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第24話:私の魅力は…

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ニコニコしながら私を見つめるアイザック殿下。そんなに見つめられると、なんだか恥ずかしい。

「本当にルーナ嬢は美しいね。まるで月の女神みたいだ。僕はね、美しいものが大好きなんだよ。君はまさに、僕の理想的な女性だ」

「あの、アイザック殿下はなぜ婚約候補に名乗りをあげたのですか?私はつい最近まで、エヴァン様の婚約者だった人間です。わざわざそんな人間を選ばなくても、あなた様ならもっと魅力的な令嬢はいらっしゃったのでは?」

ずっと疑問に思っていたことを聞いた。第二王子でもあり、この国で3本の指に入る程お美しいと言われているアイザック殿下。そんな殿下が、どうして婚約破棄された私なんかを婚約者にしたいと思うのだろう…

「どうしてって、そんなの決まっているだろう?君がこの国で一番の美女と言われている程、美しいからだよ。君の美しさに敵う令嬢なんて、この国にはいない。だから他の令息たちだって、君と婚約したくて言い寄ってくるのだろう?ルーナ、君の一番の魅力は、その美しさだ!」

満面の笑みでそう言い切ったアイザック殿下。
美しさか…

「それでは万が一私の顔に傷がつき、醜くなってしまったら…アイザック殿下はもう私に興味がないという事ですか?」

真っすぐ彼の瞳を見つめ、そんな質問をしてしまった。さすがに少し意地悪だったかしら?

「あの…申し訳ございません、殿下を困らせるつもりは…」

慌てて謝ろうとしたのだが…

「万が一君が何らかの理由で顔に傷を負い醜くなったとしたら、もちろん婚約者候補から外れさせてもらうよ。だって君の最大の武器でもある美しさがなくなったら、君には何の魅力もないだろう?」

満面の笑みでそう言われてしまった。

そうか…私には見た目の美しさしか、魅力がないのか…
分かっていた、他の令息たちも私の顔が美しいからきっと、言い寄ってきているのだと。でも、こうやって面と向かってはっきり言われると、さすがに傷つくわ…

「あっ、でも今のルーナは美しいから、そんな顔をしないでも大丈夫だよ。それにしても、悲しそうな顔をするルーナも可愛いね。やっぱり僕の理想の令嬢だ。ルーナ、僕を選んでくれたら、何不自由ない生活をさせてあげるよ。もちろん、ナタリー嬢からも守ってあげるし」

ニコニコしながら、そんな事を言っているアイザック殿下。正直この人とは、結婚したくない…年を取って美しさを失ったら、捨てられそうだし…

でも、アイザック殿下の言う通りだ。私には、見た目の美しさしか魅力がないのかもしれない。もし私が美しくなくなったら、皆私から離れていく…

自分でも何となく分かっていた。令息たちがこぞって私の元にやって来るのはきっと、私の顔に惹かれているのだと…

その時だった。

「アイザック殿下、ルーナ、2人でお茶をしていたのですか?僕も混ぜて頂いてもよろしいでしょうか?」

私達の元にやって来たのは、エヴァン様だ。まだ帰っていなかったのね。あら?エヴァン様、なんだか怒っているみたい。顔は笑っているが、目が怒っている。

「アイザック殿下、何の話をしていたのですか?」

「エヴァン、僕たちは従兄弟同士なんだから、普通に話してくれと言っただろう?ルーナ嬢の魅力について語っていたんだよ。やっぱりルーナ嬢は、神的に美しいところが最大の魅力だと思わないかい?」

エヴァン様に話しを振ったアイザック殿下。

「ルーナの魅力ですか?確かにルーナの見た目は美しいです。でも僕は、ルーナを毎日見てきましたからね。見た目なんて今は、それほど気にしません。ルーナはね、とても甘えん坊なんですよ。小さい頃なんて、ちょっと僕の姿が見えないと泣きながら探してくれて。僕を見つけると、本当に嬉しそうに駆け寄ってきてくれるんですよ。それがまた可愛くて…それに、誰にでも平等に接し、困った人がいたらすぐに手を差し伸べる優しい子です。人懐っこくて、すぐに皆と仲良くなるし。ただ、あまりにも人懐っこいから、僕は気が気ではなかったですが…いつもニコニコしているのに、変なところで頑固なところがあって。でもそこも彼女の魅力ですね。他にも…」

「もういいよ!でも、婚約破棄したんだよね。だったら今更そんなふうにルーナ嬢の魅力を語られても…」

聞いているこっちが恥ずかしくなるくらい、一気に話すエヴァン様。それもとても嬉しそうに…さすがのアイザック殿下も苦笑いしている。

「それくらいルーナは魅力的な令嬢という事ですよ。決して美しいだけではありませんので!そもそもルーナの魅力も分からず、よく婚約者になりたいと思いましたね」

はぁっとため息を付きながら、エヴァン様が呟いた。

「ルーナ嬢は神的に美しい、それだけで婚約を申し込むには十分な理由だろ!他の令息だってそうだ!」

珍しくアイザック殿下が声を荒げている。いつも穏やかに笑顔を浮かべている殿下が、珍しい。

「そうですか…まあいいです。さあ、そろそろ日も暮れ始めましたし、帰りましょう」

エヴァン様に促され、席を立ったのだった。
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