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五章 元の世界
88.ヘレナの復讐-1
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アレクサンドラが『いっぱい気持ち良くなった』後、真子は腰を抜かして歩けなくなってしまった。
アレクサンドラは仮眠室のシャワーを使って真子を甲斐甲斐しく整えると、置いてあった服に着替えさせて歩けない真子を抱きかかえたまま月の宮に戻った。
真子たちが月の宮に帰った頃には、フェリシアはもう食事を終えて自分の部屋に戻っていた。
月の宮のお手伝いさんに夕食の時間に遅れたことを詫びてから、二人で一緒に夕食を食べた。
アレクサンドラが夕食後も真子を部屋まで抱えて運ぼうとしたが、それはさすがに断った。
(フェリシア様には全部バレてる気がする。明日、顔を合わせるのが恥ずかしいな……)
夜、アレクサンドラと一緒にベッドに潜り込んで、暗闇の中で真子は次の日の事を考えると少し気恥ずかしかった。
それでも約束は真子がしたものだったし、何より肉体的にはさらに疲れたはずのアレクサンドラが顔色をツヤツヤさせてたいそう喜んでいる様子を見たら、真子は自分まで嬉しくなってしまった。
ベッドの中で手を繋いで寝ながら真子がすりとアレクサンドラの肩に頬を寄せると、アレクサンドラが真子の髪にキスをしたのを感じた。
アレクサンドラが繋いだ手の親指でこちょこちょと真子の手の甲をくすぐった。
真子がギュッと手を握ると、アレクサンドラも同じように握り返してくれた。
こうして二人でいれば何も怖いものなど何も無い気がした。
真子は大好きなアレクサンドラの香りに包まれて満ち足りた気分で眠りについた。
*****
あれからアレクサンドラはほぼ毎日、月の宮に泊まっていた。
たまに用事があって自分の家に帰る日もあるが、基本は月の宮に泊まるので仕事が早く終わる日は真子がアレクサンドラの執務室まで迎えに行って一緒に帰っていた。
星見の塔で時を告げる鐘の音を聞いて真子が帰る支度をした。
「さて、アレクのお仕事終わったかな~」
今日も帰りが早いはずなので、真子がアレクサンドラのお迎えに執務室に向かう道を歩いていると物陰から誰かが現れた。
真子の目の前には目隠しをした白い髪の少女、ヘレナがいた。
「あなたは……!」
真子が大声を出そうとした瞬間、ヘレナの影から黒い腕がいくつも伸びて襲いかかってきた。
黒い腕は真子の口を塞ぎ四肢に巻きつき拘束すると、真子を宙に浮かせてそのまますぐ側の小部屋に連れ込んだ。
そこは掃除用具などが仕舞ってある倉庫のようで、真子は掃除用具の隙間に押しつけられた。
「……! ……!!」
真子が必死に抵抗しようとするが、手にも足にも黒い腕が巻きつき動けない。
ヘレナの影からニュルと細い黒い腕が伸びてきて真子の手首に巻きついた。
細い黒い腕は真子のバングルに触れると熱いものにでも触れたように一瞬その腕を引っ込めたが、すぐに何本もの細い腕が伸びてきてバングルにグルグルと巻きついた。
バングルに強い圧力がかかったと思ったら、バキリ、とバングルが割れた。
(バングルが!!)
真子がキッとヘレナをにらむとヘレナが叫んだ。
『ディーを返してっ!! 私にはディーしかいなかったのに!!』
目隠しの下からヘレナの涙がこぼれ落ちる。
『あいつも大切な人を失う辛さを思い知れば良いんだ……』
ヘレナの影が色を濃くしたと思ったらブワッと部屋中に黒い影が広がった。
小部屋の壁も床も天井も真っ暗な影に覆われる。
真子は何とか身体を動かそうとするが、黒い腕に拘束されていて逃げられない。
ガン!
外から小部屋のドアを叩く音が聞こえた。
「マコ! 無事か!」
フェリシアが真子を呼ぶ声がする。
バタバタと人が集まってくる足音もする。
『チッ、もうバレたか』
ヘレナがドアをふり返り吐き捨てた。
「フェリシア様下がって! ドアを壊します!」
ドアの向こうでアレクサンドラが叫んだ。
ガン!
ドアに何かが当たる音がしてミシとドアが歪む。
(アレク! 助けてっ!!)
真子がドアの向こうに助けを求めた瞬間、真子の身体は黒い腕に引っ張られて、ズブとヘレナの黒い影に飲み込まれ沈んでいった。
(アレク!! アレ……ク……)
アレクサンドラは仮眠室のシャワーを使って真子を甲斐甲斐しく整えると、置いてあった服に着替えさせて歩けない真子を抱きかかえたまま月の宮に戻った。
真子たちが月の宮に帰った頃には、フェリシアはもう食事を終えて自分の部屋に戻っていた。
月の宮のお手伝いさんに夕食の時間に遅れたことを詫びてから、二人で一緒に夕食を食べた。
アレクサンドラが夕食後も真子を部屋まで抱えて運ぼうとしたが、それはさすがに断った。
(フェリシア様には全部バレてる気がする。明日、顔を合わせるのが恥ずかしいな……)
夜、アレクサンドラと一緒にベッドに潜り込んで、暗闇の中で真子は次の日の事を考えると少し気恥ずかしかった。
それでも約束は真子がしたものだったし、何より肉体的にはさらに疲れたはずのアレクサンドラが顔色をツヤツヤさせてたいそう喜んでいる様子を見たら、真子は自分まで嬉しくなってしまった。
ベッドの中で手を繋いで寝ながら真子がすりとアレクサンドラの肩に頬を寄せると、アレクサンドラが真子の髪にキスをしたのを感じた。
アレクサンドラが繋いだ手の親指でこちょこちょと真子の手の甲をくすぐった。
真子がギュッと手を握ると、アレクサンドラも同じように握り返してくれた。
こうして二人でいれば何も怖いものなど何も無い気がした。
真子は大好きなアレクサンドラの香りに包まれて満ち足りた気分で眠りについた。
*****
あれからアレクサンドラはほぼ毎日、月の宮に泊まっていた。
たまに用事があって自分の家に帰る日もあるが、基本は月の宮に泊まるので仕事が早く終わる日は真子がアレクサンドラの執務室まで迎えに行って一緒に帰っていた。
星見の塔で時を告げる鐘の音を聞いて真子が帰る支度をした。
「さて、アレクのお仕事終わったかな~」
今日も帰りが早いはずなので、真子がアレクサンドラのお迎えに執務室に向かう道を歩いていると物陰から誰かが現れた。
真子の目の前には目隠しをした白い髪の少女、ヘレナがいた。
「あなたは……!」
真子が大声を出そうとした瞬間、ヘレナの影から黒い腕がいくつも伸びて襲いかかってきた。
黒い腕は真子の口を塞ぎ四肢に巻きつき拘束すると、真子を宙に浮かせてそのまますぐ側の小部屋に連れ込んだ。
そこは掃除用具などが仕舞ってある倉庫のようで、真子は掃除用具の隙間に押しつけられた。
「……! ……!!」
真子が必死に抵抗しようとするが、手にも足にも黒い腕が巻きつき動けない。
ヘレナの影からニュルと細い黒い腕が伸びてきて真子の手首に巻きついた。
細い黒い腕は真子のバングルに触れると熱いものにでも触れたように一瞬その腕を引っ込めたが、すぐに何本もの細い腕が伸びてきてバングルにグルグルと巻きついた。
バングルに強い圧力がかかったと思ったら、バキリ、とバングルが割れた。
(バングルが!!)
真子がキッとヘレナをにらむとヘレナが叫んだ。
『ディーを返してっ!! 私にはディーしかいなかったのに!!』
目隠しの下からヘレナの涙がこぼれ落ちる。
『あいつも大切な人を失う辛さを思い知れば良いんだ……』
ヘレナの影が色を濃くしたと思ったらブワッと部屋中に黒い影が広がった。
小部屋の壁も床も天井も真っ暗な影に覆われる。
真子は何とか身体を動かそうとするが、黒い腕に拘束されていて逃げられない。
ガン!
外から小部屋のドアを叩く音が聞こえた。
「マコ! 無事か!」
フェリシアが真子を呼ぶ声がする。
バタバタと人が集まってくる足音もする。
『チッ、もうバレたか』
ヘレナがドアをふり返り吐き捨てた。
「フェリシア様下がって! ドアを壊します!」
ドアの向こうでアレクサンドラが叫んだ。
ガン!
ドアに何かが当たる音がしてミシとドアが歪む。
(アレク! 助けてっ!!)
真子がドアの向こうに助けを求めた瞬間、真子の身体は黒い腕に引っ張られて、ズブとヘレナの黒い影に飲み込まれ沈んでいった。
(アレク!! アレ……ク……)
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