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第8話:今日は色々な事が起こります
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その時だった。
「止めないか!ナタリー」
その手を止めたのは、この国の王太子殿下でナタリー様の婚約者、ハドソン殿下だ。
「ハドソン様、どうして止めるのですか?この女が私に歯向かったらいけないのです」
「だからって、暴力は良くない。とにかく落ち着くんだ」
「なによ、ハドソン様まであの女を庇って!」
フン!と言わんばかりに、席に付いたナタリー様。すると王太子殿下が私たちの方をクルリと向いた。もしかして、文句を言われるのかしら?そう思ったのだが…
「ナタリーの暴言、本当に申し訳なかった。どうか許してやって欲しい…」
そう言うと、深々と頭を下げた王太子殿下。
「殿下、どうか頭をお上げください。私は平気ですので」
必死にそう伝えた。ただ、エマはまだ不満な様で、ジト目で王太子殿下を睨んでいた。もう、エマったら…
そのタイミングで、先生がやって来たので急いで席に付く。そこには、1年前から留学してきている、メルソニア王国の王太子殿下、クラーク殿下も一緒にいる。一体どうしたのかしら?
「今日は皆さんに大切なお知らせがあります。メルソニア王国から留学に来ているクラーク殿下ですが、父上でもある国王陛下の体調が思わしくないとの事で、急遽帰国する事になりました」
え…クラーク殿下が?そういえば少し前、父親でもある陛下の調子があまり良くないと言っていたけれど、まさか帰国するなんて…
「先ほど先生からも話があったように、私は明日急遽帰国する事になりました。本来なら皆と一緒に卒業する予定だったのですが、非情に残念です。それでも私はこの1年、皆と学べたことを誇りに思います。私が悩んでいる時、手を差し伸べてくれた友人。隣国の王太子という身分を気にせず気軽に話してくれた皆には、本当に感謝しています。ありがとうございました」
そう言うと、頭を下げるクラーク殿下。
「今日1日しかありませんが、クラーク殿下との思い出をたくさん作ってください。それでは、授業を始めます」
いつも通り授業が始まった。それにしてもクラーク殿下が国に帰るだなんて…
気さくで誰にでも優しいクラーク殿下、私にも良くしてくれた。国に残してきた婚約者に贈り物をするため、一緒に街にアクセサリーを買いに行った事もあったな。私が落ち込んでいた時、よく慰めてくれたクラーク殿下が、国に帰ってしまうのか…
なんだか寂しいわ…
そんな事を考えている間に、授業が終わった。
「ルーナ嬢、よかった、今日は来てくれたんだね。聞いたよ、君、婚約破棄をしたのだってね…ずっと学院に来ないから、心配したよ」
私の元にやってきてくれたのは、クラーク殿下だ。
「殿下、心配をおかけしてごめんなさい。でも、もう大丈夫ですわ。それより、国に帰られるのですね…」
「ああ、急遽決まったんだ。君にはずっと相談に乗ってもらっていたから、どうしてもお礼と挨拶がしたくて。ルーナ嬢、今まで本当にありがとう」
「こちらこそ、色々と相談に乗って下さり、ありがとうございます。国王陛下の容態は気になるところですが、それでもやっと婚約者の方と会えるのですね」
「ああ、君には婚約者の事で色々と世話になったね。国に戻ったら、すぐに国王就任が行われる予定だ。それと同時に、婚約者との結婚式の準備も進めて行こうと思っている。と言っても、結婚は早くても1年半後だけれどね。それでも僕をずっと待ち続けてくれた婚約者には、感謝しかないよ。そうだ、ルーナ嬢、もし君さえよければ、僕たちの結婚式に参加してもらえるだろうか?」
「ええ、もちろんですわ。楽しみにしておりますね。どうか婚約者の方と、末永くお幸せに」
離れ離れだったクラーク殿下と婚約者の方がついに結ばれるのね。クラーク殿下がこの国を去るのは寂しいけれど、それは仕方ない事。しっかり見送ってあげないと。
「クラーク殿下、私は招待してくれないのですか?ルーナと一緒に、婚約者の女性のアクセサリー選びを手伝ったのに」
頬を膨らませて抗議をするのは、エマだ。
「エマ嬢、申し訳ない。もちろん、君も招待するよ。ぜひ僕たちの結婚式に来てくれ」
「もちろんですわ」
嬉しそうにエマがほほ笑んだ。
そしてこの日は、急遽クラーク殿下のお別れ会が行われた。ほとんどの生徒が参加したが、なぜかナタリー様と取り巻きは、気分が悪いと帰って行った。
「クラーク殿下、ナタリーが色々と申し訳なかった」
なぜかハドソン殿下が、クラーク殿下に頭を下げている。
“私は大丈夫だよ。でもあの子、少し我が儘すぎないかい?王妃になる様な人物は、常に物事を平等に評価しないといけないんだ。もちろん、冷静さも必要だ。彼女にはその器がない…この国の為にも、考えた方がいいんじゃないかい?”
かなり小声でハドソン殿下に伝えているが、地獄耳の私には聞こえてしまった。他国の王太子殿下、しかも優しいクラーク殿下があんな事を言うなんて。確かにナタリー様はあまり王妃様には向いていないわよね。
今の王妃様は、穏やかでとても慈悲深い人だし。かたやナタリー様は…て、もうそんな事を考えるのは止めよう。
触らぬ神に祟りなしね…
「止めないか!ナタリー」
その手を止めたのは、この国の王太子殿下でナタリー様の婚約者、ハドソン殿下だ。
「ハドソン様、どうして止めるのですか?この女が私に歯向かったらいけないのです」
「だからって、暴力は良くない。とにかく落ち着くんだ」
「なによ、ハドソン様まであの女を庇って!」
フン!と言わんばかりに、席に付いたナタリー様。すると王太子殿下が私たちの方をクルリと向いた。もしかして、文句を言われるのかしら?そう思ったのだが…
「ナタリーの暴言、本当に申し訳なかった。どうか許してやって欲しい…」
そう言うと、深々と頭を下げた王太子殿下。
「殿下、どうか頭をお上げください。私は平気ですので」
必死にそう伝えた。ただ、エマはまだ不満な様で、ジト目で王太子殿下を睨んでいた。もう、エマったら…
そのタイミングで、先生がやって来たので急いで席に付く。そこには、1年前から留学してきている、メルソニア王国の王太子殿下、クラーク殿下も一緒にいる。一体どうしたのかしら?
「今日は皆さんに大切なお知らせがあります。メルソニア王国から留学に来ているクラーク殿下ですが、父上でもある国王陛下の体調が思わしくないとの事で、急遽帰国する事になりました」
え…クラーク殿下が?そういえば少し前、父親でもある陛下の調子があまり良くないと言っていたけれど、まさか帰国するなんて…
「先ほど先生からも話があったように、私は明日急遽帰国する事になりました。本来なら皆と一緒に卒業する予定だったのですが、非情に残念です。それでも私はこの1年、皆と学べたことを誇りに思います。私が悩んでいる時、手を差し伸べてくれた友人。隣国の王太子という身分を気にせず気軽に話してくれた皆には、本当に感謝しています。ありがとうございました」
そう言うと、頭を下げるクラーク殿下。
「今日1日しかありませんが、クラーク殿下との思い出をたくさん作ってください。それでは、授業を始めます」
いつも通り授業が始まった。それにしてもクラーク殿下が国に帰るだなんて…
気さくで誰にでも優しいクラーク殿下、私にも良くしてくれた。国に残してきた婚約者に贈り物をするため、一緒に街にアクセサリーを買いに行った事もあったな。私が落ち込んでいた時、よく慰めてくれたクラーク殿下が、国に帰ってしまうのか…
なんだか寂しいわ…
そんな事を考えている間に、授業が終わった。
「ルーナ嬢、よかった、今日は来てくれたんだね。聞いたよ、君、婚約破棄をしたのだってね…ずっと学院に来ないから、心配したよ」
私の元にやってきてくれたのは、クラーク殿下だ。
「殿下、心配をおかけしてごめんなさい。でも、もう大丈夫ですわ。それより、国に帰られるのですね…」
「ああ、急遽決まったんだ。君にはずっと相談に乗ってもらっていたから、どうしてもお礼と挨拶がしたくて。ルーナ嬢、今まで本当にありがとう」
「こちらこそ、色々と相談に乗って下さり、ありがとうございます。国王陛下の容態は気になるところですが、それでもやっと婚約者の方と会えるのですね」
「ああ、君には婚約者の事で色々と世話になったね。国に戻ったら、すぐに国王就任が行われる予定だ。それと同時に、婚約者との結婚式の準備も進めて行こうと思っている。と言っても、結婚は早くても1年半後だけれどね。それでも僕をずっと待ち続けてくれた婚約者には、感謝しかないよ。そうだ、ルーナ嬢、もし君さえよければ、僕たちの結婚式に参加してもらえるだろうか?」
「ええ、もちろんですわ。楽しみにしておりますね。どうか婚約者の方と、末永くお幸せに」
離れ離れだったクラーク殿下と婚約者の方がついに結ばれるのね。クラーク殿下がこの国を去るのは寂しいけれど、それは仕方ない事。しっかり見送ってあげないと。
「クラーク殿下、私は招待してくれないのですか?ルーナと一緒に、婚約者の女性のアクセサリー選びを手伝ったのに」
頬を膨らませて抗議をするのは、エマだ。
「エマ嬢、申し訳ない。もちろん、君も招待するよ。ぜひ僕たちの結婚式に来てくれ」
「もちろんですわ」
嬉しそうにエマがほほ笑んだ。
そしてこの日は、急遽クラーク殿下のお別れ会が行われた。ほとんどの生徒が参加したが、なぜかナタリー様と取り巻きは、気分が悪いと帰って行った。
「クラーク殿下、ナタリーが色々と申し訳なかった」
なぜかハドソン殿下が、クラーク殿下に頭を下げている。
“私は大丈夫だよ。でもあの子、少し我が儘すぎないかい?王妃になる様な人物は、常に物事を平等に評価しないといけないんだ。もちろん、冷静さも必要だ。彼女にはその器がない…この国の為にも、考えた方がいいんじゃないかい?”
かなり小声でハドソン殿下に伝えているが、地獄耳の私には聞こえてしまった。他国の王太子殿下、しかも優しいクラーク殿下があんな事を言うなんて。確かにナタリー様はあまり王妃様には向いていないわよね。
今の王妃様は、穏やかでとても慈悲深い人だし。かたやナタリー様は…て、もうそんな事を考えるのは止めよう。
触らぬ神に祟りなしね…
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