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女達と買い物に行くのは注意が必要だ

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 マジックボックスのおかげで数を数えるのがとても早い。数えるのと一緒に勘定もしてしまおう。羊皮紙に品物と値段を書いて行く。

・チップ
ウルフ 10 50ヤン
ナイフ 15 75ヤン
ダガー 8 40ヤン
火 3 7500ヤン
水 6 15000ヤン
袋 1 4000ヤン
グラスベア 8 4500ヤン
アントワーカー 655 982500ヤン
アントソルジャー 128 192000ヤン

・魔石
ウルフ 18 144ヤン
ゴブリン 22 110ヤン
コボルド 15 150ヤン
グラスベア 12 7200ヤン
アントワーカー 1133 113300ヤン 
アントソルジャー 389 38900ヤン
ラージミノタウロス 2 60000ヤン

・ドロップ
箱 9 9000ヤン
箱中 1 800ヤン
ゴブリンナイフ 8 400ヤン
コボルドナイフ 2 100ヤン
ポーション 8
アンチポイズン 10
金 99831

・ボス箱(未開封)
箱 1 1000ヤン

 ラージミノタウロスの箱はまだ未開封だが、ここまでの総額が1536600ヤンとなった。アリを殺りまくったおかげだな。

「みんな、この箱誰が開けるべきだと思う?」

「何が欲しいかって事よね?」

「装備は整いました。後は何が要りますでしょうか…」

「えと…、総額は…100万を超えてるわね」

「箱や薬、チップなんかは売らないのでだいぶ手取りが減ると思うけどな」

「いっそ、小銭でも狙ってみたら?お釣り無いんでしょ?」

「そうなりますと…」

 チラリとカウモアが目を向ける先にはベッドからずり落ちてはい回ってるタララ。

「タララ、ちと箱を開けてくれないか?」

 タララからの返事はない。寝てるから仕方ないな。

「では私が開けます。小銭が出たら抱いて寝てください」

「ぐぎ……」

「それなら私が開けるわ。おっぱい揉まれると大きくなるんでしょ?揉みなさいよ?枕にするほど好きなんでしょ?」

「がるる……」

「いやいや、俺が開けるよ。その代わり2人のおっぱい吸い比べさせてくれ。俺はアントルゼの慎ましいおっぱいも好きだぞ?」

「グゲイン~……」

寝ながらにじり寄って来るタララの前に箱を置くと、手を伸ばして箱を開けた。

「上手くいったわね」「少し残念ですが」

 箱を開けて力尽きたタララをよそに、3人で中を検める。

「小銭じゃ無かったわね」

「小銭だったらベッドに寝かせるフリして揉んでやろうと思ったが…」

「売れそうなだけ良いのかと」

 中身はぎっしり詰まった布であった。布が棒状に丸められ、詰め込まれていたのだ。ぎっしり小銭が詰まってたら俺の力じゃ持ち上がらんので仕方ないと言えよう。

「絹かしら?鑑定しないと分からないけど良い物よ?」

「アイツ上半身裸だったけど布なんて出すのか」

「下着着けてませんでしたけどね」

ラージシルクワームの反物
ラージシルクワームが吐き出す糸を布に織り上げた反物。軽く、肌触りが良い高級品。

「ラージシルクワーム、だって。それが33本」

「超高級品ね。私も身に着けた事無いわ」

「同じくです」

「金にならんな。仕立て屋に持ってってみんなの服にでもしてもらおうか?」

「下着が欲しいわ。ゲインもパンツ作ったら?」

「お揃いですね、良いかと」

「こんな機会でもないと新調しないし、そうすっか。明日は要らん物を売り捌いたら仕立て屋でも紹介して貰おうか」

「そうね」「賛成です」

「タララ、明日は下着を作りに行くぞ。可愛いの作ってもらおうな?」

「ん…」

 うつ伏せ寝のタララを抱えてベッドに寝かせてやる。金にはならなかったが明日の予定が決まったご褒美に頭とおっぱい撫でといた。撫でられてにやにやしてやがる…。

 タララが起きたのはすっかり夕方。俺達はとっとと起きていたのだが、外に出るにはちと遅いのでお湯を沸かして飲んだりして時間を潰していたのだ。

「んぁ、ゲイン、おはよ…」

「夕飯に行くぞー」

「ねえ、ゲイン。おっぱい揉んだ?」

「良い夢見たようだな。風呂にも行くからランタンとお風呂セットも持って行こう」

「は~い」

「ゲイン様、暗くなる前にお風呂を済ませた方が良いかと」

「だな。夜は危ないしな」

「お腹空いたよぉ」

 腹減ってごねるタララの口を干し肉で塞ぎ、みんな揃って外に出る。小太りな敵が逃げ延びて舞い戻ってる可能性もあるからな。もし来たら確実に殺す。そして国を出るしか無い。

 湯に浸かり、たっぷり擦って500ヤン。4人で2000ヤン。元を取るくらいふやけて上がるとタララが外で待っていた。

「遅いよゲイーン」

「早いよタララー。体が冷えるから中で待ってれば良かったのに」

「暑いから外で冷ましてたのっ」

「ゴロツキに絡まれても知らんぞ?」

「ゲインは助けてくれないの?」

「連れ去られたらどうしようもないな。とにかくマントくらい着けとけ」

「お待たせしました」「元は取ったわよ」

 しばらくして出て来た2人にもマントを羽織らせ宿へと帰り、夕飯を食べて部屋に戻った。

「ついに銀貨と銅貨が尽きてしまった」

「両替しないとならないわね」

「ドロップの金が10万に少し足りないくらいあるからいざって時はそれを使うが構わないか?」

「いざって?」

「明日の朝飯とかな」

「うん、使お」

 即答である。

「しかしなあ、みんな買う物もあるだろうに。給料要らんのかい?」

「ゲインが居れば…なんて言わないわ」

「ゲイン様の賜り物で生きるのも憧れですが…」

「自分の物くらい自分で買わなきゃねー」

 アントルゼのは完全に冗談だ。気を回す必要無しと言う考えだろう。カウモアはあれば嬉しいって感じかな?そしてタララは買い物したいって所か。主に買い食いだろうな。

「取り敢えず、40万貯まったら10万ずつ配れば良いんじゃない?」

 ミスリル4枚貯まる毎に、か。アントルゼの妥協案に乗っておく。今すぐは払わないが今後払うと言うニジイロコバチの裁定だ。
 ちなみにニジイロコバチは見ようによって色が変わるキレイな蜂だ。蝶や蛾の幼虫を捕まえて、縁の下など乾いた土の中に作った巣へと運んでる。俺はタララに捕まって、ベッドの上で揺すられて、身動き取れなくなっている。

「タララちゃんは甘えん坊でちゅねー」

「ママ~」

「それを言うならパパだろー」

「では私がママで。今夜はたっぷりね、ア・ナ・タ」

「産んでもないのにママ気取りしないで!」

「なら私は先妻でタララの母かしら?あの女に毒入りワインを用意しなきゃ…」

 おままごとが愛憎劇に変わってく。お貴族様よ、その筋書きはリアルなのか?いつの間にかベッドを二つ横並びにされて、わちゃわちゃして寝た。左右から抱き着かれて暑苦しいし、動けない。


 朝になり、やはり身動き取れなくて、腕と足に色々当たってるのが柔らかかったり温かかったり良い匂いだったりして生理現象が治まらない。初めての朝、母と姉にニヤニヤした視線を向けられたが、家族ならまだしもまだうら若き彼女達に易々と見られる訳にはいかない。一度見られてるけど出来れば見せたくないんだよ。

「おはよ、何これ?腫れてるわよね…」

「すぐに治まるから、静かにな」

 1人隣のベッドで寝てたアントルゼに目視確認されてしまった。

「何で腫れてるの?ぶつけたの?」

「さあなあ…、おしっこ行きたいからじゃないか?」

「そう言うものなのね。みんな、起きなさい。ゲインがトイレ我慢して股間を固くしてるわよ!?」

カババッ!

 絶対起きてたろってくらいの早業で起き上がり、座り直して凝視しようとして来るのを膝を曲げて回避する。

「ゲインちゃーん、オムチュ替えましょーねー」

「俺はオムツなんて着けてない!」

「スッキリすると元通りになりますよ?」

「トイレ行けば治まるんだってばー」

 男の又の力を強め、貝のごとく2人がかりのご開帳を阻止せしめる。

「2人共…、嫌われたら私になびいちゃうわよ?」

「うっ」「あっ」

 女の手の力が緩んだ隙に腹這いで逃げ、熊皮を被ってトイレへと走って行った。
 道中凄く驚かれたりしたが気にしてられないので個室に駆け込んだが、スッキリして出ると武器を構えた冒険者に囲まれてた。お互いにびっくりだったよ。

「…と、そんな事があってだな。俺のアレに構うな。朝は特に、だ」

「そだね、ごめんね。家じゃないんだもんね」

「猛省致します。申し訳御座いませんでした」

 朝飯を食いながらトイレ熊立てこもり事件の詳細を話すと2人して頭を垂れた。

「私もそっとしておけば良かったわ、ごめんなさい」

「見るだけに留めます」「あたいも」

 反省の色は何色だろう?

「反省の色無しね」

 どうやら無色透明のようだ。


 朝食を食べたら身なりを整え今日の分の宿代を払って外へ出る。どうせギルドに肩代わりさせるのだし問題なかろう。

「今日はどこから行くの?」

「せっかくだし布を使いに行こうか。数が少なきゃ2~3日で終わるだろ?」

「どうかしらね」

「今日で3日目、後6日では凝った物は出来ないかと」

「凝った下着なんて見た事ないんだが」

「女の子は勝負下着の1つや2つ持っておくものよ?」

「ウソだよな、タララ?」

「ゲインはあたいが可愛いパンツ履いて迫って来たら嬉しい?」

「家族が増えるだろうな」

「必要だよね、勝負下着」

「ゲイン様は私が黄ばんだ下着を着けていたらどう思われますか?」

「そりゃあ買った方が良いけど…」

「必要ですね、勝負下着」

「勝負でなくても良くないか?」

 俺の問いに答える者はなく、ギルドへ…は向かわず、大通りを1本越えた通りの服屋に入った。

「よくこんな店知ってたな」

「昨日お風呂で女の子達に聞いたの」

 男風呂の会話は口でなく大胸筋でしてるみたいだぞ?俺は会話した事ないが。

「生地の持ち込み、やってるんですって。さあ、入りましょ」

 窓の無い建物のドアを開け、アリを先頭に入って行くが、すぐに引き返したくなった。が、後のタララが押して来てドアを閉められた。これ俺どーすりゃ良いのさ…。
 普通の服屋と思ったらそうではなかったのだ。店内に陳列された品物は俺には小さ過ぎたり、上半身用の着けた事のない物ばかりで、客は俺以外全て女。店員ももちろん女で、アリや牛にギョッとした視線を向けた後、俺を白い目で見ている。とても不快で声に出た。

「タララ、不快だ。何で俺が罪人みたいな視線で見られなきゃいけないんだ?」

 変態とかスケベとか、不審に不安になぜか期待感。こんな感情がとにかく俺に向けられている。

「気にしなくていーのに」

「これ以上こんな店に居たくない。出るぞ」

「やーだー!だーめー!」

 出て行こうとする俺の腰にしがみついて止めるタララに、力では敵わない。

「他のお客が気にするだろが。それともこの店を焼き払えば良いか!?」

「お、お客さん止めとくれよ!?」

 店員だか店主だか分からんが、少し年増の女が近付いて、間合いを取って止まる。お前も俺に変態って感情持ってたよな。

「アリ、牛。お前等俺が店に入ってから、どんな感情を察知した?」

「……」「配慮に欠けました。申し訳御座いません」

「質問に答えろよ」

「変態とかスケベって思ってたわね」

「アントルゼ!」

「どうやらこの街では男が下着作るのは変態だったりスケベな行為みたいだな」

「そっ!そんな事は決して!」

「察知スキルはウソを吐かない。客舐めんな。俺は雑貨屋で適当なの買うから離せよ!」

 店の中から言葉が消えた。それと同時にドアが開く。

「問題事かい?」

 俺を見てすかさず剣を突き出して来る相手に、俺は容赦無く小石中を面で射出した。

「ひぎゃ!」

 避ける事もさせず、直撃して動きが止まった所に太ももと肩を小石大で射抜く。激痛だろう、声をあげる事もできず床に転がった。手放した剣を回収する。

「正当防衛だ。死にたきゃ介錯してやる」

「ゲイン!ダメだよ!」

「「支部長!」」

 ドアの外に居た2人の女が我に返って剣に手をかける。

「ま、待て…」

「ですが!」

「ゲインくん、だったん…だねぇ」

「俺はいきなり攻撃して来るような知り合いはカウモアだけだと思ってる」

「手厳しい、ねぇ…、痛たたた…」

「こっちは店にいる女共に変態だのスケベだのと思われている事が我慢ならなくて外に出ようとしていただけだ。得物を振るう理由になるか?」

「ならない、ねぇ…。ごめんよぅ」

「支部長がそんな者に詫びる必要ありません!公務執行妨害で捕える!」

「何言ってんの貴女達?先に抜いたのはそっちの支部長って奴の方じゃない」

「黙れアリ女が!」

「やめよっ!」

「俺の連れをコケにすんな」

「部下の、不始末はこの通り、詫びるから…」

 動けない体でどの通りなのかは分からんが、詫びてるつもりのようだ。

「おのれ…」「冒険者風情が…」

「やめよと言っているっ」

「うぐっ」「ぐえ…」

 威圧でも放ったか?そんな威圧じゃグラスベアでも怯むまい。ぐえぐえ言ってる2人はグラスベア以下の雑魚って事になるな。

「権力を傘に着てねーで、命が惜しくなければかかって来い」

「ゲイン、そろそろ引き時よ。貴女達も、治療院に連れてった方が良いんじゃないのかしら」

「引きっ、引き…上げるぞ」

「ですが!」

「痛いんだよねぇ…。肩、貸してくれないかねぇ…」

「部下に恵まれてないみたいだな。どうせ俺も外に出るし、肩貸してやろうか?」

「支部長殿に気安く触るなっ!」

 しゃがんで手を差し伸べる俺はの首を刎ねようと女の1人が剣を抜こうとした瞬間、女は動けなくなった。

「刺しますよ?」

 カウモアが刺突剣を女の首に添えていた。動けば躊躇いなく突き刺さすだろう。

「ゲインくん、痛いから優しく頼むよぅ。そちらの、女性は元騎士だ。衛兵のお前等じゃ歯が、立たんぞ…」

「カウモア、通れないからそのまま押し込め」

「御意に」

 刺突剣に力を込めて押して行く。女は恐怖で下がって行き、道が出来た。俺は支部長に肩を貸し、ゆっくりと外に出た。

「歩けるか?」

「ゲインくんは、やっぱり優しい子だねぇ…」

「ラーケンさんの言い分も解るけど、いきなり抜いちゃダメだよ?」

「名前、覚えてて…くれたんだねぇ」

「ゲイン、あたいも手伝う!2人って知り合いだったの?」

 反対側の脇を抱えて肩を貸すタララ。

「つい先日な」

「知り合いなのに容赦ないのね」

「お知り合いの部下ですが、もう剣を納めてもよろしいでしょうか?」

「良いぞ。これでまだ斬り付けて来るようなら殺して構わない」

「ゲインくん、勘弁して、あげてねぇ」

 ゆっくりゆっくり、治療院のある南門へと向かう。

「ここまでで、良いよ。迷惑かけてごめんねぇ。お前達も詫びろ」

「「……」」

 交代し、肩を担ぐ2人は店からここまで終始無言。ラーケンの指示にも応じない。

「命令だ。罪無き者に剣を抜いて、何が衛兵だ」

「もう良いよ、止めとけ。こう言う奴は除名して実家に帰すのが一番だよ」

「私達も行きましょ?長居してまた抜剣されたら今度こそゲインがキレるわ」

 正論だな。アントルゼに腕を取られて踵を返す。背中の向こうでは悪態を吐くのが聞こえるが無視だ。スルーして、ギルドへと向かった。
 朝の繁忙期が過ぎて人気のまばらになったギルドに入るとすぐに待ち構えていた暇人に捕まった。メロロアだ。

「おはようございます。待ってましたよ」

「別に門前で待つ必要ないだろ?って言うか明日だろ」

「早く会いたかったんですよう」

「そうかそうか。ならば買取りをさせてやろう。できるだけ銀貨で払ってくれ」

「う…、とにかく上へどうぞ…」

 処理の方は既に終えていると言うので、案内されて上へ。ギルマスの居なくなった空き部屋へと連れられて、先に来ていたサブマスをスルーしソファーに腰をかけた。
 タララに俺、そしてアントルゼ。カウモアはこう言う時に座る事は無い。

「とんだご挨拶ね」

「メロロア、お茶は要らないから早く座って処理を済ませてくれ。買取りもあるんでな」

「はい。マーローネさんもすぐに来るんで、その前に買取りの査定をしちゃいましょうか」

ウルフの魔石 8ヤン×18個 144ヤン
ゴブリンの魔石 5ヤン×22個 110ヤン
コボルドの魔石 10ヤン×15個 150ヤン
グラスベアの魔石 600ヤン×12個 7200ヤン
アントワーカーの魔石 100ヤン×1133個 113300ヤン 
アントソルジャーの魔石 100ヤン×389個 38900ヤン
ラージミノタウロスの魔石 30000ヤン×2個 60000ヤン
箱 1000ヤン×9箱 9000ヤン
箱中 800ヤン×1箱 800ヤン
ゴブリンナイフ 50ヤン×8本 400ヤン
コボルドナイフ 50ヤン×2本 100ヤン
総額 230104ヤン

「ゲインさん、ラージミノタウロスのドロップは無いんですか?」

「あるけどギルドが金を払いきれないから保留にしたよ。鉄貨が纏まったから両替も頼むよ、200枚ね」

「承りました」

 鉄貨を200枚、メロロアに渡すと金を取りに下へと降りて行った。

「一纏めに支払う方が早いのですが」

「これとそれは別物だしね」

 査定を始めてしばらくしてからやって来たマーローネが閉じた目でメロロアの居た場所に腰を下ろす。

「まあ、そうですね。ゲインさんが、9835000ヤン、タララさんが2800万ヤンですね」

 280枚のミスリル貨がタララの前に、98枚のミスリル貨と金貨3枚、銀貨5枚が俺の前に置かれた。

「すごい額、だと思うんだけどさ。ミスリル貨だとこれっぽっちしかないんだねー」

「引退して一生慎ましやかに暮らすには少なく見えるだろ?」

 1日の食費が3000ヤンとして、一人頭、年に100万ヤンはかかる。それに家賃や光熱費、雑費が色々嵩んだとして年に200万程は減って行く事になる。2人合わせても10年程にしかならないと言う事だ。

「ゲインが頑ななのも分かる気がするわね」

「我々は少し浮かれているのでしょう。身を引き締めなければなりませんね」

「いくら貯めたらいーの?」

「5億って事にしておこうか」

「ミスリル何枚?」

「5000枚よ」

「それだけあれば確かにいけそうかも?」

 お金を仕舞ってメロロアを待ち、メロロアの持って来た金を受け取った。

「これで心置き無く街を出られますね」

「まだだべ。宿代もらってない」

「だべ?」

「タララ様」「あはい…」

「家に泊まっていた分の宿代を肩代わりするのでしたね」

「ああ、後6日はこの街で準備する予定なんだが、部屋代が1日6400ヤン。今日はもう払って来たから19200ヤン。全部で…57600ヤンだな」

「それくらいなら今払えますね」

「一人頭1600ヤンですか?もっと良い宿泊まっちゃえば良いのに」

「部屋がそこしか無かったんだ。ベッドだけなら8つあるぞ」

「大部屋ですかっ」「大通りのあそこですね」

「メロロア、一緒に行くなら荷物纏めて合流しても良いぞ」

「明日には合流しますっ」

「ちょっ!」

 メロロアが退社すると聞いて狼狽えるのはサブマスだ。

「メロロア!貴女!そんな事聞いてないわよ!?」

「ギルマスには伝えてあったのですが?それと、引き継ぎはとっくに終わらせてありますのでいつでも辞められます。退職金と給与はギルド証振込みで構いませんのでどうぞよろしく」

「だから月末まで滞在すると言う訳ですか。辞めないでしっかり月末まで働いて下さいね」

「仕事への意欲が湧いて来ました」

「貴女が辞めたらギルドはどうなるのよ!勢力がガタ落ちじゃない!?」

「もう手遅れですよ。幾ら借金してると思ってるんですか?2人への支払い分だけじゃないんですよ?100年は商業ギルドに頭上がりませんね。他の都市のギルドにもです」

「ま、マーローネ…?」

「そこまで悲観する事もありません」

「どう言う事!説明なさい!」

「報告に上げましたがお忘れですか?ゲインさんから買い取った情報が大枚に変わると言う事です。新しく発見されたダンジョンと、ある程度の階層の攻略法。場所を整地して入場料を取れば北西ダンジョンよりも利益が出ますよ」

「早速手配なさいっ!」

「承りました。ゲインさん、本日はお疲れ様でした。たまには遊びに来てくださいね」

「またダンジョンに潜りに行くよ」

 宿代をもらってギルドを出た。

「明日の夕方には向かいますねー」

 手を振るメロロアは終始笑顔で、もし今街を出たら一生付きまとわれて暗殺されるかも知れないと言う恐怖感すら覚えた。


「ねえゲイン、私武器が欲しいの」

「ああ、中古屋には良いのが無かったんだよな」

 ギルドを出て大通りを歩いていると、アントルゼが買い物したいと言う。下着も買いそびれてるしそれもまた良し。先ずは近い武器屋に行こうと思う。敷居の高い防具屋の向かいに、敷居の高い武器屋があるのは知っている。が、もちろん入った事等1度も無い。
 武器を買うとなると、髭もじゃの中古屋か、ぼったくりの露店か、鍛冶屋に直接頼むか、この新品武器屋となる。
 敷居の高さをものともせずに入って行くアントルゼとカウモアの後ろをビクつきながら着いて行く俺とタララ。中古屋で買った大鉈が壊れてない値段で置いてあると思うだけでたじろぐのは当たり前だと思う。

「店主、短い槍はないかしら?」

「もしくは柄の長い剣でも構いません」

 2人は流暢に注文をしているが、俺はタララと壁掛け品を見るのでやっとだ。

「ゲイン、50万だって…」

「桁を間違ってないか?」

「大丈夫、0は5つだよ」

「そうか、この辺りは比較的お値打ち価格なのだろうな。少しホッとするな」

「そだね」

「あんた達、イチャイチャしてないでコッチ来なさいよ」

「私もイチャイチャしたいです」

「私はしたくないわよ!?」

 カウンター近くに陣取った2人に合流し、武器を見繕いに行った店員が戻るのを待つ。カウンターの向こうには店主と思しきおばあちゃんが座ってて、とても武器を扱ってるとは思えない、穏やかな顔でお茶飲んでた。

「いらっしゃい。その子のお連れさんだね?」

「気に入るのがあれば良いけど」

「あまり前に出る子じゃないように見えるけどねぇ、護身用かい?」

「基本は中距離だね。最後の砦だけど、使いこなしてもらいたいもんだよ」

「そうだねぇ、持ってるだけじゃいけないねぇ。あんたのは随分と良い物のようだ」

「髭もじゃ親父の所で見つけたんだ」

「鎧は皮なのかい?」

「これは街用、軽いからね。外に出る時は向かいの店で買った金属鎧を着けてるよ」

「お嬢ちゃん達2人は手ぶらかい?」

「んーん、マジックバッグにあるよ」

「しっかり働いてんだねぇ、良い子達だよ」

「うひひ、あたいいー子だって」

「あら奇遇ね、私もよ?」

「お待たせしました」

 おばあちゃんと時間を潰していると、武器を抱えた店員がやって来た。柄の長い短剣や柄の短い槍を何本か持って来たようだ。カウモアが1本ずつ、これはこう使う、みたいな説明してる。

「ダメだねぇ、これじゃ突くだけ。振り回してなぎ斬るのにも使える奴を持っておいで」

 髭もじゃ親父と同じ事言ってる。このおばあちゃんは紛れもなく武器屋なんだな。店員は持って来た武器を持ってバックヤードへととんぼ帰りして行った。

「時間を取らせちまったねぇ。そこの席に座って、お茶でもどうだい?」

 みんなが俺を見る。飲みたいの?収納からコップを出してやる。え、まだ出せ?何を?ソーサー…じゃ無い?これかよ…。なぜか視線だけで会話して、スプーンとお鍋を出してやった。

「おばあちゃん、スプーンある?」

「そりゃああるけど、何に使うんかねぇ?」

「これー」

 ねりっとして、くるくる纏めた透明な塊を見せるタララ。あまり部外者にほ見せたくないんだけどな。

「おや、そりゃあ水飴かい。あんた等もやるもんだねぇ」

「ゲインが作り方教えてくれたの。けど内緒ね」

 言ったら内緒じゃなくなるんだがなぁ。3人共、おばあちゃんが気に入ったのだろうな。カウンターの中から取り出したスプーンを受け取って、ねりねりくるくるして持たせるタララ。今持たせたらお茶が淹れられなくないか?再び受け取りお茶を注がれ、ぺろぺろしながらお茶を飲む。

「んん、こりゃあ本当に水飴だ。久方ぶりだねぇ」

「店主はこれを知ってるのね」

「長く生きておりますからねぇ。若い頃、行商のついでに買い求めた事があったのですよ。ああ懐かしい」

 今は亡き夫と行商で生計を立てていた頃に、どこかの集落で作ってるのを見て、こっそり買わせてもらったのだと。

「水飴がいつもより甘いわ」

 水気が抜けたのかな。そうこうしているうちに店員が帰って来た。

「お待たせしました…。おばあ様、スプーンは食べ物ではありませんよ?」

「ふっふっふ、まあ良いじゃないか。今度は何を持って来たんだい?」

 柄が長く、かつ全体は1ハーン程の長さの武器がほとんどだったが、1つだけ異彩を放つ得物があった。
 柄は他の物と変わらず1ハーン無い程度の長さで、先端には10ドン程の幅広な槍の穂が付いているが、幅広なので槍ではなさそう。敢えて言うなら…。

「これ、スコップ?」

「つるはしスコップだねぇ。こんな物あったのかい」

「武器だと思って持って来たのですが…」

「それ、いくら?武器じゃないならそうお高くはないのでしょ?」

「9000ヤンですね」「4000で持ってお行き」

「おばあ様」

「家は武器屋だよ?工具売ってどうすんのさ」

「はあ、確かに工具なのでそれでどうぞ」

 アントルゼは受け取ったツルハシスコップを軽く振り、ドヤってる。はよ金払え。

「ありがと、しっかり使いこなしてみせるわ」

「久しぶりに旦那の顔を思い出したよ、こっちこそありがとうね」

 良い買い物が出来たようだ。




現在のステータス

名前 ゲイン 15歳
ランク C/E
HP 100% MP 98%
体力 D
腕力 E
知力 E
早さ D-
命中 E-
運 D

所持スキル
走る☆☆ 走る☆☆ 走る 走る 走る
刺突☆☆ 刺突
硬化☆☆ 硬化 硬化
投擲☆☆ 投擲
急所外物理抵抗☆☆
飛躍☆ 飛躍
木登り☆
噛み付き☆☆ 噛み付き 噛み付き
肉体強化 肉体強化☆
腕力強化☆ 腕力強化 腕力強化
脚力強化☆ 脚力強化☆ 脚力強化
知力強化☆
体力強化☆ 体力強化 体力強化
ナイフ格闘術☆ ナイフ格闘術
棒格闘術☆
短剣剣術☆ 短剣剣術☆
避ける☆
魅力☆
鎧防御術
察知
探知
マジックバッグ
マジックボックス

鑑定☆ 鑑定
魅了
威圧
壁歩き

水魔法☆ 水魔法
|├ウォーター
|├ウォッシュ
|└デリートウォーター
├ウォーターバレット
├ウォーターウォール
└ボーグ

土魔法☆
├ソイル
├サンド
└ストーン

火魔法
├エンバー
├ディマー
└デリートファイヤー

所持品

革製ヘルメットE
革製肩鎧E
革製胴鎧E
皮手袋E
皮の手甲E
混合皮のズボンE
皮の脚絆E
水のリングE
水のネックレスE

革製リュック
├草編みカバン
├草編みカバン2号
├紐10ハーン×9 9ハーン
└布カバン
 ├冊子
 ├筆記用具と獣皮紙
 ├奴隷取り扱い用冊子
 └木のナイフ

革製ベルトE
├ナイフE
├剣鉈E
├剣鉈[硬化(大)]E
├解体ナイフE
└ダガーE

小石中391
小石大344
石大☆20

冒険者ギルド証 9,835,000→0ヤン

財布 ミスリル貨238 金貨16 銀貨14 銅貨14
首掛け皮袋 鉄貨74
箱中 708,435ヤン
ミスリル貨2 金貨31 銀貨180 銅貨184 鉄貨35 お釣り0



マジックボックス
├箱
|└シルクワームの反物×33
├未購入チップ各種箱
├医薬品いろいろ箱
├食料箱×2
├調理器具箱
├ランタン箱
|├油瓶×10 9.5/10ナリ
|└薬品類
├竈、五徳
├蓋付きバケツ大
├テントセット
├マット×4
├毛布×4
└ 洗濯籠
 ├耐水ブーツ
 └耐水ポンチョ

鉄兜
肩当
胸当
腰当
上腕当
ゲル手甲
ゲル股当
帆布のズボン
脛当
鉄靴
熊皮のマント

籠入り石炭0
石炭86ナリ

ランタン
油瓶0.4/0.8ナリ
着火セット
服箱
├中古タオル
├中古タオル
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|パンツE
├ヨレヨレ村の子服セット
├サンダル
├革靴
|街の子服AセットE
└街の子服Bセット

スキルチップ
ハシリウサギ 0/4521
ウサギS 0/1
ウサギG 0/1
ハシリトカゲ 0/3166
ハシリトカゲS 0/1
ハチ 0/2859
ハチS 0/1
カメ 0/3459
カメS 0/1
ヨロイトカゲS 0/2
石 0/1861
石S 0/1
スライム 0/2024
オオスズメ 0/1573
トンビS 0/4
フォレストモンキー 0/972
ウルフ 0/1070
カラードウルフ 0/1
ワニS 0/1
グラスベア 0/1
ラージアントワーカー 0/100
ラージアントソルジャー 0/1
蝶 0/204
花 0/161
腕 0/541
腕S 0/1
腕G 0/1
脚 0/650
脚S 0/101
脚G 0/1
頭 0/576
体 0/523
体S 0/1
体G 0/1
棒 0/627
ナイフ 0/640
ナイフS 0/1
短剣 0/352
短剣S 0/100
鎧S 0/1
袋S 0/1
箱G 0/1

水滴 0/446
水滴S 0/1
立方体 0/525
火 0/4

魅了目S 0/1
威圧目S 0/1
ドクハキヤモリ 0/1
頭三本線S 0/1
頭三本線G 0/1
眼鏡S 0/100
眼鏡G 0/1
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