すぐ死ぬ女王これで最後にいたしましょう

ろろる

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第十七話 専属侍女決定

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…闇オークションの件が片付いたはいいけど…、
この子どうするよ。

闇オークションでの商品にされていた、エルフの女の子。
今王の間に連れてこられ、きょとんとした目で、こちらをじっと見ている。

「…あの」

あ、喋った…。
言葉は、分かるのかな?

「初めまして、エルフのお嬢さん。
私はこのフィオンシーナ王国の王女で次期女王の、
スノーリリー・ベル・フィオンシーナ。
言葉は分かる?私の言葉が分かるなら、お名前を教えて
ちょうだい」

「…はい。王女様。
私の名は、エレクトリカ・エレンナ。
何百年も前に滅びたとされる、伝説の種族、エルフにございます」

喋ることはできるのね…。
エルフなのかは…まだ疑問だけど。

「何百年も前に滅びた種族、ね。
それを証明できるものは?」

「あの…仮に証明できたとして、
自分の身が危険にさらされるなら、それをすることは、
助けていただいたのに申し訳ないのですが、遠慮させて下さい。」
「あら、ごめんなさい。
あなたへの配慮がたりていなかったみたいだわ。
危害を加えないと、この国の王女の名に懸けて誓いましょう。」

「そんなことを言いながら、証明することができなくて
申し訳ありません。
ですからこの体を調べていただいて構いません。」

「それにつきましては、調査結果が出ております。
宮廷魔導士長によると、その娘はエルフに間違いない、とのことです。」

と、側に控えていた宰相が答える。
「なるほどねー…どうしましょうかしら」
「あ、の…、エルフはああいう場で高値で取引される種族です。
私は魔法を使えるし、あなたの身を、この命を差し出してでも、お守りすると
お約束いたします!…ですからどうか、働かせて下さいませ。
もうあんな目には合いたく、ないのです」

エルフを、雇う…か。
魔法が使えるとなると、この王宮ではかなり優遇される。
私の侍女の中で魔法が使えるのは、ネアとカヌレ。
ネアは身体能力を大幅に上げられる魔法、カヌレは割とどんな魔法でも使える。
そしてすごいのがシャルド。
あの子は魔法を使用する人間でも簡単に魔法なしで体術で勝つ。
本当に有能な子達だな…。

私の用心棒ははっきり言って侍女三人で十分だ。
もう一人を危険な役職に就かせることはないんだけど…。
この子を追い出せば、また奴隷商人のような輩に捕まることは間違いない。
誰かに買われれば、魔法、魔術の実験材料に使われたり、愛玩具にされることも、
珍しくない。
誰かを危険な目に多く合わせることはないが、
追い出せば、もっと危険な目に合うかも。
いや、間違いなく私の下で働くより危険な目に合うのはあきらかだ。

…うーーーん……
よし!!
「いらっしゃいエレクトリカ。
ただし、私の下で働くのならば、自分の身を第一優先すること。
これが主としての、あなたへの命です。
約束して、くれますか?」
「…はいっ!スノーリリー様!!
エレクトリカ・エレンナ、その命を守り、この命果てるまで、
あなたに一生の忠誠を…。」

よかった…。役職は私の側で働く方が安全だよね?
「…どうしよ」
「それなら、まだ王女殿下の専属侍女の枠がまだ一つありますから、
エレクトリカを専属侍女に迎え入れるのはどうでしょうか」
「いいですね宰相。
ではエレクトリカ。他の専属侍女にあいさつに行きましょう。
皆いい子達だから。きっとすぐ仲良くなれるわ。」

多分三人とも第一王女宮の庭園にいるよね。
三時間自由にしていいって言ったから、いるかどうかはわかんないけど。

「こっちよ」
「あ、はい」
専属侍女がそろったから、専用の制服を用意しようかな。
シャルドなんて合うサイズがないから、第二王女宮の制服だし。
よし。早急に手配しよう。

そういえば、この国の侍女の制服は、
二十歳以下の女子はミニスカートのメイド服、
二十歳の女性からは、クラシックメイドの制服になる。

ネアとシャルドはミニで、カヌレだけクラシックメイド姿。
エレクトリカは何歳なんだろう。

「エレクトリカ、あなた何歳?」
「四百八十歳ですわ」
「…そ、そうなのね」

確かエルフの寿命って、かなり長い、よね。
いや長すぎる。

庭園までついた。
あの子たちとエレクトリカが仲良くできますように。

ー30分前ー


「ねえ、シャルドっち~、
休憩時間悪いんだけど、手合わせしてくれない?
暇でしょ」
「失礼な…。別にいいけど」

カヌレがシャルドに手合わせの申し込みをするところを私はじーっと見ていた。

この二人、とんでもなく強いんだよね…。
私が持ってるのは殺しの技だけだから、見て盗めるものは、盗んでおかないと。

「じゃ、行くよー」
「いいよ。」

「よーい、始め」
頼まれてはいないが、合図の声かけをした。

私の合図で、カヌレが水魔法を繰り出した。
その大きな水の渦を、シャルドは殴り飛ばし、その魔法を粉砕してしまった。

…すごい。
あんな巨大な水の渦を繰り出せるカヌレも、
それをなかったことのようにできる、シャルドも。

「えー、つまん、ないっ!」
カヌレが続いて魔法を繰り出していく。
それをシャルドはよけたり殴ったりして、やっぱり粉砕してしまう。

確かお父さんもお母さんも騎士団に所属する騎士なのだと聞いた。
カヌレは貴族の出だから、魔力量が一般人とは比べ物にならない。

壮絶なバトルが繰り広げられている最中、かたんと音がした。
スノーリリー様が、帰ってこられたのだ。

二人はバトルに夢中で気が付いていないようだけど…。

そろそろ止めるか。
二人の間に入り、シャルドの拳を受け止め、
カヌレの水魔法をナイフで切った。
「二人ともそこまで。
スノーリリー様がお見えよ」
「うひゃあ、ネアが一番おっかないね」
なんて、カヌレが苦笑いした。



「こっちよエレクトリカ。」

庭園につながるドアを開けると、
なんとも言えない光景が広がっていた。

シャルドとカヌレが手合わせと思われるものをしており、
それをドアが開いた瞬間、ネアが二人の間に入り、
シャルドの拳を受け止め、カヌレの水魔法を切った。

「…あの、殿下。
侍女達の皆さま、お強いんですね…」

エレクトリカがひぃと言うような顔をしていた。
…やってもうた。
かなりすごい光景だったからな…、今の。
怯えさせてどうする。
シャルドが一番すごいみたいなこと言ったけど、
一番おっかないのは筆頭のネアなのでは…?

「お帰りなさいませ、スノーリリー様。
お待ちしておりました」

と、三人がこちらに頭を下げる。
「ただいま。バトルはほどほどにね。
…あと、昨日オークションで商品として売られていたエルフ…
エレクトリカ・エレンナを最後の専属侍女に迎えることにしました。
分からないことだらけだと思うから、色々教えてあげて。」

「仰せのままに。」

それからしばらくして、専属侍女用の制服を手配した。
若干、いや、ほとんど私の前世の「かわいい女の子にフリフリ着せたい」
という趣味全部を注ぎ込んでしまった。
今四人が着替えに行っている。

「あの、お待たせいたしました」
「!か、かわいい~~~……」

黒いヘッドドレスに、メイド服。
ネアとシャルドはミニ、カヌレとエレクトリカはクラシックメイド服。
胸には専属侍女である、赤いリボン。
…最高!うちの侍女が可愛いよ~……。

「こほん、よく似合っているわよ!
ものすごくかわいい」

満面の笑みでほほ笑むと、四人ともほほ笑んでくれた。

「スノーリリー様」
「うん?」
四人が膝をザっと折った。

「わわ、どうしたの」
「私共は、あなた様の侍女になれて、幸せにございます。
これからもあなた様の専属侍女として、女王の忠犬として誠心誠意お仕えいたします。」
「あなた達、実はその通り名気に入ってるでしょ」

と、侍女達四人に微笑んだ。






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