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しなきゃいけない作業の邪魔をするような休日の設定も違うよなあ

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「今日はせっかくの休みなのに……」

アルカセリスはちょっと不満そうに言って頬を膨らませた。

私が畑に行く準備をしてるからだ。

「だから行くんだよ。役人はこないしさ」

するとアルカセリスも当たり前みたいに出掛ける用意を始めた。私についてくる気だ。

ま、いつものことだけどさ。

そうして二人して用意して、家を出る。私が手配した馬車が、家の前に待機してて、それに乗って畑へと向かう。

一時間くらいで到着すると、農家の人達が普通に作業してた。本当なら休みのはずなんだけどね。

だけど休んでなんかいられないんだよ。

王族や貴族達はその辺りのことまるで分ってない。

過重労働を強いるのは確かに違うと思うけど、だからって、しなきゃいけない作業の邪魔をするような休日の設定も違うよなあ。

無理に休んだって、どうせまたどこかで帳尻を合わせないといけなくなるし。

それに、農家の場合は、<農閑期>っていうのがあるからね。そこでまとめて休みを取ることだってできるんだよ。

ただ、この辺りの人達は、ちょっと事情が違う。甘イモが十分に育たないから、とにかく手を掛けて何とか大きくしようとして、休めないんだ。

適した農地だったら別に気しなくてもいい程度の小さな雑草まで急いで抜いて、鳥や獣についばまれて弱ったら困るっていうんで常に見張って。

だから、『休め』って言われてるのに、税を納めるためには休みなく働かなきゃいけないっていう矛盾に陥ってるんだ。

典型的な本末転倒だよね。

その辺りを解消する為にも、収穫量を増やさなきゃいけない。

「セリスは休んでて」

当たり前みたいに手伝おうとするアルカセリスに、私はそう言った。

「え…でも……」

と言う彼女に、

「休むのも仕事だよ。あなたはとにかく体を休めて。どうしてもって言うなら、みんなの食事の用意をお願い」

ここまでも、ついてきては畑仕事を手伝ってきたアルカセリスだったけど、昨日、軽い立ち眩みを起こしたりしてたからね。だから今日はとにかく休んでもらわなきゃと思った。

それでも手伝いたいという彼女の気持ちも無視したくないから、お昼もそうだけど、飲み水を用意したり、小腹がすいた時に軽くつまめるものを用意してもらうことにした。

そういうのは小さい子の役目だったりするんだけどね。で、十歳くらいになるともう畑仕事を手伝うようになるんだよ。

もちろん今も子供達が手伝ってくれてる。これまであまり触れてこなかったけど、<児童労働>もこの世界の常識だ。

それが改善されるにも百年単位の時間が必要なんだろうな。

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