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87話 ミユキ視点

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 ミユキは、マミカと一緒に居られればそれでよかった。

 それなのに――いきなり1週間前に現れてマミカに優しく接し、彼氏となって契約までしたリアークのせいで、幸せな日々が瓦解する。

 契約内容は2人だけの秘密と言われ、ミユキには教えてくれない。

 マミカはリアークと2人で何かしているけど、言えないと言われて何も知れない。

 賢者スキルによる発言力のせいか、部外者のエルフなのに、城の人達は皆リアークを受け入れている。

 宰相ドグだけは怪訝そうにしていたのに……マミカが徹底的に話をすることで、リアークを受け入れていた。

 これは絶対にマミカの行動と違う――リアークはマミカを利用して、何かを企んでいる。

 そもそもリアークは、アカネを追って城から出て行ったレーリアと雰囲気が似過ぎていて……ミユキは警戒するしかなかった。

 × × ×

 スキルのカード……リアークは詳しく知らないと言っていたけど、絶対に知っている。

 そうでなければマミカの賢者スキルによる発言力を利用して、モンスター狩りなんてやらせていない。

 マミカも「リアークがカッコいいところを私に見せたいって!」と目を輝かせてて、完全に恋する乙女だった。

 ミユキは今日の出来事を自分の部屋で思い返していると、扉をノックして部屋にリアークがやって来る。

 そんなリアークを睨みながら、部屋に入れたミユキは思っていることを口にしていた。

「リアーク……貴方と私は似てるわね」

「そうでしょうか?」

「欲望に忠実なところとか、これが同族嫌悪なのかもしれないわね……話があるって、何よ?」

 結局カードを手に入れた時の質問も「偶然知りました」ではぐらかされたけど、こうして対面して話すのは初めてだ。

 今までリアークが避けていたのに、カードが出たタイミングで話があると言い、ミユキの部屋に来ている。

 怪しすぎる……ミユキはそう考えながら、警戒心を強めて部屋に来た理由を尋ねると。

「愛しいマミカ様が、心配していたからですよ」

「なにが愛しいマミカ様よ……貴方、マミカちゃんを愛してないでしょ」

 ミユキの発言を聞いて、リアークは楽し気に呟く。

「愛というのは様々な形がありますし、人それぞれの――」

「――聖女スキルの前には嘘は通じない。煙にまこうとしないで」

 ミユキは聖女スキルで嘘がつけない質問を、リアークに行う。

「ふふっ。こうして聖女スキルの嘘を見抜く力がどこまで作用するのか、会話から調べるのは楽しいものですね」

 追い詰めているはずなのに、リアークは楽し気な笑みを浮かべていたのが気になると。

「ミユキとリアーク! 大変なの!」

 勢いよく部屋に入ってきて、驚愕と歓喜しているマミカを眺めて……マミカはリアークを睨みながら。

「マミカちゃん……どう、したの?」

「いいから早く厨房に来て! リアークに提案されて料理スキルを試したら、凄いわよ!」

「っっ……」

 きっとこれが、リアークの目的だったのでしょう。

 ミユキに言わずに料理スキルのカードを使わせる……理由は解らないけど、これが目的なのは間違いない。

 今まで追い詰めようと質問していたけど、リアークはただミユキと会話できればそれでよかったはず。

 この男は危険――同類だから、ミユキは敵意を持ち、恐怖するしかない。

 とにかく今は、料理スキルのカードを使って何が起こったのか気になり、ミユキはマミカと共に食堂の厨房へ向かっていた。
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