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48.王女の縁組2

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「無理です」

 相談をあっさりと断られた。

「外務大臣、もう少し真剣に考えてくれ」

「お言葉ですが、マクシミリアン殿下。私は至って真剣にお答えしております。リリアナ王女を国外に嫁がす等もっての他です。我が国の恥を世界に晒すようなものではないですか」

「そ、そこまで言う事はないだろう。仮にも王女だぞ。リリアナにも立場というものがある。年頃の王女が何時までも婚約者がいないのは問題だろう」

「何の問題もありません」

「王太子の娘が結婚相手もいないのだぞ?諸外国に何と言われるか!」

「あのリリアナ王女を国外に出して外交に支障をきたし、王国が笑い者にされるよりかは何倍もマシです」

 あまりの言い分に絶句した。
 リリアナは出来が良いとは言えない。
 療養生活中もワガママ三昧だった。
 何とか伯爵クラスまでの教育が出来たがそれも最低限のものでしかない。

「だが、王族だ。私の一人娘なのだ」

「殿下、王族である事の義務を果たしていない者が言うセリフではありません」

 取り付く島もないとはこの事だろう。


「ならば……母上はどうなんだ? 母上は王妃として公務に殆ど参加しなかったではないか……」

 卑怯な事を言っている。
 母上が公務に出るのが最小限だったのは子供に恵まれなかったせいだ。長年懐妊しなかったために「石女」と囁かれていた。そんな母上を守るために父上が公務に出さなかったと聞いた事がある。
 
「確かに王妃様はしかなさっていません。それでもチェスター王国との外交には欠かせない存在でした。何故か分かりますか?」

「母上がチェスター王国の王女だからだ」

「その通りです。それもされている末の王女殿下でした」

 外務大臣の言いたいことは嫌でも分かった。母上には利用価値があった。隣国に対してのみの価値ではあるが、母上の存在故にかなり優遇された事は確かだろう。大臣にとって、リリアナは王女としての価値がないに等しいのだ。

「そこまで悲観なさる事はありません。父親の資産を倍にする方もいますので」

 嫌味か?
 リリアナにはそんな器量はない。資産運営に手を出して破産するのが目に見える。
 

「最終的には修道院に行けば食うに困りません」

「なっ!?」

「話は以上になります。私は殿下達と違って忙しい身です。何しろ、我が国と帝国との二組の縁組に体一杯の状況ですので」

 閉じられたドアの前で唖然とする他なかった。
 外務大臣は王女を修道女になってもかまわないと言い切ったのだから。
 
 


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