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12章

315話 戦争は変わった

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 襲撃イベントの回数も中々増えているのでプレイヤー全体の練度も上がり、エリアをガンガン突破されるって事も無くなってきた。何よりも私がばら撒いている火炎瓶と焙烙玉がゆっくりだが浸透しているってのが確認できている。
 火さえつけられれば安定してダメージや状態異常、範囲攻撃が出せるんだから、悪い事が無いってのは大きい。低レベルの初心者でも捕まえて焙烙玉投げ込ませてパワーレベリングさせるってのも面白いかもしれんな。
 
「そういや今人口どれくらいいるんだったかな」

 初期生産で5万、追加生産で確か本体同梱が5万、このゲームに対応しているHMDならDL版も発売されたって言うから最低でも10万はいるとしても人口は増加傾向、今の所対抗馬として別のタイトルもあるけど新作大型タイトルなだけあるし、今後次第だなあ。
 一気に人口増やしてサーバーに負荷かけまくって、増強からの過疎化で設備投資分の赤字を出してそこからサービス終了って言う悪循環になるくらいなら徐々に増やして状況を見る方が圧倒的にいい。

「うちも新人育成考えるかなぁ……いや、ダメか、確実に道を外しておかしいことになる」

 そもそも私は良いとして、酒狂い、銃器狂い、裁縫狂い、性格ねじ曲がり、配信ジャンキー、バトルジャンキー×2……なんだ、こうやって並べていったら私が一番まともじゃないか、しっかりしないといけないなー。

「と、今回はそう言う事じゃなくてだな」

 今回目的としているのは火炎瓶、焙烙玉を卸したクランやプレイヤーに使用感を聞いて、どういう感じかを聞き取りすることにある。アフターサービスのしっかりした営業ってのもこの業界で生き残る秘訣。まあ、業界って言うかゲームで、私に売られた喧嘩に勝つ為だけど。

 それにしてもこうやって前線手前で移動しているだけで、あちこちで火の手があがり、時折大きい炸裂音が響く。うーん、この戦場で嗅ぐ、火薬と燃える匂い、たまらんな。





「毎度様」
「丁度良かった、火炎瓶あるかな?」
「例の量が少ない火炎瓶も使い切ったの?」

 インベントリを開き、在庫を確認しながら用意。もう稼ぐことにシフトしているから上位陣から絞れるだけ絞れればそれでいいだろう。

「やっぱり量が少ないと範囲がな、2本使って同じ範囲をカバーするのも手数が増えるからいまいちだ」
「狭い所で投げるなら良いんだろうけど、戦場が広いからそうなるわな」

 火炎瓶のアイテムデータを取り出して何ダース必要か聞いて、その分を取り出しトレード。ここのクランは気前がいいから結構な数を注文してくれるのが非常にいい。何だかんだであの犬野郎の所と同じ位に大きく強い所だって知るのはまた別の機会になるんだが。

「焙烙玉はいる?」
「例の爆弾か……試供品はないのか」
「火薬の末端価格が高いから試供品あげても良いけど2個までかな」

 とりあえずその2個分を渡すと物珍しそうな顔をし、手に取って回しながら見ているのでもう1つ取り出して前線の方に向かう。

「使い方はまあ火付けて投げるだけ、この導火線の長さだと大体火付けて10秒ってとこ」
「威力は?」
「見た方が早いわ」

 生活火魔法で着火し、投擲でモンスターの所へオーバースローでしゅぱっと投げ込む。

「あー、やべ、私スキルついてるから威力高いわ」

 あんまり爆破物って使ってないから結構忘れがちになるのよね、ボマー。限定的過ぎるスキルだから補正も強いってのは分かる。とりあえず炸裂すると共に数匹のモンスターが纏めて吹っ飛んでポリゴン状になって消失していく様を2人揃って涼しい顔をしながら眺める。

「ちなみにこれ1つどれくらいなんだ?」
「えーっと、火薬1gが今4kだから……1個9万かな」
「大体20gであの威力なのか?」
「ボマーなしだともうちょっと威力は低いけど、結構なダメージは出るわ」
「中々凶悪な値段と威力だが、やっぱり値段がなあ」
「結構ギリだからこれ以上下げるはちょっとねえ」

 って言うけど、元値は結構安かったりする。硝石の値段もかなり落ち着いてきてるしガンナーも増えているので火薬自体は珍しくなくなっている……のだが、火薬をそのまま爆薬として使うガンナーってのは結構少ない。
 一応これも理由がちゃんとあって、ガンナーってやっぱり自分の火力を出す為には銃弾を揃えなきゃいけないわけで、20gだとケチれば10発分にはなるのに、1発の威力を求めて爆弾を作るのは少ない。勿論ガンナー以外のプレイヤーが爆弾は作る事もあるが、やはり大量生産向けのアイテムではないので趣味の範囲が多い。なので実用レベルの爆弾を作って売るってだけでうちのクランは珍しい部類に入るって事だ。

「とりあえず3個貰うかな」
「毎度あり」

 27万Zの硬貨データを貰って焙烙玉3個を渡してトレード終了。導火線の弄り方や投げる時の注意をレクチャーし、その場を後にする。

 それにしても戦い方が変わって来てるよなあ。個々で撃破の速い動きが出来るならさくさく倒して回るってのが基本だけどそうじゃない場合はとにかく範囲攻撃かまして処理していくのが基本戦術。で、そこで問題になってくるのがどうしても範囲攻撃を持てない職。
 地味に売れ行きが良いのがヒーラーやバフを掛ける援護職や、純戦闘職じゃない生産系の連中も結構使ってるって聞いている。もう何でもかんでも聞きまくってるな、最近の私って。

『アカメさんいますか?』
『あんたから連絡なんて珍しいわね』

 葉巻に着火して次の所に行こうと思っていた時に珍しくちんちくりんから連絡がくる。暫くぶりに連絡したような気がするなあ。

『投げ物売ってるって聞いたんですけど、買えますか?』
『場所はどこ?』
『北の3-3ですね』

 今日は東にいるから一旦移動しなきゃならんのは多少面倒くさいが、折角の頼み事だし向かってやろう。何だかんだでゲーム初期からの付き合いだからちょっとはおまけしてやるか。

 



 移動自体は多少面倒くさいけど、襲撃中は余計なモンスターが少なくなっているのでエリアの先に進みやすいってのはメリットの1つ。ただ、襲撃中に第4の街まで行ってやろうとオーラモンスターの集団に突っ込んで行った時は死ぬかと思った。って言うか死んだ。楽して先に進むってのはダメって事。

「営業回りするってのも大変だよ」
「相変わらず良い恰好してますね」
「あんたと初めて会った時はキャットスーツだったかしらね」

 インベントリから火炎瓶と焙烙玉を取り出し見せながら、ちょっとした思い出話に花を咲かせる。あの時はアンデッド系モンスターにビビり倒してたってのに偉くなったもんだ。

「それにしても搦め手使うなんて珍しいんじゃないの」
「えっと、やっぱりここまで来るとレベルの低いメンバーが付いてこれない事が多くて」
「そらそうでしょ、此処のレベルアベレージ結構高いし、HPは落ちてるとは言え強化モンスターよ」
「なので援護をしてもらう事で立ち回り含めて勉強してもらおうと」

 レベルの高い相手に対しても火炎瓶って耐性がなかったら分断できるし、焙烙玉は安定したダメージを取れるって、どこで知ったのやら……って思ったけど、対人の時に思いっきりぶつけてたわ。

「変に早めにレベル上げるとスキル覚えなくて苦労しない?」
「そうなんですけどね、レベルが足りないから連れていけないってそれもちょっと……流石にヴィエまではいきませんけど」
「うちの連中は私の事置いてさっさと行っちゃうわね」

 けらけらと軽く笑いながら何本かの火炎瓶と焙烙玉を渡す。顔なじみって事で多少なりと融通するけど、知ってなきゃ渡してないからな。

「パイプやめたんですか」
「作成の手間を省いたって言いなさい?使い方は分かるだろうし、威力も知ってるだろうから、それで試して上手く行くなら購入でいい?」
「アカメさんは相変わらずですね」
「会った時からかわんないって素敵でしょ」
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