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第三章
121「ファンタジー要素のある世界の真実④」
しおりを挟む「賢者⋯⋯あんた本当に世界統一主義者とはつながりはないのか? 本当は世界統一主義者側の人間じゃないのか?」
「⋯⋯⋯⋯」
俺は、賢者にずっと抱いている不信感の正体が『世界統一主義者』と裏でつながっていることではないかと思い、そのままド直球に聞いた。
「どうして、そう思うのかね?」
「あんたが何かを隠しているように思えるからだ」
俺はこのタイミングで賢者に真意を確認しようと、覚悟して思うことをすべて言葉にした。
「確証はないし、よくしてもらっているのもわかる。でも、俺にもわからないが、何か『違和感』を感じるんだ⋯⋯あんたから。だが、それが良いものか、悪いものか、何なのかはわからないがな」
「⋯⋯⋯⋯」
「だから、このタイミングであんたに聞いた。俺だってこのまま『天罰』や賢者⋯⋯あんたとやっていくのなら、この『違和感』を払拭するのは避けて通れないと思っているから」
「⋯⋯いいだろう。では、まずさっきのソラ君の質問に対して答えよう。世界統一主義者とつながりはあるのと聞いたな。答えは⋯⋯⋯⋯ある」
「「ええっ?!」」
「⋯⋯⋯⋯」
唐沢と胡桃沢が賢者の言葉に驚くも、ソラは冷静に話を聞いている。
「ただし、そいつらの仲間とかそういうことではない。正直、これ以上のことは話せないが、しかし、一つだけ言えることは⋯⋯⋯⋯『この世界の真実』を暴くためだ」
「! この世界の⋯⋯真実?」
「そうだ。今、話した『ロキ』や『世界統一主義者』、そして『朧』『転移者』、もっと言えば『ダンジョン』『魔法』『魔物』⋯⋯といったのも含めてな」
「賢者⋯⋯あんた⋯⋯」
「そうだ。私はこの世界の『ファンタジー要素の地球の正体を知りたい』のだ。ソラ君は『ファンタジー要素の地球を体験したい』と言ってたろ? 私は『体験』ではなく『正体』を知りたいのさ。そして、その目的の先⋯⋯答えを知っているのはファンタジーなこの世界を作った自称神様の『ロキ』だと思っている。だから最終目標は彼の正体と目的を知ることだ。⋯⋯で、その目的のために『世界統一主義者』たちとつながっているということだ」
「つ、つまり、それって⋯⋯」
「二重スパイってこと?」
「そういうことだ。でも、それくらいしないと、世界統一主義者たちやロキたちの信用は得られないからね」
「それって、炎呪や他のみんなも知っているのか?」
「炎呪は知ってる。でも、不師斗はどうだろう? あと、それ以外はゲオルグ・シェフチェンコとレヴィアス・アークシュルトくらいかな? まー彼らもソラ君と同じように私を二重スパイと分かった上で接しているし、警戒もしている」
「⋯⋯そうか」
「だから、ソラ君にも唐沢君や胡桃沢君にも言っておくよ。私を『二重スパイ』と分かった上で付き合いなさい。私もそのつもりで接するから。だから、私の言うことは鵜呑みにせず、信頼してくれたまえ」
「「「っ!!!!」」」
賢者の言葉は何とも矛盾したおかしな日本語ではあった⋯⋯⋯⋯が、俺も含めて唐沢も胡桃沢も何となく、その言葉にすごくしっくりきた。
「どうやら、理解してくれたようで何よりだよ」
賢者がフッと笑顔を浮かべた。
********************
「さて、では、とりあえず今後についてまとめよう。やるべきことはこんな感じだ」
と言って、賢者がホワイトボードに箇条書きで『やるべきこと』を書いた。
——————————————————
『当面やるべきこと』
1.自身のレベルアップ(ダンジョンでのレベリング)
2.残り一人の転移者の捜索
3.朧のアジト及び足取りの捜索
4.朧の捕縛
——————————————————
「ロキや世界統一主義者に関しては、これは『天罰』の仕事ではない。だから、調べたり何かしたいのであれば、あくまで個人行動となる。もちろん本人責任でな。ただし、個人行動で動く場合、私は感知しない。⋯⋯だが、私にそんな行動を見せるなよ。さっきも言ったが二重スパイと思って行動しろ? 言いたいことはわかるな?」
「「は、はい⋯⋯」」
「ああ、わかった」
「うむ。ということで、明日から早速ダンジョンでのレベリングを頼むぞ」
「あ、あの、すみません⋯⋯」
「ん? 何だね、胡桃沢君?」
「私と唐沢は帯同になると言ってましたけど、どこの探索者集団なんですか?」
「ん? ああ、そうか。言ってなかったね、失敬。まー有名どころにお願いしておいたよ」
「「有名どころ?」」
「『乾坤一擲』って探索者集団なんだけど⋯⋯知ってる?」
「「えええええええええええええっ?!」」
「け、『乾坤一擲』って、あの⋯⋯蓮二さんのいる『乾坤一擲』ですよね?」
「そうだね」
「「っ!!!!」」
二人が絶句した。
そう言えば、ウチの家族も『乾坤一擲』の蓮二さんって人のファンだったな~。
「賢者⋯⋯」
「お? 珍しい。何だい、ソラ君?」
「お、俺も、その二人が帯同する『乾坤一擲』の蓮二さんを見てみたいので、一緒についていってもいいか?」
「ああ、もちろん。そうだ。何なら挨拶も兼ねて初日だけでも帯同に参加すれば?」
「えっ?! いいのか?」
「うむ。問題ない。まーその後ソラ君には『Sランクダンジョン』へ行ってもらうよ?」
「も、もちろん。それで問題ない」
「では、決まりだな⋯⋯」
こうして、賢者との話し合いは終わった。
俺だけでなく、賢者も含めて、いろいろと『告白祭り』だったが、結果的には良かったと思う。
賢者の二重スパイの話や世界統一主義者という組織の話。そして、この世界にダンジョンを出現させたという⋯⋯自称神様『ロキ』。ていうか、ダンジョン出現がロキの仕業だということなら、やはり本物の『神様』なのだろうか?
まだ、この世界のことはわからないことだらけだ。
でも、ワクワクが止まらない。
結局、こんな状況でも『ワクワクできる』っていう人間だからこそ、ロキに選ばれてこの世界にやってきたのだろう。
そう考えると、俺もまた賢者と似たもの同士であることを改めて感じさせられた。
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