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第八章 真なる聖剣
935 聖剣(仮)と(元)魔王
アグは、ものすごく便利な使い魔だということに気づいた。
イメージさえ正確に伝えることが出来れば、蔦を使って、ほとんどのものを作ってくれるのだ。
茶を用意したものの、そこそこ厨房から距離がある応接間に人数分を運ぶことに閉口していたら、手伝いを申し出てくれたので、つい、貴族が使うワゴンでもあればな、と言ったら、すぐに作ってくれたのである。
「ちゃんと車輪も付いているんだな。すごいぞ」
褒めるとクルクル回転しながらやたら金色に光る。
どうもさっきからテンションが高い。
さて、そんなこんなで少々時間がかかったものの、茶の一式を乗せたワゴンを押して元の応接間に戻った。
扉を開けた途端、怒鳴り声が響く。
「さっきから全然話が通じねえ! あんた本当に耳が治ってるのか? まだ聞こえないんじゃないか?」
勇者がタチの悪いチンピラのような罵倒をしている。
一応師匠を引き受けた身としては、顔から火が出るような恥ずかしさだ。
「アルフ! そういう言い方はないだろう!」
「師匠、でもこいつ、剣を作り直せって言っているのに、全く話が通じないんだ!」
勇者がかなりイライラしている。
ほかの仲間達は困ったようにその様子を見守っているだけだ。
どうも勇者パーティ内では格付けがはっきりとしていて、勇者が間違ったことをしていても積極的に止めたりしないことが多い。
勇者自身に危険が及ばない事態なら、仲間は勇者の好きにさせてしまうのだ。
まぁ身分差を考えると、貴族社会で育った人間には、勇者に意見をするのは難しいかもしれないが、間違っているときはちゃんと間違っていると言ったほうがいいぞ。
「俺達は鍛冶については全くの素人だ。専門家であるアドミニス殿には俺達にはわからない考えもあるんだろう。まずはちゃんと落ち着いて話を聞け」
文句を言うならその後だろう。
勇者はそれでもまだ収まらないようだったが、とりあえず怒鳴るのは止めたようだ。
メルリルや聖女やルフが、ほっとした顔になった。
「ほら、茶を淹れて来たから一旦座れ。アドミニス殿もどうぞ。……まぁ俺が勧めるのもおかしな話ですが」
「ああ。すまないな。……うん? オレンジを使ったのか?」
「あ、はい。いけませんでしたか?」
「いや、オレンジを入れた茶はわしの好物でな。しかし、これは厨房にはなかったはずだが」
「途中で会った大きなビーバーにもらいました」
「おお、穏やかなる者クレメントデデュケイターに会ったのか。あの子は怖がりで、滅多に他人の前に出て来ないんだが、オレンジを貰えるほどに気に入られるとは素晴らしい」
「師匠だからな!」
なんという覚えにくい名前。
そしてアドミニス殿が俺を褒めた途端、口を挟む勇者。
君達のブレなさに目眩がしそうだ。
俺はそれぞれに茶を配り終わると、ルフのほうを見た。
「ミュリア、ルフは大丈夫だったか?」
「はい。ちょっと魔力が飽和状態になっていました。こんなこと、滅多に起きないんですけど」
「ご、ご心配かけました」
「ルフが謝る必要はないぞ? ただ、具合が悪かったり、体に異常を感じたら、ちゃんと自己申告をしてくれたほうが迷惑はかからないけどな」
「は、はい!」
ルフが緊張した面持ちで返事をする。
うん、ざっと魔力を見てみたが、特に問題はないようだ。
ルフはわずかに大地人の血を引いているからか、魔力を体内維持出来る体質を受け継いでいる。
貴族ではないから魔法は使えないが、大地人の使う鉱物を変化させる技が少しは使えるかもしれない。
それにしても魔力が飽和状態になるというのは不思議な話だ。
魔力持ちにとっては魔力は血のようなもので、自分にとって適度な量を体内に維持しつつ暮らしている。
そんな魔力が突然増えるはずがない。
ということは、外的要因のせいだ。
つまりはあの聖剣(仮)の影響だろうな。
俺もちょっと酩酊感のようなものを感じたし。
「それで、アドミニス殿。その……聖剣なんですが」
「うむ。素晴らしかったであろう? あのような光景、滅多に見れるものではないぞ?」
「あ、はい」
いやいや、はいじゃねえよ、俺。
アドミニス殿が子どものように目をキラキラさせているから、なんとなく聞きそびれてしまった。
勇者が視線で俺に、アドミニス殿にガツンと言ってやれ、と要求している。
お前が言えよと思ったが、こいつはもうさんざん抗議したんだよな。
それが全く通用しなかった、ということなのだろう。
こんなウキウキ気分のアドミニス殿に水を差すのは気が引けるが、言わなければならないだろう。
「ところで、アドミニス殿。あの聖剣の光はなんですか? アルフ自身にも制御出来ていないようでしたが?」
「ふむ……実はわしにもはっきりとはわからんのだが……」
「おい!」
アドミニス殿のあまりの言葉に、勇者がすかさずツッコミを入れる。
今のは正しいツッコミだ。
「実はな、そなたらが持ち込んだミスリル素材が原因なのだ」
アドミニス殿は勇者のツッコミを全く気にせず話を続けた。
勇者はギリギリと歯を噛みしめるような、凄い顔で睨んでいる。
しかし、今の言葉は聞き捨てならない。
結局俺達のせいなのか?
「そうなのですか?」
とりあえずこのまま話してもらうほうが何がどうなっているか把握出来そうだ。
そう判断して、俺はおとなしくうなずいた。
「あれは驚く程に純度が高かった」
「純度が高いというのは、不純物が少ないという意味ですよね?」
「うむ」
あのミスリルの塊は、例のリッチが守っていた遺跡の奥深くで見つけたものだ。
どうも太古の時代には、今とは違う魔法技術があったようなので、あのミスリルはそのための素材ではないかと思う。
「おかげで魔力の伝わり方が速すぎてな。そのまま術紋を刻むと、魔力が暴走してしまうのだ」
「ははぁ」
「そこで、例の折れた炎の魔剣よ」
「なるほど」
「あれを芯材にして、織り込むようにミスリルで覆い、魔創花の光を使って鍛えたのだ」
「ほう」
「そして、スライムを使って表面の魔力の偏りをチェックしつつ、魔創花の種で作った砥石で研ぎ上げた、という訳だ」
「ほほう」
アドミニス殿の話に相槌を打ったものの、内容が専門的すぎてわからない。
とりあえず、聖剣作りがなんか凄い技術を使って行われたことだけは、わかった。
イメージさえ正確に伝えることが出来れば、蔦を使って、ほとんどのものを作ってくれるのだ。
茶を用意したものの、そこそこ厨房から距離がある応接間に人数分を運ぶことに閉口していたら、手伝いを申し出てくれたので、つい、貴族が使うワゴンでもあればな、と言ったら、すぐに作ってくれたのである。
「ちゃんと車輪も付いているんだな。すごいぞ」
褒めるとクルクル回転しながらやたら金色に光る。
どうもさっきからテンションが高い。
さて、そんなこんなで少々時間がかかったものの、茶の一式を乗せたワゴンを押して元の応接間に戻った。
扉を開けた途端、怒鳴り声が響く。
「さっきから全然話が通じねえ! あんた本当に耳が治ってるのか? まだ聞こえないんじゃないか?」
勇者がタチの悪いチンピラのような罵倒をしている。
一応師匠を引き受けた身としては、顔から火が出るような恥ずかしさだ。
「アルフ! そういう言い方はないだろう!」
「師匠、でもこいつ、剣を作り直せって言っているのに、全く話が通じないんだ!」
勇者がかなりイライラしている。
ほかの仲間達は困ったようにその様子を見守っているだけだ。
どうも勇者パーティ内では格付けがはっきりとしていて、勇者が間違ったことをしていても積極的に止めたりしないことが多い。
勇者自身に危険が及ばない事態なら、仲間は勇者の好きにさせてしまうのだ。
まぁ身分差を考えると、貴族社会で育った人間には、勇者に意見をするのは難しいかもしれないが、間違っているときはちゃんと間違っていると言ったほうがいいぞ。
「俺達は鍛冶については全くの素人だ。専門家であるアドミニス殿には俺達にはわからない考えもあるんだろう。まずはちゃんと落ち着いて話を聞け」
文句を言うならその後だろう。
勇者はそれでもまだ収まらないようだったが、とりあえず怒鳴るのは止めたようだ。
メルリルや聖女やルフが、ほっとした顔になった。
「ほら、茶を淹れて来たから一旦座れ。アドミニス殿もどうぞ。……まぁ俺が勧めるのもおかしな話ですが」
「ああ。すまないな。……うん? オレンジを使ったのか?」
「あ、はい。いけませんでしたか?」
「いや、オレンジを入れた茶はわしの好物でな。しかし、これは厨房にはなかったはずだが」
「途中で会った大きなビーバーにもらいました」
「おお、穏やかなる者クレメントデデュケイターに会ったのか。あの子は怖がりで、滅多に他人の前に出て来ないんだが、オレンジを貰えるほどに気に入られるとは素晴らしい」
「師匠だからな!」
なんという覚えにくい名前。
そしてアドミニス殿が俺を褒めた途端、口を挟む勇者。
君達のブレなさに目眩がしそうだ。
俺はそれぞれに茶を配り終わると、ルフのほうを見た。
「ミュリア、ルフは大丈夫だったか?」
「はい。ちょっと魔力が飽和状態になっていました。こんなこと、滅多に起きないんですけど」
「ご、ご心配かけました」
「ルフが謝る必要はないぞ? ただ、具合が悪かったり、体に異常を感じたら、ちゃんと自己申告をしてくれたほうが迷惑はかからないけどな」
「は、はい!」
ルフが緊張した面持ちで返事をする。
うん、ざっと魔力を見てみたが、特に問題はないようだ。
ルフはわずかに大地人の血を引いているからか、魔力を体内維持出来る体質を受け継いでいる。
貴族ではないから魔法は使えないが、大地人の使う鉱物を変化させる技が少しは使えるかもしれない。
それにしても魔力が飽和状態になるというのは不思議な話だ。
魔力持ちにとっては魔力は血のようなもので、自分にとって適度な量を体内に維持しつつ暮らしている。
そんな魔力が突然増えるはずがない。
ということは、外的要因のせいだ。
つまりはあの聖剣(仮)の影響だろうな。
俺もちょっと酩酊感のようなものを感じたし。
「それで、アドミニス殿。その……聖剣なんですが」
「うむ。素晴らしかったであろう? あのような光景、滅多に見れるものではないぞ?」
「あ、はい」
いやいや、はいじゃねえよ、俺。
アドミニス殿が子どものように目をキラキラさせているから、なんとなく聞きそびれてしまった。
勇者が視線で俺に、アドミニス殿にガツンと言ってやれ、と要求している。
お前が言えよと思ったが、こいつはもうさんざん抗議したんだよな。
それが全く通用しなかった、ということなのだろう。
こんなウキウキ気分のアドミニス殿に水を差すのは気が引けるが、言わなければならないだろう。
「ところで、アドミニス殿。あの聖剣の光はなんですか? アルフ自身にも制御出来ていないようでしたが?」
「ふむ……実はわしにもはっきりとはわからんのだが……」
「おい!」
アドミニス殿のあまりの言葉に、勇者がすかさずツッコミを入れる。
今のは正しいツッコミだ。
「実はな、そなたらが持ち込んだミスリル素材が原因なのだ」
アドミニス殿は勇者のツッコミを全く気にせず話を続けた。
勇者はギリギリと歯を噛みしめるような、凄い顔で睨んでいる。
しかし、今の言葉は聞き捨てならない。
結局俺達のせいなのか?
「そうなのですか?」
とりあえずこのまま話してもらうほうが何がどうなっているか把握出来そうだ。
そう判断して、俺はおとなしくうなずいた。
「あれは驚く程に純度が高かった」
「純度が高いというのは、不純物が少ないという意味ですよね?」
「うむ」
あのミスリルの塊は、例のリッチが守っていた遺跡の奥深くで見つけたものだ。
どうも太古の時代には、今とは違う魔法技術があったようなので、あのミスリルはそのための素材ではないかと思う。
「おかげで魔力の伝わり方が速すぎてな。そのまま術紋を刻むと、魔力が暴走してしまうのだ」
「ははぁ」
「そこで、例の折れた炎の魔剣よ」
「なるほど」
「あれを芯材にして、織り込むようにミスリルで覆い、魔創花の光を使って鍛えたのだ」
「ほう」
「そして、スライムを使って表面の魔力の偏りをチェックしつつ、魔創花の種で作った砥石で研ぎ上げた、という訳だ」
「ほほう」
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とりあえず、聖剣作りがなんか凄い技術を使って行われたことだけは、わかった。
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