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馬達もパーティーに馴染んで来た。

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「それならゲイン、お風呂作って持って行くのはどうかしら?」

「貴族の旅では個人用の浴槽を持って行かれる方もおりますね」

 アントルゼの提案にカウモアが補足する、持ち運び式の浴槽か…。

「100ナリ以下なら出来るな。作れそうなら考えとこうか」

 前向きに検討する。が、売ってはなさそうだよな。貴族向けだもの。だが似たような物は作れたり買えるはずなのでチャンスがあれば欲しい所だ。

 夜の見張り中にゴブリンが何度か遊びに来た。だが土壁を見て不思議に思う程度でよじ登ろうとしたり壊したりするような事も無かったので放置したよ。俺達が手を出す前に狼に襲われてたし。

 魔石を持つモンスターであるゴブリンを食った、魔石を持たない野獣の狼は、魔石を持つ魔獣、ウルフに変わる。子供の頃追いかけられた熊は七日くらいかけてゴブリンを食べてじっくりと変わって行ったので此奴等もきっとに似た感じになると思われる。
 で、このバカ犬共はお腹いっぱいになって嬉しかったのかウオンウオンと大合唱。これにはみんな起こされて、寝ぼけたタララがウォークライ。大合唱に拍車をかける。当のタララは自分の声に驚いて飛び起きた。

「おがっなっ、なに!?」

「外で狼が鳴いてるのよ」

「中では熊が鳴いてたけどな」

「あ、ああ、夢かー。さっきまでパパとケンカしてたの」

「親子喧嘩でウォークライするのか」

「たまにしかしないよぅ」

「タララさんは父親の事をパパって呼ぶんですね。それよりどうしますこれ?」

「うるさいけど襲われる事も無いしな。放っとこうか」

「狼くらいしか集まりませんからね、うるさいですが」

「なら寝るわ。眠れるかわからないけど」

 横になって目をつむるだけでも休息にはなる。俺とカウモアは番を続け、他の者は静かになった。


 メロロアの順番となり、狼達は大合唱に満足して帰って行ったと朝食の時に聞かされた。あんなに騒いでたのに寝られるモンなのな。アントルゼとタララは眠そうだが、馬車の中でゆっくり寝るが良い。

「今日の昼飯は大きめの村の近くで食う事になるが、村に用があるやーつ」

「とくにな~し」

「お風呂次第だけど、多分無いのでしょ?」

「これと言って買う物もありませんね」

「川や水に依存しないで済むのはありがたいですね」

 みんなは用が無いみたいなので急に欲しい物が出来ない限りスルーして行く事になった。俺は現地の植生について聞いたり現物を見たりしておきたかったのだが、街に行けばギルドに資料とかあるだろうし、先に進む事にした。

「それにしても、ゴブリン多いですね」

「ゲイン様、乗りました」

「2人共お疲れ様。次はタララとアントルゼだぞ、準備しとけー」

「あ~い」「了解よ」

 2つ目の休憩地に着くまでに倒したゴブリンとホブゴブリンは30を超えた。王国側の街道とは大違いの敵の量にうんざりするが、おかげで野盗は居ないみたいで楽だ。

「外だと武器と袋しか出ないね~」

「手間になるから魔石も獲れないしな」

「大きい獣だと皮を剥ぐのも出来ないわね」

「手間だしなぁ」

「離れててゲインさんとイチャイチャ出来ませーん」

「後でなー」

 斥候でメインアタッカーのメロロアにはだいぶ甘くしてんだけどな。休憩地に入って軽い食事をする。セイコー達を休ませていると、対向側から乗合馬車が入って来た。敵意は無さそうだが無用な争いは避けたいのでセイコー達の様子を見て早々にその場を離れた。


「ゲインさん、村が見えて来ましたよ」

 メロロアが戻って来て村があると言う。緩やかな上り坂を越えると、村とは言えない建物があった。

「へー。石壁じゃん。あの奥のは建物かな」

「砦だったのかも知れませんね」

「兼務の可能性もありますね」

「なにそれ」

「砦に平民を住まわせて自給自足出来るようにしてるって事ですよ。壁を越えて来た敵にはここから打って出る、みたいな」

「なるほどね~」

 タララは初めて見る構造物に感心している。俺も城砦はじょうさい 物語でしか知らなかったので少し興奮する。中はどうなってるんだろう。凄く気になるけどグッと我慢した。

「メロロアは前に出るとまた貴族の一行に間違えられそうだから隣に付いてくれ。この見晴らしならゴブリンも寄って来ないだろ」

「ですね」

 暫くして村への分岐が見えて来た。村に入るつもりは無いので本線を行くのだが、分岐の手前から看板が立ってるのがありがたいね。迂回路からは暫く畑が続いてるのでみんなには馬車の中で昼食にしてもらう。俺も干し肉を齧りながら手網を掴んだ。

 ずっと畑だったので、セイコー達が休憩出来る場所が森の入り口にしか無かった。ここからは森の中に街道が伸びているので気合いを入れ直すには丁度良いな。水と飼葉をいっぱい食べて頑張っておくれ。


 砦の村を背後に俺達は進む。だいぶ先まで森の無い平地だから、こっち側だと村の石壁がずっと見えていた。そして前を見ると1つ目の休憩地だろう盛土と柵が見えている。

「緩やかに下ってますね。馬車を停める時は気を付けないとセイコーちゃんが怪我してしまいますよ」

「そうだな。今のうちに輪止めでも作っておくか」

 とは言え材料の木は板と角材しか無い。仕方ないから石で作るか。

「セイコー、ちょっと重くなるから気を付けてな」

「ぶるぶる…」

 それは返事として捉えて良いのか?取り敢えず石大を馭者席に置いて1/3程で切り、すぐに小さい方を仕舞った。切り口を下にして、斜めに2回切り、三角を作る。それを真ん中で分けて、両端を切り取り2つの三角柱が出来た。同じ場所に穴を開けて、ロープで取っ手を付けたら輪止めの完成だ。少し重いけど持って移動もしないから問題無いだろう。角が尖ってるから武器にもなるな。

「何作ってるのかと思ったら、石の積み木?」

「輪止め作るって言ったと思うが」

「アントルゼ、これは車輪に咬ませて下り坂に停めても動かなくするための道具です」

「殴ったら痛そうだよねー。モールの頭みたい」

「なるほどな。確かに薪も割れそうだ」

「角を付けて投げ付ける石の大きさを揃えたら痛め付けるのに捗りそうね」

「真四角にして100ナリなら1ナリのが100個…は無理か。薄板なら出来るな」

 小石小が500個で☆が付く。多少の誤差はあれど、1つが1/5ナリって事なのだろう。時間はかかるがこの作業をしておけば、確実にダメージは増えるよな。槍の先端みたいにするのでも良い。

「使い捨てにしにくくなるが、命のやり取りに勿体無いもクソもないよな」

「川があったら拾っとく?」

「川でなくても石は取れるさ。あればその時考えよう」

「だねー。ちょっとそれ貸して」

 今は必要ない物なのでタララにくれてやる。するとタララは手持ちの小石で輪止めの角をゴリゴリ削りだした。

「ゴリゴリしてるのは何でだ?」

「そのまま使うと手が切れるよ?」

「なるほど賢い」

「うひひひ。家で使ってた斧ってさ、指切れるくらい研いであったんだ。薪割りにそんな鋭さ要らないのにね」

「武器としても使いたかったんだな」「そ」

 俺の剣鉈は武器寄りの農具だ。気持ちは分かる。ひとしきりゴリゴリしたのが帰って来ると、鋭さは無くなっていた。それでも当たれば骨くらい逝くだろうな。

 そうこうしているうちに1つ目の休憩地に到着。見晴らしが良いので感知系スキルで見ても敵の姿が無いのが分かるが、風が少しあるので壁は作ろう。

「みんなは壁作りを頼むよ。俺はセイコー達の世話をしたらゴブリンの剥ぎ取りして穴掘って埋める」

「あいよ~。テントは出す?」

「時間もあるし、たまには出そうか。作るのは最後な?」

 カウモアが刈った下草を集めて干し草に。これはテントに敷くのとセイコー達を洗うのに使うから尻拭き用の葉っぱだけ取り出し乾燥させて、ひとまず仕舞っとく。客車を置く位置を決めたらセイコー達の装具を外し水と餌。体を洗うのはもう少し待っててね。

 みんなが地面を切り出し壁を作って行くのを見て、俺も穴を切り出した。階段を作りながら切り出せるだけ切り出して、5ハーン程の深さにしたら、ゴブリンから金属と袋の中身を取り出してゴミを穴に捨てる。体の中にある小さな魔石も、討伐証明である耳も今回は捨てる。耳は腐るし手間もかかる上に汚れて臭いからだ。刃物を洗うのも面倒臭い。萎びた毒草もついでにポイ。

 ゴミを捨てたらブロックが崩れるように思い切り射出して、しっかりみっちり詰めてやる。多少ブロックが残ったが、トイレや水浴び場に使えば良い。

「ゲイーン、そろそろ壁が出来るよー?」

「トイレと水浴び場用にブロックを切り出しといてくれ」

「私がやっておくわ。我慢は体に良くないの」

「我慢出来ないなら草藪の中に仮設しようか?」

「それよりトイレを手伝って」

 アントルゼは我慢の最中だったようだ。俺も手伝い素早くトイレを仕上げると、俺から葉っぱを奪い取り、トイレへと消えて行った。俺は空気の読める男なのですぐにその場を離れた。

「テントは客車の隣で、水浴び場はトイレの近く。セイコー、ベガ、こっちにおいで。お前達の部屋を作るぞー」

テントの向かい側の壁に2頭を向かい合わせに並べ、壁の良き高さの場所に角材を刺して行く。4本刺して6枚乗せたら馬房の完成だ。下にたっぷりの枯れ草を敷いて、水浴びの時間までゆっくりしてくれ。

「ゲインさん、壁が出来ましたので塞いておきました。テントの設営始めちゃいますね」

「ありがとう。客車の隣に作ってくれ」

「あたいもやるよー」「お手伝いいたします」

「水浴び場はトイレの近くなのよね?お待たせしたわ」

 手を洗うアントルゼが地面を濡らしながら歩いて来た。洗ってから歩けよ。

「水浴び場を作るから手伝ってくれ」

「ブロックは取って来てるわ」

 ブロックで四角く囲い、ブロックで挟みながら内側に板を立てる。一辺に2枚ずつ。8枚の板で壁が出来た。

「これは浴槽なのかしら?床が土よ?」

「…板、張るか」

 一辺を回収し、床板を張る。そして上からブロックと板を乗せて浴槽となった。その周りに高さ2ハーン程でブロックの壁を建てて浴室の完成。途中、テントの床に干し草を敷き詰めたりセイコー達にご飯のオカワリを要求されたが食事の作り出しには間に合う事が出来たよ。

「セイコー、ベガ。水浴びするよー」

「ぶるっ」「ぶるぶる…」

 返事はともかく寄って来るのだから水浴びしたいのだろう。食事作りは女達に任せ、俺はパンツ一丁でセイコー達を洗う。ウォーターウォールもデリートウォーターもどれだけ使っても魔力が減らない。本当にありがたいぜ。最後に浴室で体を洗い、ビタビタの地面と体をデリートウォーター。夜までは皮鎧着とこっと。

「待たせた。手伝うよ」

「後は並べるだけですので、ランタンの用意をお願いします」

「分かった」

 スープの番をするカウモアの言葉に従い、竈から火を貰って油を補充したランタンに火を着ける。まだ明るいから1つで良いか。平地は日の落ちるのがゆっくりだな。

 板と箱のテーブルに食事が並び、みんな揃っていただきます。お酒が半分になったとか、お湯の出る魔法が欲しいとか、生の肉を焼きたいだとか、姦しい食事だ。

「俺はもう水浴びしちゃったから、みんなは自由に入ってくれ」

「え~、ゲインも入ろ~よ~」

「何だ、濡れた尻尾を見せたいのか?」

「それは…、ふわふわにしてから見て欲しいな」

「床張りと壁はどんな感じだったのかしら?」

「立って入ったから壁は使ってないな…。床は足が汚れなくて良かったぞ」

「せっかく作ったのだから、使い心地を確かめるのが筋だと思うわよ?」

 そう言う切り口で来たか。

「ちゃんと体を洗うのなら入っても良い」

「しっかり洗わせていただきます」

「自身の体を、だぞ?」

「お背中流しますので私の背中も洗ってください」

「メロロア、我慢出来なくなる。みんなにも我慢させてるんだ。頼むよ」

「ゲインさんは本当に良い男ですね。惚れてます」

「仕えるに値する主です」

「そうね。貴族にしたいわ」

「貴族になったら多分長生き出来ないよ」

「ゲイン好きー」

「俺も好きだよ。みんなの事も大事にしたいと思ってる」

「…こ、今夜は1人ずつ入りましょうか」

「…異議はありません」

「私はどっちでも良いけど」

「そ、そだね。たまにはゆっくり浴びよーか」

 暗くなり行く中、ちょっとだけ静かに夕飯を終えた。今夜の見張りは俺が最後だと言う。アントルゼが水浴びから戻るとすぐにテントに押し込まれ、寝る事になった。


 夜景をして朝日が昇る。ランタンの灯りを消して竈に火を入れているとメロロアが起きて来た。

「おはようございます、ゲインさん。朝食まで寝ていてくださいね」

「おはよう。セイコー達のご飯も頼むな」

「了解です」

 テントは仕舞うかも知れないのでマットと毛布を調達したら客車の中で寝る。着替え忘れて皮鎧だから少しだけ寝やすいや…。

 食事を食べたら金属鎧に着替え、陣地を片付け出発だ。今日は森の中に入るみたいなので集中しなきゃな。

 森を突っ切る街道は、幅が広くて間伐もされてて少し明るい。とは言え危険度は変わらないと思う。村の近辺で出なかった野獣やモンスターがこう言う所に集まってるのだ。メロロアとベガを斥候に出して、俺達はその後ろを行く。感知系スキルに集中し、歩いてる鹿や猪を見つけては緊張に身を固めた。


「平和そのものでしたね」

 2つ目の休憩地にてセイコー達に水を飲ませていると、メロロアが渋味のある顔をしてやって来た。

「変な草でも齧ったのか?」

「考え事してる顔ですよぅもう。小鳥も鳴いてて危険な反応も無し。後が怖いですね」

「そうだな。夜警は集中した方が良さそうだな。とは言え昼間も気は抜けない、か」

「次の村に立ち寄って、確認するのもアリかも知れません」

「なるほどな。村の者が真面なら、たまたま野盗が居なかったって証明になるのか」

「話を聞いて、それから出て行っても遅くは無いかと」

 カウモアの提案も悪くないな。

「着いたらお昼だものね」

「だな。タララはどう思う?」

「敵は出るって考えるんなら、寄っても寄らなくても変わらないんじゃないかな?」

「なるほど。冒険譚のネタが無い俺達にはありがたい提案だ」

「それにさ、こっちの畑ってシロートのあたいが見てもちゃんとしてるよね」

「税率は分からんが食えている感じはするよな」

「盗る程苦しい生活ではないと、…確かに理解出来ます」

「まあ、野盗は居るって考えて行動するのが良いだろう。村の周りの畑を見て、それから迂回するか決めようか」

「だねー」

 セイコー達に調子を聞くと、ヒヒンと言うので大丈夫なのだろう。馭者席に乗り込み出発だ。

「あ、ゲイン。湖があるよ?」

「湖と言うかため池だな。ここまで水を運んで来るのも大変だろ?だから池を作って水撒きに使うんだ」

 村はまだ見えないが、畑と共にため池があるのをタララが見付けた。湖程大きくないし、川が無いので池だ。

「ゲインの村にはこう言うの無かったね」

「実はあるぞ。見えなかっただけだ」

「斜面に水を持ってくのは大変そうね」

「俺んちの上の方にあってな。まあそこからはスマンが秘密なんだ」

「なんで?」

「百叩きに遭うから言えないよ」

 俺の知る中ではコレで百叩きに遭う者は居なかったが、これはちょっと言えないのよね。ここでベラベラ喋って村に戻った時に口を割られたら確実に痛い目を見る。俺は口を閉ざして索敵に集中した。

「ゲインさん、村ですよ」

「村だって~。ゲイ~ン機嫌直してよぉ~」

「怒ってはないぞ?」

 この村は盆地の中にあり、遠くからでは見えなかった。大雨が降ったら沈んでしまいそうだな。盆地の際を街道が迂回して通っているので俺達は街道を進む事にした。畑の様子もしっかりしてたし、畑仕事する村人も普通に働いてたからだ。追いかけて来る子供達を撒いて村を過ぎると、再びため池。迂回迂回で距離が稼げないな。

「もしかしたら軍用の道があるのかも知れません」

 カウモアが言うに、真っ直ぐな道が隠されていて、有事の際、もしくは軍人だけがそれを使うのだとか。

「確かに。行軍でこんなに迂回してたら色々面倒だろうな。とは言えその道を見付けても俺達は使えなそうだよな」

「見つかったら捕まってしまうわね」

「そうですね」

 見晴らしだけは良いので風景を楽しみながら進む…。あった。壕を作って段差になってるのか。馬で走る軍人だろう人物が索敵の端に引っかかった。それが無ければきっと見つからなかっただろうな。

「メロロアは気付いてたか?」

「私もさっき気付きました。上手い事作ってますね。丘の切れ目かと思ってました」

 メロロアが勧めないのだから行かない方が良いよな。それにもうすぐ一つ目の休憩地だ。逆に迂回する事になる。

 迂回が多くて時間を食った。平地なのでまだ日はあるが、早く陣地を作らないと危険な中で作業する羽目になる。

「今夜は客車で寝よう」

「あ~い」「取り敢えず壁よね」

「水浴びも立って浴びてくれ」

「仕方ないですね」「それでは下草を刈ります」

 カウモアが草を刈り、俺は集めて乾燥させる。馭者を代わったアントルゼが馬車を誘導し、タララとメロロアがブロックを切り出して壁を積み上げる。装具を外し、自由を得たセイコー達が草むしりするのを見ながら全員で壁を作った。

「竈を置いたら水浴びもトイレも無いよ~」

「狭く作り過ぎたな。夕飯を食べたら1度仕舞って水浴びしよう。トイレは馭者席の方に作るよ」

 板2枚を縦に刺し、穴を開けてトイレは出来た。セイコーとベガに水と飼葉を与え、乾燥野菜も一掴み。機嫌は良さそうだ。

「ゲイン、そろそろ灯りが欲しいわ」

「テーブル作る場所が無いよ~」

「今出すよ。タララ、客車の中で食べよう。車の中でよそるから鍋ごと持ってってくれ。火傷に注意だぞー」

「あ~い」

「ゲイン様。後はソーサーだけですので中へどうぞ。焼き上がり次第お持ちします」

「ヒヒンッ」「ブヒヒヒ」

「あ?オカワリか?それやったら入るよ」

 甘えたいだけだった…。水浴びはもうちょっと待っててね…。撫でて抱きしめ客車に入るとしばらくしてカウモアが追加の薄ソーサーを持って来たので皿を受け取りみんなでご飯。狭いながらも楽しい我が家だ。

「今まで広過ぎたんだね~」

「途中の草藪で停めときゃ良かったな」

「何事も経験ですよ。穴の中で寝た事もあったじゃないですか」

「メロロアさん、寝てるゲインにキスしてたよね~…」

「あっ、あはっ、そんな事ありましたっけ?」

「墓穴を掘ったわね」

「私だってイチャイチャしたかったんです!」

「開き直りましたね」

「ゲインさぁ~んた~すけて~」

「覚えてないし許してやれよ。今ではみんなともイチャイチャしてんだからおあいこだろ?」

「んぐ~…」

「その分働いてるのだから許してあげたら?私達、移動中はずっと箱の中じゃない。ゴブリンでも出てくれないとつまらないわ」

「ん…あたいも~」

「索敵も立派な仕事だぞ。割とマジで」

「そう言って頂けると報われます」

「街に着いたら少し仕事するし、頑張って働こうな」


 食事が終わり、俺は一足先に客車を出て、竈を仕舞ってセイコー達を洗う。服がびたびたになるから最初からパンツ一丁だ。

「お待たせ。水浴びの時間だよ~」

「ぶるるる」「ぶふー」

 ウォーターウォールで馬体を濡らし、干し草でゴシゴシ。お礼にベロベロされてスリスリ。濡れた毛皮だが、多分洗われてると思う。

「ゲイン、パンツ履いてるの?」

「セイコーとベガが終わったら脱ぐよ」

 振り向くと全裸のタララが水浴びしてた。ウォーターウォール越しでハッキリとは見えないが肌色だから全裸だろう。

「早く終わったら背中洗ったげる~」

「馬2頭洗うのがそう簡単に終わってたまるか。ビシャビシャの尻尾を凝視してやるから手伝え」

「…タオル巻くね…」

 濡れた尻尾はどうしても見せたくないらしい。尻尾隠しておっぱい隠さずなタララが干し草を掴んで寄って来た。

「汗が溜まる場所は念入りにな」

「どこよ?」

「股の間とか脚の付け根とかだな」

「ゲインのエッチ」

「馬はな、自分じゃ洗えないんだ。それで病気になったりする」

「ん…そだね。ごめん」

「毎日乗せてくれてるんだ。大事にしてやらんとな」

「だね。セイコーちゃんもベガちゃんもキレイにしたげるね!」

 体を洗い合う馬と熊。仲良くなった…のか?さっきまで俺にべったりスリスリしてただけに少し寂しい。

 頭の先から尻尾の先まで洗われたセイコーとベガを乾燥させる。タテガミも尻尾もツヤツヤだ。地面を乾かし干し草を敷いて2頭の寝床を作ってやると、なるべく離れて人の洗い場を確保した。

「ゲイン、早く水浴びしたいのだけど?」

 客車から顔を覗かせアントルゼが愚痴る。

「一緒に浴びよーよ」

「これでも見張りしてるつもりなの。早く洗って交代なさい」

「あいあ~い。ゲイン~、背中擦ったげるからパンツ脱いで~」

「脱がなくても背中は擦れるよな?」

「あたい、すっぽんぽんなんだよ?」

 問答してても仕方ないのでパンツの紐を外す。折角だからもみ洗いしておくか。水壁の中に入って揉み揉みゴシゴシしていると、タララが背中を擦りだす。干し草ではなくタオルだな。

「ん、んっしょ…んっ」

 首から尻まで擦られながら、俺は他の部分を洗う。

「そこも、洗おっか?」

「タララは自分がされたいか?」

「ゲインになら…」

「早く自分達用の風呂が欲しいな」

「だね…」

 一足先に水浴びから上がると交代でアントルゼとカウモアが客車から降りて出た。

「あら?固くなって無いのね」

「なるべく見ないようにしてるからな」

「健気ね。偉いと思うわ」

「どちらの姿も立派です」

 体とパンツを乾かして、客車に入るとメロロアが凝視してた。

「眼福です。ありがとうございます」

「俺に何の得も無いんだがな」

 乾いたパンツを着直して、服と装備を身に纏う。

「でしたら、これで…」

 壁にもたれて座る俺の正面で背中を預けて座り込む。腕を取られて抱きしめるような体勢になった。

「警戒は任せて、好きにしてください」

「そうか」

メロロアを離さぬように抱きしめる。

「今日も斥候ありがとな。頑張ってくれたのが汗の匂いで分かるよ…」

「あ、ありがと…え、汗?ちょ、待ってくださいっ、一旦離しましょ?顎でロックしないでっ!?」

「すーーーーはーーーー」

「だっ、ダメダメっゲインさんっ後生ですからぁぁ」

 離してやると客車の隅で大人しくなった。下着を着けたタララが客車に入って来て窘める。

「メロロアさん。明日まで我慢だよ?」

「うう…。私更に順番が後になると思うんですが…」

「それでも。宿に着くまではゲイン真面目モードになってるし、怒らせるだけだよ」

「ですよねー。すみません」

「俺だって男だ。分かるだろ?」

「頑張ります」

「ゲイン、尻尾見る?」

「見るだけかよ。もふもふさせろよ」

「それは宿でね~。鎧着けるの手伝ってよ」

 重い腰を上げてタララの装具を手伝った。その内にアントルゼとカウモアが水浴びから上がり、メロロアが服を脱ぎ出した。

「ゲインさん、まじまじ見られると照れますね…」

「そうだろ?我慢してんだ」

「水浴びしてきます…」

 静かに外に出るメロロアであった。

 パシャパシャと水音が聞こえる中、座って静かに索敵する俺の股座に、毛布を巻き付けたアントルゼが座って来る。

「汗臭くは無いハズよ?」

「そうだな」

 今夜の見張りは俺とアントルゼ、タララとカウモア、最後にメロロアの順だ。横になると寝てしまうからこうして起きていたいのだろう。傍では既に寝始めてるので静かに過ごす。

「お待たせしました」

「ゆっくり寝てくれ」

「このまま寝てしまいたかったわ」

「代わりましょうか」

「ダメよ。せっかくの2人きりの時間なんだから」

 手を引かれて外に出る。水壁は消したようだが地面がまだ少し湿ってるのでデリートウォーターで乾かしておこう。竈を出して、明日食べる薄ソーサーを焼いて過ごす。アントルゼはスープの番だ。

「やっと温かいお湯に浸かれるのね」

「公共浴場があればな」

「期待はさせて欲しいわ。無かったら浴室のある宿にしましょ?」

「いくらかかるか想像も付かんな」

「そうよね。街で10日過ごすとしてもバカにならないわね。そうだ、属性魔石を買いなさいよ」

「お高いんだよな?」

「高いけど、今の私達になら買えるわよ。売ってれば、だけどもね」

 あの時は2人が俺達の持ち金を知らなかったから買わない選択をしたが、今なら買う候補に上げられるんだよな。まあ、良いのがあれば買っても良いか。


 草藪だが平地が広がるこの休憩地では賊も魔物も出なかった。兎はそこそこ歩いてて、朝には壕にハマったのが3匹。ブロックをぶつけて楽にしてやる。内臓と血抜きをして街で売ろう。肉食獣は食べたそうにしていたが、燻し肉も干し肉もまだあるからな。

 食事を済ませ、片付けと準備諸々を終えた俺達はセイコー達に声をかけて出発する。

「ゲインさ~ん、馬車がいま~す」

「奇遇だな、俺達も馬車だぞ」

 と言うのは冗談で、前に行商の馬車が野菜を乗せてガッポガッポと歩いてた。多分盆地の村の者だろう。




現在のステータス
名前 ゲイン 15歳
ランク C/D
HP 100% MP 100%
体力 D
腕力 E
知力 E
早さ D-
命中 E-
運 D

所持スキル
走る☆☆ 走る☆☆ 走る 走る 走る
刺突☆☆ 刺突
硬化☆☆ 硬化 硬化
投擲☆☆ 投擲
急所外物理抵抗☆☆
飛躍☆ 飛躍
木登り☆
噛み付き☆☆ 噛み付き 噛み付き
肉体強化 肉体強化☆ 肉体強化☆
腕力強化☆ 腕力強化 腕力強化
脚力強化☆ 脚力強化☆ 脚力強化
知力強化☆
体力強化☆ 体力強化 体力強化
ナイフ格闘術☆ ナイフ格闘術
棒格闘術☆
短剣剣術☆ 短剣剣術☆
避ける☆
魅力☆
鎧防御術
察知
探知
マジックバッグ
マジックボックス

鑑定☆ 鑑定
魅了
威圧
壁歩き

水魔法☆ 水魔法
|├ウォーター
|├ウォッシュ
|└デリートウォーター
├ウォーターバレット
├ウォーターウォール
└ボーグ

土魔法☆
├ソイル
├サンド
└ストーン

火魔法
├エンバー
├ディマー
└デリートファイヤー

所持品
革製ヘルメット
革製肩鎧
革製胴鎧
皮手袋
皮の手甲
混合皮のズボン
皮の脚絆
水のリングE
水のネックレスE
水のブレスレットE

革製リュックE
├草編みカバン
├草編みカバン2号
├紐10ハーン×9 8ハーン
└布カバン
 ├冊子
 ├筆記用具と獣皮紙
 ├奴隷取り扱い用冊子
 └木のナイフ

革製ベルトE
├ナイフ
├剣鉈
├剣鉈[硬化(大)]
├解体ナイフ
└ダガー

小石中472
小石大☆450
石大19
石片5

冒険者ギルド証 0ヤン

財布 ミスリル貨231 金貨31 銀貨8 銅貨9
首掛け皮袋 鉄貨74
箱中 428,359→393,359ヤン 
ミスリル貨 金貨7 銀貨267 銅貨560 鉄貨359 砂金1250粒


マジックボックス
├猪(頭・皮)燻283枚
├戦利品
├箱
|└シルクワームの反物×33
├未購入チップ各種箱
├医薬品いろいろ箱
├食料箱×2
├調理器具箱
├ランタン箱
|└油瓶×10 8.6/10ナリ
├竈、五徳
├蓋付きバケツ大
├テントセット
├マット×4
├中古マット×5
├毛布×9
├洗濯籠
|├耐水ブーツ
|└耐水ポンチョ
└宝石
鉄兜E
肩当E
胸当E
腰当E
上腕当E
ゲル手甲E
ゲル股当E
帆布のズボンE
脛当E
鉄靴E
熊皮のマントE

籠入り石炭0
石炭77ナリ

ランタン
油瓶0/0.8ナリ
着火セット
輪止め×2
飼葉たっぷり
服箱
├中古タオル
├中古タオル
├未使用タオル×2
├中古パンツ
├パンツE
├未使用パンツ×2
├ヨレヨレ村の子服セット
├サンダル
├革靴
├街の子服Aセット
└街の子服Bセット

スキルチップ
ハシリウサギ 0/4521
ウサギS 0/1
ウサギG 0/1
ハシリトカゲ 0/3166
ハシリトカゲS 0/1
ハチ 0/2859
ハチS 0/1
カメ 0/3459
カメS 0/1
ヨロイトカゲS 0/2
石 0/1861
石S 0/1
スライム 0/2024
オオスズメ 0/1573
トンビS 0/4
フォレストモンキー 0/972
ウルフ 0/1070
カラードウルフ 0/1
ワニS 0/1
グラスベア 0/1
ラージアントワーカー 0/100
ラージアントソルジャー 0/100
蝶 0/204
花 0/161
腕 0/541
腕S 0/1
腕G 0/1
脚 0/650
脚S 0/101
脚G 0/1
頭 0/576
体 0/523
体S 0/1
体G 0/1
棒 0/627
ナイフ 0/640
ナイフS 0/1
短剣 0/352
短剣S 0/100
鎧S 0/1
袋S 0/1
箱G 0/1

水滴 0/446
水滴S 0/1
立方体 0/525
火 0/4

魅了目S 0/1
威圧目S 0/1
ドクハキヤモリ 0/1
頭三本線S 0/1
頭三本線G 0/1
眼鏡S 0/100
眼鏡G 0/1
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