最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧

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1章

12話 デスレース

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「だ、だってβ最強で、PT必須とか、言われてるのに、そ、それにレア職だからって……」
「まあレア職よね、序盤きつすぎて他職やった方がいいって言われるし」
「じゃ、じゃあ、なんで、ソロのLv5で、ここに……」
「だって死に戻りする気で来たし」

 所持金はとっくの昔に0だし、経験はさほど稼いでない。なんならレベリングしたのは錬金と伐採のSLvが上がった時にやけっぱちになって木材投入した時くらいしか思い出せない。ぶっちゃけデスペナなんて知ったこっちゃないという状況と言うのもでかいのだが。

「銃弾尽きてるガンナーなんてそこらの魔法職に手頃な杖持たせて殴らせた方が良いくらい弱いわよ」
「そ、そんなぁ……」
「そういう事だから素直にちゃんとした職の奴と組んだ方が精神的にいいわよ」

 こういう時はさっさとちゃんとした理由を添えて断る。だらだらと後で発覚しましたとか、組んだ後で文句を言われたり、寄生プレイだとかを言われない予防策ともいえる。余計なトラブルは抱え込まないのが立派ゲーマーなのだ。

「で、でも、あなたは、どうするんですか……?」
「採掘ポイントにダッシュで近づいて死ぬまで掘りまくる」
「で、デスペナは……?」
「構わないわね、所持金無いし経験もレベル上がってから稼いでないし」

 ウサ銃から採掘用つるはしに持ち替え、マップを開いて大まかな採掘ポイントの目星を立てる。東エリア2は北東側に行くほど山になる丘陵マップ。南東側に行くとだだっ広い平原となる。世界全体的にみると南は平原中心に、北側は山が多くなる。後は所々砂漠があったり湖やらがあったり、観光名所的な感じに点在している。とにかく狙いは北東だ。

「さーて、ここのエリアのモンスターもチェックして、あとはリスポン地点をここに再設定して、と」

 マップの境目である安全地帯はリスポン地点を指定できる箇所がある。これもそのうちの一つ。街からマラソンしなくてもよくなるが、下手すると私は街へ帰還できなくなる可能性もある。

「……生産職でもないのに、なんで採掘なんか……」
「装備を自前で揃えたい派なのよ、私は」
「いや……いやいや、そんなレベルじゃないですよ、ここアクティブモンスターも多いですし……採掘場所にいけるかもわからないのに……!?」
「だから?」
「だから……って」

 確かに傍から見たら布の服一丁と言うか何も装備していないドラゴニアンがつるはし持って首傾げているわけだし、普通じゃあないね。それはまあ自覚してるし、それはいいんだけど。この犬耳は危ないからとか適正レベルじゃないからと言うのばかり言っているが「そういう事じゃない」。

「まあ言ってることは分かるわよ、確実にワンパンで死ぬだろうし、採掘ポイントも今から調べるわけだし?」
「じゃ、じゃあ、レベリングしてからとかの方が……」
「確かにそうなんだけどねぇ」

 ふむ……確かに何でこんなにムキになっているんだろうか?と考える。キャラを作り直して後で銃カテゴリーを使えるサブとか二次職に選択するのが多分想定していた使い方が、正式版におけるガンナーの使い方が正しいのだろう。ただ他のPTに引き上げた貰ったところでそれは面白くない。と言うか上がった所で肝の銃弾がなければ火力はでないから意味はない。

「それはそれじゃん?私としてはソロプレイだし、トレインで擦り付けが発生するかもしれないけど他プレイヤーに迷惑が掛かってるわけでもないし、これは私の楽しみ方であって、攻略方法とは別の話でしょ」
「え、いや、そう、です、けど……」

 さて、これからリアルでやらないマラソンでもするか、と言いながら安全地帯から抜け、東エリア2に進んでいく。

「レベリングして先に進むだけがT2Wの楽しみ方じゃないと思うのよ、私は」

 犬耳ショタが狼狽えている間に、背中越しに手をぷらぷらと振ってそこで別れる。こんな悪人のような相手に勇気を振り絞って声を掛けた度胸はあるんだから、もっといい相手が見つかるでしょう。あと単純に可愛いから、そっちの趣味がある人が引っかかるんじゃないかしら。



「それにしても一つエリア超えただけでアクティブ増えるのが問題なのよね」



エルスタン東エリア2 
Lv05:食人花
Lv07:ブラッドビー
LV08:髑髏リス
Lv10:ワイルドボア



 獣ばっかりのラインナップに虫と植物が組み込まれてるわけだけど、ここのアクティブは後者2匹、前者2匹は特殊アクティブになる。そしてここを突破するにあたって危険なのはリスだ。尻尾等含めてだいたいサッカーボール一回り二回り小さい程度の大きさなのだが、ベースがリスなだけあってすばしっこい、そのくせ好戦的なので探知されるとすぐに襲ってくる。

 ここの適正レベルを上げているのが大体こいつのせい。ボアに関しては探知されても距離がある場合突進攻撃をしてくるので障害物に当てるか突進を避けてさっさと振り切れば問題なく逃げられる。前者の2匹は共存関係なのか、食人花との戦闘に入らなければ蜂はこっちに来ない、逆もまた然り。
 
 とにかくリスの猛攻を避け、ボアの突進攻撃を避け、花と蜂を刺激しない様にしつつ潜伏しながら山側に進んで行くというのがここの攻略方法になる。普通に考えればレベル上げて倒しながら進んで行くのが正攻法なんだろうけど。



 それがここで三回死んだ私の成果。

 一回目はリスから逃げている時横っ腹にボアの突撃を貰い盛大に木にたたきつけられ死亡。体ばらばらになるんじゃねえかって思うくらいには吹っ飛んだ。ハリウッド映画とかでよくある不意打ちで撥ねられるあれと一緒。

 二回目はやっぱりリスから逃げている間に、食人花と蜂のテリトリーに入ったのがアウトだった。非アクティブと言うわけではなく戦闘している状態だと乱入してくるルーチンもあるみたい。

 三回目はリスに囲まれて髑髏と言うか骨を投げられてそのままHPが吹っ飛んだ。悪魔の城で上段から骨ばっか投げられジャンプキャンセルされるあれを思い出すくらいにはうざかった。

「んー……突破できんなあ……一回だけ採掘ポイントがあるとこ見つけたんだけど、吹っ飛ばされたし」

 一番奥まで行けたのが最初で、あとの二回はその半分も到達できてない状況だ。うん、やっぱり強行軍が過ぎたって話よね。採掘マーカーを一度だけ確認できたからマップには表示されているし、当初の目標とは違うが、またここに戻ってくればいいだけで、もう少し耐えられるだけのステータスになってから出戻りしよう。

「まあ、やっぱり順繰り成長するのが一番の近道って事になるか」

 いつものまずいMREを食べつつ、ちらっと時間を見る。リアル時間で夜の8時、サービス開始して12時間。ゲーム内時間で1/3の12時。なんだかんだでゲーム内では丸二日経ったわけだ。

「とりあえず小休止して仮眠でも取るか、計画の見直しもしないといけないわけだし」

 もうちょっと楽に突破できると思っていた過去の私をひっぱたきたい。
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