上 下
2 / 38
chapter one

2.彼らと彼女が出会った日 *ミリアside

しおりを挟む
私の名前は、ミリア

今日からとあるお屋敷で働くこととなりました

これからお仕えするご主人様と初めて会うのですが

どのような方なのでしょうか?

初老の男性から案内された扉を開けるとふたりの男性が待ち構えていた

ひとりは、面接時に見たことがある

とは言えこんなことを考えている場合でもない

とりあえずご挨拶をせねば

「失礼いたします
本日よりここで働かせていただくミリアと申します」

笑みを深くしお辞儀をする

「使用人の名前などに興味はない」

「申し訳ございません」

おや、どうやら難しい方なのようだ

ならば、仕事上気を使うべきこともあるだろう

主人の性格をそっと心のメモ帳に書き加えておく

「ここで働くことになったからには、生半可な仕事で許されると思うなよ」

「かしこまりました」

ここで、働くと決めた以上この身の全てをとしてご主人様を支えますとも

「まったくお前はなんでそうかね
ミリア、知っていると思うがこいつは、アベル
俺は、ナキアだアベルの護衛をしている」

やはり、面接で会ったナキア様であっていたようだ

もうひとりの青年も主人であるアベル様に相違ないらしい

「勝手なことをするな
一介の使用人如きが俺の名を呼ぶな」

ナキア様が呆れたように口を挟もうとする

「では、ご主人様と呼ばせていただきます」

しかし私としては、特に問題ない

「はあ、こんなんだからその使用人如きに逃げられるんだよ」

途端ご主人様から苛立ちを孕んだ怒気が発せられる

事実腰の剣を抜きかけている

「わかった、わかった悪かったよ」

ナキア様は、慌てて謝る

それを見て不機嫌そうに剣を鞘に戻した

「まったく物騒だな…まあ、いいか
ミリア、俺のことはナキアでいいぞ
遠慮もいらない」

「よろしいのですか」

ナキア様に確認する為というのもあるが、使用人としてそれが許されるのかご主人様にも確認をとる必要がある

「勝手にしろ」

興味がない様子で応える

「それでは、ナキア様と」

いきなり呼び捨てというのは、さすがに気がひけるので様をつける

心のなかでは、既に読んでいたのだが

「様はいらないんだがな」

「は、たしかに貴様などに様は不要だな」

ご主人様に馬鹿にされたナキア様は、不満の声を漏らすが暫くご主人様が無視すると意味がないと悟ったのか静かになる

「…まあ、初めはそんなもんか
気が向いたら様はいらないぜ
ここの陰険と違って俺は、お前と仲良くしたいからな」

互いに嫌味を言い合っているのが逆に仲がいいのではと思い始めていた

「ということで、長い付き合いになることを期待するぜ
本当、切実に、これ以上使用人を探すのは無理だ」

お手上げというように溜息を吐く

「ナキア様は、仕事熱心なのですね」

「あ?そんなことないぜ
現にこうやって愚痴こぼしてるだろ?」

「そんな状態になっても諦めなかったのでしょう」

「…お前変わってるな」

私としては、当たり前のことを言っただけなのだが

ナキア様は、どこか嬉しそうに言う

「ありがとうございます」

「貴様らいい加減にしろ
仲良くするのは、勝手だが
仕事はしろ、やるならその後でやれ」

痺れを切らしたご主人様が苛だたし気にいう

「申し訳ございません
それでは、失礼させていただきます」

とりあえず私は、その部屋を退室した
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

二番煎じな俺を殴りたいんだが、手を貸してくれ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:589pt お気に入り:0

こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

BL / 連載中 24h.ポイント:1,270pt お気に入り:784

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:62,950pt お気に入り:3,804

小豚のユーリはヤンデレにストーカー中です

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:10

それでも君を愛せて良かった

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

不撓不屈

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:2,385pt お気に入り:1

ほろ甘さに恋する気持ちをのせて――

恋愛 / 完結 24h.ポイント:589pt お気に入り:17

彼との恋は、あくまで仕事で

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:9

1人の男と魔女3人

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:440pt お気に入り:1

処理中です...