったのにだ。なんなら期中の成績を最低限満たす目処を立てた後は、投資信託とか保険や融資や相続とか遺言信託とか、色々あるうちのどれかを手続きするついでにお客様のお家でお茶飲んでだらだらして過ごしてたのに。
(投信とかは本当に楽だった…何故投信が良いかと言うと、利益が出たら解約させて、そのお金を元手にまた新しいのを買ってもらえるからだ。そうやって買って売ってを繰り返しコロコロ転がすのだ。※利益出てたらだよ!
これを出来るお客様リストを私はコロコロリストと呼んでいた。)
そんなふうに如何にさぼるかに頭をフル回転させていた私が、今世に目が覚めてから本当に良く働いたものだ。褒めて欲しい。
(まぁ、サボってた前世は褒められても頑張った今世は誰も褒めてくれないんだけどね!誰も評価つける人いないから!)
そんな事を考えたらちょっと涙がほろりしてきた。
前世の私は人生を甘く見ていたんだ。だからスマホいじって車に轢かれて神に人生の厳しさを学べとこの世界に召喚されたんだ。きっとそうだ。
最近の私はそう結論付けていた。が。
ーナデナデナデナデ
「……何で、私の頭を撫でてるの?」
「ん?ライザが何か涙目になってたから可愛くて。撫でやすい頭をしてるよね。黒髪が柔らかくて、小さくて。まるで子猫を撫でてるみたいだ。」
そう言って今、私の頭を撫でているのはルイス・ネヴァキエル。このゲームの悪役令息になる予定だった人だ。
今では、彼が悪役令息になるとは思っていないが…いや、でもやはりこういう時は油断ならないと感じてしまう。
読者の方は今、見ていたでしょう。この人は絶妙過ぎるタイミングで隙あらば甘やかしてこようとする。言っておくが、精神年齢は絶対私の方が高いはずなのに。今年で28歳プラス15歳の私が、たかだか15歳の子供に危機感を覚えている。
と言うのも、悪役令息はゲームで魔性なのだ。様々な女を誑し込み平気で利用した後には、女が悲惨な末路を辿る。去り際にクスリと笑って「バイバイ」とか言うシーンがある。
笑いかけられただけで、騙されるこの女キャラが悪いと私は思えない。何故なら元々兼ね備えていた色気は、初めて出会った頃よりグレードアップした。
背もどんどん差をつけられはじめ、手も大きくなってきた。
因みに私は手の血管フェチであり、ルイスの艶の良い白い手に浮き出ている血管はドストライクだ。
しかもまだまだこれでも成長途中と言うのが恐ろしい。
チャイムが鳴って、「またね」と言って去っていく婚約者に頷きながら、私はふと思った。
(あれ?ルイスってゲームでは同じクラスじゃなくない?)
と。
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