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第十一話 足蹴り姫
しおりを挟む「ん…」
あれ、私どうしたんだっけ…。ここは、寝室か
「あらスノーリリー様。お目覚めになれれましたか」
「…カヌレ。おはよう」
「おはようございます」
そっか、今日からカヌレも専属侍女なんだ。
いまいち頭がぼーっとして、色々ついていけてない。
ええと、昨日熱が出て…それから、それから…
「弟も心配しておりました。熱はすっかり下がっている
様ですし、後で元気なお姿を見せに行ってあげてくださいまし」
…カヌレの弟?てことは、コルゼ?
「…」
あああああああああああ!!!!!
うっすらだけどすごい恥ずかしいことをしちゃったのは覚えてる!!!
え、恥ずかしい!!
…仕事の合間にでも謝りに行こう。うん。
あんなことしてちゃ次期女王の尊厳が…。
でも、あれはあれで、よかったのかも?
「スノーリリー様!!」
「よかった…。体調はいかがですか?」
「心配をかけてすまなかったわね、三人とも。
ネアとシャルドにはいつも情けないところをみせて
恥ずかしいわ」
「何をおっしゃいますか!!」
「そうですよ!間違ってもあやまったりしないで
下さい!!」
はあ…、なんていい子達なんだ。
この子たちを侍女に選んで本当に良かった。
そういえば、専属侍女枠は四人までだから、一応
まだ一人入れるのか。
まあ、ぼちぼち決めるか。
「さて、仕事しますか」
「はい。今年の予算の振り分けの記録をご確認下さい」
「ん」
んっ!?なんじゃこりゃ!!めっちゃ減ってる!!
そんなにお金使ってないよね!?何でこんなに減ってんのよ!!どこに使ってんの!?
「……カヌレ」
「はい」
「今すぐ、王の間に行政官を呼び出して!!」
「かしこまりました。すぐに」
こんなお金どこに使ってんのよ……。
あ、第一王子宮!?
そうなんだよね……、この国にも王子は一応いる。
だが側室の子であり、この国の王位継承権は、
正妃が産んだ子供の順番で決められる。
もちろん正妃が1番に産んだ子でも、許容範囲を超えれば、まともな教育を受けさせてもらえない。
スカーレットは王位継承権第三位。
正妃の子なのに……。
私が一位で、第一王子が二位。
腹違いの兄に1度も会ったことがない。だけれど、あちらはさすがに知っているだろう……。確か同い年だったな。
にしても何で第一王子宮にこんなにお金が流れてるのに国の予算を管理する行政官は何も言わないわけ?
把握出来てなかった私も悪いけどさ……。
カヌレが戻ってきた。
「どうだった?」
「第一王子宮にいらっしゃると」
は?呼び出しに応じないつもり?
「ありがとう。…この国の行政官って」
「ランディー伯爵にございます。お金は第一王子宮に流れているのでしょう?それは第二王妃、陛下の側室のナーナ様がランディー伯爵の妹だからです。行政官という立場を利用して、お金を流したい放題なのです。」
は!?ざっけんなよ……?
そんなお金があるなら国に回すでしょう普通!!
それでも王族なの!?
「第一王子宮に向かいます。」
……ここが第一王子宮か。
金かかってんな。キラキラして眩しいんだよクソが。あ、お言葉遣いがよろしくなかったね。
「失礼!!こちらにランディー伯爵はいらっしゃるかしら!?」
「おおスノーリリー様。こちらに」
なにニヤニヤしてんの!?怒ってるのわかる!?
もういい怒ったから。
ランディー伯爵が近づいてくる。その足に足を引っ掛けた。見事に伯爵はズテーンと漫画のような効果音付きで転んだ。
「な、何をなさるのですか!?」
「こっちのセリフよ。伯爵が王女の私を呼びつけるだなんて……」
転んだ伯爵の前にしゃがみ、扇子であごをグイッと上げた。
「死を覚悟しているということかしら。
立派な心構えですこと…。褒めてあげてもよろしくてよ?」
上から目線からの、声に圧をかけた。
これでビビらなかった人はいない。
……ほら、もう恐怖の顔に支配されてる。
「ひいっ…!!」
「頭をたれよ」
「えっ?」
「その場に膝まづき、額を地面に擦り付け、許しを乞え。命だけは助けてあげる」
「も、申し訳ございません!!」
汗ダラダラ流しちゃって、だっさ。
クビね、クビ。首チョンパしてもいいくらいだわ。
国の財産を自分の甥と妹に使うだなんて。
重罪よ……。
「ねぇランディー伯爵。いえ、ランディー行政官。これは何なのかしら」
予算の割り振りが書かれた紙を、土下座するランディー伯爵の前に投げつけた。
「随分勝手なことしてくれたじゃない?こんなに第一王子にお金をかけて……、あぁ、まさか第一王子を次期国王にしようとか馬鹿な計画たててるの?」
まぁぶっちゃけそれしか考えられないけどね。
確かに王子が跡継ぎになるのが普通っていうのが、
まぁ常識な訳ですが、あの父親に国を任されたのはこの私。
スカーレットのことで吹っ切れた。
第一王子が害をなすと認識したらランディー家ごと排除して、息の根を止めてやる。
まだ命を狙われる危機はあった。
油断は、禁物。
「そ、そんなめっそうもない」
明らかに動揺しちゃって、嘘下手かよ。
「へぇ~。じゃあこのお金は何に使ってるの?」
「存じ上げません!」
存じ、あげませんですって?
気がつくと、ランディー伯爵を蹴り飛ばしていた。
「なっ、何をなさいますか!!」
「行政官であるあなたが知らないってどういうこと?説明してくれる?」
「っ……」
「伯父上?騒がしいようですがどうしたのですか?」
……第一王子が出てくるとは驚いた。
ふぅん、やっぱり金かけられてるだけあって太ってるわね。
「この美しい女は誰ですか!?ハッ、伯父上……、
まさか私の妻になる女を連れて来てくれたのですか!?」
嘘でしょ……。私の顔を知らないなんて…。
そりゃイメチェンしましたけどさぁ……。
「黙っておれノーサ!!」
「いいえ黙りませぬ!!この女が僕の腕に飛び込んでくるまでは!!」
頭大丈夫?病院に連れていってあげたいぐらい。
「私の顔を知らないなんて、無礼極まりないわ。
いったいどのような教育をすればこんなのになってしまうのですか。ねぇランディー伯爵」
「も、申しわけございません……!!」
「そなたこそ無礼極まりないぞ女!!私を誰と心得る!」
え、バカなの?バカなんだね?
ランディー伯爵はもう終わったみたいな顔をしている。そりゃそうか。
……なんかちょっとだけ可哀想になってきた。
「お前こそ我を何と心得る。私はスノーリリー・ベル・フィオンシーナ。次期女王ですよ?」
「なっ!?スノーリリーだと!?あの女はスタイルがいいだけのブスではないか!!」
はぁ~~……!?何言ってくれちゃってんのこいつぅ……!!
「しかも足蹴り姫などという二つ名を持つそうじゃないか!!」
あ、足蹴り姫!?初耳なんだけど……。
いちいちイラついてたら話しになんない。
「これは命令です。第一王子宮にある高価なものは全て没収。命があるだけ泣いて喜んで下さい」
「はっ、はは……!!」
王宮の使用人達が高価な物を運び始めた。
これでよし!まあスッキリした!
……でも足蹴り姫なんて二つ名、最悪だ。
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