【完結】悪役令嬢ライザと悪役令息の婚約者

マロン株式

文字の大きさ
62 / 78
第3章学園入学

悪役令嬢と悪役令息2

しおりを挟む
「──・だから、ライザはあの時、わたしを助けたんだよね?」

 
「…どうして」
「碩学の大樹が、ライザの記憶を全て見せてくれた。ごめんね、勝手に記憶を見てしまって…」

 私の記憶を…見た?えっ、どこまで?何で?何を見たの?
 さっきルイスが口にしたことは、前世の私が知るもの。
 
 後は、同じく転生したウルク殿下だが、お茶会での様子を見た所ルイスとウルク殿下は特に親しい訳でも無く、口を聞いた事も無かっただろうことは分かる。

 なら、ルイスは前世の記憶を見たと言うことなんだろう。全て。

「…怒った?」

 そう言って不安気に私の顔を覗き込んでくる。  

「いや…怒ったと言うか、驚いて。いつそんな…あっ」

─────・そう言えば、ルイスが高熱を出した時、その原因は魔力の枯渇だった。

 熱が下がって目覚めた時、ルイスの様子がおかしかった。

 私の肩によりかかり、『ごめん』って呟やいてたあれはー…

 『〝勝手に記憶を見て〟ごめん』と言うことだったのだ。

 人の記憶を、しかも2人分の記憶を短時間にまとめて見るなど、とんでも無く大変な思いをしただろう。
 
「何で、そんな無茶なことを…っ。高熱で済んだなら良かったけど…寿命は、縮めてないよね??身体は?何ともない??」

  私が慌てふためくと、ルイスはふふっ。と嬉しそうに笑って「そんな事しないよ」と返答が来たけれど、本当だろうか。

 前世の記憶がある前提で記憶を見た訳では無いだろう。

 1人分の記憶なら、ルイスの魔力を持ってすれば何の対価も無く覗くことは可能だったかもしれない。

 だけど、2人分となるとー…
 
 オロオロとしながら、ルイスを心配して見上げていると、彼はフワりと笑った。

「好きだよ、ライザ。
わたしは君のことをこの世で1番愛している」



───────・私の見て来たもの全てを知ってなお、そう言ってのけたルイスの綺麗笑みは、部屋に入ってくる木漏れ日を背後にして、こちらが圧倒されるほどに、美しかった。
  
 思わず、息を呑んで固まったライザは、数秒後になりやっと我に返った。

「…ぃや。だ、だから、私の記憶見てたなら知ってるでしょ?ルイスにやったことは全部自分の為なの。だから、ルイスが私に恩義を感じる必要はこれっぽっちもない」

「そんなことはとっくに知ってるよ。ライザの記憶を見る前から知ってた」

「…っ!私がルイスに望んでいるのは…」

「うん、大丈夫だよ。
君の望みは全て叶えると言ったじゃないか。
一度でもわたしがライザの期待を裏切ったことある?」

 期待を裏切られたことなどー…ない。
 ルイスは文句のつけようも無く、完璧に。
 いや、私の想定以上に彼は立派な公爵となった。

「君が望むなら、正しい道だけを歩もう。
君が望むなら、光の下が似合う様な、清廉潔白で、高潔な公爵にもなろう。

君が望むなら、清らかな恋をして、幸せな家庭を築くよ」


 驚きと混乱…ー
 そして、さらりと愛を紡ぐ彼の表情が、普段よりも一層、あまりにも美しく見えて、開いた口が塞がらなかった。 
 
 ルイスの顔が、ゆっくりと近寄ってきた。頬に添えられた手で、自然とライザの顔を上に向かせた。
 唇が触れそうになるほど近くで、ルイスはポツリと囁いた。
 
「あの時から、互いに惹かれていた君とね」

 ────・血塗れの中に横たわり、私と同じものを背負うことになったルイス。ひたすらに美しい悪の卵ー…あの時、強く魅了されていた。その他全てことが、恐怖など、どうでも良くなるくらいに。

 渇望して探していた、唯一私の感情を共有出来うる存在。
 

「ライザは頑なに認め無かったけど。
君がわたしに向けてくれたもの…あれは全部愛だよ」
 
 そう紡いだあとに、重ねられた唇。その時ー…何の否定も思い浮かばなかった。僅かに震えていた私を宥めるように、肩に回されていた手が背中をさする。
 
 驚きと混乱…ーそして、強引な様で、労わりを感じさせる優しい導き。魅惑的で甘美な囁きに、この時ー・抗える理由も、術も。見当たらなかった。
 
 
しおりを挟む
感想 130

あなたにおすすめの小説

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

【完結】その令嬢は号泣しただけ~泣き虫令嬢に悪役は無理でした~

春風由実
恋愛
お城の庭園で大泣きしてしまった十二歳の私。 かつての記憶を取り戻し、自分が物語の序盤で早々に退場する悪しき公爵令嬢であることを思い出します。 私は目立たず密やかに穏やかに、そして出来るだけ長く生きたいのです。 それにこんなに泣き虫だから、王太子殿下の婚約者だなんて重たい役目は無理、無理、無理。 だから早々に逃げ出そうと決めていたのに。 どうして目の前にこの方が座っているのでしょうか? ※本編十七話、番外編四話の短いお話です。 ※こちらはさっと完結します。(2022.11.8完結) ※カクヨムにも掲載しています。

処理中です...