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記念小話やSS

【季節ネタSS】七夕の願い事 ≪前編≫

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※今日は七夕という事で、【季節ネタSS】として思いついたモノをアップします。
 長くなってしまったので前後編に分けました。

※9章「お家で過ごそう ~後輩妊婦は育児の先輩~」の辺りのお話です

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モニカが家にやってきた事により双子達の面倒を見てくれることが増えたので、あたしとエルは以前よりもメラルダに買い物を兼ねたデートをする機会が増えてきた。
もちろん日用品関係はほどんどアレク兄様が在庫管理をしてくれているので、買い物というよりデートを楽しむ事がメインだったりする。


今日は、エルが薬草農園を少し増設したいという事で、そこに植える薬草を吟味しにいろんな植物を取り扱っているお店に来ていた。

「俺は薬草関係を見てるから、お前は花とか安全な植物を見ていてくれ。・・・くれぐれも、くれぐれも店からは出るなよ?」
「大丈夫だよ。お店の中だけしか見ないから」
「植物は絶対に見るだけにしろ。決して触れたりするな」
「もうっ、わかったってば!」

トラブルメーカーという意味で、あたしは信用が全くないらしい。
それについては自覚してるので何も言えないんだけどね。

エルから少し離れて店内をいろいろ見渡すと、前の世界でも見たような綺麗な花やまったく見た事がない花や観葉植物などいろんな種類があって面白い。

「これってスズラン?でも花の部分が大きくて本当のベルみたいで可愛い!あ、これは見た事ない形の花だなぁ、いろんな色がある・・・」

店内を歩きながら大きめの観葉植物コーナーらしき場所になった時、ふと、ある植物が目についた。

「・・・これって、竹かな?笹の葉がいっぱいついてる。この世界にもあるんだ・・・」

大きな鉢に入った、前の世界でも馴染みのある植物。そして、今がちょうど夏ということもあり、見た瞬間にある事を閃いたので、エルにお願いしてその植物を購入する事にした。

「こんな大きな花もない植物で何をしたいのだ?」
「ふふっ、それは家に帰ってからのお楽しみなのです☆」

家に帰ってから買った植物を庭の指定した場所に置いてもらい、あたしは双子達を皆にまかせていそいそと準備を始めた。



今夜の夕食は庭で食べよう!と皆に提案して、ライトアップした庭に来てもらった。
もちろん一人ではなく、ミナトちゃんやカイトくんも風で火が消えないようカバーを付けたろうそくの設置を手伝ってくれて、火をつけるのはほむちゃんが手伝ってくれた。
その甲斐あって、庭はろうそくのオレンジでライトアップされ、とても良い感じに仕上がった。

あたしは、まずテーブルの上に人数分の短冊と筆記用具を並べて準備する。
先ほどのお店で、笹と全く同じ植物を見た時に七夕を思い出したあたしは、庭で夕食でも食べながら短冊に願い事を書くような、お祭りまでいかないけど”夏の風物詩”的なモノを皆でやってみたいなと思ったのだ。

テーブルで作業をしていると、まずはいつもの3人があたしの元へやってきた。

「サーヤまま、なにしてゆの?」
「ふふ~、皆にはこの紙に願い事を書いてもらいます!そして、書いたらこの植物に吊るすの。あたしの前いた世界で夏にあった風物詩なんだよ☆」
「ふうぶつし?」
「その季節を楽しむ行事やイベントみたいなモノかな?」
「きせつを、たのちむ・・・」
「へ~、変わったイベントだね。僕初めて聞いたよ」
「俺も。願い事って何でも良いの?」
「うん。実際に叶うかどうかは別だけど、願い事は何を書いても大丈夫だよ」

話を聞いたミナトちゃんとカイトくんとベルナートさんは、早速あたしの用意した短冊にどんな願い事を書こうか考えて書き始めた。

「ほぅ、風物詩ねぇ・・・お前のいた世界には変わった行事があるのだな」
「でも、願いが叶うかわからないんでしょ?やる意味ってあるの?」

エルとセイルも興味はあるようだけど、そこまで乗り気ではないらしい。

「あくまで“願掛け”みたいなイメージしかあたしもないし、詳しい事はあまり覚えてないんだけど、“七夕”って言って織姫と彦星っていう2人の想い合った男女が1年に1度会える日でもあるんだ」
「1年に1度?なぜ一緒にならぬ?意味が解らんな」
「ホントだね☆実は想い合ってなかったりして♪」

ダメだ。ファンタジーが多い世界この世界でこの2人の意見は現実的過ぎるし、理解してもらうための知識があたしにはない。
とりあえず2人には短冊だけ渡して、「書くかどうかも含めてご自由に」と伝えて他の人に短冊を渡すことにした。

「ほぅ、初めて聞く行事だな。願い事・・・うむ、何にしようか・・・」
「俺、美味しいモノたくさん食べたい」
「あはっ、アルマってばそれいつも叶えてるから願い事じゃなくない?」
「願い事・・・より一層エリュシオン様のために尽くせるように、という事かな?」

カルステッドさん達は個性がはっきりしてるな・・・アルマさんはブレないし、アレク兄様は願い事ではなく決意だと思うんだけど、自分のために何か叶えたい事とかないのかな?

「アレク兄様自身の“願い”はないんですか?」
「俺の、願い・・・」
「例えば“好きな人と両思いになりたい”とか、“〇〇ができるようになりたい”とか・・・自分が叶えたいと思う願いってないんですか?」
「・・・そうだな。今いる仲間達やエリュシオン様、サーヤ、レオンやサクラ、精霊王様方との関係がこれからも良好であって欲しいと常に願っている」
「アレク兄様・・・」

どこまでもアレク兄様は、自分自身よりも全体を見てしまう人なんだな。
アレク兄様らしいと言えばらしいか・・・

そんなアレク兄様について意外なトコロから意外な意見が出てきた。

「あれ?でもアレクって、前に攫われた時あの女医とイイ感じじゃなかった?」
「・・・え?セイル、それどういう事?!アレク兄様ってティリアさんとそういう関係なんですか?クラリスにはもうチャンスはないんですか??」
「?!・・・サーヤ、なぜクラリスとの事を知って・・・」
「えっと、クラリス本人から聞きました。今後アレク兄様の役に立つために、今はエルフの里で魔法と薬学を学ぶって・・・」
「ちなみに、クラリスにはどこまで聞いて・・・?」
「・・・全部聞きました」
「・・・」

アレク兄様のポーカーフェイスが少し崩れて少し、いやかなり気まずそう・・・あれ?クラリスとえっちしちゃったって知らないフリしてた方が良かったのかな?

そんなアレク兄様を、さらにからかうようにセイルが追撃する。

「あれ~?アレクって、前にティリアと口付けしてたけどクラリスともイイ感じだったって事?ふふっ、モテる男は大変だね☆」
「なっ、セイル様!!」
「えぇ?!、アレク兄様そうなんですか??!!ティリアさんともシちゃったんですか???!!!」
「いやいや、ちょっと待ちなさいサーヤ、声が大きいよ・・・ほら、少し落ち着こう」


これが落ち着いていられますかっ!!!
否定しないという事はセイルの言ってる事も本当って事だよね??
アレク兄様って、あたしの元カレみたいな実は悪い男なの?!違うよね??!!
違うと言ってっ!!アレク兄様っ!!!!



あたしは七夕の願い事そっちのけで、アレク兄様をがっしりと掴み必死に問いただしていた。
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