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ダンジョンではほとんど口しか出せない

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 入口一つの小部屋なのでドロップアイテムを箱に入れ直して収納する。マジ箱助かる。これはタララんちの家財道具にする事で話がまとまった。

「下に降りるより、この階層を漁り尽くしたいと思うのだが、みんなはどう思う?」

「あたいはどっちでも。けど人が入って無いなら箱の中身は期待出来るんだよね?」

「どうせポーション「ソーマよ!」だろうけどな」

「階段の確認をして、余裕があれば、と言うのはいかがでしょうか」

「それもアリだな。下の方が良いの入ってる可能性もあるし」

「エリクサーで一攫千金よ!」

 乱獲しても売り抜けないと思うぞ?もしくは貴族や国に奪われるか。お前の場合、命まで取られかねん。ま、そんな凄い物こんな所にゃ落ちてないから心配なし。
 休憩を終えて小部屋を出て、東の入口方面に進む。タララの脳内マッピングが尋常じゃない。収納持ちで前衛盾で、範囲攻撃持ちのマッパー。ダンジョン特化が振り切れてるぞ。
 途中、分かれ道に入ったが全て行き止まり。敵を煙にして盾を落とした入口にやって来た。

「ここがもう一つの入口ですか…」

「普通には帰れないわね」

「梯子もかかってないし、ギルドが手を付けてないのかな?情報料で100万も払ってんのに」

「100万…」

「入口見つけられないんじゃない?部屋を見つけて、穴に飛び込む勇気無いのかも?」

「それ勇気とは言わないからなー。罠を見ながら進むから1列で行くぞー」

「あーい」「了解です」「うむ…」

「どうした?」

 小さいヤツが振り向いてこっち見てる。確認した方が良いのか聞くと、コクリと頷いた。後ろからの接敵は俺が警戒しているが、ここからは罠を探すのに集中してしまう。上から来て挟み撃ち、なんて事も無いとは言えない。

「ちょっくら上を見てくるよ」

「登れる?」

 試しにジャンプしてみる。飛躍スキルが火を吹く事は無かった。金属鎧の重さでギザギザに指をかけても体を上げられない。

「ゲイン、乗って」

「やれんのかよ…」

「たまには体力使わなきゃねー」

 タララが盾を頭の上に掲げてしゃがみ込む。その上に乗ってタララが持ち上げると言う。ここは冒険者らしく冒険してみるか。
 しゃがんだタララの盾に膝立ちで乗ると、合図とともに浮き上がる。次の合図で立ち上がり、穴のギザギザに両手と片足をかけた。

「ふひーっ、上げられて良かったー」

「端っこで待ってろ。ここは敵はいないはずだが居たら困るし、隠し扉が開いてるかは確認しておく」

「壁のブロックで階段作れば良かったのに」

「「あ…」」

 冒険者は短絡的である。帰りはタララの作った階段で降りたよ。ちなみに上の小部屋は真っ暗で、罠も復活していた。罠にかかって痛い目に遭っても扉は開けるだろうから、人の侵入は無いと見て良いと思う。階段にしてたブロックを縦積みして穴が塞がるようにしておいた。敵は少ない方が良いからな。

 タララを先頭に、感知系スキルを全方位に張り巡らせて先を行く。タララの後ろは俺。腰鎧に手をかけて、いつでも引っ張れるようにはしてあるが、フル装備タララを引き寄せる程の力は多分無い。だから押す。押されなくなったら動くなって事だ。俺の後ろに小、大と並び、ランタンで道を照らす。

「ゲイン、敵」

「よし、位置に付け」

 敵がいても罠の存在は気が抜けないが、動かず迎撃する分には安全だ。ゴブリンとウルフを煙に変えながら進むと、いくつか目の分岐の先に下へと向かう階段があった。

「穴から行けば階段は近いんだねー」

「箱を取るなら西からか」

「何度も出るのですか?」

「翌日にはまた湧いて出るらしいぞ。ただし中身への期待感が薄まるそうだ。休憩と食事にしよう。ソーサーと干し肉1枚ずつ食べたら出発だ」

「残りは?」

「おやつだよ」

「そか」

 非常食とも言うがな。灯りはあれど、真っ暗な中では時間感覚は腹加減に頼る事になる。2枚目を食べたら帰りましょって感じだ。壁に寄り添い、みんなのコップに水を入れ、タララから食料もらっていただきます。

「全然足りない」

「食後に説明するが、食べ過ぎない方が良いよ」

「かたい」

「噛み付くスキルでも取るか?誤差程度に食べやすくなる」

「誤差なんて無駄じゃないの」

「金のチップで噛み付きは見た事ないが、多分10万そこらで買えるぞ。それなら誤差じゃない」

「絶対いや」

 女子供の攻撃の、最終手段だと思うのだがな。ガキだと思って甘く見たら指がありませんでした…とか、かなり良いと思う。食欲失せる前に食べちゃおう。
 短い食事を終えて、階段を降りる。階段のある部屋ないし、階段のある周囲は罠やモンスターはいないとされている。だが警戒は怠らない。泊まりがけの野盗がいるかも知れないからな。10ハーンか20ハーンか。少し長めの階段を降りた先は、正面に木の扉があるだけの小部屋だった。

「タララ」

「あいよー」

扉の前に盾を添えて、そっと開ける…。罠は無しでほっとする。感知系スキルで確認はしているが、メロロアみたいに看破される事もあるのだ、気は抜けない。
 扉の向こうは一本道で、罠多数。モンスターを狩れないのが残念だ。

「罠がある。道を作って進もう」

「時間かかるね」

「数が多過ぎるし、矢だけとは限らないからなー」

「ねえゲイン、さっきの食べ過ぎちゃダメな理由って?」

「ああ、トイレが無い」

「「「あ…」」」

「したくなったら言えよ?俺達は穴が掘れるんだ。トイレくらい作ってやる」

「あの、普通の冒険者はどのように致すのでしょうか?」

「後ろ向きに囲んで警戒してもらうそうだ」

「あたいずっと我慢してた」

「体に悪いし集中出来ないだろ」

「私も、我慢してた」

「気兼ねなく言えよ?漏らしたら洗うの俺なんだから」

「今すぐしたい!」

 階段の部屋に戻って細くて深い穴を切り取り、周りにブロックの壁を作って簡易トイレとした。大きい奴隷を警戒に当たらせ好きなだけ出してらっしゃい。

「拭く物が無いのよ!」

 高いけど獣皮紙1枚あげた。折角採ったカツリョクソウで拭かせるのは何だか可哀想に思えてしまったから。

 みんなの準備が整い、探索を再開する。とは言えこの一本道は歩けない。壁からブロックを切り取り、罠を踏まない位置に乗せる。それを4個、俺が通れる高さまで切り取り一歩前進。100ハーン程の一直線に20リットもかかってしまった。罠は100を確認してから数えるのを止めた。罠のタイプは足踏み式がほとんどだったが、紐切り式の物もあって難儀した。と言うか解除に失敗して吊り天井と落とし穴が同時に起動したのは驚いた。

「普通の冒険者、これどーするの?」

「罠の無い所に石など置いて、そこを歩く…かな?」

「吊り天井を落とさないと先に進めないとか、冗談じゃないよねー」

「これで実は落とし穴の下に道がありました、とかだとシャレにならん。無くて本当に良かったよ」

「ゲイン様が普通でなくて良かったです」

 いやいや、俺普通の冒険者だから。小休止を終えて先へと進むと、分かれ道の両方に敵がいるようで、感知系スキルとタララが反応した。

「知らない匂い」

「数がいるな。右10の左12」

「おびき寄せましょうか?」

「問題ない。危険な仕事をさせるつもりはないからな。タララ、ブロックいくつ持てる?」

「3つくらい」

「俺は5。取れるだけ取ってくれ」

 壁からブロックを取れるだけ取り、タララに1発、正面に向けて撃ってもらった。

ドガッ!!

 壁に当たったブロックが壁諸共に粉々に砕け、左右にいる敵に敵襲を告げた。

「ガルル!」「グルルルル…」

「来てる来てる。なかなか好戦的な奴等だな」

「ダンジョンだからねー」

 総勢22匹。犬のような顔をしたモンスターが走ってくる。コボルトだな。ゴブリン程の大きさで、素早くて群れる奴等だ。冒険者の話の定番ネタで、子供の頃はよく聞いていたんだ。

「作戦通りに」

「おーよ!」

「弾幕、撃て」

 タララの放つ小石の弾幕が、先を走る敵の足を止める。一塊になって防御に徹するしかなくなった敵に、次の一手が待っていた。

「ブロック、撃て」

 タララと同時にブロックを全て撃ち込む。一気に8個のブロックが通路を埋めるような間隔で飛んで行く。避ける隙間など無い。1つ100ナリの塊が猛スピードでぶつかって、生きていられる者は少ない。
 あらかた煙になった所で小石での射撃に切り替え一匹ずつ殺してく。弾幕拾うのよろしく。俺とタララは左右の警戒だ。

「ゲイン様、魔石と武器にチップです」

 お、短剣のチップだ。武器はナイフで大した事ないな。6つも落としたのか。

「お前ら2人に一本ずつやる。できるだけ武器としてではなく採取用として使え」

「お金にしないの?私使った事ないけど」

「多分安い。お前はこのチップも使え。0と1では全然違うから」

「え、ええ…。どう使うのよ?」

 使い方を教えると、手で千切ってもくもくを浴びていた。

「ステータスを念じればスキルが付いてるはずだ」

「ん…、短剣剣術ね…。極僅か…」

「動かない草相手なら負けないな」

「勝ってもドヤ顔できないわよ」

 金にはなる。

「短剣のチップなのにドロップしたのはナイフなんだねー」

「ダガーもナイフも大まかに言えば同じ物だからな」

 弾幕を拾い終えて、どちらに行こう?タララの感覚に頼ると右と言う。後ろからの脅威に備えて、左の通路はブロックで埋めた。小休止したのでそろそろ行くか。
 敵が出るので罠は無いだろうって事で、戦闘陣形で進む。俺が感知系スキルで全方位見てるから問題は無いと思いたい。

「ゲイン、前から来るよ。多分コボルト」

「左右の扉の中が見えない。あまり進むな」

「来るまで待つね」

 他の部屋は見れるのにここだけ見れないとか罠だよな。挟み撃ちされて逃げ込んだら何かしらされるタイプの罠だと思う。敵がいるならそれはそれで稼げるので、前のを殺ったら見てみよう。
 光を見て近付いて来た敵を投石で殺し、左右の部屋を確認しよう。

「中には入るなよ?閉じ込められたら死んじまうぞ?」

 タララが盾を添えて扉を開けたら、そっと中を覗き込む。案の定、見た目には何も無いけど確実に何かある部屋だった。

「何も無いじゃない」

「何も無いから安全か?」

「目で見たものだけを信じてはいけない、と言う事ですね」

「んで、何か見えたの?」

「矢とかガスじゃない罠があるな」

「なんだろね?」

「よし、無視しよう」

 もう片方の扉も同じ方法でそっと覗いてみるが、同じ作りで罠しか無かった。扉の前にブロックを積んで先に進もう。箱でもあれば飛付くヤツもいるのにな。
 石ころ等を回収しながら歩いて行くと、暫くしてゴンゴンと扉を叩く音が聞こえた。バックアタック用の罠だったらしい。その後、感知系スキルで中の見えない部屋には蓋をしてコボルトを殺して進むと、俺達が作った行き止まりに辿り着いてしまった。この通路、左から行ったら敵との遭遇中にオカワリが2部屋分来てたって事か。それは困るな。

「ぐるーって回ったけど、行き止まりなのかな?」

「開けてない扉の中に階段があったのかも知れんね」

「骨折り損じゃない」

「そうだな。少し休憩したら折り返して、扉を開けて回ろう」

「あたいお腹空いちゃった」

 仕方ないな。今回は扉を開けて階段の場所を調べるまでにして帰る事にして、2枚目のソーサーと干し肉を齧り水を飲み、早々に出発した。

「トイレは階段前だ。我慢出来なきゃ言ってくれ」

「あーい」「了解です」「大丈夫よ」

 ドカドカ言ってる扉を開けるのはちょっと怖い。押さえてるブロックを収納してすぐに下がると勢いを付けて飛び出してきたモンスターにタララが弾幕をぶつけ、定位置に付いた俺が狙い撃つ。どの扉も、ゴブリンとコボルトが10匹程度出て来るみたいで、一度発動すると暫く動かなくなるようだ。部屋に入って中を調べてみたがやはり何も無いっぽい。
 全ての部屋から出てきた敵を皆殺しにして、部屋の中を調べたのに階段は無かった。隠し扉も見つけられなかったよ。もしかしてこれより下は無いんじゃなかろうか?丁字路に戻ってきてがっかりの俺達だ。

「階段、無かったね」

「なーんか見落としてる気がするんだよなー」

「穴を空けまくったら良いじゃない」

「またそんな極論を…」

「そうだなあ…。最初の階段も壁の向こうだったし、このダンジョンはそう言う造りなのかも知れないな」

 試しにと、丁字路正面の壁を切り取ってみた。…あったよ、道。本当に骨折り損だった。こうやって冒険者の心を折るのがダンジョンなんだな。

「どうする?行くか?」

「これで階段無かったら遠い方いこ?」

「そうだな。ある程度は稼げるけど箱1個じゃ報われないぜ」

 人が入れる程度に開けて、中に入ると通路になっていて、少し奥には扉。通路にも扉にも罠はなさそうだ。念の為、タララの盾越しに扉を開けて中を覗くと少し広い空間に階段を見つけた。

「やっと階段あったよ」

「え?どれどれー。ホントだ。扉もあるね、開けてから帰ろうよ」

「箱、あれば良いな」

「今日なくたって今度はここがスタート地点だよ!潜れば潜るほどいーもん出るんだから、めげちゃダメだよ」

 中に入って扉を1つ1つ開けていく。なんと、8つの部屋全てに箱が置いてあった。罠のある箱が1つだけあり、他のを回収して今罠箱前にいる。

「壊して開けたら良いのよ」

「もっと良い開け方もあるぞ。メロロアに任せちゃうって開け方がな」

 箱を回収して持ち帰ろうとするが、何故か収納出来ない。まさか?

「なあタララよ。これ、もしかしてミミックじゃね?」

「え?こんな浅い所に?」

「お二人はご存知なのですか?」

「俺は冒険者の話で聞いた事があるだけで見たのは初めてだ」

「鉱山の坑道にもたまーーに出るんだよね。ダンジョンじゃないからバレバレなの」

「どう対処したら良いんだ?」

「ひっくり返して底をぶち壊すか、丁番壊して蓋取っちゃうか。とにかく防御を無くしてから殺す感じかな」

 箱としての価値は無くなる訳か。中身もどうせポーションだろうし、ドロップ狙いで派手にぶっ壊しちゃうかな。

「箱だけ収納したら?」

小さいヤツの意見に光明を見た。しかし…。

「出来るのか…?」

「さあ?」

「試してみて、上手く行ったら素晴らしい発見ですね」

「ダメそうならコレで引っぱたくよ」

 金棒を出して構えるタララ。準備は整ってるみたいだな。背後から箱に触れて集中し、箱だけ収納するイメージを強く持ち、収納した。

「ウゲ…。ギギギ」

「きもっ」

 箱だけ収納する事に成功すると、転がる瓶と赤黒くて柔らかそうな肉塊が現れた。そして、それはすぐにスキルチップを舞い散らしながら肉片になり飛び散った。
 タララが一撃食らわしたのだ。煙になって消えたのを確認して、ふぅーっと長い息を吐いていた。

「初めてコレ使ったかも?」

「この瓶、さっきのとは違うわ!きっとこっちがソーマね!」

「ゲイン様、他にもチップが何枚か落ちておりました」

 ちゃぽちゃぽ鳴らして中身を期待しているが、そんなに簡単に出るモンじゃないからね。大きいヤツが拾って来たチップを受け取って収納する。

「これは私のだからね!」

 瓶は小さいヤツがガメたいらしい。抱き締めて自己主張してる。まあ良いか。どちらにしても俺が収納するんだけどな。

「階段見つけたし、今日はここまでにしよう」

「意外と儲かりそうにないねー」

「深く潜らなきゃこんなもんさ。次は準備を、特に食料をしっかり用意してダンジョン泊でやろう」

「そだねー」

 帰りは落とし穴に階段を作って東側から帰る。罠が生きててどうしようかと思ったが、射出口の前にブロック積んだら解決したよ。


 外に出たら夕方。走って帰りたいけど小さいヤツが足でまといで閉門に間に合わない。と、隠れてしまった夕日が告げている。また野宿か…。

「閉門に間に合わないから野宿するぞ」

「あーい」

 躊躇いなく草薮に入ってくタララを追うように二人の奴隷がついて行く。俺もその後ろを進む。

「ねえゲイン、ソーサー1枚取っておいたのはこのため?」

 森との境目近くに居を構えるため、草を倒したり刈り取ったり、ブロックで壁と壕を作っているとタララが聞いて来た。

「そうだ。飯の準備はしっかりしないとなー」

「あたい葉っぱ摘んでくるよ」

「今朝採ったカツリョクソウはもう売り物にならんから食料にするぞ?良いな?」

「了解しました」「わかったわよ」

 タララが戻ったら壁を塞ぎ、屋根の無い部屋で一泊する事となった。ソーサーに干し肉、萎れたカツリョクソウと新鮮なカツリョクソウ。そしてコップに水で乾杯だ。

「スープ欲しいわ」

「調理器具が要るよな。あと竈も」

「野営用コンロ、買わなきゃね」

「いや、俺達にはマジックバッグがあるから俺の使ってる竈で充分だ。水や買い置きしたスープも持って行けるだろ」

「ですが、嵩張りますね」

「そのための箱だ。箱や袋に纏めれば1つのアイテムとしてカウントさせられる」

「お得ですね」

「とは言え容量を圧迫してしまうのは困るんだよな」

「箱を持って帰れないから?」

「売れば1000ヤン、家具としても使える」

「持って帰らない選択肢は無いわね」

「ゲイン様、ちなみに今回の戦利品はどのようになりましたか?」

「そうだな。食べ終わったら並べてみよう」

 早々に食事は終わり、タララは横になって俺の膝を枕にしてる。作業しにくくて邪魔だ。
 取り出した戦利品は宝箱2つ。片方は空で、もう片方にはドロップした物が詰めてある。布カバンの中に、種類の違うと思われる瓶が1本ずつ。これは奴隷がガメたやつ。箱の底には臭い袋の中身と粗末な武器防具、白い紙切れがごちゃっと入ってる。片っ端から収納して分類分けする。
 中身の分からない瓶は、収納しても瓶としか表示されないし、効果の付いた貴重な装備も普通の装備と同じ扱いになってしまうが、お金を数えたりチップの種類を見るのには便利だ。

ゴブリンナイフ 38
コボルトナイフ 26
皮製マント 3
銀貨 9
銅貨 139
鉄貨 281
ゴブリンの魔石 45
コボルトの魔石 31
ウルフの魔石 12
指輪 5
ネックレス 2

 まずはチップ以外。ゴブリンやコボルトは棍棒も落としたがその場で処分した。俺の作ったヤツの方が絶対値が付くし、何より臭い。ナイフも臭いけど金属なのでまだマシだ。
 ゴブリンもコボルトも、ウルフだってマントは着けてない。なのにマントがドロップした。なぜだろ?鑑定すべきだろうか?とりあえず奴隷の敷布団にしてやる。
 お金に関しては、銀貨保有率が若干高いと思った。どっちが金持ちかはちゃんと調べてないので分からないが、調べるだけ無駄だよな。総額23181ヤン。一人当たり5700ヤン程だ。銀貨様々。
 魔石はどれも小さい。ゴブリンは1ドン、コボルトは一回り大きい1.5ドン、ウルフも長さ1.5ドンだが、細長いので区別できる。が、メロロアに押し付けちまえば済む話だ。
 袋の中にはお金以外の物がたまに入ってる。今回は指輪とネックレスだった。もしかしたらチップとかも入ってたかも知れないが確認してない。これは鑑定案件だ。

「装飾品としての価値は薄いわね」

「付与次第と言った所でしょうか」

「鑑定眼のスキルも無しによく見抜けるな。貴族は嫌いだがそう言う目利きな所は素直に凄いと思う」

「ゲ~イン~、まだ寝ないのぉ~」

「コイツめ…。チップは俺が預かる。家に帰ったら確認して、日当に振り分けるよ」

「了解です。では私も失礼して…」

「俺に座ったまま寝ろと言うのか?2人とも離れて寝なさい」

 俺の膝に頭を乗せた2人を退かせて寝た。折角寝てたのに装備着けたタララが乗っかって来たせいで腹が圧迫されて、それからは寝られなかったよ…。朝には壁にくっ付いてた。壁が無かったらどこまで行ってしまうのだろうか。
 薄明るくなって、みんなを起こして朝のお勤め。食料兼、金策の足しに薬草を摘んでもらう。

「美味しいけど、お腹には溜まらないわね」

「売って腹に溜まる物を食べるんだ」

「20本確保しました」

「あたいも2束~」

「なっ、ほとんど食べちゃったわよ!」

「仕方ないな、俺のを半分くれてやる」

「え…、1、2、3……30…。なんでそんなに採れるのよ?」

「ここが穴場だからだ。秘密だぞ?」

「そう言う意味じゃないのよ…」

 明るくなってきたのでブロックを片付け荷物をまとめて街に帰ろう。東門から入るのでギルドが近くて助かる。
 日は高くなりつつあるが、朝なので多少混んでる。逆に買取りカウンターは暇を持て余しているな。

「あ、おはようございますゲインさん」

「個室で買取りを頼みたい」

「もしかして、また激ヤバ案件ですか?」

「いや、ここで広げるとゴタゴタしそうなだけだよ。ダメならタララの金全部下ろさせる」

「なんて恐ろしい脅迫!」

「しかも人のお金で」「やめてよゲイーン」

「まあ、空いてるので大丈夫ですよ。解体場にどうぞ」

 軽いノリで連れて来られた解体場。テーブルにどうぞと手を差し伸べるので、戦利品の入った箱を出す。

「先に常設の薬草の分をやってくれ。こいつらの功績にしたいんだ。ああそれと、箱とチップは売らないのでそれ以外で頼む」

「承りました」

「私の瓶は別会計よ!」

「そうだったな。瓶2本はそいつのヤツだから、これも別会計で」

「了解です。では常設から。薬草は…カツリョクソウですね、確認します」

 メガネをかけたメロロアが手馴れた手付きで草束を数えてく。

「これがタララさん、こっちはゲインさん、アンテルゼさんのはこっちの3束?これがエリモアさんで、こうなります」

 俺と小さいヤツは2400ヤンずつ、後の2人は1600ヤンずつ貰っていた。

「ゲインさん、ズルはもうダメですよ?」

「ズルではないよ。採ったのを食べちゃったから補填しただけだ。それに、採り方はしっかり教えたからな。タララ達の単価も変わらなかっただろ?」

 単価が下がらないようにナイフで摘み取らせたし、採れた傍から収納してたからな。

「分かりました。それでは次にアンテルゼさんの瓶ですね。こちらをどうぞ」

 黒板に書かれてる文字を見て明らかに落胆しているが、ポーションとアンチスタンなら大当たりだぞ?

ポーション 品質高 400ヤン
アンチスタン 品質高 1200ヤン
総額 1600ヤン

「草の方が高い…」

「ゲインさんに感謝してくださいね?普通の冒険者なんて、買取り5ヤンとかザラなんですから」

「ゲイン様、一生感謝し続けます」「あたいも」

「わかったわよ!ありがと!」

 最後に残ったあれやこれだが、こうなった。

ゴブリンナイフ 品質中 50ヤン×38本 1900ヤン
コボルトナイフ 品質中 50ヤン×26本 1300ヤン
コボルトマント 品質中 2500ヤン×3枚 7500ヤン
ゴブリンの魔石 5ヤン×45個 225ヤン
コボルトの魔石 10ヤン×31個 310ヤン
ウルフの魔石 8ヤン×12個 96ヤン
魔力の指輪 5000ヤン×2個 10000ヤン
知力の指輪 4000ヤン
命中の指輪 4000ヤン
防御の指輪 8000ヤン
魔力のネックレス 5000ヤン
知力のネックレス 4000ヤン
総額 46331ヤン

 奴隷の敷布団にしてたマントはレア物だったようだ。ドロップでしか出ないから臭くなくて実用に耐えるのだと。武器や魔石はほぼゴミ。
 装飾品は全てに付与がなされてて中々良い値段だった。

「タララ、防御の指輪使うか?」

「ゲインさん、女性に指輪を贈るなら…」

「メロロアさん。ゲインはやる時はやる子だから大丈夫だよ」

「…なんの話だ?」

「何でもない。それはあたいが買い取るよ」

 左手の人差し指に指輪を着けてグパグパしてる。手袋着けるのに邪魔になるかも知れないな。

 メロロアからお金を貰い、タララの財布から指輪代と箱代10000ヤンを出して48331ヤン。ドロップしたお金23181ヤンを足して71512ヤンとなった。1人当たり17878ヤンだそうで、みんなのギルド証に振り込んでもらった。

「ゲイン様、返済は…どうされるのですか?」

「黙っときなさいよ」

「どうせ全額かっぱいでも全然足りないし、少し貯めとけよ。返済の本番はも少し後になるだろうしな」

「寛容なお心痛み入ります。完済の暁には正式に従者になりますのでよろしくお願いします」

「私が野垂れ死ぬじゃない!」

「野垂れ死なないためにいろいろ教えてんだよ。完済できずに天寿を全うしそうだがな」

「返すわよ!絶対出てってやるんだから!」


 買い取りが終わり、ギルド直営宿で遅い朝飯を食べる。腹減ってたので肉ダブルにスープとソーサー800ヤン也。奴隷達も同じだけ食ってたよ。
 家に帰って風呂を沸かしながら、キッチンに箱を設置。鍋などを片付けてスッキリした。

「調理台、欲しいね」

「部屋の数だけ机なりテーブルなりが要るな」

「考えるだけで泣きそ」

「風呂に浸かって泣いてこい」

「まだ水だよ…」

「甘いの飲みたいわ、作りなさい」

「みんなにも振舞うなら作ってやるよ」

「分かってるわよ!」

 竈に火を熾して鍋をかけた。そろそろ石炭拾いに行かなきゃなー…。仕事用と生活用の道具も分けて用意したい。洗濯物も溜まってるし、毎日ダンジョンに潜るのはさすがに無理だと悟った。



現在のステータス

名前 ゲイン 15歳
ランク C/F
HP 100% MP 90%
体力 D
腕力 E
知力 E
早さ D-
命中 E-
運 D

所持スキル
走る☆☆ 走る☆☆ 走る 走る 走る
刺突☆☆ 刺突
硬化☆☆ 硬化 硬化
投擲☆☆ 投擲
急所外物理抵抗☆☆
飛躍☆ 飛躍
木登り☆
噛み付き☆☆ 噛み付き
腕力強化☆ 腕力強化 腕力強化
脚力強化☆ 脚力強化☆ 脚力強化
知力強化☆
体力強化☆ 体力強化 体力強化
ナイフ格闘術☆ ナイフ格闘術
棒格闘術☆
短剣剣術☆
避ける☆
魅力☆

鎧防御術
察知
探知
マジックバッグ

魅了
威圧

水魔法☆ 水魔法
ウォーター
ウォッシュ
デリートウォーター
ウォーターバレット
ウォーターウォール
ボーグ

土魔法☆
ソイル
サンド
ストーン

火魔法
エンバー
ディマー
デリートファイヤー

所持品

鉄兜E
肩当E
胸当E
腰当E
上腕当E
脛当E
鉄靴E

革製ヘルメット
革製肩鎧
革製胴鎧
皮手袋
皮の手甲
混合皮のズボンE
皮の脚絆
耐水ブーツ
耐水ポンチョ

草編みカバンE
草編みカバン2号E
布カバンE
革製リュックE

木のナイフE
ナイフE
剣鉈E
解体ナイフE
ダガーE
革製ベルトE

小石中465
小石大☆450
石大☆20

冒険者ギルド証 5964791→5980269ヤン

財布 銀貨18 銅貨16
首掛け皮袋 鉄貨31
 
冊子
筆記用具と獣皮紙
奴隷取り扱い用冊子
寸胴鍋
お玉
コップ

カトラリー

五徳
木ベラ
籠入り石炭10(貸出中)
洗濯籠
多目的板
蓋の無い箱
敷物
ランタン
油瓶0.7ナリ
着火セット
翡翠特大

中古タオル(使用済み)
中古タオルE
中古パンツ(使用済み)
パンツE
ヨレヨレ村の子服セット(使用済み)
サンダル
革靴
街の子服Aセット
街の子服Bセット(使用済み)

奴隷
エリモア
アンテルゼ

スキルチップ
ウサギ 3022/4391
ウサギS 0/1
ウサギG 0/1
ハシリトカゲ 2056/3166
ハシリトカゲS 0/1
ハチ 1742/2859
ハチS 0/1
カメ 2000/3459
カメS 0/1
ヨロイトカゲS 0/2
石 0/1853
石S 0/1
スライム 1023/2024
鳥? 213/1360
トンビS 0/4
サル 715/857
ウルフ 0/1051
ワニS 0/1
蝶 0/204
花 0/161
腕 440/541
腕S 0/1
腕G 0/1
脚 549/650
脚S 0/101
脚G 0/1
頭 475/576
体 422/523
体S 0/1
体G 0/1
棒 526/627
ナイフ 112/504
ナイフS 0/1
短剣 0/220
鎧S 0/1
袋S 0/1

水滴 157/394
水滴S 0/1
立方体 175/275
火 0/1

魅了目S 0/1
威圧目S 0/1
頭三本線S 0/1
頭三本線G 0/1
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