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chapter one

3.苦労人ふたり

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「ーこのように、部屋の隅々まで掃除してください」

ミリアは、とりあえず屋敷の掃除をしてほしいといわれた

「この屋敷は、広く部屋数も多いですが手を抜かずお願いします」

執事長という人に詳しい説明を受ける

何故かついてきたナキアは、『結構大変なんだな』とぼやく

その結構大変が、人手不足により悪化しているのだろう

執事長は、だいぶやつれて見える

「問題がないようでしたらこの階すべての部屋をお願いします」

「入室禁止の部屋は、俺が教えておくよ」

執事長は、遠慮しつつもナキアに任せた

~30分後~

「執事長、よろしいでしょうか」

ミリアの一階下を掃除していた執事長にそっと声をかけた

「ミリアさん…いかがなさいましたか」

なにか、失敗でもしたのかと思ったが笑顔をのミリアを見て違うと判断する

では、いったい何のようなのだろうか

「はい、二階の掃除が終わりましたので確認をお願いしてもよろしいでしょうか」

それを、聞いて執事長がぎょっとする

それもそのはず

ここは、伯爵という地位の屋敷である

二階の限られた部屋だけとはいえ、20以上の部屋数だ

手を抜いたのでは、という考えが頭を過るがすぐにそれは正されることとなる

ひとつひとつ確認していった部屋は、塵ひとつ残っていなかった

執事長は、驚きを隠せず

普段なら絶対にしでかさないような口を開けてほおけた顔になっていた

最後の部屋には、ナキアがいて彼もまた眼をぱちくりさせていた

「…ナ、ナキア殿?」

他人のことは、言えないがこんな彼は、珍しく思う

名を呼ぶとナキアが我に返った

「あ、ああ」

「ミリアさんの仕事は、いかがでしたか」

恐らくその珍しい彼は、彼女が原因だろうと思い聞いてみる

「…………消えた」

執事長が「へ?」と間抜けな声を出す

「いや、自分でも何言ってるかよくわかってないけどよ
本当に…あっちではたきをパタパタしてたと思ったらこっちでシーツ変えてるし
かと思ったら終わったから次の部屋って
気付いたら全部終わってた」

それは、彼が親切心で手伝ったとかでは、なく

彼女の実力で、この部屋数をこの短時間でこなした証明でもあった

「今回は、初めてですので少々時間がかかってしまいました」

一瞬静寂が満ちる

数秒ののち

ポロポロ

「お、おい爺さん」

執事長が泣き出した

「申し訳ございません
しかし、これで…これで睡眠がとれます!」

どうやったとか

どうしてとか

そんなことは、どうでもいい

仕事の早い同僚ができた

つまりそれは、彼の徹夜記録が潰えるということだ

「爺さん、よかったな」

なんなら、ナキアもうるっときている

彼も使用人探しに根を上げていたのだから

アベルの犠牲者ふたりが感極まっているのをミリアは、微笑ましそうに見守っていた
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