新入りメイドは、なんでもできる

chapter one

4.休暇は、必要です

ミリアがアベルの屋敷で働き初めて数週間後

夕飯時のこと

卓上には、色とりどりの料理が並べられていた

スープの香辛料の匂いが鼻腔をくすぐる

「…ふむ、まあまあだな」

極度の人員不足であるこの屋敷では、料理を作る余裕はなく

普段であれば外食か、簡単な料理が定石である

しかし、今日の食卓はきちんとした料理が最善の状態で屋敷の机にあった

味の方もアベルの口にあったようだ

「それ、ミリアが作ったんだぜ」

「それは、この間入った新人か」

そこから、ナキアがミリアのその後を話す

とりあえず人の足りていない仕事に片っ端から向かわせたのだが

掃除、洗濯、書類仕事などなどを完璧にこなしきった

その上仕事が早い

今まで足りていなかった部分を殆どひとりでカバーしてしまった

最終的には、後回しにしていた料理まで担当していた

おかげで、ストレス、疲労でやつれていた執事長がまるで生き返ったようだと数少ない使用人の間で定評だった

最初は、あの執事長が泣きながら

しかも幸せそうな顔で彼女を紹介してきた時は、何事かとおもったものだ

「ローデンベルク家の使用人として当たり前だな」

アベルは、当然だとでもいうようにスープをすくう

ナキアは、やれやれと肩をすくめた

これが、彼の最大限の賛辞だと諦めているのだろう

「まあ、ということであいつにはいろいろ仕事を任せてる
今度から、また買い出しの仕事を頼みたいと思っているんだが
店を教える為に明日同行させてもいいか」

アベルとナキアは、元々商人のところへ話し合いに行く予定だった

「勝手にしろ」

まともな夕食に相当機嫌をよくしたのかいつになくあっさりと認めた