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バニーガールの聖女でよろしければ‼︎
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「聖女美麗、君は聖龍の危機を救ってくれた」
国王が玉座に座っている。ここはこの国で一番偉い人に会う場所だと笑ってミュゼァが言っていた。五十代くらいの男性だろうか。オズワルドが老けたらこんな感じかなって思いながらも、少し元気が無いように見えた。
王妃が座る椅子も並べられていて、金に赤い布が使われている椅子は空いていた。
両方の壁際にはそれぞれ二十人くらいのおじさんが驚いた眼、疑いの瞳、様々な顔色をして並んでいる。
私とミュゼァは国王の前に拝謁していた。
「まだ私は聖女として未熟です。それが招いたことなので私の手柄と言うわけではありません」
オズワルドが国王の右側に立っている。ジッと見ているだけで何かを口にする雰囲気は無かった。
王は何かを考える風で己の顎を撫でる。
「聖女についてはオズワルドと王宮魔術師である二人に任せていたからな。顔を合わせるのが遅くなって申し訳ないと思っている。聖龍の森にあった闇の泉は浄化が終わっているのだろう?逆に聖女殿の命が危険にさらされたと聞いている」
その言葉に周囲がざわめき始める。聖龍の浄化を終えた私はミュゼァの元に行こうとしたら、血が付いたミュゼァの方から私の所に来た。怪我はしていなかったミュゼァはラヴァの異変に気が付かなかったことを悔いていた。
ミュゼァの動く気配がする。
「はい、今回の件はラヴァの独断です。神官長であるミークは関係ありません」
国王が私に視線を向ける。
「おぬしはどうしたい?」
「どうとは?」
私は国王に聞き返す。
「命を狙われたのはおぬしだ。主犯のラヴァはミュゼァによって捕らえられている」
私の判断に一人の人の命がのしかかっているのだとしたら、我儘を言ってもいいのかな。もしかしたら自分の孫の恨みを晴らすかもしれない。
「私はこの世界に召喚されました。右も左も分からない所でミーク様にとてもよくしていただきました。もし可能であるなら何のお咎めも無しで、お願いします。私も未熟です。今回ラヴァは国を守るために新しい聖女を必要として事件を起こしました。それならば私にも原因があると言うものです。罰を受けるのだとしたら私にも受けさせてください。お願いします」
私の土下座になんの意味があるか分からない。本来ならば危険分子になりかねない存在を生かす意味はない。国王も口を出さないだけで私が一番使えないと分かっているかもしれない。
『皆、辛気臭い顔してるわねぇ』
「母さん⁉」
声は王座と反対方向の入り口から聞こえて来た。ミークが手鏡の様なものを持っていて、その上にはうっすらと人の影がしてあった。
『今は貴方の母親じゃありません。第二の人生楽しむつもりだったのに、前世の記憶を引き継ぐとか本当にやめて欲しい。そのせいで可愛かったミークがツルっとしちゃったのを見てバレちゃったわよ。隠し通すつもりだったのに』
ミークの目は遠目でも分かるくらいに泳いでいる。手にしている鏡は一体何なのだろうか。王もオズワルドも歩いてミークの側まで行く。
前聖女の声が聞こえて直ぐに悲鳴を上げて出て行った人が数名いたのは気が付かないフリをしよう。
「母さん死んだんじゃ」
手鏡に映る女性はウェーブのかかった黒髪に、白い肌目は金色をしていた。何より耳の先がとがり、蝶の様な羽が生えている。
「死んだわよ。聖女って精霊に生まれ変われるの。知ってた?そのお陰で第二の人生楽しむはずが……。息子にもう一度会えたのは嬉しいけど」
ミュゼァが手鏡に縋りつく様にしゃがみ込んだ。王は手鏡を持つミークの手を掴んだ。
「精霊写しの鏡が無くなったと聞いていたんだが」
ミークの顔は無表情だった。
「はい。無くなった、前聖女が破壊されましたがそれは時を戻す魔法がかけらえており、時代の聖女のピンチに復活するはずでしたが、手違いで今になりました」
映し出されている女性が私の顔をみるとぱぁっと笑顔になった。
「貴方が私の娘ね‼可愛いわ。嬉しい。私、娘が欲しかったのよ。ごめんなさい。精霊界の掟があって人間界に姿を現すの遅くなっちゃったわ」
今女性は娘と言ったが私は娘になった覚えはない。チラッとミュゼァに視線を向けるが何も言う様子がないので、反応しない方がよさそうだ。
オズワルドは固まっているのか、じっと鏡から映し出されている聖女の生まれ変わりだと言う精霊を見つめていた。
「私は平和な世界を作り出したくて頑張って来た。ミークを処罰するのは許しません。それと世界の浄化に関しては人間が生きている限りはやり続けないといけない。正当な理由が無ければ聖女の死を知った精霊が何をするか、分かりませんよ。歴史書に書いてあるのわすれましたか?」
ミークの手首をつかんでいた国王の手が離れ、その場に頭を垂れる。オズワルドも国王にならい、頭を下げた。
私とミュゼァはそれを見つめている。一体何がどうなっているのか分からない。
「精霊の皆さまがこの世界を離れてしまったのは我々人間のせいなのです。今回こうして姿を現してくださったことに感謝いたします。主犯ラヴァ以外に処罰はくだしません。どうか人間を見捨てないでください」
『う~ん及第点って事で今回は許してあげる。聖獣と聖女をもっと大切にしなさい。世界を壊す気?壊すんだったら何が何でもミュゼァを引き取りに来ますから』
「かしこまりました」
王が顔を上げると、精霊は満足そうにふ~んと言って、ミュゼァに手を振る。
『私の遺言をちゃんとやってくれていてありがとう。世界を守ったかもしれないけど、世界の穢れは無くならないの。私と一緒に行動していたから分かるわよね?』
「はい、母さん」
『聖女を守って、私が言えるのはそれくらい』
とミュゼァの返事を待つよりも先に手鏡の光は消える。同時にミークがその場に土下座した。ちょうど国王の足元だった。
「罰は受けます」
「よい。お前を罰してその後に報復される方が怖いわ。それと聖女・炎谷美麗、申し訳なかった。今回の件の褒美をいつでもいい考えていてくれ。ミュゼァもだ」
その一言を言うと、国王ははぁと皆に聞こえるため息をついた。
「聖女様、怖かったぁ。健在だって知らなかったよ」
後日国王の悲鳴が城に響き渡ったのは秘密である。
召喚された城の地下を見たいとミークにお願いしたら快く通してくれた。私の始まりの場所で、この国に来て初めて見た景色。
あの時は人が沢山いたのと、混乱して周囲が見れていなかったからだけど、こうしてみると厳かな雰囲気が漂っていた。
空は見えないけど、部屋の壁から圧を感じる。
「どうした美麗」
ミュゼァが入口から声をかけてくる。一人で見たいと言って、ミークには待って貰っていた。
「自分の事を振り返りに来たの。聖女としてまだ駄目駄目だけど、もう戻れないってことを改めて刻みに」
そして人としての生が終わると精霊になれるのかもしれない。魂の輪廻があればもう一度生まれ故郷に戻れると思っていたけど、それも叶わないのかもしれない。
「俺がそばにいる」
「__ミュゼァ様の事お慕いしております」
入口の壁に寄り掛かっていたミュゼァがバランスを崩しその場に倒れる。私は慌ててミュゼァの元にかけていく。
もっとロマンチックに告白するつもりだったんだけどな。好きと言う気持ちが先に口から飛び出してしまった。
「聖女として未熟です。今後迷惑をかけるかもしれません。でも私はミュゼァ様の隣に居たいです」
オリビアがオズワルドの隣に居ることを願う様に。私も貴方の隣に居ることを願いたい。
しゃがんでみると視線が同じぐらいになるなと思っていると、ミュゼァが私の頬に手を触れた。
「俺から言うつもりだったんだ。美麗、これからを一緒に歩んでくれるか?」
「もちろん、こんなバニーガールの聖女でよろしければ」
国王が玉座に座っている。ここはこの国で一番偉い人に会う場所だと笑ってミュゼァが言っていた。五十代くらいの男性だろうか。オズワルドが老けたらこんな感じかなって思いながらも、少し元気が無いように見えた。
王妃が座る椅子も並べられていて、金に赤い布が使われている椅子は空いていた。
両方の壁際にはそれぞれ二十人くらいのおじさんが驚いた眼、疑いの瞳、様々な顔色をして並んでいる。
私とミュゼァは国王の前に拝謁していた。
「まだ私は聖女として未熟です。それが招いたことなので私の手柄と言うわけではありません」
オズワルドが国王の右側に立っている。ジッと見ているだけで何かを口にする雰囲気は無かった。
王は何かを考える風で己の顎を撫でる。
「聖女についてはオズワルドと王宮魔術師である二人に任せていたからな。顔を合わせるのが遅くなって申し訳ないと思っている。聖龍の森にあった闇の泉は浄化が終わっているのだろう?逆に聖女殿の命が危険にさらされたと聞いている」
その言葉に周囲がざわめき始める。聖龍の浄化を終えた私はミュゼァの元に行こうとしたら、血が付いたミュゼァの方から私の所に来た。怪我はしていなかったミュゼァはラヴァの異変に気が付かなかったことを悔いていた。
ミュゼァの動く気配がする。
「はい、今回の件はラヴァの独断です。神官長であるミークは関係ありません」
国王が私に視線を向ける。
「おぬしはどうしたい?」
「どうとは?」
私は国王に聞き返す。
「命を狙われたのはおぬしだ。主犯のラヴァはミュゼァによって捕らえられている」
私の判断に一人の人の命がのしかかっているのだとしたら、我儘を言ってもいいのかな。もしかしたら自分の孫の恨みを晴らすかもしれない。
「私はこの世界に召喚されました。右も左も分からない所でミーク様にとてもよくしていただきました。もし可能であるなら何のお咎めも無しで、お願いします。私も未熟です。今回ラヴァは国を守るために新しい聖女を必要として事件を起こしました。それならば私にも原因があると言うものです。罰を受けるのだとしたら私にも受けさせてください。お願いします」
私の土下座になんの意味があるか分からない。本来ならば危険分子になりかねない存在を生かす意味はない。国王も口を出さないだけで私が一番使えないと分かっているかもしれない。
『皆、辛気臭い顔してるわねぇ』
「母さん⁉」
声は王座と反対方向の入り口から聞こえて来た。ミークが手鏡の様なものを持っていて、その上にはうっすらと人の影がしてあった。
『今は貴方の母親じゃありません。第二の人生楽しむつもりだったのに、前世の記憶を引き継ぐとか本当にやめて欲しい。そのせいで可愛かったミークがツルっとしちゃったのを見てバレちゃったわよ。隠し通すつもりだったのに』
ミークの目は遠目でも分かるくらいに泳いでいる。手にしている鏡は一体何なのだろうか。王もオズワルドも歩いてミークの側まで行く。
前聖女の声が聞こえて直ぐに悲鳴を上げて出て行った人が数名いたのは気が付かないフリをしよう。
「母さん死んだんじゃ」
手鏡に映る女性はウェーブのかかった黒髪に、白い肌目は金色をしていた。何より耳の先がとがり、蝶の様な羽が生えている。
「死んだわよ。聖女って精霊に生まれ変われるの。知ってた?そのお陰で第二の人生楽しむはずが……。息子にもう一度会えたのは嬉しいけど」
ミュゼァが手鏡に縋りつく様にしゃがみ込んだ。王は手鏡を持つミークの手を掴んだ。
「精霊写しの鏡が無くなったと聞いていたんだが」
ミークの顔は無表情だった。
「はい。無くなった、前聖女が破壊されましたがそれは時を戻す魔法がかけらえており、時代の聖女のピンチに復活するはずでしたが、手違いで今になりました」
映し出されている女性が私の顔をみるとぱぁっと笑顔になった。
「貴方が私の娘ね‼可愛いわ。嬉しい。私、娘が欲しかったのよ。ごめんなさい。精霊界の掟があって人間界に姿を現すの遅くなっちゃったわ」
今女性は娘と言ったが私は娘になった覚えはない。チラッとミュゼァに視線を向けるが何も言う様子がないので、反応しない方がよさそうだ。
オズワルドは固まっているのか、じっと鏡から映し出されている聖女の生まれ変わりだと言う精霊を見つめていた。
「私は平和な世界を作り出したくて頑張って来た。ミークを処罰するのは許しません。それと世界の浄化に関しては人間が生きている限りはやり続けないといけない。正当な理由が無ければ聖女の死を知った精霊が何をするか、分かりませんよ。歴史書に書いてあるのわすれましたか?」
ミークの手首をつかんでいた国王の手が離れ、その場に頭を垂れる。オズワルドも国王にならい、頭を下げた。
私とミュゼァはそれを見つめている。一体何がどうなっているのか分からない。
「精霊の皆さまがこの世界を離れてしまったのは我々人間のせいなのです。今回こうして姿を現してくださったことに感謝いたします。主犯ラヴァ以外に処罰はくだしません。どうか人間を見捨てないでください」
『う~ん及第点って事で今回は許してあげる。聖獣と聖女をもっと大切にしなさい。世界を壊す気?壊すんだったら何が何でもミュゼァを引き取りに来ますから』
「かしこまりました」
王が顔を上げると、精霊は満足そうにふ~んと言って、ミュゼァに手を振る。
『私の遺言をちゃんとやってくれていてありがとう。世界を守ったかもしれないけど、世界の穢れは無くならないの。私と一緒に行動していたから分かるわよね?』
「はい、母さん」
『聖女を守って、私が言えるのはそれくらい』
とミュゼァの返事を待つよりも先に手鏡の光は消える。同時にミークがその場に土下座した。ちょうど国王の足元だった。
「罰は受けます」
「よい。お前を罰してその後に報復される方が怖いわ。それと聖女・炎谷美麗、申し訳なかった。今回の件の褒美をいつでもいい考えていてくれ。ミュゼァもだ」
その一言を言うと、国王ははぁと皆に聞こえるため息をついた。
「聖女様、怖かったぁ。健在だって知らなかったよ」
後日国王の悲鳴が城に響き渡ったのは秘密である。
召喚された城の地下を見たいとミークにお願いしたら快く通してくれた。私の始まりの場所で、この国に来て初めて見た景色。
あの時は人が沢山いたのと、混乱して周囲が見れていなかったからだけど、こうしてみると厳かな雰囲気が漂っていた。
空は見えないけど、部屋の壁から圧を感じる。
「どうした美麗」
ミュゼァが入口から声をかけてくる。一人で見たいと言って、ミークには待って貰っていた。
「自分の事を振り返りに来たの。聖女としてまだ駄目駄目だけど、もう戻れないってことを改めて刻みに」
そして人としての生が終わると精霊になれるのかもしれない。魂の輪廻があればもう一度生まれ故郷に戻れると思っていたけど、それも叶わないのかもしれない。
「俺がそばにいる」
「__ミュゼァ様の事お慕いしております」
入口の壁に寄り掛かっていたミュゼァがバランスを崩しその場に倒れる。私は慌ててミュゼァの元にかけていく。
もっとロマンチックに告白するつもりだったんだけどな。好きと言う気持ちが先に口から飛び出してしまった。
「聖女として未熟です。今後迷惑をかけるかもしれません。でも私はミュゼァ様の隣に居たいです」
オリビアがオズワルドの隣に居ることを願う様に。私も貴方の隣に居ることを願いたい。
しゃがんでみると視線が同じぐらいになるなと思っていると、ミュゼァが私の頬に手を触れた。
「俺から言うつもりだったんだ。美麗、これからを一緒に歩んでくれるか?」
「もちろん、こんなバニーガールの聖女でよろしければ」
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