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第六話 最低野郎の顔を踏んづけてやりましょう
しおりを挟む父の部屋から帰り、王の間に戻るとすでにクロード伯爵はもう来ていた。
えーっと、あれがクロード伯爵に、長女と次女…。
「……待たせましたね。父と話をしていたもので」
「と、とんでもございません。第一王女殿下。
先日の息子との婚約破棄…、息子が大変な無礼を働いた様で、申し訳ありません。」
「今回の呼び出しはその話ではございませんが…で、カーネル・クロードはどちらに?」
「それが、呼び出しを申し付けられたとたん、すぐに家を出ていってしまって……」
と、長女はもう死にそうなくらい青い顔をしていた。
……すぐに逃げ出した?もうビンゴじゃん?
スっと、手を上げると衛兵が30人ほど王の間に入ってきた。
「カーネル・クロードは危険薬物を売買した重罪人である可能性が高い。今すぐ捕らえよ。捕らえたらその場待機。私が直接手を下します。」
「はっ!!!!」
兵が膝まづくと、バタバタと王の間を出ていった。
「おっ、お待ちください王女殿下!!まだ確定した訳ではっ……」
「なら何故カーネルは逃げ出したと言うのでしょうか。それを説明出来るなら今の命令を取り消して差し上げますよ」
「そ、それは……」
「危険薬物とは、何の話ですか!?」
クロード伯爵家が真っ青な顔で尋ねた。
「……まぁ、ご存知ない?
王都で流行するラスという名の薬物は、東の土地でしか育たぬ貴重な葉。それを栽培して売りさばけるのは、東に拠点を置き、森の一部を所有するクロード伯爵家だけです。…その感じではあなたがたは何も関わってなさそうですけれど、逃げ出したカーネルがその犯人だと考えるのは当たり前でございましょ?」
「……ごもっともです。」
「よろしい。カーネル・クロードが関与していた 場合、クロード伯爵、あなたの爵位を剥奪します。」
「そ、そんな!!」
「一応手助け出来ぬように幽閉させていただきます。連れて行って。丁重に扱ってちょうだい。」
「はっ」
「お、お待ちください王女殿下!!国王陛下はこのことをご存知なのですか!?」
「もちろんです。陛下は悪の根を断てと仰せよ。
次期女王とはいえ、王女の私にそのような権限はありませんからね」
「くっ……」
……さて、と。兵がカーネルを見つけ出すまでどのくらいかかるかな。
これでカーネルが関わってたら、スカーレットはどうするんだろ。
あの二人は多分私を殺して2人で王座を狙ってる…。それか、王配になれそうな他の男に乗り換えるか?
……そうなるとめちゃくちゃ面倒。
もし公爵家なんかの男を連れてこられたら、ホントにすぐ私は結婚相手を決めなければならない。
そうなる前に、追い出すっていう手もあるし…。
あの子は素行が悪すぎるから理由はいくらでもつけられるけど……。
「お姉様っ!!!!」
バンっと、王の間の扉が勢いよく開いた。
…来たか、スカーレット。
多分兵が何人も出ていくのを見て、騒ぎの理由を知ったのだろう。
「入ってくるのを許可した覚えはないわよスカーレット。ただちに退出なさい。」
「カーネル様が関与しているとは思えません!!」
「それはあなたがあの愚図に恋愛感情を持っているからよ」
「ぐ、愚図だなんてひどい…!お姉様お願いです!!どうかこの私に免じてクロード伯爵家をお見逃し下さい……」
……は?何であんたに免じてクロード伯爵家を見逃さなきゃならないわけ?
しかも、どうしたの?嘘泣きなんかしちゃってさ。
全く心に来るものがない。
「話にならない。出ていって」
「い、妹の、可愛い妹の頼みではありませんか!!」
は?誰が可愛いって?
「誰があんたの頼みなんか聞くかこのどブス」
「えっ……?」
しまった……、心の声が。
「……あんたが!!あんたがいなければ全部全部、上手くいくのに!!この国は私達、2人の物なのに!!
何で邪魔ばっかりすんのよ!!ゲームのスノーリリーはこんなんじゃない!!私が、私がヒロインなのに……!!」
スカーレットがものすごい剣幕でこちらに走り、首をしめてきた。
「!?」
「死んで、死んでよ!!早く私にっ、幸せをちょうだい……!!」
待って、スカーレットも転生者なの!?
私がヒロインって、言ったよね?
ゲームのスノーリリーはこんなんじゃないって、ハッキリ言った。
首をしめられていることに、ハッとした。
ダメだ、抵抗しないと殺される……!!
「……確かに、ゲームのスノーリリーはこんなのじゃない。だけどね、王の仕事を手伝って分かったわ。あなた達に王座を譲る気はない!!私は、この国が好きだから、次期女王の手でぐちゃぐちゃになんかしたくなないの!!」
「それって手を汚したくないだけでしょ!?この作品を愛してるなら汚さないで!!」
「スノーリリー様っ!!」
「きゃぁっ!!」
シャルドがスカーレットを床に押さえつけた。
「……勝手に入って申し訳ございません。」
「…ケホッ…、いいえ。ありがとう」
……ていうか、スカーレットは私が元からスノーリリーじゃないって知ってたの?
私の発言にピクリともしなかった。
「……幽閉しておいて」
「はい。」
シャルド、ホントに体術使えたのね。
一瞬だった。スカーレットが兵に連れていかれた。
「ご報告申し上げます!!カーネル・クロードを闇市にて捕獲致しました!!」
1人の兵が入って来る。
「闇市に向かいます。シャルド、馬を準備して」
「かしこまりました。」
馬車じゃ闇市は通れないしね……。
馬に乗って闇市まで走った。
……ここか。多分酒場だよね。
扉を開けると、もうカーネルは縄で縛りつけられ、
床に寝転んでいた。
「…不自由なあなたを見るのは気分がいいわね。」
マントのフードを取った。
「!!…女王様が何の用だよ。俺と婚約する気になったか。」
……カップル揃ってこいつらはまったく…。
「ちょっと、黙らして」
兵に頼むと、思いっきり兵がカーネルの腹を蹴った。
「いでっ!!」
「さーてと、罪を認めてくれる?」
「チッ…、イグレット公爵の耳に入ってたか……。」
「その発見は肯定と受け取るわよ。」
「あ?」
反抗的な瞳に、イラッとした。
「ラスで何をしようとしていたのか、吐きなさいよ」
「……」
簡単に言うわけないか。
「スカーレットが可愛そうね。あなたとの幸せを望んでたのに。」
「お前っ、スカーレットに何かしたのか!?」
「してないわよ。どっちかって言うと私がされた側かなぁ。」
「ふざけんなっ!!てめぇみたいな人間が触れていい女じゃないんだよスカーレットはっ!!だからラスを使って反乱を起こしてっ、王座を奪おうと思ってたのに……!!」
あ、吐いた。
寝転がるカーネルににこっと微笑むと、私は思いっきりカーネルの顔を踏んづけた。
「……随分勝手なことしてくれたみたいね。
悪いけど、王座は私のものよ。あなた達バカ2人が何しようとした所で、私にはかすりもしないのよ。」
「うっ…」
「コイツを地下牢に幽閉しておいて!!決して第二王女に会わせないで。」
『御意!!』
……終わった。
「わっ、スノーリリー様!?」
あれ、何かが、プツンって、切れた気がした。
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