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10章 延引された結婚式
幕間 初めての女子会~リンダの過去と現在3 inリンダside~
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◆
朝起きると、アルマの姿はなかった。
どんな顔して会えば良いかわからなかったから、ほっとした気持ちもあったけど、少しだけ寂しい。
でも、自分の起きた時間がわかったときアルマがいない事にも納得した。
明らかな寝坊。今はすでに稽古を始めている時間だったのだ。
『・・・はぁっ、はぁっ、すみません!遅くなりました!!』
『おぉ、リンダ。身体は大丈夫か?』
『へ?』
え、嘘・・・隊長って、昨日あたしがアルマに抱かれた事を知ってるの??!!
『お腹を出したまま寝て腹をこわしたとアルマから聞いたぞ。もう大丈夫なのか?』
『え・・・あ、はい。・・・大丈夫です』
なんだその理由は・・・と思いながらも、隊長に知られていない事に安堵した。
『おはよ、リンダ』
『ア、アルマ・・・ぉ、おはよ・・・』
昨日のコトが何もなかったかのように普通に接してくるアルマ。
なんだ、あたしだけこんなに動揺してバカみたいじゃないか・・・
昨日アルマに抱かれたのは、本当に夢か何かだったのかな?
でも下半身にまだ違和感・・・というか、挿入ってた感覚が残ってるから夢じゃないんだよね・・・?
下腹部を抑えながら昨日のアルマとの情事が思い出されて思わず顔がボッと熱くなる。
『昨日のコト思い出してるの?いやらしいね、リンダ』
『!!!!』
耳元でボソッとアルマに言われた事で、さらに思い出してしまい顔が熱くなる。
何なの、何なの?!
こっちはアルマのせいでこうなってるのに、何であんたはそんな平然としていられるわけ??!!
『リンダ、顔が赤いし熱があるんじゃないか?今日の稽古は良いから部屋で休んで・・・』
『大丈夫ですっ!アルマっ、次は負けないんだから!覚えてなさいよ!!・・・じゃあ、走ってきます!!!』
『え、ちょ、リンダ??・・・えぇぇぇぇぇぇ???!!!』
『・・・ぷっ、負けないって・・・何を勝負してるんだか』
それから体力も筋力も付け、剣の実力も王国騎士団の兵士と普通に渡り合えるくらいまで実力をつけては、事あるごとにアルマに挑んだ。
『アルマっ!今日は負けないんだからっ!!』
『・・・ふっ、返り討ちにしてあげる』
時には、アルマから賭け事のような持ち掛けもあった。
『リンダ、俺よりも多く魔物を倒したら、いう事何でも聞いてあげる』
『ホント??!!』
『その代わり、俺の方が多かったら今夜は俺の部屋ね』
『わかった!!負けないんだから!!!』
稽古の素振りや、冒険者登録してクエストをこなす時など、何かをきっかけにしてはアルマと身体を重ねる、そんな不思議な関係が続き、いつの間にかそれが当たり前になっていた。
この関係がどういうモノかわからないけど、気楽で心地良くてあたしとアルマにはちょうど良い・・・そう思って疑わなかった。
あの時までは・・・――――――
◆
『アルマからの連絡が途絶えました。宿にもおらず、行方も分かりません・・・』
エリュシオン様の故郷であるエルフの里に向かう途中、記憶を失ったエリュシオン様の呪いを解く情報を探すため、先行してトルク村に言っていたアレク様とアルマ。
呪いはサーヤが加護を与えてもらった精霊王様に解いてもらったから、アルマ達とは途中のトルク村で合流する予定だった。
冒頭の連絡があったのはそんな時だ。
冷静なエリュシオン様の指示の元、御者をしていたあたしは急いで馬を走らせた。
気持ち的には凄く飛ばしたかったけど、一人じゃないし安全運転と指示をされていたので、危険がない程度の速度を心掛けた。
馬車の中で、エリュシオン様達が話している内容が少しだけ聞こえる。
アルマは元々奴隷で、エリュシオン様を依頼により暗殺しようとするも返り討ちにされ、そのままエリュシオン様に仕える事になったらしい。
今までのアルマの発言や、時々何かを思い出したような辛い顔をするのは、その時の辛い記憶があったからなんだとあたしは素直に納得した。
元奴隷だったと知られたくなかったみたいだけど、元奴隷だろうがアルマはアルマだ。
知ったところであたしは変わらないのに・・・結構信頼されてきたと思っていたけど、まだまだ足りないらしい。
情報収集するために、アルマがいるかもしれない奴隷商に潜入したが、どこを探してもアルマはいなかった。
いない事に安堵はしたけど、地下にいた傷や痣だらけの奴隷を見た時、アルマも昔あんなひどい目に遭っていたのかと思うと心が痛んだ。
奴隷商にいないなら、アルマのことだ。どうせお腹が減って動けなくなったに違いない・・・―――――
『アルマって本当に奴隷商にいるんですかね?あいつのことだから、お腹すいて食べ物探してるうちに落とし穴に落ちたとかありませんか?』
他の人よりも一緒にいる時間が長い分、ある程度の行動パターンがわかるのと、なんとなくそんな予感がしてあたしは村の情報収集ではなく周囲の森の探索に切り替えた。
そして、サーヤが同じ森へ精霊王様達と出かけていた先で、食べ物に釣られて木から落ちてきたアルマを発見したと知らせを受け、エリュシオン様やサーヤ達がアルマを連れて宿に帰ってきた。
『アルマぁぁぁぁぁ!!!』
宿に帰ってきたアルマを見た瞬間、無事に見つかった安心感よりも心配かけさせた怒りが勝っていたあたしは、再会した時アルマを思いっきり蹴って吹っ飛ばした。
(ドガッ)
『・・・リンダ、痛い』
『当たり前でしょ!痛くしてるんだからっ!!』
吹っ飛ばされてもちゃんと受け身を取っていたアルマは、“痛い”と言いながらも傷など負っていない。
『心配したんだから、バカ。・・・ちょっとだけだけど』
『・・・うん、ありがと』
あたし達なりの挨拶を交わしてからアルマに事情を聞くと、昔の知り合いから逃げてるうちに空腹で動けなくなっていたらしい。
『やっぱりかぁ・・・アルマのことだから空腹でどこかに落ちたんじゃないかと思ってたんだよね』
『リンダの言う通りだったな。怪我をしたものの、大丈夫そうで良かった』
『あぁ、てっきりお前がまた奴隷として売られてしまうのかと冷や冷やしてしまったよ』
『隊長っ!それは・・・』
やっぱりアルマは自分が元奴隷であることを気にしてる。
そんなに気にする事なんだろうか?
『大丈夫だよ、アルマ。皆知ってる。あたしなんて、奴隷商に潜入してアルマがいないか探しちゃったしね!』
『は?皆??リンダ・・・潜入って?!』
『それだけ、今の仲間であるアルマが大事ってことだよ!わかった?』
『・・・あり、がとう』
無器用に『ありがとう』と笑う顔は、アルマの素の顔なんだろう、そんな気がした。
その後アルマを部屋まで送り、エリュシオン様に治してもらった足や他に怪我がないことを確認してからアルマに抱きついた。
『・・・リンダ』
『・・・ホントに、心配したんだから・・・バカアルマ』
『うん、ごめん。・・・ちょっとドジした』
ちょっとなのか?とツッコみたかったが、自分らしくないかもしれないけど、今はそれ以上に言いたくて仕方がない事があった。
『・・・怖かった。アルマが、もし、いなくなったらって・・・』
『リンダ・・・』
『やだ。アルマがいなくなるなんて嫌だ。いなく、ならないで・・・』
エリュシオン様の生活が安定してきたから、危険な仕事は減ったと聞いたけど、アルマやアレク様は潜入や諜報を担当する事が多いからどうしても危険が伴う。
無理だとわかっていても、どうしても黙っていられなかった
『・・・わかった。なるべく危険な事はしないし、今度から非常食も多めに持つようにする。・・・だからリンダも俺のお願い、きいて?』
『アルマの、お願い・・・?』
『・・・もう、奴隷商とか危険な場所に潜入捜査とかしないで。必要なら俺が行くから。・・・今回は大事に至らなかったけど、女の子には危険すぎる』
『あたし、普通の女の子よりずっと強いよ?』
これでも大分強くなった自負はあるし、今だって旅行中だけど最低限の鍛錬は欠かしていない。
“女の子”と言われたのは少し嬉しかったけど、あたしはサーヤみたいな誰かから守られるような“か弱い女の子”ではない。
『それでも・・・俺にとっては・・・』
『え?』
『・・・いや、何でもない。俺はもう寝る。リンダも部屋に帰りな』
さすがに疲れてるだろうアルマを休ませたい気持ちもあったけど、どうしても離れたくなかった。
『・・・やだ。あたしも一緒に寝る』
『・・・え?』
『ダメ?』
やっぱりダメなんだろうか。だったら明日は良いかな?
『・・・寝るだけで済むと思ってる?』
『!!・・・寝るだけじゃなくても、良い・・・』
『!!!!』
疲れてるはずなのにあたしを抱く体力はあるようで、あたしなりに良いよと返事をしたら、また額に手を当ててアルマは深いため息をついた。
あれ?言葉を間違えたんだろうか?
『ごめん、やっぱ疲れてるよね。部屋に戻るよ。おやす・・・』
『帰すわけないでしょ、バカリンダ』
『へ?・・・んんっ?!』
その日のアルマは、いつもよりも優しく“ここにいるよ”と自分の存在を刻み付けるように、何度も果ててはあたしを抱いた。
いつもみたいにあたしをからかう発言は一切なく、時折切なく甘くあたしの名前を呼ぶアルマの声に、悲しくもないのに涙が溢れ、あたしも必死にアルマの名前を呼び返してはぎゅっと抱きしめた。
それから、今まで楽しくじゃれ合うように重ねていたあたし達の逢瀬の時間は、いつしか甘く切ない時間へと変わっていった。
そして、サーヤを始めモニカ様やアレク様までもが結婚し、周りが子供と触れ合う姿を見て、あたしは少しだけ羨ましいと感じるようになった。
でも、あたしにはアルマとの関係を進展させる勇気はなかった・・・―――――
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※アルマ行方不明の話は『トルク村で過ごそう ~飼い猫の帰還~』辺りのお話です。
朝起きると、アルマの姿はなかった。
どんな顔して会えば良いかわからなかったから、ほっとした気持ちもあったけど、少しだけ寂しい。
でも、自分の起きた時間がわかったときアルマがいない事にも納得した。
明らかな寝坊。今はすでに稽古を始めている時間だったのだ。
『・・・はぁっ、はぁっ、すみません!遅くなりました!!』
『おぉ、リンダ。身体は大丈夫か?』
『へ?』
え、嘘・・・隊長って、昨日あたしがアルマに抱かれた事を知ってるの??!!
『お腹を出したまま寝て腹をこわしたとアルマから聞いたぞ。もう大丈夫なのか?』
『え・・・あ、はい。・・・大丈夫です』
なんだその理由は・・・と思いながらも、隊長に知られていない事に安堵した。
『おはよ、リンダ』
『ア、アルマ・・・ぉ、おはよ・・・』
昨日のコトが何もなかったかのように普通に接してくるアルマ。
なんだ、あたしだけこんなに動揺してバカみたいじゃないか・・・
昨日アルマに抱かれたのは、本当に夢か何かだったのかな?
でも下半身にまだ違和感・・・というか、挿入ってた感覚が残ってるから夢じゃないんだよね・・・?
下腹部を抑えながら昨日のアルマとの情事が思い出されて思わず顔がボッと熱くなる。
『昨日のコト思い出してるの?いやらしいね、リンダ』
『!!!!』
耳元でボソッとアルマに言われた事で、さらに思い出してしまい顔が熱くなる。
何なの、何なの?!
こっちはアルマのせいでこうなってるのに、何であんたはそんな平然としていられるわけ??!!
『リンダ、顔が赤いし熱があるんじゃないか?今日の稽古は良いから部屋で休んで・・・』
『大丈夫ですっ!アルマっ、次は負けないんだから!覚えてなさいよ!!・・・じゃあ、走ってきます!!!』
『え、ちょ、リンダ??・・・えぇぇぇぇぇぇ???!!!』
『・・・ぷっ、負けないって・・・何を勝負してるんだか』
それから体力も筋力も付け、剣の実力も王国騎士団の兵士と普通に渡り合えるくらいまで実力をつけては、事あるごとにアルマに挑んだ。
『アルマっ!今日は負けないんだからっ!!』
『・・・ふっ、返り討ちにしてあげる』
時には、アルマから賭け事のような持ち掛けもあった。
『リンダ、俺よりも多く魔物を倒したら、いう事何でも聞いてあげる』
『ホント??!!』
『その代わり、俺の方が多かったら今夜は俺の部屋ね』
『わかった!!負けないんだから!!!』
稽古の素振りや、冒険者登録してクエストをこなす時など、何かをきっかけにしてはアルマと身体を重ねる、そんな不思議な関係が続き、いつの間にかそれが当たり前になっていた。
この関係がどういうモノかわからないけど、気楽で心地良くてあたしとアルマにはちょうど良い・・・そう思って疑わなかった。
あの時までは・・・――――――
◆
『アルマからの連絡が途絶えました。宿にもおらず、行方も分かりません・・・』
エリュシオン様の故郷であるエルフの里に向かう途中、記憶を失ったエリュシオン様の呪いを解く情報を探すため、先行してトルク村に言っていたアレク様とアルマ。
呪いはサーヤが加護を与えてもらった精霊王様に解いてもらったから、アルマ達とは途中のトルク村で合流する予定だった。
冒頭の連絡があったのはそんな時だ。
冷静なエリュシオン様の指示の元、御者をしていたあたしは急いで馬を走らせた。
気持ち的には凄く飛ばしたかったけど、一人じゃないし安全運転と指示をされていたので、危険がない程度の速度を心掛けた。
馬車の中で、エリュシオン様達が話している内容が少しだけ聞こえる。
アルマは元々奴隷で、エリュシオン様を依頼により暗殺しようとするも返り討ちにされ、そのままエリュシオン様に仕える事になったらしい。
今までのアルマの発言や、時々何かを思い出したような辛い顔をするのは、その時の辛い記憶があったからなんだとあたしは素直に納得した。
元奴隷だったと知られたくなかったみたいだけど、元奴隷だろうがアルマはアルマだ。
知ったところであたしは変わらないのに・・・結構信頼されてきたと思っていたけど、まだまだ足りないらしい。
情報収集するために、アルマがいるかもしれない奴隷商に潜入したが、どこを探してもアルマはいなかった。
いない事に安堵はしたけど、地下にいた傷や痣だらけの奴隷を見た時、アルマも昔あんなひどい目に遭っていたのかと思うと心が痛んだ。
奴隷商にいないなら、アルマのことだ。どうせお腹が減って動けなくなったに違いない・・・―――――
『アルマって本当に奴隷商にいるんですかね?あいつのことだから、お腹すいて食べ物探してるうちに落とし穴に落ちたとかありませんか?』
他の人よりも一緒にいる時間が長い分、ある程度の行動パターンがわかるのと、なんとなくそんな予感がしてあたしは村の情報収集ではなく周囲の森の探索に切り替えた。
そして、サーヤが同じ森へ精霊王様達と出かけていた先で、食べ物に釣られて木から落ちてきたアルマを発見したと知らせを受け、エリュシオン様やサーヤ達がアルマを連れて宿に帰ってきた。
『アルマぁぁぁぁぁ!!!』
宿に帰ってきたアルマを見た瞬間、無事に見つかった安心感よりも心配かけさせた怒りが勝っていたあたしは、再会した時アルマを思いっきり蹴って吹っ飛ばした。
(ドガッ)
『・・・リンダ、痛い』
『当たり前でしょ!痛くしてるんだからっ!!』
吹っ飛ばされてもちゃんと受け身を取っていたアルマは、“痛い”と言いながらも傷など負っていない。
『心配したんだから、バカ。・・・ちょっとだけだけど』
『・・・うん、ありがと』
あたし達なりの挨拶を交わしてからアルマに事情を聞くと、昔の知り合いから逃げてるうちに空腹で動けなくなっていたらしい。
『やっぱりかぁ・・・アルマのことだから空腹でどこかに落ちたんじゃないかと思ってたんだよね』
『リンダの言う通りだったな。怪我をしたものの、大丈夫そうで良かった』
『あぁ、てっきりお前がまた奴隷として売られてしまうのかと冷や冷やしてしまったよ』
『隊長っ!それは・・・』
やっぱりアルマは自分が元奴隷であることを気にしてる。
そんなに気にする事なんだろうか?
『大丈夫だよ、アルマ。皆知ってる。あたしなんて、奴隷商に潜入してアルマがいないか探しちゃったしね!』
『は?皆??リンダ・・・潜入って?!』
『それだけ、今の仲間であるアルマが大事ってことだよ!わかった?』
『・・・あり、がとう』
無器用に『ありがとう』と笑う顔は、アルマの素の顔なんだろう、そんな気がした。
その後アルマを部屋まで送り、エリュシオン様に治してもらった足や他に怪我がないことを確認してからアルマに抱きついた。
『・・・リンダ』
『・・・ホントに、心配したんだから・・・バカアルマ』
『うん、ごめん。・・・ちょっとドジした』
ちょっとなのか?とツッコみたかったが、自分らしくないかもしれないけど、今はそれ以上に言いたくて仕方がない事があった。
『・・・怖かった。アルマが、もし、いなくなったらって・・・』
『リンダ・・・』
『やだ。アルマがいなくなるなんて嫌だ。いなく、ならないで・・・』
エリュシオン様の生活が安定してきたから、危険な仕事は減ったと聞いたけど、アルマやアレク様は潜入や諜報を担当する事が多いからどうしても危険が伴う。
無理だとわかっていても、どうしても黙っていられなかった
『・・・わかった。なるべく危険な事はしないし、今度から非常食も多めに持つようにする。・・・だからリンダも俺のお願い、きいて?』
『アルマの、お願い・・・?』
『・・・もう、奴隷商とか危険な場所に潜入捜査とかしないで。必要なら俺が行くから。・・・今回は大事に至らなかったけど、女の子には危険すぎる』
『あたし、普通の女の子よりずっと強いよ?』
これでも大分強くなった自負はあるし、今だって旅行中だけど最低限の鍛錬は欠かしていない。
“女の子”と言われたのは少し嬉しかったけど、あたしはサーヤみたいな誰かから守られるような“か弱い女の子”ではない。
『それでも・・・俺にとっては・・・』
『え?』
『・・・いや、何でもない。俺はもう寝る。リンダも部屋に帰りな』
さすがに疲れてるだろうアルマを休ませたい気持ちもあったけど、どうしても離れたくなかった。
『・・・やだ。あたしも一緒に寝る』
『・・・え?』
『ダメ?』
やっぱりダメなんだろうか。だったら明日は良いかな?
『・・・寝るだけで済むと思ってる?』
『!!・・・寝るだけじゃなくても、良い・・・』
『!!!!』
疲れてるはずなのにあたしを抱く体力はあるようで、あたしなりに良いよと返事をしたら、また額に手を当ててアルマは深いため息をついた。
あれ?言葉を間違えたんだろうか?
『ごめん、やっぱ疲れてるよね。部屋に戻るよ。おやす・・・』
『帰すわけないでしょ、バカリンダ』
『へ?・・・んんっ?!』
その日のアルマは、いつもよりも優しく“ここにいるよ”と自分の存在を刻み付けるように、何度も果ててはあたしを抱いた。
いつもみたいにあたしをからかう発言は一切なく、時折切なく甘くあたしの名前を呼ぶアルマの声に、悲しくもないのに涙が溢れ、あたしも必死にアルマの名前を呼び返してはぎゅっと抱きしめた。
それから、今まで楽しくじゃれ合うように重ねていたあたし達の逢瀬の時間は、いつしか甘く切ない時間へと変わっていった。
そして、サーヤを始めモニカ様やアレク様までもが結婚し、周りが子供と触れ合う姿を見て、あたしは少しだけ羨ましいと感じるようになった。
でも、あたしにはアルマとの関係を進展させる勇気はなかった・・・―――――
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※アルマ行方不明の話は『トルク村で過ごそう ~飼い猫の帰還~』辺りのお話です。
応援ありがとうございます!
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