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86.親子3
しおりを挟む「そんな王女に自分の子を産ませたいと思うか?」
「……」
「ここまで言えばもう分かるであろう? マクシミリアン、そなたは私の子ではない」
「ですが……私は父上に瓜二つではありませんか!!」
そうとも!
私は父にそっくりだと誰もが口を揃えて言う。他人の空にと言うにはあまりにも似すぎている。どう考えても血縁があるのは間違いない。
「王家の血を引く者を選んだようだ。その一点だけは褒められるな。そなたの本当の父親は先代が市井の女性に産ませた落し種だ。王妃は否定したが帝国の親子鑑定の結果に間違いはない」
帝国!?
この事は帝国も関わっているのか!?
何故だ! あの国は関係ないだろ!?
「実の父親に会いたいか?」
「ち……」
父上とは呼べなかった。
そんな資格はないと思ったからだ。
実の父親。
話の展開についていけない。
そもそも実感が湧かないのだ。
今の今まで目の前にいる国王を父親と思って生きてきた。他人だと思った事は一度だってない。今でも何かの間違いではないかと思っている位だ。
どうしてこうなった?
「そなたの実父は牢に閉じ込めている。今なら会えるぞ」
牢屋。そうだな。王妃の密通相手なのだ。当然、罪人として死を賜るのだろう。
今更会ってどうする?
恨み言でも言えばいいのだろうか?
それとも何故母と関係を持ったのかと詰ればいいのか?
分からない。
「いえ……結構です」
「この件は既に我が国だけでなく周辺諸国にも通達してある。そなたが私の息子ではない事も王妃の今までの所業も含めてな。国の恥を晒すことになったが、そうせねばチェスター王国が干渉してくるだろう。数十年前の恩をちらつかせて要求を押し通す可能性もある。もっとも、我が国はチェスター王国の助けなど必要とせんがな。支援の礼も何倍にもして返している。だが、流石は王妃の国だ。厚顔無恥な要求をさも当然として来る。そなたを王位にと望むだろうし、担ぎ上げてくるだろう。そうならないための処置だ。」
「それでは……母上は……」
「私の息子と謀ったのだ。無罪放免なはずはなかろう。しかし仮にも隣国の王女だ。極刑にはせん。生涯幽閉だ」
「そう……ですか」
その後、国王陛下との話をどう終えたのか記憶になかった。
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