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45話 カルス視点

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 カルスとしては、禁魔法を使ったことをエバンドに知られたくなかった。

 領民を束ねているエバンドに見捨てられると、確実にルジャス領が終わってしまう。

 領民を利用する禁魔法を使っているとエバンドには言えないでいると……何かを思い悩んだ様子で、エバンドが告げる。

「……そうですか。それでは、私はこれで失礼いたします」

「ああ。ご苦労だった」

 エバンドの返答を聞くと、不満がありそうなのが解る。
 それでも立場の近いから、エバンドは納得するしかないようだ。

 部屋を出たエバンドが扉を閉めて、カルスは安堵しながら独り言を呟く。

「グランが言っていた禁魔法によって起こる危惧すべき事態か。いざとなれば、ミュリナを頼れとも言われていたが……」

 今、婚約者のミュリナはルジャス家の屋敷に住んでいて、魔道具を使うことで緊急だと伝えることはできる。

 禁魔法を使った際に起きやすいのは領民による暴動――禁魔法を扱った時の異変から利用されて使い潰されることを恐れ、領主を消すために動こうとする。

 領主に対する敵意が強い場合、増加した魔力から気が大きくなって引き起こされる現象で、かなりの被害者が出ているらしい。

「実際に被害にあっているのは領民の方か……とにかく、気をつけないと……」

 そう考えていた時――扉が開き、1人の青年がやって来る。

 その青年はナイフの刃を見せつけて、殺意をむき出しにした表情を、カルスに向けていた。

「なっ……侵入者か!?」

 警備は厳重にしていたというのに、1人の領民がカルスの部屋まで侵入している。

「まさか……エバンドの奴が、俺を殺そうとしている!?」

 さっきまでのエバンドとの会話による反応を見ると、恐らく察することができていたはず。

 いきなり領民に殺意を向けられて茫然としていると、ナイフの刃を向けた領民の青年が、雄叫びを上げながら迫ってくる。

 信頼していた部下エバンドに見捨てられたとカルスはショックを受けながらも……当然の報いだと考えていた。
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