【完結】悪役令嬢ライザと悪役令息の婚約者

マロン株式

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第3章学園入学

サイコパスとお姉様とヒロインのお茶会2

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「…僕が、皇帝の血を継いでいないなんて、誰がそんな恐ろしいことを言い出したんです?」

「この間、海岸で白骨化した遺体が見つかったのよ。歯型を調べた結果、数年前に消えた侍女のものと一致したの」

「…その遺体が何か喋ったんですか?」

「その遺体が抱えていたのよ。亡くなった第2妃の日記帳を大事そうにね」

「…そんなこと、有り得るんですか?海から打ち上げられ白骨化までしているのに、日記帳だけは無事に持っていたと?」

「さぁ…貴方もさっき言ってたでしょ?全ては偶然・・よ。偶然・・ならそういう事もあるんでしょうね」


  ー…日記帳は魔法で厳重な鍵が掛けられ守られていた。

  けれど、魔法を行使していた者が既に死んでしまっていたせいか、私が日記帳に触れた時に、鍵は自然に開いた。



 「第2妃は、可哀想なお方だったわね。私の母様が同盟の為に嫁いで来なければ、何の憂いもなく皇妃となり、後継者を産んだでしょうね」

  皇帝との婚姻まで後1年と言う時。同盟国から嫁いで来た者に、その座を奪われ、自らは側妃となってしまった人。


 日記には、皇宮に来てからというもの、皇妃よりも早く子を産めと言う手紙が第2妃宛に毎日届いたことや、様々な負の感情を向けてくる周囲の視線、焦燥感、孤独感、無力感が綴られていた。

 自分の日記にだけ、心内を洗いざらいに吐露していたようで、内容を見られないように、第2妃は魔法で厳重な鍵をかけていた。

  けれど、自分の祈りも、周囲の期待も虚しく、最初に妊娠が発覚したのは皇妃であったー…。

  それからより強固になった周囲からの圧力に、第2妃は行動を見誤ってゆく。

 それまで、頭の隅にだけあった最終手段を行うことにしたのだ。

 直ぐにでも子が欲しかった第2妃は

  闇の占い師に相性の良い男性を割り出してもらい、一夜を共にし子を儲けた。

  血の偽装と言う、大罪を犯してしまったその日。何時バレてしまうか分からない恐怖と、罪の意識に第2妃は苛まれていたが、一族の為にも致し方ない事だと思い込み生きてきた。

 けれど、本当に皇帝の血を引く第3王子を産んだ時、罪の意識は軽くなったと綴られており、その時、ウルクの存在がただ後ろめたいだけのものになってしまった。

 ウルクは自分と同じく、一族から皇帝となる様にと言われて育っており、本人もその気になっている。

 我が子を傷付けるのは、忍びないが、ウルクが皇帝になるのは恐ろしい罪であると自覚した第2妃は、一族に第3王子を皇帝にしようと根回しをはじめた。

  第2妃の父からは何故今更と反対された。ウルクは優秀で、皇太子と同年代。今更第3王子を担ぎ出すよりは皇帝になりやすいと。

 そんな反発に悩んでいた第2妃はこの時になって、初めて、第2妃は侍女にだけ、本当のことを告げたのだ。

 その話を聞いた侍女は、驚愕していたが、第3王子を跡継ぎとすることに納得せざるを得なかった。


 何故なら、皇帝となる際の式典では、その血脈に偽りが無いかを民達の見ている前で示す。花冠の儀式が行われるからだ。

 誤魔化しようがない。

 その話は、部屋の隅で隠れていたウルクに聞かれてしまった。しかし、ウルクは笑って「…仕方がないですね」と一言だけ述べたと言う。
 

 その日記帳が綴られた日付はー…第2妃が不自然な死を遂げる前日の夜だった。



「ーー…以上が、日記から判明していた事だけど。鍵の魔力は残り香で第2妃のものであり、筆跡の鑑定結果も出たわ」
「……」
「ねぇ、ウルク。貴方は日記の中身を見たのかしら?」
「ー・いいえ。どうせ、知ってもろくな事は書いていないと思いましたから。燃やして灰にするべきでしたね」
 
「燃やせないから、海に沈めたんでしょ?」

「…本当、馬鹿で愚かなくせに厄介な魔法を持った人でしたよ」

「なるほどね。……第3王子は、行方不明にせざるを得なかった訳ね。第2妃が施した守護の魔法で、殺せなかったから」

「僕には兄上の言っていることが、なんの事を言っているかわかりませんね」

「…、まぁいいわ。
皇位継承権を持たないのなら、貴方の後ろ盾をしている人々にとって、貴方は無意味な存在となった。
今迄のように好き勝手振る舞うことは出来ないわよ?」

「ーー…ふふっ。
驚きましたよ、兄上。
まさか、数年もの時間が経っているのに、今更こんな偶然が起きるんですね、捜索する場所を絞ったんでしょう?一体どんな手を使って僕の行動を把握したんですか?」


「―――さぁね。私に貴方達・・・の思考回路なんか、理解出来る訳がないじゃない」
 



  刹那―――…

  ベルンの脳裏に過ぎったのはライザが言っていた言葉。


『ルイスは、元々第2王子の手先というか。悪友と言うか…とにかく皇太子を貶める協力者と言うポジションでしたけど。今現在は全く違います』


 そして、此処へ訪れる前、一瞬だけ見えた。

  唇に弧を描き、美麗な表情を浮かべ、怪し気な笑みを浮かべたルイス。


 ウルクから聞いていた。
 ある推理小説の、天才犯罪者をモチーフにつくられたキャラクター。

 本来、サイコパスのウルクと利害関係を見出し、友人と言う名の共犯者として、数多の犯罪を手引きする。

  危険な背景と、謎めいた美しさに本来攻略対象者では無かったと言うのに、人気が爆発して裏ルートまでつくるに至ったらしいけど…ー。
 

 

―――そんな話をウルクから聞いた当初は、「ルイス様が?」って鼻で笑っていたものだった…。

(ライザ…貴女がウルクに気に入られてると知った時、とんでもないサイコパスに目をつけられたと思っていたけれど…)


  
「今回、僕の痛手は否めませんが。僕も第2妃の被害者ですから。悪い様にはしないでくださいね?」

「…ウルク。
貴方は意図せず、手を出してはいけないものに、触れてしまったかもしれないわ」

「…?」

「皇族の除籍で終わりじゃないかもしれないと言うことよ…」


  ベルンはこのとき、一瞬だけ垣間見えた、美しく怪し気な笑みを浮かべたルイスと、ウルクが嘘を付いていると思い込んでいたときの、前世の話を思い出した。


 あの時は、話半分で聞いていた。
 ベルンは、ライザと一緒に居るときのルイスしか知らなかったから。

 
   だけど。

 彼は、謎に包まれた犯罪者。
 ゲーム中、誰も捕まえることが出来なかった不思議な存在。


 完全犯罪を可能にしていた。

 犯罪卿ー…ルイス・ネヴァキエル

 
(ライザーー貴女…
もしかしたら、サイコパスより、とんでもない人に目をつけられているわ)


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