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第33話:ジェーン殿下が訪ねてきました

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デイズ様の誕生日パーティーの翌々、お父様とデイズ様が正式に王家に抗議に行ってくれた。さすがの陛下も驚愕し、ジェーン殿下に注意すると言っていたらしい。

ただ…
やはり頼りのない陛下に、お父様とデイズ様は落胆して帰って来ていた。もうあの陛下に何を言ってもダメかもしれない、とにかくこれからはジェーン殿下の醜態をまとめ、さらにラファエル殿下派を密かに増やすことに重点を置く事で話はまとまった。

そしてその翌日。

「今日は義母上もお茶会の予定が入っているし、僕と義父上も外出しないといけない。本当はフランソアを屋敷に1人にしておきたくないのだが、仕方がない。いいかい、フランソア。絶対に屋敷の外に出てはいけないよ!わかったね」

「ええ、分かっておりますわ。今日もお屋敷でのんびり過ごしますので、ご安心ください」

相変わらず心配性のデイズ様が、何度も私に言い聞かせている。

「あぁ、やっぱり心配だ。義父上、今日は1人で外出して頂けますでしょうか?僕はフランソアの傍におりますので」

「デイズ、今日は第一王子派が集まって、話し合いをする予定だろう?一昨日のジェーン殿下の会話も、フランソアがしっかり録音していた様だし。とにかく、今が正念場だ。陛下が全くといっていいほど役に立たない今、我々貴族たちが動くしかない事くらい、分かっているだろう?護衛騎士もいるし、使用人たちもいる。そんなに心配しなくてもいいだろう」

「しかし…」

難色を示すデイズ様。さすがに心配しすぎだ。

「私は1人で大丈夫ですわ。今日は天気も悪いですし、家で本を読んで過ごしますので。今が大切な時期なのでしょう?どうかデイズ様は、お父様と一緒に行ってください」

生憎今日は天気が悪いのだ。朝から雨が降っている。

「ほら、デイズ。いつまでもゴネていないで、行こう」

「わかりました、フランソア。いいかい?絶対に屋敷から出てはいけないよ。分かったね?」

「分かっておりますわ。気をつけて行ってらっしゃい」

デイズ様を無理やり馬車に押し込んだ。本当にデイズ様はしつこいわね。私はもう15歳なのだ。いくら何でも、1人で外に出るだなんてそんな勝手な事はしない。

まだ心配そうな顔をしたデイズ様を乗せた馬車が、走り出した。やっと行ったわね。

お母様も一足先に出掛けて行ったし、今日はゆっくり過ごそう。

自室に戻り、紅茶を飲みながら本を読んで過ごす。気が付くとお昼になっていた為、1人で昼食を頂いた。なんだか1人で食べる食事って、味気ないわね。

それにしても、すごい雨…雷もゴロゴロとなり始めているし。お母様やお父様、デイズ様は大丈夫かしら?

昼食後、自室に戻り再び本を読んで過ごす。そろそろデイズ様たちが帰ってくる頃かしら?いよいよ雨足が激しくなってきた。心配で玄関に向かった。すると、ドアが開いたのだ。

もしかしてデイズ様かしら?それともお母様?

「おかえりなさい、雨は大丈夫…えっ…」

「やあ、フランソア。会いたかったよ」

屋敷に入って来たのは、ジェーン殿下だ。

「殿下、どうかお帰り下さい!旦那様やデイズ様から、殿下がいらしても引き取ってもらう様にときつく言われております」

必死に殿下を追い返そうとする護衛たち。

「どうして帰らないといけないのだ!僕はフランソアに会いに来たのだよ。それにこの雨で、ずぶ濡れになってしまった。フランソア、少しだけでもいい、話をしたんだ!頼む」

必死に頭を下げるジェーン殿下。雨にうたれたのか、ずぶ濡れだ。このままだと風邪をひいてしまうかもしれない。もし殿下が風邪をひいたら、王妃様が我が家に抗議をするかもしれない。そうなったら面倒だ。

「分かりましたわ…カルア、殿下にタオルを渡してあげて」

「お嬢様!」

カルアが抗議の声を上げる。でも、このまま放っておく訳にはいかない。

「お願い」

「…かしこまりました」

とりあえず客間に案内した。すぐにカルアがタオルを持ってきてくれ、殿下に渡している。

「フランソア、君と2人きりで話が出来るなんて嬉しいよ。フランソア、王宮に戻ろう。可哀そうに、一昨日はデイズや両親の手前、僕の元に帰りたいと言えなかったのだろう?昨日デイズたちが王宮に抗議に来たよ。本当に自分の事しか考えていないやつらで、嫌になる。大丈夫だ、僕が君を守ってあげるから」

まだそんな事を言っているのか…この人。そもそも自分の事しか考えていないのは、どっちよ!ここははっきりと殿下に私の気持ちを伝えないと。

「私は王宮には戻りません。この際なのではっきり申し上げます。あなた様のお妃候補になって王宮で過ごした5年間は、私にとって地獄以外何物でもありませんでした。お妃候補たちからは酷い暴言を吐かれ、教育係からは毎日酷い叱責を受け、とてもつらかったのです。さらに唯一の心の支えでもあるジェーン様は、他の令嬢と楽しそうに過ごしていて…」

「僕は王太子だ。お妃候補を平等に接する義務がある」

「それは知っておりましたわ。だから私は、あなた様が17歳になって、正式に婚約者が決まるのを心待ちにしておりました。でも、結局一夫多妻制になってしまいました。でも私は、あなた様が一夫多妻制を押し進めて下さったこと、今では感謝しているのです。あなた様が一夫多妻制を押し進めた事がきっかけで、あなた様への気持ちは綺麗さっぱり消え去りましたので。もう微塵も残っておりませんわ」

「そんな…僕はただ、フランソアにもっと僕を見て欲してく一夫多妻制を提案したんだよ。それもこれも、フランソアの為だ」
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