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27話

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 始めに異性に手作りのお菓子を渡すと考えて……これは果たして手作りと言えるのだろうかとも考えてしまう。

 緊張して胸の鼓動が高鳴るけど、実際は一瞬で完成したのよね。
 
 私のスキルによって一瞬でできたクッキーを見て驚いているレーリアに、私はクッキーの乗ったお皿を見せて。

「どうぞ召し上がってください……お、お口に合えばよろしいのですが」

 つい敬語になってしまったけれど、私の発言を聞いたレーリアは微笑みを浮かべていた。

 まさか異性に手作りのお菓子を渡す日がくるだなんて……いや、そもそもお菓子作りに挑戦しようと思って結局しなかったけど。

 まずこれは手作りと呼べるのかも解らないけど……いや、私のスキルによるものなんだから、手作りだと私が思えばそれは手作りよ!

「かしこまりました。味見をさせていただきます」

 しまった。
 目の前にいるから、私は手作りクッキーが完成したと同時に渡そうとしたせいで、私はレーリアに味見をさせようとしていると思われてしまったらしい。

 手作りクッキーを異性に渡すシチュエーションで、私が目の前で食べるという考えがなかったせいだ。

 それを言うと目の前でクッキーを作ってすぐ完成させていることが、もう普通じゃないわね。

 レーリアがクッキーを食べて……私が凝視していると、レーリアは目を見開かせながら驚き。

「これも、とてつもなく美味です。やはりこのスキルは素晴らしい……料理について詳しいアカネ様だからこそですね」

 スキルが凄いと言いながらも、私を立てることも忘れていない。

 微笑む姿も美しくて、もうレーリアの専属料理人になりたいぐらいだけど……落ち着こう。

「私も1枚……無茶苦茶美味しい!」

 あまりの美味しさに、もうそれ以外の言葉がでなくなってしまう。

 私が普通に作ったら、絶対にこの美味しさは出せないはずだ。

 魔力のある食材だからなのか。作ったばかりで暖かいからなのか。分量がスキルのお陰で完璧だからなのか。

 口の中に入ったと同時に溶けてなくなるほどで、あまりの美味しさにクッキーのことばかり考えてしまった。

 何枚でも食べてしまう。
 今まで食べたクッキーとは比べ物にならないぐらい美味しい。

 大げさな気がするけれど、体が軽くなっているような気がして……不安になるほどだった。

「アカネ様。かなり驚かれている様子ですが……体に変化がありましたか?」

 私の様子を見て心配した様子でレーリアが尋ねてくれるけど、気遣いが完璧ね。

 変化があったのは事実だから、私は体感したことをそのまま伝える。

「なんだか体が軽くなったような気がするけれど……これも食材による魔力のせいかしら?」

「……見たところ、アカネ様は少し疲れていた様子でした。それがクッキーを食べ始めてから、急激に元気になった気がします」

 疲れた時には甘い物を食べるのがいいとは聞くけれど、このクッキーは疲労回復効果がとてつもないようだ。

 今まで料理を食べた時はあまり疲れていなかっただけで、もしかしたら他の料理を食べても回復効果があるのかもしれない。

 レーリアが言うには魔力や身体能力を高める効果もあるみたいだし……このクッキーのを食べた時に回復するのだとしたら、回復や強化効果のある料理を、私は作れてしまうのだろうか?

 これなら……旅で食事以外にも、レーリアの役に立てるかもしれない。

 今からはのんびり港町に向かうみたいだから、私はレーリアとこのスキルについて詳しく話しておきたかった。
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