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第二話 反撃のベル
しおりを挟むあ、待った。入る前に……、
「ネア、スカーレットに部屋から出ないように伝えておいて。私についてなくていいから」
「?分かりました。」
「はい、コレを付けておいてね」
と、侍女服の青いリボンをほどき、赤いリボンに付け替えた。
「これ……」
「私の専属侍女の証のリボンよ。これがあれば大丈夫だから、お願いね」
ネアの頭を撫でて、微笑んだ。
「行ってらっしゃいませ、スノーリリー様。」
「開けてちょうだい」
「あの……失礼ですがどちらで」
……イメチェンしただけでこんなに変わるもんなんだ。
「無礼者、と言いたいところですが、第一王女のスノーリリーです。通してくださいますか」
「し、失礼いたしました。あまりにもお美しくなられていたので」
「まぁ嬉しい。」
「開けますね」
扉がギィと開き、コツンと足を踏み入れた。
「待たせて申し訳ございません。
ごきげんよう、宰相、公爵、クロード公子」
円状の机を囲むように腰掛ける、3人の男。
1人は宰相、1人は宰相補佐の公爵、そして婚約者のカーネル・クロード。
1番大きな椅子に腰掛けた。
「始めましょうか」
「これは第一王女殿下。今日は雰囲気が違いますな。お美しいです」
と、宰相が微笑む。
「ありがとう宰相。」
「ふぅん、お前も磨けばなんとかなるんだな」
あ?
何だコイツ……。乙女ゲームじゃスカーレットにはベッタベタのくせに、スノーリリーにはこんな態度取るわけ?ん?
「ま、婚約者があの地味な姿でいるよりかはいいな」
偉そーに……。無礼にもカーネルは私の顎をクイッと指で上げた。
……随分調子乗りみたいじゃない。
まぁ、スノーリリーは何も言わなかったっぽいな。
言い返すことを放棄してたんだろう。
でも私はあのスノーリリーじゃないし、カーネルにもスカーレットにも、好きにさせる気は無い。
「それよりよぉ、スノーリリー。金足らなくなってきたんだけど」
何、スノーリリーって、カーネルの金づるでもあるの?……頭痛いわ。
「これ!!無礼であるぞクロード公子!!」
公爵がカーネルを睨んだ。
「無礼なのはどっちだぁ公爵。こっちは次期王配だぜ?潰されたくなかったら大人しくしとけよ。それに、ただで貰えるものはただでもらっとかないとな」
……呆れた。多分こいつにはやりすぎるくらいがちょうどいいわね。
思いっきり、ガっとカーネルの椅子を蹴った。
「うわっ!?」
椅子が傾き、カーネルは椅子ごと地面に倒れた。
「いってえな!!何すんだよ!!」
カーネルが起き上がる前に、手を踏みつけた。
……うう、やりすぎかな。良心が痛むけど、これくらいはしないとね。
「うぐっ!」
カーネルが手を踏まれたことによって顔をしかめた。
「……誰に口をきいているのかしら。私は次期女王よ」
ひんやりとした空気が、王の間を支配した。
さらに、カーネルの足をふむ力を強くし、
微笑んだ。
「あなたが王配になろうと、最高位の貴族の公爵をどうにか出来ると思う?その小さな脳みそで考えるのね」
「離せよっ!!」
「……カーネル・クロード。今ここに、あなたとの婚約破棄を告げます。」
ここからが第一歩。反撃のベルを、鳴らさなきゃ。
「は!?お前の即位はもうすぐだぞ!!王配なしで即位する気か!!」
「まぁそこはなんとかなります。あなたを王配に選んだ私が間違っていました。借金は王家が支払うのでご心配なく。はやく、出て行ってくれるかしら。」
「ちょっと待て!!」
「話しかけないでくれる?あなたはもう婚約者でも次期王配でもない、ただ次期女王に無礼を働いた貴族の恥よ。」
「てんめぇ……!!」
まさか殴りかかろうとしてる?
すぐに出て行ってくれたら、手荒な真似はしないつもりだったんだけど……。
「不敬である!!無礼者を捕らえよ!!」
そう言うと、衛兵が入ってくる前に、公爵が動いてた。
「ぐあっ!」
クロードが公爵によって床に押さえつけられ、衛兵に手を縛られた。
「連れて行ってちょうだい。……カーネル、次あなたから私に顔を見せれば、クロード家の取り潰しも考えるわ。じゃあ、ごきげんよう。」
カーネルが何か騒ぎながら連れていかれた。
「めちゃくちゃスッキリいたしました!!と、言いたいところですが、王配をどうするつもりなんですよーー!!」
おー、結構宰相ってオープンな人なのね。
うーん、どうしよっかなぁ。
王配無しでの即位はキツいか。
「私の即位まであとどれくらいですか?」
「半年はございますが…」
ならなんとかなるか。
「婚約者リストがまとまり次第お送りします。」
「ありがとう公爵。」
……会議にならなかったな。
さーてと、もうカーネルも帰ったよね。
「お姉様!!カーネル様との婚約破棄をされたってどいうことですか!!」
……来たか。来たってことは、もうスカーレットとカーネルは予想通りできてたな。
「……スカーレット、部屋から出ないように命じたはずだけど」
「侍女ごときに私をどーにか出来ると思わないで下さい!」
「……ネアに何かしたの?」
スカーレットのドレスのスカーフを思いっきり引っ張った。
「な、何も……。会議が終わったから出てきたのですわ」
……ていうか、何で破棄したか知ってるの?
まぁ、答えは1つ。スカーレットの部屋にカーネルがいるからだろう。
「カーネル様はお優しい人ではありませんか!!何故っ……」
アレが優しいだって?
「あなたにとって優しい人でも、私にとっては次期女王に無礼を働いた無礼者なの。自重なさい」
と、微笑んだ。
「それはお姉様がカーネル様に好かれる努力をしなかったからです!」
はぁぁん?
こいつ頭だいじょーぶか。
カーネルよりヤバね?何で私があいつに好かれる努力しなきゃいけないわけ?……この子も黙らしといた方が良さそうね。
「所でスカーレット」
「何ですか?」
「破棄は先程したばなりなのよ。それを何故、あなたは知っているのかしら。」
「!!」
「まぁ、そんな驚いた顔するのね。
あ、別にいいのよ。アレはもう次期王配じゃないから。怒りに任せて感情の奴隷になってしまえば、自分が不利になることを忘れないで。じゃ、失礼するわね。」
……あっー、スッキリした。
あの間抜け顔を拝めただけでかなりスッキリするもんね。まさかヒロインがあんなクズだったとは……、驚いた。
「お疲れ様でございました、スノーリリー様。」
「ネア!何もされなかった?無茶なお願いだったのに、ありがとうね」
「……心配、してくださるのですか」
「?当たり前よ」
「……変わられましたね。スノーリリー様。以前は侍女の名など覚えていませんでしたのに」
「うっ……、ごめんね」
「責めてなどいませんからね!嬉しいのですよ」
「そう。それはよかったわ」
と、微笑んでネアの頭を撫でた。
「私、スノーリリー様に頭撫でてもらうの、好きです。」
待って可愛い、え、めっちゃ可愛い。
うちの侍女がかわいい!!
待って待ってめっちゃネアに課金したい。……何言ってんだ私。
ついゲーマー本能が目覚める所だったわ…。
「スノーリリー様?」
「何でもないわ。ネアは今いくつなの?」
「13です」
…んっ?かなり大人びてるな。まだ、13。
「……やっぱり、次期女王の侍女としての年には、幼すぎますよね。」
「そんなことないわ。専属の侍女はあなた一人というわけではないし、今はあなた一人だけれど、増えた時にあなたが侍女筆頭になるの。そのためには若い頃からしっかりしなくてはダメよ」
「……なんだか、スノーリリー様と話しているとすごく褒められている気分になます。」
「褒めてるんだもの。」
そう微笑むとネアの顔が赤くなる。かわいいなー。
あんな妹よりよっぽど可愛い。
……さて、王配をどうしたもんかなぁ…。
いっそ他国の貴族か王子とかと結婚して縁を深める?でも他国と縁を結ばなきゃいけないほどこの
フィオンシーナは小さくない。むしろデカい。
うーん……、いっそ独身をつらぬくか?
それはそれで結婚結婚ってうるさく言われそうだし……?
「スノーリリー様!!」
バンっと扉が勢いよく開いた。
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