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四章 物語は終盤へ

包まれたシャル ライアン

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シャルをシーツに包み馬車まで運んだ。

御者台で待っていたレノックは俺達の姿に驚いた顔をしたが、それも一瞬だった。
喩え異様な光景だったとしても、シーツの中の人物がシャルだと知られないように…。
シャルを運びながら先ほどの会話を思い出していた。

王子とシリクレッチは異母兄弟…。

追い出されたとはいえ、書類上は分からないし侯爵家に在籍しているのでまだ可能性はある…。

それに…王子は確かに光属性の魔力に拒絶する…。

シリクレッチが王族に名乗りを上げた時、支持はさほど多くはないだろう…。
だが、フィンコック公爵にシリクレッチ侯爵、ギノフォード侯爵に俺やエドバルド、フレデリックの伯爵家は勿論支持するだろう。

それにギノフォード侯爵家は魔法省に顔が利くし、シャルも少なからず魔法省に恩がある。
多少分が悪いかもしれないが、王子の光属性への拒絶も加われば…。
そうなればシリクレッチが王族と名乗りを上げる事を恐れ、大事には…。

なんて都合よくは行かないか…万が一を…考えた方がいい…。

「んっん゛ん゛んふぅんっ…ラィ…」

シーツに包まれたシャルがモソモソと動き顔を見せた。

潤んだ瞳に紅潮する頬…誘うような唇。

誘われているのが分かるが、ここで乗るわけにはいかない。

「アレッ…ゥ…エド…んっんふぅん…リックゥン…スティ…ン…んっ…レノ…」

すぐにでも楽にしてやりたいが馬車では危険すぎる。
万が一だがフェロモンが暴走してしまえば気密性の低い馬車では外に漏れ、何事かと様子を見に来た人間を巻き込む恐れがある。
部屋に着くまではなんとか耐えてほしい。

もう少しなんだ…シャル…耐えてくれ…。

「はぁはぁはぁ…んっ…ラィっんっん…して…僕…おかしくなっちゃうよ…」

「…今はダメだ。」

「アレックス…このままだとフェロモン出ちゃうぅ…んっ」

「ルゥ…もう少しです…耐えてください…」

「エドォ…」

「ルマン落ち着け…」

「…リック…」

「もうすぐです、もうすぐ。」

「…んっく…ひっく…スティーヴン゛…」

「頼む…泣かないでくれ。」

何も出来ず、シーツ越しのモゾモゾと動くシャルを力強く抱きしめ荒い息遣いを耳元で聞かされながら耐えてくれと祈り続けた。

早く…早く屋敷に着いてくれ…頼むレノック…。

レノックもシャルの状態を目撃し異常事態と判断し普段の馬車ではあり得ない早さで屋敷を目指していた。

王宮から一番近い屋敷がフィンコック家だ。

なんとかシャルのフェロモンが暴走することなく屋敷が見えてきた。
馬車を降り屋敷に着けば使用人が慌ただしく動くが俺達が部屋へ入ると誰も様子を見に来ることはなかった。

そして、俺達はベッドにシャルを降ろしシーツを脱がせた途端甘い香りに支配され俺たちの記憶は途絶えた。
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