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第十六話 女王の忠犬
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「王女殿下、失礼いたします」
「宰相、何でしょうか」
山のようになった書類の山に目を通していると、
宰相が入ってきた。
しかも、すごく顔色が悪い。…この人絶対寝てないな。
まあ何かと最近忙しくさせてしまったし。
「現在王都で闇オークションが開催されているようでして。
調査の許可をお願いに参りました。」
「闇オークションねぇ。
ちなみに、許可を出すと誰に一任されるのですか?」
「無論私ですが」
「…宰相、あなたは少し休んでください。
この件は私におまかせください」
「そういうわけには参りません!」
「…こんなことは言いたくありませんけど、
命令です。休んでくださいますよね?宰相」
「…ではお言葉に甘えて。
お願いいたします」
「はい、任されました」
宰相がよろよろと出ていく。
ゆっくり休んでくださいね、宰相。
「とか言っておきながら、お休みになられていないのは
スノーリリー様も同じですがね」
後ろから若干あきれるようなシャルドの声がした。
「うっ…。まあ宰相ほどじゃないわよ。
宰相はお年だし、苦労あんまりかけたくないのよ」
「スノーリリー様がそうおっしゃるのなら、私達はそれに
忠実に従うまでですわ。」
それにネアが微笑んだ。
あーーーーーーー…可愛い。
おっほん…。
「お望みならば、侍女のメンバーだけで調査して
参りましょうか?」
「え…うーん。すっごくありがたい話なんだけど、
どうしようかな」
「私達めはあなた様の忠犬故、なんなりと
お申し付け下さいませ」
「…ありがとう。忠義心が強い子達で安心するわ。
では現場は任せます。
そのオークションの責任者と関係者を捕らえたら、その場待機で
私に報告を。それから向かわせてもらう」
「仰せのままに」
「では、次期女王、第一王女の名において命じます。
ネア・セレーネ、シャルド・ヴィター、カヌレ・アルティア、
早急に命の遂行を命じます」
「我らの主の御心のままに」
「御意」
「かしこまりましてございます」
三人だけで大丈夫かな…。
でも二人とも、シャルドに体術とか教えてもらってたしね。
あの三人は優秀だ。だから、信じよう。
にしても、「忠犬」、か。
確かに忠義を持って仕えてくれてるから、間違ってはいないかも、
しれないけど、「犬」っていうのがちょっとな…。
だけど、この任務を遂行したら、「女王の忠犬」…なんて通り名が
つきそうだ。まだ女王じゃないけどね。
ー闇オークション会場ー
私の名前はネア・セレーネ。
現在十四歳。この前まで十三歳でしたが。
そして王女様の専属侍女筆頭を任されています。
だけど、それって、私が一番に専属侍女になったのかな?
シャルドもカヌレも、長所がある。
シャルドはかなり体術を極めてるし、カヌレは名家のご令嬢だし。
私は…、ただ「おもしろい」って理由で選ばれた、謎のポジション。
ただ、特技と言えるなら…
「あ、ネア、始まるよ」
「あ、うん」
「ご会場にお集まりの皆さま、今日はありがとうございます。
ではさっそく商品の紹介に入りましょう!」
「え~、噂通り普通の闇オークションじゃない」
と、カヌレがため息をついた。
「まだ商品がどんなのかわからないわよ」
「確かに」
「では今日の目玉をご紹介!!
滅びたとされる伝説の種族、エルフです!!」
マントがブワっとめくれると、鎖につながれた、女の子…
エルフがいた。
「はー、これはダメだ。
ネア。王女殿下に報告の手紙飛ばすわね」
「お願いカヌレ。」
「じゃあ、この現場は私とネアで抑えよう。
ステージに飛び降りるよ」
「う、うん」
緊張する…、よし、息吸って、吐いて。
ちゃんと呼吸する。
二階席から二人でステージまで飛び乗った。
「お!お客様!お目が高い…。
さっそくお買い上げですか」
いや違えよ。
「これはいったいどういうことですか?」
「と、いいますと…エルフのことですか?」
あーまどろっこしい。
「そんなことは聞いていない。
このフィオンシーナでは他種族の売買、
人身売買は禁止されています」
「まあそんなお堅いことを言わずに…。
どうですか?」
奴隷商人が、にたぁと笑って、肩に触れようとしてきた。
「触らないで」
ナイフを素早く、商人の首にあてがった。
なに?どうしたの?と会場がどよめいた。
「私達は次期女王、第一王女スノーリリー・ベル・フィオンシーナ様
の命で来た者である!!
この場にいる人間、全員動くな!この会場は包囲されている!
もしこの会場から出れば無警告に射撃する!!」
シャルドが会場全体に響くように叫んだ。
「何だと!?」
奴隷商人があんぐりと口を開けて尻もちをついた。
「動くなって言わなかった?」
ものすごい殺気を放った。
私は、元は暗殺者として働いていた。
殺して、殺して、疲れた。だけど、生き別れになった妹は、
きちんと働いて、立派に生きていた。
だから、手はこんなに汚れていても、
ちゃんと働こうと思って、王宮の侍女になったんだ。
最初は一生懸命働くのに精いっぱい。
だけど今は、仕える主がいて、仕事にやりがいを感じてる。
私はあの人の、忠犬だから。
「はい、三人ともご苦労様。
さすが私の忠犬達ね」
会場に、主の声が響いた。
スノーリリー様が到着したのだ。
「この会場にいる者、全員動くでない。
この場は包囲されている。無駄な抵抗はしてくれるなよ?
この国の法律により、この場にいる全員を拘束する」
その言葉に、衛兵と何人かの騎士団員が突入した。
…やっぱり、かっこいいな。
「任務、完了いたしました、
スノーリリー様」
「宰相、何でしょうか」
山のようになった書類の山に目を通していると、
宰相が入ってきた。
しかも、すごく顔色が悪い。…この人絶対寝てないな。
まあ何かと最近忙しくさせてしまったし。
「現在王都で闇オークションが開催されているようでして。
調査の許可をお願いに参りました。」
「闇オークションねぇ。
ちなみに、許可を出すと誰に一任されるのですか?」
「無論私ですが」
「…宰相、あなたは少し休んでください。
この件は私におまかせください」
「そういうわけには参りません!」
「…こんなことは言いたくありませんけど、
命令です。休んでくださいますよね?宰相」
「…ではお言葉に甘えて。
お願いいたします」
「はい、任されました」
宰相がよろよろと出ていく。
ゆっくり休んでくださいね、宰相。
「とか言っておきながら、お休みになられていないのは
スノーリリー様も同じですがね」
後ろから若干あきれるようなシャルドの声がした。
「うっ…。まあ宰相ほどじゃないわよ。
宰相はお年だし、苦労あんまりかけたくないのよ」
「スノーリリー様がそうおっしゃるのなら、私達はそれに
忠実に従うまでですわ。」
それにネアが微笑んだ。
あーーーーーーー…可愛い。
おっほん…。
「お望みならば、侍女のメンバーだけで調査して
参りましょうか?」
「え…うーん。すっごくありがたい話なんだけど、
どうしようかな」
「私達めはあなた様の忠犬故、なんなりと
お申し付け下さいませ」
「…ありがとう。忠義心が強い子達で安心するわ。
では現場は任せます。
そのオークションの責任者と関係者を捕らえたら、その場待機で
私に報告を。それから向かわせてもらう」
「仰せのままに」
「では、次期女王、第一王女の名において命じます。
ネア・セレーネ、シャルド・ヴィター、カヌレ・アルティア、
早急に命の遂行を命じます」
「我らの主の御心のままに」
「御意」
「かしこまりましてございます」
三人だけで大丈夫かな…。
でも二人とも、シャルドに体術とか教えてもらってたしね。
あの三人は優秀だ。だから、信じよう。
にしても、「忠犬」、か。
確かに忠義を持って仕えてくれてるから、間違ってはいないかも、
しれないけど、「犬」っていうのがちょっとな…。
だけど、この任務を遂行したら、「女王の忠犬」…なんて通り名が
つきそうだ。まだ女王じゃないけどね。
ー闇オークション会場ー
私の名前はネア・セレーネ。
現在十四歳。この前まで十三歳でしたが。
そして王女様の専属侍女筆頭を任されています。
だけど、それって、私が一番に専属侍女になったのかな?
シャルドもカヌレも、長所がある。
シャルドはかなり体術を極めてるし、カヌレは名家のご令嬢だし。
私は…、ただ「おもしろい」って理由で選ばれた、謎のポジション。
ただ、特技と言えるなら…
「あ、ネア、始まるよ」
「あ、うん」
「ご会場にお集まりの皆さま、今日はありがとうございます。
ではさっそく商品の紹介に入りましょう!」
「え~、噂通り普通の闇オークションじゃない」
と、カヌレがため息をついた。
「まだ商品がどんなのかわからないわよ」
「確かに」
「では今日の目玉をご紹介!!
滅びたとされる伝説の種族、エルフです!!」
マントがブワっとめくれると、鎖につながれた、女の子…
エルフがいた。
「はー、これはダメだ。
ネア。王女殿下に報告の手紙飛ばすわね」
「お願いカヌレ。」
「じゃあ、この現場は私とネアで抑えよう。
ステージに飛び降りるよ」
「う、うん」
緊張する…、よし、息吸って、吐いて。
ちゃんと呼吸する。
二階席から二人でステージまで飛び乗った。
「お!お客様!お目が高い…。
さっそくお買い上げですか」
いや違えよ。
「これはいったいどういうことですか?」
「と、いいますと…エルフのことですか?」
あーまどろっこしい。
「そんなことは聞いていない。
このフィオンシーナでは他種族の売買、
人身売買は禁止されています」
「まあそんなお堅いことを言わずに…。
どうですか?」
奴隷商人が、にたぁと笑って、肩に触れようとしてきた。
「触らないで」
ナイフを素早く、商人の首にあてがった。
なに?どうしたの?と会場がどよめいた。
「私達は次期女王、第一王女スノーリリー・ベル・フィオンシーナ様
の命で来た者である!!
この場にいる人間、全員動くな!この会場は包囲されている!
もしこの会場から出れば無警告に射撃する!!」
シャルドが会場全体に響くように叫んだ。
「何だと!?」
奴隷商人があんぐりと口を開けて尻もちをついた。
「動くなって言わなかった?」
ものすごい殺気を放った。
私は、元は暗殺者として働いていた。
殺して、殺して、疲れた。だけど、生き別れになった妹は、
きちんと働いて、立派に生きていた。
だから、手はこんなに汚れていても、
ちゃんと働こうと思って、王宮の侍女になったんだ。
最初は一生懸命働くのに精いっぱい。
だけど今は、仕える主がいて、仕事にやりがいを感じてる。
私はあの人の、忠犬だから。
「はい、三人ともご苦労様。
さすが私の忠犬達ね」
会場に、主の声が響いた。
スノーリリー様が到着したのだ。
「この会場にいる者、全員動くでない。
この場は包囲されている。無駄な抵抗はしてくれるなよ?
この国の法律により、この場にいる全員を拘束する」
その言葉に、衛兵と何人かの騎士団員が突入した。
…やっぱり、かっこいいな。
「任務、完了いたしました、
スノーリリー様」
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