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63話

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 レーリアの兄リアークが、私達がこの世界に転移した原因かもしれない。

 今までは確証がなかったから私に言えなかったみたいだけど、塔を使って街を破壊しようとしたから、原因の可能性が高くなったらしい。

 なにがなんだか解らないでいると、顔に出ていたのかレーリアが顔を上げて。

「まず、兄リアークが精霊界を追い出された理由について話します……1年ほど前、奴は獣人の盗賊団と手を組むことで、私が住んでいた故郷の内部情報を売り、盗賊団が襲撃してきました」

「それは……追い出されて当然ね」

 今までの話から、リアークの目的はただの好奇心なのかもしれない。

 ただ自分が楽しむために、人々を苦しめる……レーリアの兄とは思えなかった。

「族長が出るほどの騒ぎになり対処するも……内部で行動していたリアークが、宝物庫に侵入して魔道具を盗み姿を暗まします」

「えぇっ……」

 盗賊団に情報を売って襲撃させるも、それは陽動だったということか。

「リアークは宝物庫の管理人、追手の同族を全て殺害し、盗賊団の逃走を手助けもして行方不明……盗賊団がどこに居るのかは不明ですが、リアークだけは1人で人界に向かったことは判明しているも、それから消息不明となります」

 そして弟のレーリアが精霊界を追い出されて、数ヶ月前はリドラの街の近くに塔を建てて行方不明。

 レーリアがこの街に来たかったのは、精霊界から一番近いリドラの街が、リアークにとっては実験場としてやりやすい場所だからと聞いている。

「リアークと、レーリアが精霊界を追い出された理由は解ったけど……私達が転移した理由はどうしたの?」

 未だに私達が転移した理由が出てこないから尋ねると、レーリアは頷いて。

「はい。リアークが宝物庫の魔道具を奪った理由ですが……この世界には「脅威」という、世界を滅ぼしかねない異常事態が起こる可能性があります」

「脅威って……何が起こるの?」

「膨大な魔力の爆発のようなものですが……本来それは、私達の族長が予知することで先回りして対処が可能でした。そして……先回りできず脅威の時が迫ると、異世界から救世主が現れる伝承があります」

 私がこの世界に転移した理由は……マミカによるものなのは本人が言っていたから間違いないけど、転移するにも条件があったのね。

 レーリアが言う族長と呼ばれている人が予知すれば、先回りして対処することで私達が来ることもなかったみたいだけど、それのどこがリアークのせいなのか解らないでいると。

「脅威を対処する魔道具を、リアークは盗み出したのです……奴の目的は、脅威を利用し世界を混沌に貶めることで間違いありません」

 それも……リアークにとっては、ただの実験なのかもしれない。

 理由は解ったけど、これでレーリアが謝るのは違う。

 どう考えてもリアークだけが悪いけど……私は巻き込まれてやって来たから、兄のせいで酷い目に合っているとレーリアは気にしてしまうのかもしれない。
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